Side:なのは


……な、なに、この感覚は?…大きな魔力の波動…ううん、其れだけじゃない…何かが…頭の中に流れ込んでくる。

どこか遠く離れた管理外世界…あまりにも人らしい人ではない無い何か…驚いているはやてちゃん…そして―――

「!!思い出した…私とはやてちゃんは、会談前に再会してたんだ――あの世界で!」


『なのはちゃん…!!』

「はやてちゃん!!」

若しかしてはやてちゃんも思い出したの…『あの時の事』を!!


『バッチリな……記憶の封印されてた言うても、会談の時に思い出さんなんて間抜けも良い所やで…そんだけ封印が強固だったいう事やろうけどな。
 って、それとは別に、なのはちゃんも感じたやろ、今の魔力。』


「うん、ハッキリとね…」

サイファーとドゥーエさんは別の場所で戦ってるから、相手をしたのは多分ルナかな?
まぁ、ルナなら何処の誰が来ようと負ける事は絶対ないから安心だけど――だけどなんで彼方が此処にいるの?

あの時、私は間違いなく貴方に引導を渡した筈なのに――如何して!!
如何してこんな所に現れたの!リオン・アークヒール――私達のもう1人の『お父さん』!!











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福99
『レブエマノビロホ』










何で…如何して……お父さんは永久の眠りについたはずなのに…私がつかせたはずなのに……


…まさか!!
まさか、最高評議会は死んだ人達まで戦力として利用していると言うの?……死後の安息の眠りについた者を呼び起こして…

「ふ…ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


――轟!!…バリィィィン!!


聖王化の衝撃で、ガジェットが何体か吹っ飛んだけどそんなのは如何でも良い――元々倒す心算だったからね。
だけど、そんな事よりも最高評議会のやった事は絶対に許せない!!

死した者を、無理やり眠りから覚まして自分の兵隊にするなんて絶対に間違ってる!!
生も死も1度きり…死者は蘇らない――それが世界の鉄則で原則なのに、其れをひっくり返してまで戦力を強化するなんて…神にでもなった心算!?

冗談じゃないよ……お父さんはアレだけの思いをして…その末に私の手で人生にピリオドを打った。
其れそのものは悪くないと思う――漸く解放する事が出来たと思えば。


だけど、其れなのに最高評議会の駒として私達の前に現れるなんて……冗談じゃないよ。

「お父さんには、眠って貰わなきゃ……これ以上『生かされる』事なんて――そんな事は望んでないから!!」

ルナが負けるとは思えないけど、最高評議会が至高の戦力を手放すとも思えないよね。
恐らくお父さんは、最高評議会の手でこの戦場から離脱させられているはずだから、これ以上は何も分からないか…

だけど、今度お父さん…リオンさんが現れたら、其れは私が倒す!
例え『2度目の親殺し』をする事になっても、お父さんにはゆっくり眠っていて欲しいからね。


『なのは!』

「ルナ!」

『今しがた、何時ぞやの寡黙な魔導師と……くっ……』


ルナ?


『……なのは、リオン・アークヒールが最高評議会の戦力として現れた…』


!!
ルナも思い出したんだね?
如何やら封印は、私とはやてちゃんだけじゃなく、ジェイルさんを除く全員に掛けられていたみたい……次元超えて複数人の記憶封印てドンだけ?
そんな事できるのって、全盛期のプレシアさんくらいかと思ってたけど、お父さんも中々アレな人だったんだねぇ…ジェイルさんが興味を覚える訳だよ。

と、其れは良いとして、それで如何したのルナ?
例えお父さんが相手でも、ルナなら負ける事は無いと思うんだけど…


『あぁ…負けはしないが逃げられた。
 だが、なのは…今現れたリオンは
――間違いなく死んでいるぞ?闇慟哭でコアを破壊しようとしたが、そのコアがなかった。
 おまけに体温も無いに等しい……最高評議会は眠りについた彼を…!!なのは、アイツは次に会った時に私が眠らせる…!』



ルナ?…ううん、私がやるよ――


『ダメだ…お前に2度目の父親殺しをさせてなるものか――きっとはやて嬢も同じ事を言うと思うぞ?
 お前が自分自身の手でリオンを眠らせてやりたいと思う気持ちも分からないではない………だが、もう一度は辛いだろう?』


ルナ――確かにもう一度、解放するためとは言えお父さんを殺すのは辛いかな…
……うん、其れについては状況次第でっていう事で。

「私の前に現れたら私が、ルナやはやてちゃんの前に現れたら2人が……其れで如何かな?」

『強情だなお前は……だがまぁ、それが現実的か。
 だが、なのは…やる時は、今度は何も残らずに吹き飛ばしてやれ…そうすれば2度と利用されることは無いからな…』



何も残さず……そう…だね。
そうすれば2度と誰かに利用されることは無いもんね……うん、やるよ。

お父さんを解放し……そして、最高評議会は完膚なきまでに叩きのめす――2度とこんな連中が現れないように徹底的に!!

「レイジングハート。」

『Divine Buster Extension.』


――ドォォォン!!




それにしても…なんだろうこの違和感?
確かにガジェットは引っ切り無しに現れて来るし、人造魔導師の数もこの間の市街地戦とは比べ物にならない数が投入されてる。
本気で地上本部を潰そうとしてるのは分かるんだけど――何て言うか、数は多くても若干質が低い?

もっと正確に言うなら脆い。

幾ら聖王状態のエクステンションだからって、直撃や掠ったなら兎も角、その余波だけで落とせるなんて幾ら何でも脆すぎるよ。
其れなのに、落とせど落とせど数だけは次から次へと……まるで私達を地上本部に張り付けるように――――

「!!!」

まさか!!……だとしたら拙い、完全に仕掛けに乗せられた!!

「ジェイルさん!!」

『なのは君?如何したのだねそんなに慌てて?此方のシステム再構築はあと5分程で完了するが…』

「それどころじゃないです!今すぐアジトで待機中のサーク達と、ありったけのガジェットを機動六課に転送してください!
 それから、今この場に居る六課隊員と地上部隊の全員に広域通信を繋いでください!!」

『サーク達をだと!?…成程、記憶の封印が解けた訳か…タイミングが良いのか悪いのか…
 だが、少し待ちたまえ!イキナリどうしたと言うのだね?まるで話が見えないのだが…』


評議会の仕掛けに完全に乗せられたんです、私達!
システムへの侵入も爆破テロも、次々現れるガジェットと人造魔導師も、全て私達を地上本部に釘付けにして動けなくする為のもの!

評議会の本当の狙いは機動六課の壊滅と、六課で保護した女の子と回収したレリックの強奪です!

勿論地上部隊への襲撃も『本命』だと思います。
だけど同時にこっちへの襲撃は『陽動』でもあったんです!!


『何と……マッタク悪知恵だけは良く働く連中だ。了解した、直ぐにサーク達を六課本部に送ろう。
 だが、評議会の主力があちらに集中するとなると、幾ら私のガジェットでも分が悪い。
 ガジェットの2/3は此方に転送するから、君とルナ君は六課本部に向かってくれたまえ!』


「分かりました!」

『そして…よし、広域通信も繋がった。』


ありがとうございます!

『此方は協力組織『リベリオンズ』のシュテ………高町なのはです!
 今この場で行われている戦闘に参加している全ての人達に告げます、此処への襲撃は本命であり陽動です!
 最高評議会の本当の目的は機動六課本部と、其処で保護している女の子、そして保管しているレリックです!!
 此れから私は六課本部に向かいます!六課と地上本部も、今すぐ可能な限りの戦力を六課本部に回してください!!』

此れで良し。
はやてちゃんなら最適な戦力を向こうに送ってくれるはず……多分レジアスさんも。

「ルナ。」

『皆まで言うな、私とお前で六課本部に向かうんだろう?なら、善は急げだ。』

「うん!」

最高評議会があの子とレリックと手に入れたら、1つ目の予言は現実になっちゃう……急がなきゃ!!








――――――








Side:ノーヴェ


外で何かあったのか?妙に騒がしいけど…
何か通信が入ったが、通信状態が良くなくて途切れ途切れだったから分かりゃしねーしよぉ…

まぁ、そいつは後回しだ。

「今大事なのはテメー等をブッ飛ばしてギンガを取り戻して、んでもって治す事だからな!!」

眼帯、テメー戦闘機人なら知ってるよな?戦闘機人にはそれぞれ異なる固有技能があるってことを。


「IS能力の事か?当然知っている。」

「だよな?……なら良い事を教えてやるよ、アタシ等4人もギンガと同様に戦闘機人だ。
 それでな、本来ISってのは重複する事がねぇ……だが、アタシとスバルだけは全く同じ能力を持ってんだわ…」

見せてやろうぜスバル、アタシ等だけの力ってのを!!


「うん!行くよノーヴェ!!」


――バガァァァン!!!!


「!!!!」

「オラ、どこ見てやがる!!!」


――チッ!!


ギリギリで避けやがったか……結構強い奴みてぇだな。
だが、今ので分かったろ?アタシとスバルのIS能力が!


「馬鹿な…『振動破砕』だと!!!
 物質の固有振動数と完全合致した振動を打撃に負荷する事で対象物を、文字通り粉砕する技能…!!
 まさかお前達は!!」

「そうだよ…アタシとノーヴェは『戦闘機人を破壊する力を持った戦闘機人』なんだ…
 ギン姉をそんなにした事は絶対許さない……お前達は残らず粉々にする!!」

「アタシとしても、ギンガは大切なお姉ちゃんッスからね……覚悟すると良いッスよ…同じ戦闘機人だからって手加減なんかしねぇッス!!」

「貴女達は許さない…!!」


お〜〜…珍しくディエチも本気でキレてやがるな?
知ってるか眼帯他2名……世の中にはな、絶対にやっちゃいけねえ禁忌ってもんが有るんだぜ?

「…テメー等はその禁忌を犯した……つ〜事は、覚悟は出来てんだよな?ぶっ壊されても文句言うなよ?」

「馬鹿か貴様は?
 私達の目的は既に達成した…ならば長居は無用だし、お前達と馬鹿正直に立ち会ってやる道理もない。」


だろうな……けどよ、逃げられると思ってんのか?
さっきスバルが振動拳で地面を砕いたときに、粉塵に紛れてウェンディがテメー等の逃げ道になりそうなところ全部に設置弾を仕掛けた。
逃げようとしてもそれを一斉に爆破して退路を断ってやるよ!


「何だと!?」

「姉妹の連携を甘く見たらいけねぇッスよ?
 スバルの振動拳が、ノーヴェの奇襲の為の布石だけなんて思えねッスからね♪」


つ〜訳で選べよ眼帯+α……大人しくブッ飛ばされてお縄になるか、無駄な抵抗をした挙句にブッ飛ばされてお縄になるか。
まぁ、アタシとしては『お縄になってからブッ飛ばされる』って選択肢も有りかとは思うんだけどな?


「どちらも拒否する!!スティンガー!!」

「投げナイフ…全部撃ち落とす、フリジットバースト!!


――ドドドドドドドド!!!


流石ディエチ、投げナイフでの広域攻撃なんざ楽に対処できるか。
てかあの体格で投げナイフってーと、あの眼帯はミドル〜ロングレンジが得意な感じか?


「多分ね…そうなるとディエチとウェンディの方が、アタシとノーヴェが相手をするよりも相性的に良いと思うよ?」

「だな…まぁ、言わなくても分かんだろ?」

そうなりゃアタシ等の相手は残る2人――ショートとロン毛だ。
おい、お前等も覚悟できてるよな?どっちがどうなるかは分からねぇが、お前等の運命はスバルに殴り倒されるか、アタシに蹴り倒されるかだからな?

テメー等はアタシ等の家族に手を出した……その代償はテメーの身体で払ってもらうぜ!!

ジェットダスター!!

ナックルダスター!!


そんで、此処で終わりだ!テメー等戦闘機人も、最高評議会とか言う馬鹿野郎共もなぁ!!!








――――――








Side:ルナ


矢張りと言うか何と言うか、そう易々と六課本部までは行かせてくれないか……地上本部に現れたのよりも『堅い』ガジェットが出て来たか。
まぁ、普通なら撃破に戸惑って時間をロスするところだが…


「「ディバインバスター!!」」

『『Divine Buster.』』


――バガァァァァァァァン!!


例によって例の如く、私となのはには全く持って足止めにもなりはしないな。
私達が強すぎるのか、それとも相手が弱すぎるのか――果たしてどっちなんだろうな?


「私としてはどっちもだと思うなぁ?」

「と言うか、貴様等8年間の間に些か強くなり過ぎではないか?」

「あっはっは〜〜!凄いぞナノハ、るな〜〜!!」

「まぁ、貴女達に限界と言う言葉は無いとは思いましたけど…」

「其れでも凄いですぅ…」


!!美由希に冥沙に、雷華に星奈、其れにゆうり!!…お前達がこっちに来たのか!!
と言うよりも…久しぶりだな――元気そうで安心したよ。ドゥーエから偶に近況は聞いていたけれどね…


「お姉ちゃん…皆…!!……えっと…久しぶり?」

「何で疑問系なのよ?…まぁ、言いたい事は一杯あるし聞きたい事も沢山あるけど、其れは後でね。
 今は、六課本部を――ヴィヴィオを護るのが最優先だから!
 だけど、此れだけは言わせて……なのは、ルナ…おかえり、本当に生きててよかった。」


美由希…いや、皆も――ただいま…随分心配をかけてしまったな…すまなかった…


「ただいま…うん、お姉ちゃん達も元気そうで安心した……私もお話ししたい事は一杯あるんだけど…今は!!」

「はい…今は欲にまみれた悪逆非道を滅する事に専念しましょう。」


だな。
実に10年ぶりか…砕け得ぬ闇事件以来だな、私達が一同に介して戦うと言うのは。

だが、其れだけに不安も何もない。
白夜の聖王に、月の祝福、闇統べる王、知恵の炎熱に力の雷光、紫天の盟主に美由希は……剣聖の麗人と言ったところか?

兎に角、私達が一同に介したのならば、敵は無い。
それこそ、ゴ○ラと○スラとラド○とア○ギラスとキ○グギド○を纏めて相手にしたって負けるモノか!!

「景気付けだ!なのは、星奈、10年ぶりにやるぞ!!」

「其れは命令ですか?」

「まさか、提案だよ?」

「ふ、ならば乗らせていただきましょう!!」


そうこなくてはな――喰らえガジェット共!!


「「「全力全壊!トリプルディバインバスター!!!」」」

『『『Triple Divine Buster.』』』


――ドッガァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァン!!


我ながら、矢張りバスターが3つ一緒になると攻撃範囲も破壊力も凄まじいモノがあるな。
少しだけ…本当に少しだけ、最高評議会が私となのはを危険視したのが分かる―――気がする。

だからと言って、アイツ等の所業を許してやる心算は毛頭ないがな。

と、見えた!!機動六課本部!!
ガジェットと戦闘機人に人造魔導師の姿も見える……だが、まだ本部には到着していないかのか…ギリギリで間に合った!
後はアイツ等を倒せば…



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!



「「「「「「「!?」」」」」」」


な、何だこの感じは?――何かが転送されてくる…其れは分かるんだが、この力は何処かで…




そうだ、此れは私となのは、そしてサイファーが持つのと同等の力――エクリプスの波動!!
最高評議会め…エクリプスの力すら戦力として取り込んだと言うのか…その中でドレだけサイファーの様な存在を作り出したんだお前達は!!

エクリプスドライバーが相手だと、些かやり辛いが…


「アバァァァァァァァァァァッァァァァァァァ!!!」



「どうやら…エクリプスに侵された者のなれの果てだったようだな…」

「でも、一歩間違えば私とルナとサイファーもあぁなっていたんだよね…」


そうだな…。


転送されてきたのは、エクリプスの実験台になった人間のなれの果て――エクリプス非適合者の末路だ。
理性を失い、エクリプスの持つ破壊衝動に飲まれ、そしてエクリプスの力が暴走して体細胞が暴走して理性無きモンスターへと変貌した姿。

左肩付近に見える顔の様な物がかつてはコイツの顔だったんだろうな。
だが、エクリプスの暴走で新たな頭部が形成され、嘗ての頭部は肩部へと追いやられたと言うところか…異様に肥大化した両腕も不気味だな。

「美由希達は先に行け…コイツは私となのはで相手をする。」

「エクリプスはエクリプスでしか倒せない…今のところはね…だから先に行って!
 大丈夫、私もルナも負けないから!だから、六課の壊滅を防いで!オリヴィエのクローンの子を護って!!」

「なのは、ルナ…了解!こっちは任せるから!!」


あぁ、任された!!



しかし、エクリプスの暴走体まで出してくるとは、本当に形振り構わずだな…此れが本気で暴れ出したら如何なるかなど分かるだろうに…
だが、それ以上に己の欲望の為に利用した者を戦力として使う等、断じて許せる事ではない…!


「ウガァァァァアッァ!!」

「辛かっただろうなお前も……だが安心しろ、直ぐに私となのはがお前を解放してやる…」

「彼方は頑張ったよ…だからもう、眠って良いんだよ…」



――ドスゥゥゥ!!!


「アバ?……ガァァァ
………?…あぁ……そうか…漸く俺は此れで……礼を言うぜ…ありがとよ……」


いや…良いさ――私達もお前と同じだからな…ただ、エクリプスが身体に馴染んだに過ぎん。
同類であるお前が、エクリプスに侵されて尚最高評議会に良い様に使われているのが忍びなかっただけだ……もう、安らかに眠ってくれ。


「そうさせてもらうぜ……」


――ジュゥゥゥ…


消えたか……まぁ、エクリプスドライバーと言えど許容を超えるダメージを受ければな。
最期の最期でお前が人の心を取り戻せて良かったよ――化け物のまま逝くのではあまりにも悲惨だからな。

「なのは…」

「うん、行こうルナ!これ以上、今の人みたいな存在を増やさないために!最高評議会の野望を砕くために!!」


あぁ、勿論だ!
1つ目の予言を現実とするわけにも行かないからな――向かってくる奴は纏めて叩きのめしてやろうじゃないか!!















だが、この時に一体誰が予想できただろうな――六課の壊滅は既に確定事項だったと言う事に…
そして、滅びの光を齎す兵器が、其の力を静かに…しかし確実に蓄えて居た事などは…

















 To Be Continued…