Side:ルナ
さてと…如何したものだろうな?
この寡黙な魔導師は、いっそ騎士と称した方が良い位にクロスレンジでの戦闘能力が高い。
其れこそクロスレンジに限定すれば、美由希や将に匹敵するレベルか或はそれ以上の可能性すらある。
……私の絶刀とデッドリーレイブを見切るなど、並の魔導師では絶対に不可能だからな。リベリオンズでも完全に見切れるのはなのはくらいだ。
だが、此れも前回の戦闘で分かった事だが、コイツはロングレンジはそれほど強くない。
となると、普通は間合いを離しての射撃・砲撃戦に持ち込むところだが――コイツにロングレンジからの射撃や砲撃を当てるのは至難の技だろう。
クロスレンジを得意とする者は得てして目が良い場合が多い。
そうなると、発射から着弾までの時間がある遠距離砲撃や射撃は当たらないと思った方が良いな…
だからと言って策がない訳ではないがな!
「絶刀とデッドリーレイブを見切ったのは見事だが…此れを見切れるか?」
順手で繰り出すよりも遥かに速い逆手の連続居合いを!
斬り抜いた後、一度構えなおさねば放てない順手の連続居合いとは違い、逆手の連続居合いは僅かな動きだけで次の一撃が放てる。
そのスピードは、順手連続居合いの3倍は下らないぞ!
――バババババババババババ
「!!……」
流石のお前でも距離を取るか?…だが、それこそが私の狙いだ――ブライト!!
『All right.Spirit Sword.』
――グン!!
「!!」
…巧く行ったか……離れた間合いから魔力刃を伸ばしての攻撃は、お前ほどの使い手でも完全に見切る事は出来なかったようだな…
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福98
『Violence Fighting』
だが、見切れなかったとは言え、とっさに身体をひねって直撃を避けるとは矢張り侮れん。
一体コイツはドレだけ高位の魔導師をベースとしているんだ?
管理外世界から無理やり連れてきたにしても、改造やら何やらだけで此処まで強くなるとは思えないのが正直なところだ。
ジェイルが言うにはレリックを体内に埋め込む事で能力を底上げしている『レリックウェポン』なる者が居るらしいが…
だが、それでも精々魔導師ランクの1.5段階上昇が限界だったはずだ。
個体差はあるが、仮にレリックと100%適合出来たところで、魔導師ランク2段階上昇が良い所だとも言っていたな。
だが、目の前のコイツは如何見ても魔導師ランクS+は堅い。
無論、元々高い資質を持っていた人物である可能性はあるが――正直言って、分からない事が多すぎるなコイツに関しては。
さて、しかし如何したモノか?
戦闘力に関して言えば私の方が上だし、月の祝福やトランザムを使えば誰にも負ける気はしない。
だが、コイツは兎に角『攻撃を直撃させない』事が恐ろしいまでに巧い……前回も、そして今回も決定打を与えられてはいないからな。
アイツの攻撃は私には通らないが、私の攻撃もアイツにクリーンヒットさせるのは難しい。
更に、互いにミドル〜ロングレンジの攻撃は決定打にならないと来れば削り合いの消耗戦――泥仕合は目に見えているが……
――ガキィィン!!
「考えるだけ無駄か…」
「……………」
相手に退く意思がないのならば戦いで制して大人しくさせるより他は無い。
まぁ、なのはの予想が本当であった場合、お前の命を奪うのは良くないしリンカーコアの破壊も憚られるが…コアにダメージを与える位なら平気か?
其れならば魔導の力を失う事もないし、数日すれば魔力も元に戻るし目も覚める。
洗脳の様な事がされているならば、眠っている間に解いてやれば良いしな――シャマルやドクターなら其れ位は簡単にできる筈だ。
「と言う訳で、取り敢えずリンカーコアを一時的に停止させてもらうぞ?」
「…………」
コアの停止だけならば、お前ほどの魔導師が相手でもそれほど難しい事ではないしな。
よし…月影を待機状態に。
前回と今回の戦闘で、コイツ相手には武器戦闘よりも無手の格闘の方が少しばかり有利に戦えることは良く分かったからね。
「ふ!!」
「……!!!」
一足飛びからの横蹴りは奇襲技としては優秀だが、モーションが大きい故に読まれやすいと言う弱点がある。
だが、バックステップで距離をとるのではなくした相手には身体を回転させての回し蹴りが突き刺さると知れ!
――ガキィィ!!
辛くも防いだか……矢張り攻撃を防ぐ技術に関しては一級品だな。
しかし其の防御技術をもってしても私は止まらないぞ?確かに派生の回し蹴りは防御されたが、人の足は2本あるんだ!
――バキィィ!!
軸足にしていた方での追撃だ……空中戦だから出来る事だが、此れは流石に見切れなかったか。
だが、それが私には好都合だ!攻撃が直撃したとなれば、一瞬とは言え動きが止まり大きな隙が出来る――其処を叩く!!
「パルマ・フィオキーナ!」
『Break.』
――バキィィン!!
く…蹴りの直撃を喰らっておきながら、直後の追撃を防ぐか普通?
尤も、今のでデバイスは破損したようだな?……戦闘は可能だろうが、此れで詰みだ!天戒縛鎖!!
「………!!」
「ふぅ…やっと捕らえたか…前言撤回、お前ほどの奴が相手ではリンカーコアを一時的に停止するのも思ったより楽じゃないな。
だが、此れで動く事は出来ないだろう?
言っておくが、そのバインドは幾ら力を入れた所で絶対に切れないからな?」
祝福状態+トランザムの私自身を実験台にして、その状態でも切れないように拘束力を強化してあるんだから。
さてと、少しばかり痛い思いをさせるがリンカーコアを停止するぞ?
衝撃で意識を失うだろうが、お前の身柄は管理局が確保・保護してくれるさ。
――ズ…
……え?ば、馬鹿な!リンカーコアがないだと?
いや、それよりもコイツのこの異常に低い体温は一体どういう事だ?
およそ生きている人間の体温とは思えん――これではまるで死んでいるようじゃないか…!!
「お前は一体…」
――シュゥゥゥ
「!!!」
んな!外部からの強制変装魔法で姿を変えていたのか!?
其れが私の攻撃で一時的に解けたと言う事だろうが、そんな事よりもお前は――!!
「――――――!!!!!」
――バガァァァァン!!!
ぬあ…ジャケットパージ!……逃げたか。
だが、今の顔は間違いない……アイツは、20年以上前に殉職している局員だった筈だ…名前は確か『リオン・アークヒール』…
前にジェイルが見せてくれた管理局のデータベースの『殉職者』リストにアイツが居たのを覚えているが、それなら異常に低い体温も納得だな。
暫し待っていろ…必ずお前の事は有るべき眠りにつかせてやるから。
……成程、あの予言の『死者は踊り』の真の意味はこういう事か……マッタク持って反吐が出る。
あぁ、最悪だよ最高評議会!!私となのはを殺そうとし、サイファーを苦しめ、更には死者を冒涜し、その眠りまで妨げるのか?…外道が!!
「んだよ逃げたのかアイツ?なっさけねぇなぁ?」
「言ってやるな……所詮は動く屍……至高の力を手に入れた私達とは雲泥の差がある…」
「…黙れ…!!」
――バシュゥ!!
「!!く、首が一瞬で!!て、テメェ!!」
「黙れと言ったのが聞こえなかったのか?」
余りふざけた事を言うなよ、人造魔導師風情が。
お前達も作られた命故、今まではリンカーコアの破壊に止めて来たが――其れも止めだ。
考えてみれば、お前達は最高評議会にとって都合の良い様に作られているんだったな……ならば下衆な考えもまた宿していて然りか。
私を取り囲んでいるのは全部で10人か?
…安く見られたものだな?お前達10人程度で、私を止められると思ってか?……身の程を教えてやろう。
尤も、知った先に有るのは『死』だがな……ブライト!!
『All right.Tran−S・A・M.』
「斬り捨てる……スピリットエクスカリバー!!」
――ズバシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
両断された事にすら気付かないだろうな……精々死者を愚弄した事を悔いると良いさ、お前達の下衆な考え方は万死に値する。
さて、次に月影の錆になりたい奴は誰だ?
悪いが今の私に峰打ち等を期待するなよ――立ち塞がる奴は容赦なく斬り捨てるからな。
死にたくなければ道を開けろ……逆に自殺願望があるなら掛かってこい、望みを叶えてやる…!
――――――
Side:サイファー
「消えろ雑魚が。」
――バガァァァァン
歯応えのない……此れはルナやなのはには敵にもならんだろうな。
無論私とてこの程度の相手に遅れは取らないが――如何せん数が多いな。
「ちぃ…紫電一閃!!」
あのピンク髪の公僕も数に手間取っているようだしな……ふ、助けてやるか。
消えろ鉄くずが!切り裂け、ソニックレイブ!!!
――バガァァァァン!!
「お前は?」
「なんだ、総司令とやらは何も話していないのか?お前達の協力者さ。」
「!!お前達が主はやての仰っていた協力組織か!…成程、援軍はありがたいが…やれるかこの数?」
「まぁ、行けるだろうよ……もう1匹増えたらきついかもしれんがな。」
「安心しろ、其の1体は私が倒してやる。」
「何だ、お前も戦うのか?休んでいても良いんだぞ?」
「其れでは騎士の面目も立たんのでな………行くぞ!!」
ふ、真面目な奴だ…流石は騎士を自負するだけはあるか。
……そう言えば名前を聞き忘れたな?まぁ、後でなのはかルナに聞けばいいか………取り敢えず落ちろくず鉄!!
お前等如きが何匹集まろうと敵にもならん、精々スカリエッティの発明品の材料にでもなってろ。
さてと……ん?
「く…!!」
「そんな、こんな数!!」
!!アレは人造魔導師共か!!
拙いな、あの子供達じゃ相手にするのはキツイ…と言うかたった2人の子供に9人の魔導師だと?……クソが。
仕方ない、助けてやるか……!
――ズバァァ!!
「「!?」」
「おい、クソ共…お前達の相手は私がしてやる……子供に手を出すような屑は纏めて葬ってやるからありがたく思え……」
…まぁ、そんなに怯えるな少年少女……少なくともお前達の敵ではない。
敵ではないがこの場からは今すぐ離脱した方が良い――無理ならば暫く目を閉じ耳を塞いでいろ。
此れから此処で起こる事は、お前達の様な子供が見て良いモノじゃないからな?
「「!!!」」
「理解したか?ならば即座に離脱しろ。
其れから少年、男の子ならば女の子の事はちゃんと守ってやれ……其れが出来ぬようでは『騎士』には成れんぞ?」
「は、はい!!」
よし、良い返事だ……っと、離脱する子供を追うな屑、お前の相手は私だと言っているだろうが。
――ボキィィ!!
「ミギャァァァアッァァァァァァァァァ!!!!」
「腕が折れたくらいで喚くな、みっともない……骨折程度は治癒魔法で簡単に治す事が出来るだろうが。」
「其れにエリオとキャロを殺す心算満々やったくせに、自分がやられたら其れか?呆れてモノが言えへんなぁ?
よ〜〜〜く、覚えとき……人の命奪うなら、奪われる覚悟もしておくもんやってな…!!」
此れはまた…六課の総司令様の御登場か。
ルナやなのはには劣るが、相当に場数を踏んでいるな…
「アンタがサイファーちゃんやな?なのはちゃんから聞いとるで。
もう知ってるやろうけど、機動六課の総司令『八神はやて』や……今回は協力感謝するで。」
「礼ならなのはに言え、協力を決めたのはアイツだ――と言うか、お前出て来れたのか。」
崩壊した瓦礫に閉じ込められていると思ったが…
「フォワードの皆が頑張ってくれたからなぁ?…おかげで隊長陣は皆戦闘に参加や。」
「成程、ひよっこだった新人も成長していると言う事か。」
思ったよりも層が厚いじゃないか機動六課……だが、如何する心算だ総司令?
コイツ等はドレだけ倒しても無限に湧いて来るから、倒しても倒してもキリがないぞ?
「そこは気合いや!」
「無茶苦茶だなオイ…」
まあ、そっちの方が面倒くさくないがな私的には。
それにしても、地上本部とやらを攻めるだけにしては、些か戦力過剰じゃないか最高評議会よ?
それほどまでに此処を落としたいのか?……其れにしては戦力の質が低い様に感じるんだがな……だから消えろくず鉄。
どうにもこの襲撃には『陽動』みたいな感じを受ける――言うなれば『本命にして陽動』と言う感じか?……私の気のせいであればいいんだがな…
――――――
Side:ノーヴェ
ったく、最悪だ……まさか爆破テロとか有り得ねえだろ!
雷華副隊長の話だと、レジアス中将を暗殺しようとしたバカも居るって事だしよぉ…
まぁ、隊長達にデバイスを渡せたのは良かった……と思ったら今度はギンガと連絡が取れねぇ。
星奈さんとティアナには外に向かってもらって、ギンガの方にはアタシとスバル、ディエチとウェンディで向かってるんだが…胸騒ぎがする。
頼む、無事で居てくれギンガ!!
――バガァァァン!!!
「「「!!!」」」
「此処が行き止まりの部屋か……おい、テメェ等戦闘機人だよな?…こんな所で何を…「あーーーーーー!!!!!!」…!?」
いきなり大声出すなよウェンディ!!如何した?
「如何したもこうしたもないっすよ!!アイツ等が持ってるあれって!!」
「あん?……………え?」
「う、嘘…だよね…?」
「…………!!」
髪の長い戦闘機人が何かに詰め込もうとしてるのは…ギンガ?
…間違いようもねぇ…胸から下が吹き飛んでるけど、あの特徴的な青紫のロングヘアーはギンガ以外にはありえねぇ!
コイツ等、まさかギンガを!!
「……テメェ等……ギンガに何しやがった!!!!」
「ギンガは私等のお姉ちゃんッス!事と次第によっちゃブッ飛ばすッスよ?」
「「………」」
「任務なのでな…悪く思うな。」
眼帯娘……成程ね、任務か…そうだな、任務なら仕方ないな――――何て言うと思ってんのかこら!!!
「返せよ…」
「スバル…あぁ、そうだな……返せよこの野郎…!!ギンガを!!」
「ギン姉を!!」
「「返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
――バガァァン!!!
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
アタシ等の姉のギンガに手を出した罪は重いぜ戦闘機人…
テメェ等は1体たりとも生かしちゃおかねえ……全員纏めて木端微塵にしてやる!!
To Be Continued… 
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