Side:ルナ


こうして街を歩くなど何年ぶりだろうな?
機動六課の休日に合わせて、私達も街に繰り出したわけだが――えらく久しぶりな感じがするな。


「あの雪の日からだから8年ぶりよ――懐かしい感じがしても仕方ないんじゃない?」

「そんなにか…確かにそれじゃあ仕方ないな。」

で、全員が纏まって行動すると目立つと言う事で、クジで組み合わせを決めて、私はドゥーエと一緒だ。
気心が知れた相手だから、こうして一緒に街を回るのも悪くないんだが――気になるのはなのはの方だな。
何の因果か、あるいは神様とやらの嫌がらせか、クアットロが一緒だと言うのに一抹の不安が……まぁ、サイファーも一緒だから多分大丈夫だと思うが…


「あのバカの場合、直接的に何かしなくても、この日常の中から自作本のネタ拾いそうな感じがするのよね…」

「否定できないな其れは…と言うかまだ作ってたのか!?」

「『今年の冬は此れでがっぽりですわ〜〜』とかほざいてたな――…諦めろ、アイツはもう戻ってこれないところまで行ってしまったんだ。
 お前となのはには辛いだろうが、一応見た目と名前は(微妙に)変えてあるから許してやってくれ…」


其処までなのかクアットロよ……バックスとしては頼りになるが、人としては色々終わってるんだなお前は…
だが、なのはに手を出してみろ?……跡形もなく滅殺してやるからな…


「まぁ、多分大丈夫よ。
 ナノハはクアットロより強いし、サイファーも一緒だから。
 クアットロだって自分の命が消し飛ぶかもしれない状況下でアレな事はしないわよ――多分、きっと、メイビー…」

「断言は出来ないんだな、悲しいが…」

ふぅ、まぁ向こうはなのはとサイファーで何とかしてもらうしかないか。
取り敢えず、久しぶりの街の雑踏を堪能するとしようか。











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福91
『まったりとした休日を〜』










Side:なのは


「サイファーちゃん、出来れば逆側に回ってほしんだけど…」

「断る。私が壁にならねば、お前はなのはに襲い掛かるだろう?
 いや、襲い掛かる筈だ。ルナが居ない状況で、お前がなのはを見過ごすはずがない――私は最終防衛ラインだ。」


あはは…久しぶりに街に出たわけだけど――やっぱりクアットロさんは油断できないね。
サイファーが間に入ってくれなかったら、街中でも特攻してきたかも――そんな事したらバスターで返り討ちだけどね?

ん〜〜…嫌いじゃないけど、私やルナにイキナリ抱き付こうとするのはだめだよクアットロ?


「はうぅ!!予期せずカウンターの呼び捨て……あぁ、堪りませんわ〜〜〜〜…」(パンッ)


あ〜〜…鼻血噴出しちゃった。
いっつも思うんだけど、この出血量って普通の人間だったら失血死するレベルだよね?


「戦闘機人だから関係ないんだろ。
 アホな腐女子は放っておいて、どこに行くなのは?せっかくの休日なんだ、楽しまないと損だろう?」

「其れはそうだね――ん〜〜〜…其れじゃあ取り敢えずデパートに行こうか?」

そこでサイファーに似合いそうな服を選んであげる。
サイファーも女の子なんだから、もっとこう…お洒落しなくちゃダメだよ?


「そうなのか?…じゃあ、コーディネートは任せようか?お前のセンスなら外れはないだろうからな。」

「うん、任せて♪」

久しぶりの――8年ぶりの街でのショッピングなんだもん、まずは楽しまなきゃ♪



其れとは別に、此れをはやてちゃんに渡さなきゃならないんだけどね。








――――――








Side:冥沙


ふぅ、激務続きの六課でも偶には休みが取れるか。
我等とフォワードが同時に休みになるとは、小鴉め適当に手を回したな?――まぁ、構わんが。


さて、如何過ごしたモノか?
雷華とゆうりは2人で出かけてしまったし、星奈の奴はナカジマ家の赤毛と栗毛と出掛けてしまったな?
ヴォルケンリッター達も適当に外出しておるし、青髪は紅髪とティアナとで、エリオはキャロとか――むぅ、何やら予定を立てておけばよかったかの?


退屈な1日を過ごすのは勿体ない――何かないか?


「入るで王様〜〜♪」

「小鴉?」

如何した?
今日は貴様も非番であろうが?親しい者を誘って出かける事はせぬのか?


「勿論するで?やから来たんや――王様、特に予定がないんやったら私と出掛けへん?
 適当にウィンドウショッピングするのがメインになりそうやけど、其れも1人より2人の方が楽しめるやろ?」

「むぅ……一理あるな。」

ウィンドウショッピングか…確かに悪くない。
良いだろう小鴉、其れに付き合ってやる――が、我にも仕度がある、5分で身支度を整える故、表で待っておれ。


「ん、了解や王様♪」


さて、何を着て行くか……とりあえず落ち着いたカラーリングでまとめてみるか。
して小鴉よ、お前は其処で何をしている?我は着替えねばならん、表で待っておらぬか。


「え?別にえぇやん、女同士やし〜〜…照れることないやろ?」

「アホか戯けが!!!同性だから良いと言うものではないわこの大虚け!!
 それとも何か?其れはボケか!?突っ込み待ちなら特大級の突っ込み――エクスカリバーかジャガーノートの直撃をくれてやるから其処に直れ!!」

「いやん、冗談やん王様〜〜…ま、大人しく外で待っとるからそんなに青筋立てんといて〜〜♪」


貴様の冗談は冗談に聞こえぬ上に疲れるのだ!!


ふぅ…悪い奴ではないし、嫌いではないが如何にもあの関西のノリには付いていけぬ。


「あ、そや王様、出掛けるのはオーリスさんも一緒やからね〜〜?」

「メガネも?まぁ、総司令殿が秘書官同伴で出掛けてもおかしくはないがの――うむ、分かった。」

ふむ、これを機会に奴とも友人関係を築くと言うのも悪くないかもしれん。








――――――








Side:星奈


「しっかし、10年経っても相変わらず猫に好かれるんですね星奈さんて。」

「頭と両肩と…暑くないんですか…?」


いえ、マッタク。
まぁ、此れは慣れです――私のベッドには毎晩ナゴとなはとが潜り込んできますので、この程度のモフモフでの暑さなどは一切。


「いや、それ以前に何でその状態で動けるのかの方が謎なんですけど、アタシ的には…」

「其れも慣れです。
 如何に私でも、初めてすずか――私の友達の家に行ったときは、其処の家の猫全てに纏わり付かれて身動きが取れなくなりましたからね。」

ですが、あれから10年が経って身体も成長した今では此れ位なら何という事はありません。
其れに猫達も嬉しそうだから良いじゃないですか?

「其れにナゴを入れてまだ5匹ですから。」

「纏わりついているのは5匹でも、後ろにうじゃうじゃと列を成してんですけどね……どこぞの笛吹みたいになってますよ?


…何時の間に?
まぁ、居ても邪魔になるものでもありませんし別に良いでしょう。

しかし、偶にはこの様にゆっくりと過ごすと言うのも良いものですね。
普段が割かし忙しので、良い息抜きになりますし――隊員と親睦を深めると言うのも有意義なものですからね。

「其れに、ノーヴェは何時もあの『脳内お花畑コンビ』と一緒ですから、疲れるでしょう?精神的に。」

「スッゲー疲れます。2人とも嫌いじゃねぇけど常時あのノリだとマジで来ます…訓練後の疲れてる時には特に。」


矢張りそうでしたか。
ふふ、ディエチの相談に乗ったのは正解だったようです。

さて、少し小腹が空きましたね――あぁ丁度良い所に出てくれていますね。
如何です、たこ焼きでも食べませんか?
以前に食べた事があるのですが、あそこに出ている屋台のたこ焼きは絶品です、一度は食しておくべきでしょう。


「たこ焼き…良いですね〜!」

「いい匂い…美味しそう。」

「実際とても美味しいですよ?
 ふむ……こんな機会は滅多にないので、2人の分も私が奢りましょう。」

「えぇ!?流石にそれは悪いですよ!!」

「自分の分くらいは…」


いえ、此処は上司として格好つけさせてください。
普段だとミユキや冥沙が払ってしまうので、中々自分で払うと言う事がないですし、可愛い教え子に奢ってあげるのもまた一興。

あ、でもスバルとウェンディには内緒にしてくださいね?


「あ〜〜〜…了解。」

「知ったら2人ともごねそうだからね。」


そう言う事です。
では、お勧めのたこ焼きを堪能していただくとしましょう。








――――――








Side:ゆうり


「えっとね…本日のおすすめセットが1つ、其れがゆうりで、僕はメニューのここからここまでで。」

「いぃ!?か、畏まりました!!」


そんなに食べるんですか雷華?
大丈夫ですか?


「ん?だいじょーぶだよ、僕だし。
 それにすばるとぎんがに比べればマダマダ――あの2人は管理局の食堂メニューを3周したからね。」

「そう言えばそんなことありましたね…」

ところで、よくこんなお店知っていましたね〜〜…ちょっと意外です。


「うん、てぃあなに教えてもらったんだ〜〜『美味しいご飯の店がある』ってさ。
 で、折角のお休みだからゆうりと一緒にとおもって。
 星奈んはノーヴェとディエチと出掛けるって言ったし、王様は小鴉ちんが誘うって言ったからね〜〜、ミユキもまりーと出掛けるみたいだし。」

「みんな思い思いに過ごしてるんですよねぇ〜〜。」

偶にしかないお休みですから、楽しまなきゃ損ですから。
それにしても、ティアナのお勧めだったんですか〜〜、帰ったらお礼言わなきゃですね♪


「そうだね〜〜。」

「失礼します、本日のおすすめセットになります。それから、カツカレーとスパイシーポテトグラタンになります。
 他のご注文は出来上がり次第、順次お持ちしますので…」

「うん、其れで良いよ〜〜」


来ましたね〜〜…此れは確かに美味しそうです。
って、雷華!?


「も?」

「速攻でハムスターですか!?少し落ち着いて食べてください!!」

「まっふぇおなかふぇこふぇこらったんらもん(だってお腹ペコペコだったんだもん)。」


口にモノを入れたまましゃべるのはだめです〜〜!行儀が悪いです〜〜!!


「(ごっくん)だって、お腹ペコペコだったんだもん!」

「ちゃんと噛んで食べて〜〜〜!」








――――――








Side:美由希


ん〜〜〜、黒だとちょっと…マリーには落ち着いたカラーが似合うと思うんだけどなぁ?
こっちのダークブラウンが良いかなぁ?


「あの、美由希さん?私はあまり服には…」

「興味ないのは分かってるけど、マリーも女性なんだから外出用のオシャレ着くらいは持ってた方が良いって。
 それに、マリーは『知的系美人』なんだから、其れを引き出さなきゃ勿体ないわよ?」

「わ、私って美人なんですか!?」


それはもう。
私も『メガネ美女』って呼ばれた事はあるけど、マリーには負けるかも。


「そ、そんな事ないですよ〜〜。
 美由希さんだって十分美人です!知らないかもしれないですけど、美由希さんのファンは多いんですよ?
 美由希さんとシグナムさんで『六課の美人剣豪コンビ』だそうです。」

「また、妙な呼ばれ方してるわね…」

まあ、悪い気はしないけど。
っと、ごめん通信。

え〜っと…エリオ君とキャロちゃん?
もしもし〜〜如何したの2人とも?


『あ、ミユキさん…あの、キャロと街を歩いてたんですが――その、ミッドの中央公園に地下通路と繋がってる噴水ありますよね?』

「うん、確かにあるけど…其れが如何かした?」

『そこで、女の子を保護したんです――5〜6歳くらいの。』


………はい?
女の子を保護したですって?それも、幼稚園生くらいの!?
何でそんな所に……その子は無事なの?


『無事…とはちょっと…六課の救護の方に連絡は入れたんですけど――妙なんです。
 衰弱はしてるけど外傷は見られないんです
――其れと、これが一番大きいんですけど…この子は、レリックを引き摺ってたんです。
 箱に入ったレリックを、腕に巻き付けられた鎖で…!』


「何ですって!?」

レリックを…それも腕に鎖が巻き付けられてって…!
如何考えても普通じゃないけど…

「分かったわ、取り敢えずその子は救護班に渡して。他の皆には私から連絡を入れておくから。」

『お願いします。』


のんびりまったりとは行かないんだなぁやっぱり。
此れは休日返上だわ。
悪いけどマリー続きは今度の機会に――


――ズ…



!!!
この気配は……ガジェット!!


「美由希さん、簡易レーダーにガジェットの反応が!!」

「うん、分かってる!!」

どうやら本気で休日返上みたいね此れは…!!








――――――








Side:なのは


まぁ、平穏無事に何もないとは思わなかったけどね。
けど何で今なのかなぁ?折角、久々の街を堪能してたのに……全機スクラップにしてあげないと気が済まないかな此れは…

「クアットロさんはバックアップに!サイファーは私と一緒に迎撃に!!」

「了解ですわ、お姉さま!」

「ふ、任せておけ――10分以内で片付ける!」


そうだね…速攻で終わらせよう!


ん?そう言えば、ガジェットの出現は六課も知ってるよね?



…此れはある意味で好都合かな?
六課が出てくれば、休暇中のはやてちゃんだって戦いの場に姿を現すはず――そうなれば、此れを渡す事が出来る。

そう考えれば此れは好機かな?
私達と六課の皆なら、ガジェットは敵じゃないから、はやてちゃんさえ見つければ後は今夜に…


けど、先ずは迎撃だね。
ルナとドゥーエさんも迎撃に出てるだろうし――取り敢えず、派手に暴れようかな…!!

意志なき無人機械兵器よ…相手になってあげるよ――星光の殲滅者がね…!
















 To Be Continued…