Side:ルナ
98…99…100!
よし、懸垂100回終わり。
幾ら強い力を持っていると言っても、結局のところモノを言うのは日々の鍛錬だ。
毎日のトレーニングを欠かす事は出来ないな。
「毎日精が出ますわね、ルナお姉さま〜〜。はい、スポーツドリンクとタオルです。」
「あぁ、ありがとうクアットロ。いつもすまないな。」
「いえいえ此れ位は〜〜。それに、額に汗の粒を光らせているルナお姉さまもものすごくセクシーですし〜〜…
何て言うか普段とは違った色香って言うか、そう言うのが感じられて…もう辛抱たまりませんわ〜〜!」
「落ち着け腐女子!」
――メキィィ!!
「ぶへ!」
一体どうなってるんだお前の脳味噌は!?
運動後に必要な物を持って来てくれるのはありがたいが、お前の欲望を満たすために私を見るな!
「なのはお姉さまなら良いですか?」
「尚の事ダメに決まっているだろうが!!」
あんまりふざけた事抜かしていると、喰らわせるぞ――闇慟哭。
「其れは勘弁〜〜……と、悪ふざけは此処までにして――お姉さま、ドクターが呼んでますわ。
ウーノ姉さまとドゥーエ姉さま、なのはお姉さまとサイファーちゃんも、ラボのメインルームに集まってますわ。」
「…お前、其れを先に言え。」
悪ふざけをしてる場合じゃないじゃないか。
ドクターが私達を呼ぶと言う事は、何か重大な事があったな?――一体、何があったと言うんだろうか…?
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福90
『予言が導くその先は…』
「やぁ、来たねルナ君。」
「スマナイ、クアットロが悪ふざけをしていたせいで、待たせてしまったな。」
それで、ドクター・ジェイル、一体何があったんだ?
態々私達を集めるなど、よほど重要な事があったんだろう?……最高評議会の連中が、新たに何かをしでかしたのか?
「いや、其れとは違う――全く無関係とも言えないんだがね。
聖王教会は知っているね?そこの予言騎士様が、如何ともしがたい予言を出してくれたので、君達にも伝えておこうと思ってね。」
聖王教会の……って待て、そこの予言騎士の予言などどうやって手に入れた!?
簡単に手に入る物ではないと思うが――……若しかしてハッキングしたのか?
「ご名答です。
ドクターと私とクアットロの前には、大概のセキュリティは意味を成しませんよ。」
「今更だが、裏方メンバーもチートキャラクターが勢揃いだな。」
「本当だよね…」
サイファーになのは……確かにそうだな――本当に今更だが。
それで、一体どんな予言が出たんだ?
「今モニターに出しますわ。」
『旧い結晶と無限の欲望が交わる地、死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る。
死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる。』
「此れは…確かに如何ともしがたい予言だな…」
「だが、如何言う意味なんだ?まるで理解できないが…」
如何とでも取れる予言文だが、『古い結晶』は何らかのロストロギアで、『無限の欲望』は最高評議会の事だろうな。
『死者達は踊り』――此れは評議会が手駒としている人造魔導師で、そのあとの一文は管理局の崩壊と見て間違いないだろう。
「ふむ、見事な観察眼だよルナ君。
私の見解も大体同じなんだが――不明なのは『死せる王』と『彼の翼が蘇る』と言う一文だ。
強大な力が目覚めると言う事を示唆しているのだろうが、如何せん其れが分からなくてね…」
確かにこの一文だけは謎だな…何を言わんとしているのか…
「『死せる王』は聖王、『彼の翼』は最強最悪の兵器――『ゆりかご』だよ。」
「「「なのは?」」」
「なのは君?」
「なのはお姉さま?」
聖王にゆりかごだと?なぜそうなるんだ?
「私の中のオリヴィエの記憶が教えてくれた――役目を終えたゆりかごは、地下深くに封印されたんだよ。
それも、ゆりかごの適合検査の時に採取されたオリヴィエの血液サンプルと共にね。」
「なんだと!?」
そんな事が…!!いや、だがそうなるとまさか――連中は、最高評議会は封印されたゆりかごを…!!
「多分見つけたんだと思う。
其れで作る心算なんだよ、残されていたオリヴィエの血液サンプルから『聖王のクローン』を。」
「何処までも反吐が出る糞だな最高評議会は。
なのはとルナのクローンを作っていたと言うだけでも万死に値するが――なのはの前世であるオリヴィエまでコピーする心算か?
更には、最悪の兵器の起動だと?……何処までもふざけた連中だ、この世界を滅ぼす気か?」
或は己の邪魔になる者を一掃する心算かもしれないな――何にせよ見過ごせる事態ではないさ。
本音を言うなら、起動する前に連中を完全に叩きたいところだが、本拠地が不明ではそれも難しいか…
まぁいい、起動してしまったらしてしまったで、其れを落とすだけの事だ。
…それで?予言は他にも出たんだろう?
「その通り――或はこちらの方が君となのは君には重要かもしれないね。」
「ほう?―――此れはまた…」
「確かにこっちの方が私とルナには重要だね。」
『星と月の力は強大なれど、星と月は其の力を世界の為に揮わんとする。
されど法の番人の闇は其の力を恐れ、星と月を砕かんと謀略を巡らすだろう。
しかし、星と月は傷つけど砕かれる事ならず。
法の番人の闇を知る時、星と月は地獄よりの使者と化す。
なれど、法の番人其の事実に気付く事はあらず。
滅びか救いか……どちらの道に進むかは夜天の主によってのみ決定される…』
全くだ。
前半部分は、8年前の私となのはが襲撃されたアレの事だろうな。
そして、最高評議会への反逆に違法施設の撃滅。
最後は――
「近い内に、私とはやてちゃんは直接会うことになる。
その時のはやてちゃんの選択如何では――今は協力関係にあっても、六課とも敵対することになりかねない…」
「そう…考えるのが妥当だろうな。」
今の私達の真実を知って、はやて嬢が如何なる決断を下すのか…其れが全てだろうな。
ジェイル、この予言は管理局も知っているんだろう?
「勿論知っているさ。管理局の――と言うか陸と六課のデータバンクにも同じものがあったからね。
尤も、聖王教会の予言騎士様は君達の事を示唆する予言については見せなかった可能性がある。
聖王教会のデータバンクで、その予言は1枚目よりも更に厳重にセキュリティが掛けられていたからね。」
「そうなんですか…あれ?でもそれじゃあ何で2枚目の予言が管理局のデータバンクにあるんだろう?
ジェイルさんが厳重って言うくらいのセキュリティを突破出来る程の人は管理局には居ないと思ったけど…」
「はやて嬢とアインスがやったんじゃないか?」
夜天の魔導書の基本能力である『魔道蒐集』はアインスに受け継がれているはずだ。
其れとはやて嬢のレアスキル『蒐集行使』を使えば此れ位は出来るだろう。
アインスが予言騎士の能力をコピーして、其れをはやて嬢が使って隠された予言を引っ張り出した――そんな所だろうな。
「夜天の主従も、お前達に負けず劣らずチートコンビだな。」
「夜天の魔導書は存在自体がチートと言っても過言ではないからな。」
元々は其れの融合騎だった私が言う事でもないが。
さて、それで如何する?
はやて嬢と近い内に会う事になる、其れは良いが――そうなった場合は誰が会うんだ?
流石に私達全員でと言う訳じゃないだろう?
「私が1人で行くよ。尤もその前に、はやてちゃんを何処かに呼び出す必要があるけれどね…はやてちゃん1人を。」
なのは…確かにそれが良いかもしれないな。
白夜の主と夜天の主が直接と言うのが一番だろうな……取り巻きも居ないほうが良いだろう。
仮に将が彼女の護衛で付いてきたら、間違いなく話の前に一悶着ある…絶対ある!
「『今まで何をしていた―!!』って斬りかかって来るかも…」
「容易に想像が出来る上に、完全に有り得ないと否定できないのが悲しいところだな…」
其れを避ける意味でも一対一の会談がベストか。
うん、その件はなのはに任せる。皆も其れで良いだろう?
「任せて。ちゃんと巧くやって来るから。…でもどうやってはやてちゃんを呼び出そうか?」
問題は其れだなぁ…六課に直接アクセスと言うのも問題だろうしな?
「数日後に、六課の隊長陣とフォワード陣がまとめて休日を取るらしい、その時に会ってみてはどうかね?
その時は『星光の殲滅者』として会って、会談場所だけを伝えると言うのは。」
「…良いですね、其れで行きます!って、何でジェイルさんが六課の予定知ってるんですか!?」
「ハッキングした。」
……コイツの前にはプライベートとかは意味ない物となりそうだな。
まぁ、予定程度ならいいだろうが、詳細な個人データを吸い出したりするなよ?
「流石にそれはしないさ…個人データなどに興味もないしね。」
「ならば良いが…」
取り敢えずは、なのはとはやて嬢の会談の結果次第か――私達が救いの担い手となるか、破滅の使者となるかはな。
――――――
Side:雷華
「で、如何したのさ小鴉ちん、僕達集めてさ。」
てかブシドーとかふぉわーどの皆はまだ来てないの?
「シグナムやフォワードの子達は呼んでへんよ……呼んだのは『高町家』の皆だけや。」
「我等だけだと?」
「私達にしか話せない事でも?」
「まぁ、端的に言ってそういう事やな――取り敢えず先ずはこれ見てや。カリムが出した予言や。」
よげん?
『旧い結晶と無限の欲望が交わる地、死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る。
死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる。』
ん〜〜〜良く分からないな〜〜?
な〜〜んか嫌な予感がするな〜〜ってのは分かるけどさ〜〜?
ミユキや王様は分かる?
「うむ…前半部分は全く意味不明だが――後半部分は間違いなく管理局が崩壊すると言う事を示唆しているの。」
「もっと分かりやすく言うなら、その中でも陸と六課が壊滅状態になるとみて間違いないと思うよ。」
えぇ!?そうなの!?そんなの大変じゃん!!
「せや…やけど、其れが未来に起こると言う事が分かってれば、ある程度此方で対処して被害を最小限に食い止める事は難しない。
問題はもう1枚の方や…寧ろこっちが王様達だけを呼んだ本当の理由やな。」
「こっちが?」
「見てみ?中々おもろいで……カリムが隠そうとしたんが頷けるくらいにはな。」
「ふむ……………」
どれどれ………うそ、此れって…!!
『星と月の力は強大なれど、星と月は其の力を世界の為に揮わんとする。
されど法の番人の闇は其の力を恐れ、星と月を砕かんと謀略を巡らすだろう。
しかし、星と月は傷つけど砕かれる事ならず。
法の番人の闇を知る時、星と月は地獄よりの使者と化す。
なれど、法の番人其の事実に気付く事はあらず。
滅びか救いか……どちらの道に進むかは夜天の主によってのみ決定される…』
「小鴉…此れは…」
「小鴉ちんの選択によってはナノハとルナが敵になって大変て事だよね!?」
「噛み砕きすぎですが、最後の一文はそうとるのが妥当でしょうね。
星はなのは、月はルナ――通じて『星光の殲滅者』と『月の襲撃者』の事でしょう。
この間の、ホテルアグスタでの戦闘の際に『もしや』と思いましたが、この予言のおかげで予感が確信に変わりました。」
星奈ん…そっか、しゅてるはナノハですれいやーはルナだったのか〜…
ん〜〜…よしわかった!それじゃあ小鴉ちんよろしく!!
「えぇ!?待ってください雷華!そんなに簡単に言っていいんですか!?」
「ゆうり…だって考えてみなよ、この予言だと小鴉ちんの選択が全部決めるんだよ?
そりゃ、僕だってナノハとルナに会いたいけど……僕達が変に手出しして、2人が敵になったら嫌だもん。」
だから僕は小鴉ちんに任せる。
それにさ、ナノハは白夜の主で、小鴉ちんは夜天の主でしょ?
此処は2人きりで会うべきだと思うんだ?つまりあれだよ『とっぷかいだん』てやつ!
「うむ…まぁ、其れが良いであろうが――小鴉、予言騎士が隠した物を、貴様どうやって手に入れた?」
「其れはあれや、私とアインスの能力を使ってちょちょいとな〜〜。」
小鴉ちんとクロハネの…『まど―しゅーしゅー』と『しゅーしゅこーし』だっけ?
それでかりむの予言能力をこぴーしたんだ〜〜?すごいぞ小鴉ちん!!ぱちぱちぱち〜〜♪
「まぁ、あんまり乱用しちゃだめだよ?」
「分こてるよ美由希さん…やけど今回は使って正解やったと思てる。
もし使わんかったら何も分からないまま、なのはちゃんとルナさんの2人と二度と会えないままになってたかも知れへんしね。
恐らくと言うか、略間違いなく私がなのはちゃん達と会うときには、向こうからアプローチ掛けて来る筈や。
何時何処で其れが来るかは、正直分からへんけど――私は絶対に間違えないで?親友と敵対するなんてまっぴらゴメンや。」
其れは僕達だって同じさ!
ナノハとルナが敵になるなんて絶対に嫌だ!……だからさ、お願いするよ小鴉ちん!
ナノハとルナを、僕達と戦わせないで!
「大丈夫や雷華ちゃん…なのはちゃん達を『滅び』にはさせへんから!夜天の主の名に誓って、約束する!
雷華ちゃん達だけを呼んだんはな…この予言見せて、そんでその上で私に全て任せてほしかったからや。」
「よかろう!貴様に全てを一任するぞ小鴉!我等が盟主達の事は任せた!
雷華には確認する必要もなかろうが―――貴様等も其れで良いな、ゆうり、星奈、ミユキ!」
「「「勿論!」」」
うん、いろんなんてないよね。
小鴉ちんならきっと何とかしてくれる……8年ぶりにやっと会えるのかな?うん、楽しみになってきた♪
――――――
Side:キスティ
「首尾はどうだ?」
「上々よ…予定通り『アレ』も地下水路に放したわ――六課に保護されるようにね。」
「そうか…ならば良い。
一度保護させたうえで奪い、そして『鍵』とする事で奴等には多大な苦痛を味わわせる事が出来るからな。
いずれにせよ、アレが我等の切り札となるからな…巧くやってくれ。ではな。」
…回りくどいモノね、今すぐ鍵として起動させればそれだけで終わるって言うのに。
演出を考え過ぎよ、下らない。
…そろそろ潮時かしら?
アノ脳味噌達の言う事を聞くのもいい加減飽きてきたし、戦闘機人は既に私に従うように改変済みだしね…
うふふ、いっそのことあの脳味噌どもを殺してやるのも悪くないわね?
その上で私が鍵を起動して『アレ』を使って世界を焼き尽くして支配する――楽しそうだわ。
でも、焦るのは良くないわね。
戦闘機人に、私に宿るエクリプス――そして歴史にその名を残す最強兵器。
此れだけの力が揃えば、恐れる物はないもないわ。
うふふ…もう少しだけはあの脳味噌共に従順で居てあげましょうか……どうせ最終的には私か六課に消される運命なのだから。
精々訪れる事のない、己の欲望の未来でも夢想しているがいいわ。
真に不死の力を手に入れて世界を手中に収めるのはお前達じゃないわ。
そう、エクリプスの力で進化した人類となったこの私こそが、その権利の行使に相応しいのよ。
この私『キスティ・テルミット・アルマシー』こそがね!
To Be Continued… 
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