Side:ノーヴェ


「な〜に緊張してんだティアナ?見てるこっちの方が肩凝りそうなくらいガッチガチになってるぞ?」

「ノーヴェ…アンタねぇ、緊張もするわよ!
 今日の訓練て、陸のお偉いさんが視察に来るんでしょ?みっともないところ見せられないじゃない!」


あぁ、そういえばそんな事言ってたな。
けどよ、緊張してたら逆に良い結果なんて出る筈ないんじゃねぇのか?取り敢えず肩肘張り過ぎだぞお前。

アタシの姉貴を見てみろ。


「陸のお偉いさんか〜〜、楽しみだねギン姉♪」

「えぇ、とても楽しみね♪」


アレを見たら、緊張してるのが馬鹿臭く思えてこねぇか?
序でに、あそこにウェンディ加えたら『緊張?何それ美味しいの?』ってな具合の空気が完成だぞ?


「言われてみれば…緊張してたのがアホらしく思えてくるわね。」

「だろ?だから無駄に緊張すんなよ。
 それに、スバルと新しいコンビネーション考えてたんだろ?
 今日はアタシとスバルとお前のチームで、星奈さんとの模擬戦だ――勝てないまでも一発かましてやろうぜ?」

「ノーヴェ…そうね、その方法を考える方が緊張するよりずっと意味があるわ。」


そう言うこった!
さてと…今日こそ決定打喰らわせてやるぜ、星奈さん!!!











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福89
『とある六課の超模擬戦』










Side:冥沙


ふむ、機動六課の訓練を視察するとは聞いていたが、貴様が直々に訪れるとは思っていなかったぞヒゲ。
てっきり陸の幹部を寄越すかと思っていたのだがな?


「己の目的を託した部隊の訓練が如何なるものかは、ワシ自身の目で確かめねば意味がないだろう?
 まぁ、もちろん陸の次代を担う者も連れてきてはいるがな?」

「其れがそやつか…」

オーリス・ゲイズ…ヒゲの娘であったな。
確か陸でも屈指の、優秀な人材であったはずだが――其れをこの場に連れてくるとは、相当に本気であるな?――そうでなければ困るが。

「ふむ…まぁ取り敢えず挨拶は大事だな?
 我は高町冥沙、機動六課の副司令を務めている者だ――総司令の小鴉は所用で出かけている故、今日は我が対応させてもらう。」

「オーリス・ゲイズです。
 本日の視察は、実はとても楽しみにしていました…父が希望を託した部隊が如何なるものかを自分の目で見れる機会でしたので。」


ほう?
ならば篤と見て行くが良い。

次代を担い、管理局を再生しようとしている我ら機動六課の精鋭と、選び抜かれたフォワード達のその実力と言うものをな!


「うむ、楽しみにしておるよ。」

「お手並み拝見…と行かせていただきますね。」


うむ!

しかしだ…フォワードがノーヴェ、スバル、ティアナの3人で相手が星奈――訓練施設が吹っ飛ばなければいいのだがな…
まぁ、吹き飛んだとて此れもまた必要経費で修理代を落とせる故に問題はないか?

まぁ、我ら六課の実力と言うものをこやつ等に見せてやるが良い!








――――――








Side:星奈


「「「よろしくお願いします!!」」」

「日々の鍛錬の成果、見せていただきますよ?」

ふふふ、良い気迫ですね?此れは模擬戦とは言え、心滾る良き戦いが期待できそうです。
スタートのポジショニングも素晴らしい。

トップにノーヴェ、其れからやや下がった位置にスバル。
この2人を前衛に、ティアナはバックスを担当――しながらも状況次第でミドルレンジよりも中に入れる距離を取りますか…

では、その陣形の力、見せて頂きましょう。


『では、模擬戦開始!!』


「先手必勝!!オラァァァ!!」


!!速い……此れは、足元で魔力を炸裂してジェットエッジの推進力としたわけですか――意表を突かれました。
ですが如何に速くとも、フェイトの本気にはまだ及びません。
回避は難しくは…


「ノーヴェだけじゃないですよ?」

「…!!貴女も…!」

く…ノーヴェの奇襲は1テンポ遅れてのスバルの追撃を相手の思考から一瞬でも外すのが目的!!
相手の回避行動に合わせて、同じ原理で加速したスバルが2撃目の奇襲を喰らわせる、二重の奇襲攻撃…
此れは回避は出来ませんか…

「ルシフェリオン!」

『All right.Protection.』


――バキィィィン!!



「も1個おまけだぜ!!」

「く…」

間髪入れずに蹴りまで来ると、障壁は砕かれなくとも少々押し負けてしまいますね…
ですが…


ファントム…ブレイザー!!

「!!」

ティアナの砲撃?
最初の奇襲と今の押し合いの間にチャージを完了したと言う訳ですか…此れは流石に躱させていただきます。


「あ〜あ、空に逃げられちゃった。」

「ふぅ…今のコンビネーションは見事でしたよ?
 二重の奇襲で相手に防御の姿勢を執らせた上で最大級の一撃を叩き込む――地上戦のコンビネーションとしては95点を付けていいでしょう。」

なので今度はここから。
相手が空戦型であった場合はさて如何戦いますか?

空を縦横無尽に翔け回り、自分の間合いの完全に外からの攻撃を仕掛けてくる相手に対しては如何します?


『Lock on.』

パイロシューター!

計36発の誘導弾を、さて避けきれますか?


「ウィングロード!!」

「エアライナー!!」


ふふ、矢張りそう来ましたね?
空を飛ぶ術を持たない陸戦型の近接魔導師は飛行以外の方法で、飛んでいる相手に近づかなければならない。

そう言う意味ではウィングロードもエアライナーも優れた技術と言うべきでしょう。
ですが、其れは有効な手段であると同時に諸刃の剣でもあります。

相手に向かって道を作ると言う事は、逆に相手に自らが通るルートを教えるようなものですから。
只突っ込んでは恰好の的になるだけですが…


――ギュン…


考えましたね?
ウィングロードとエアライナーを何本も発生させ、それらを複雑に組み合わせる事で自らの通るルートを相手に分かり辛くする。


「クロスファイヤー!!!」


更にティアナが誘導弾で、道を壊さない程度に攻撃することで粉塵を上げ、目視をも難しくする。
近接型の陸戦魔導師としてはこれ以上の答えは無いでしょう。

ですが、空を飛ぶ自由度には程遠い。
加えてキャリバーとエッジは走行時の駆動音が存外大きい。

姿が見えずともその音さえとらえれば…そこです!!


『『Hello Captain.』』

「!?」

キャリバーとエッジだけ?
スバルとノーヴェは…何処に………まさか!!


「「おぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

「上から!!」

デバイスを囮に、自分の足で道を駆け上がって…!


アロン…ダイトォォォ!!

ブラスト…ファイヤー!!!!


――バガァァァァン!!!


「くあぁぁぁぁぁ!!!」

ふ、不覚……ですが良き一撃です。
己の戦い方を熟知し、その上で相性的に不利な相手と、どう戦うかを相当に研究しましたね…見事です。

では、今度は此方からですね?


「「「え?」」」

「ルベライト!」


――バキィィン!!


「「「!!!」」」


ふっふっふ…捕まえましたよ?
貴女達の予想以上の成長に、久々に気分が高揚しました……えぇ、模擬戦とは思えないくらいに。

ですが少々熱くなりすぎたようです……少し頭を冷やしましょうか、お互いに。
まぁ、貴女達の場合は、ちょっぴりホットな気分になるかもしれませんが…ご覚悟!

ディザスター…ヒィィィト!!!

『Disaster Heat.』








――――――








Side:レジアス


オーリスよ…模擬戦とは施設が吹き飛びそうなほどの一撃を放つものだったか?


「いえ、少なくともそんな事は通常ありえないかと…と言うか新人3人無事でしょうか?」

「心配無用。着弾寸前に助っ人が入ったわ。」


助っ人?むぅ………あの娘か。



「はい其処まで!マッタク、バインドしてからの3連直射砲なんて少し熱くなり過ぎよ?」

「ミユキ…申し訳ありません、あまりにも彼女達が素晴らしい戦術を見せてくれたもので、つい私の本気も見せたくなりまして。」



今の一撃を止めたのか…凄まじい腕前だが、一体どうやって?


「あの刀型のデバイス…暮桜で3発の直射砲を弾き飛ばしたのよ。まぁ、ミユキであるからこそ出来る芸当であるな。」

「なんと…あの若さで恐るべき技量だ。」

「まぁ、クロスレンジに限定すれば、ミユキは六課でもトップクラス。
 魔力無しの剣術、体術となれば、六課では間違いなく最強であろうな……我が姉ながら恐ろしい事よ…」


それ程か!
いや、だが分かった……此れだけの戦力を有していれば、評議会と正面切ってやりあったとて何とかなろう。

「其れを改めて確認した――今日の視察はワシ等『陸』にとっても有意義なものであったようだ。
 それと、此れは後日正式に辞令を交付する予定なのだが、オーリスを六課に『司令秘書』として出向させようかと思うのだが…構わぬか?」

「おぉ!其れは助かるぞ!小鴉も喜ぶであろう。
 我と小鴉、それにリインフォース姉妹でも、隊の書類やらなにやらの処理は楽ではない…優秀な秘書が1人欲しいと小鴉も言っていたのだ。
 うむ、全く問題ない!小鴉にはしっかり伝えておこうぞ!!」

「よろしくお願いします。……それで、所用で外出中とのことですが、八神司令は何方へ?」

「うむ…聖王教会だ。教会の予言騎士とやらに呼ばれたらしい。」


予言騎士…カリム・グラシアか。
アレの予言は多種多様な解釈が可能だが、総じて大きな事件の予言である事が多いうえに的中率も高い。

態々六課の総司令を呼んだと言う事はそれなりの何かが出たという事だろうが…予言であれば外れてほしいのが本心だ。
事件を示唆する予言であった場合、それが現実になって被害を被るのは力なき市民なのだ…其れは避けねばならん!!


「ふ、その為の我らでありウヌ等であろう?」

「そうだな…」

事が起きても被害を最小限にするのがワシ等の役目だ。
うむ、何が起きても対応できるように、常に気を引き締めておかねばな。

「では、ワシは陸の本部に戻る…八神総司令によろしく言っておいてくれ。」

「うむ、了解だ。またいつでも来るが良い。」


機会があればな。


うむ、機動六課申し分なし!
矢張り、次代を担うのは活きのいい若者であるべきだ――評議会のトップ共には未来永劫理解出来ぬことだろうがな。








――――――








Side:はやて


「久しぶりやなカリム。確か私が正式に管理局員になって以来やったっけ?」

「そうね…もう4年も経つのね。」


なはは、もうすぐ私も二十歳やからなぁ。
大人の仲間入りまでカウントダウン開始言うところや。

まぁ、世間話はほどほどにしてや……一体何が出たん?
態々私を――まぁ、アインスとツヴァイも護衛で付いて来とるけど、私を呼んだ言う事はとんでもない予言が出たんと違うか?


「相変わらず察しが良いわね…その通り――これを見てくれる?」

「予言やね?」

どれどれ………なんとまぁ…此れはどう考えても現実になったらメンドクサイ事になりそうやな?
アインスとツヴァイも見てみ?


「では失礼して…」

「何ですか?………!!マイスター、此れは!!」


な?とんでもないやろ?


『旧い結晶と無限の欲望が交わる地、死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る。
 死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる。』



前半はハッキリ言って意味不明や。
せやけど後半は、どう贔屓目に見ても管理局の…其れも六課と陸の崩壊を示唆してるようにしか思えへんやろ?


「其れはそうですが…ですがこれでは…!!」

「とても見逃せないですぅ…」

「えぇ、この予言が前半部分だけだったら貴女達を呼ぶようなことはしなかったわ。
 けれど後半部分がどうしても気になってしまったの…」


それで私等を呼んだ言う事か……其れは良く分かった、それで?


「え?」

「まさか其れだけや無いやろ?他にもっと面倒な予言でも出たんと違うか?」

「深読みよ?他には何もないわ。」


へ〜〜?……嘘が下手やなカリムも。
一般人やったら気付かないやろうけど、六課の総司令の眼力舐めたらアカンで?
びっみょ〜〜〜に目が泳いでるのが丸分かりや。

まぁ、それを言ったとてカリムは語らんやろうけどね……ふむ、アインス。


「お任せを………完了しました。」

「?如何したの?」

「あぁ、何でもあらへんよ?予言の内容をアインスに記録してもろたんや。」

記録するくらいは別に問題ないやろ?


「えぇ、其れは別に。」

「此れは私1人でどうにか出来る事や無いからなぁ?六課の皆やレジアスのおっちゃんにも見せて色々考えなアカンからね。」

そう言うわけで、この予言以外に何もないんやったら私等は帰るで?
部隊運営言うのも、思ったより楽や無いからね。


「えぇ、忙しい所呼びつけて悪かったわね…気を付けて。」

「今度は有休とってゆっくり遊びに来るわ♪ほなな〜〜。」


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さて、此処まで来れば大丈夫やろ。
アインス、夜天の書に転送してくれるか?

「お任せ下さい…と言うか既に転送済みです。」

「おぉう、やること速いなぁ?良い事やね。」

「?あの、お姉ちゃん、はやてちゃん、何がどうなってるですか?」


そう言えばツヴァイには言ってなかったなぁ?
アインスのレアスキル『魔力蒐集』と、私のレアスキル『蒐集行使』や。

アインスは、他者の魔導技術をコピーする事が出来る。
で、私はそれを夜天の書に転送してもらうことで行使する事が出来る…まぁ、とんでもない反則技や。
あんまし強すぎる魔導技術はコピーはできへんけどね。


「なんでそんな…あ、カリムさんの予言能力をコピーしたですか!?」

「正解や……確実にカリムは何かを隠してた…其れが予言やったら此れで其れを明らかに出来るからなぁ?」

ほなさっそく…カリムが私に隠した予言があるなら…出て来てや…



――ポウ



来た来た……さて、カリムは何を私に秘密にしたかったんや?

どれどれ……………え?此れどういう事?ホンマに……


「如何なされました、はやて!」

「はやてちゃん!!」


……2人ともこれ読んでみ。
カリムが隠したがるはずや…


「そんな…此れって!!」

「この予言が正しいとするならば…」



『星と月の力は強大なれど、星と月は其の力を世界の為に揮わんとする。
 されど法の番人の闇は其の力を恐れ、星と月を砕かんと謀略を巡らすだろう。
 しかし、星と月は傷つけど砕かれる事ならず。
 法の番人の闇を知る時、星と月は地獄よりの使者と化す。
 なれど、法の番人其の事実に気付く事はあらず。
 滅びか救いか……どちらの道に進むかは夜天の主によってのみ決定される…』



せや…星はなのはちゃんで月はルナさんや――略間違いなくな。


此れはまた、何とも厄介な予言が出て来てくれたもんやで…












 To Be Continued…