Side:美由希


 これは一体なんの冗談なの?
 いえ、冗談にしたって性質が悪すぎるわ……如何してなのはとルナが評議会の増援で…!!

 「なのは!!」

 「…誰?」

 「誰って…私よ、美由希よ!貴女の姉よ!?」

 「私のお姉ちゃん?…ふ〜〜ん……じゃあ戦おうか?」


 !!何ですって!?……く…この砲撃の重さは…!!
 待ちなさいなのは!如何して戦わなくちゃいけないの!?
 意味が分らないわ!それに8年間も何をしてたのよ!


 「8年?知らないなぁ……って言うか何?妹とは戦えない?
  意外と甘いんだね、私のお姉ちゃんて……まぁいいや、だったら死んじゃいなよ、所詮貴女もゴミでしょ?」


 嘘でしょ…此れがなのはなの?
 でも、感じる魔力は間違いなくなのは……何で…如何してよ…8年の間に何があったのよ、なのはぁぁぁぁぁ!!!











 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福88
 『防衛の任−撃滅−』










 「ほらほらほらぁ!如何したの?防御だけじゃ只の的だよ?反撃しないの?
  それとも私のお姉ちゃんはマゾヒスト?だったら思いっきりイタぶって嬲り殺しにしてあげるべきなのかなぁ?」


 く…あんな嗤いをあげながら攻撃してくるなんて…とてもなのはとは思えない…!
 でも、もしアレがなのはなら、目を覚ましてあげるのも姉としての務めだよね…!

 遠距離戦では負けても、クロスレンジなら私の方が断然有利!
 被弾覚悟で懐に入れば…!!


 「ふぅん…被弾覚悟での特攻?意外と根性って言うかそう言うのは有るんだ?
  だけど無駄だよ、レイジングハート。」

 『Death.』


 な…プロテクションバースト!?
 防御魔法を炸裂させて…!!ま、拙い、此れじゃあ狙い撃ち…!!


 「やっぱり妹が相手だと調子が狂うんだ?
  まぁ、良いや……取り敢えずさよならお姉ちゃん――精々あの世で後悔してね♪」

 『Divine Buster.』


 く…幻影剣を…だめ、間に合わない…!!!


 『Protection.』


 ――バキィィン!!


 え?


 「少し調子に乗りすぎだよ……この程度の砲撃で、この人を落せるとは思わないほうが良い。」


 だ、誰!?


 「取り敢えず敵じゃないよ…と言うか、此れの相手は私に任せてもらえるかな?
  私スッゴク怒ってるんだ……本当に憤懣やる方ないよ……『星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)』の怒りは限界突破だよ。」


 星光の襲撃者(シュテル・ザ・デストラクター)って…あの違法研究所襲撃の…!
 それだけの魔導師が此処に…!


 「誰?…誰でも良いか…邪魔するなら殺しちゃうよ?」

 「やってみれば?…貴女如きに殺されるほど間抜けじゃないから。」

 「…何ソレ、ムカつくなぁ――良いや、死んじゃえ。」



 ――ドォォン!!!



 至近距離で!!
 しかも直撃って…これじゃあ…


 「至近距離でこの程度?はぁ…何て言うか呆れて物が言えないよ…」

 「そんな…!」

 「無傷…!」

 有り得ないわよ流石に…!
 なのはの砲撃を至近距離で喰らって無傷だなんて、この人どれだけ防御が堅いのよ…


 「この程度で砲撃魔導師を語ろうなんておこがましいにも程があるよ?
  砲撃って言うのはね…こうやるんだよ!」


 ――キィィン…ドガァァァァァァァン!!


 「く…!!」

 「あ、ギリギリで避ける程度の技量はあるんだ?」


 違う…態と外したんだ今のは――ギリギリで回避が間に合うように…!
 それでもかすった場所のバリアジャケットが消し飛んでるって、どれだけの魔力…!!


 「舐めるな…!!」


 プライドが傷つくよねなのはも。
 でも、なんだろう……目の前の『なのは』よりも『星光の殲滅者』の方が『なのは』に見えて仕方ないのは…








 ――――――








 Side:なのは


 気に入らない…あぁ、気に入らない!
 私のコピーってだけでも業腹物なのに、実力がこの程度?
 もし私の姿に驚いてなかったら、お姉ちゃんがゼロ被弾完封だよ此れ?

 まぁ、8年前の私はこの程度だったのかな?
 でも私は私1人…『高町なのは』は私以外には認めない!


 「落ちろ!!」


 ふぅん…一応は考えてるんだ?
 拡散型の誘導弾……45点!


 ――バリィィン!!


 まぁ、全部相殺できるけどね。
 と、姿が消えたって言う事は……


 ――ガキィィン!!


 「な、防いだ!?」

 「フラッシュムーブからのクロスレンジ…うん、タイミングは悪くないね、65点。」

 尤も、この程度は喰らってあげないけど。
 ソレに周りへの注意が足りないよ?


 「なに…?いやぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 「拡散誘導弾は貴女の特権じゃない…油断でマイナス30点。」

 ソレから視野も狭いから更にマイナス30点。
 と言うか此れで詰みかな?


 ――ガキィィン!!!


 「バインド!?」

 「拘束魔法は気付かれずにが基本。
  そんなことも分らない部分でマイナス70点…あ〜あ、折角稼いだ110点がなくなっちゃったね?」

 それじゃあ、ここらで終らせようか?
 それ以前に、私の姿でお姉ちゃんを殺そうとした――ソレだけでマイナス1万点だからね。

 慈悲は無いよ…殺しはしないけど、精々生き地獄を味わうと良いよ…


 ――キィィン…


 「そ、そんな!!」

 「此れは、集束砲…!!」


 大正解……精々私を真似た事を後悔してね?
 じゃあね、バイバイ…


 『Die.』


 ――ドガァァァァァァァァァン!!!



 「あ、あ、あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 最後に1つ…相手を倒せなかった時、死は自分に跳ね返る…ソレは覚えておいた方が良いよ。








 ――――――








 Side:ルナ


 なのははコピーを落としたか。
 まぁ、襲撃時のなのはのコピーじゃ今のなのはには敵う筈もないか。
 本より、コピーは本物に勝つ事は出来ないのが世の常、不文律だがな。


 「汚いぞお前…魔導無効体質など!!」

 「馬鹿かお前は?戦場に於いて卑怯も汚いもへったくれもあるか。
  戦場では生き残る事が第一だ、その為なら手段など選ばないのは当然だろう?」

 私のコピーでありながらそんなことも分らないのか?
 それとも、最高評議会が創ったコピーゆえの甘さと弱さなのか…まぁ口には出さないが。


 「黙れ!貴様等に…!」

 「負けるはずが無いか?…そういう事はせめて私に一撃入れてから言うんだな。
  戦闘を開始して今まで、お前は私に触れることすら出来ないじゃないか。」

 ほらほら、如何した?
 ソレが本気なら、お前如き足だけで充分だ。


 「舐めるなぁぁぁ!!」

 「遅い!遊びは終りだ…!!」


 ――瞬!


 「!?」

 「泣け!叫べ!そして……逝けぇぇぇ!!!」


 ――バガァァン!!!


 マダだ!!

 「消え…うせろぉぉぉ!!!」


 ――ドガァァァァァァァ!!!


 追加の一撃だ。
 幾らなんでも、此れだけ喰らえば動けないだろう?


 「そんな…馬鹿な…」

 「此れが差だ…お前は、所詮コピーなのさ…」

 「だ、黙れ!私は高町リインフォース・ルナだ!それ以外の何者でもない!!」

 「いや、コピーだよ…お前は、私のコピーなんだ…」


 ――ウィン…



 「!!!」

 「此れで分っただろう?お前は狂った欲望に捕らわれた老害の手駒に過ぎなかったんだ。」

 身元が割れるのは良くないから、また変装させてもらうがな。
 お前はもう眠れ…私のコピーが連中に良いように使われるのは正直我慢が出来ない…

 「コピーとは言え、お前も悲しき命ゆえ、殺しはしない。
  だが、魔導の力は奪わせてもらう……それに、お前にはマダ生きていてもらわないと私も都合が悪いのでな…」

 「………」


 ショックで声も出ないか…だが安心しろ。
 お前の正体は直ぐに割れるだろうし、危険が無いと判断すれば、はやて嬢が身の振り方は考えてくれるさ…

 「戦いとは無縁の世界で生きると良い……じゃあな。」

 闇慟哭



 ――バリィィィン…



 「………」


 さてと…


 「貴女は……」

 「来たか管理局……取り敢えず無効化はしておいた、後はそちらに任せる。」

 本音を言うなら、このまま正体を明かしたいが、ソレは出来ない…今はまだ。


 「ご協力には感謝しますが…此方としては貴女方にも同行を願いたいのが本音です。
  ですが、ソレには応じていただけないのでしょう?」

 「聡いな…あぁ、応じる事は出来ない…」

 「そうですか…仕方ありません…ではこの問いにだけは答えて下さい。」


 星奈?
 何を聞こうというんだ…


 「先ず、貴女方は私達に――機動六課に敵対する者ですか?
  次に、それとも貴女方は最高評議会に敵対する者ですか?
  そして、貴女方は平和に暮らすミッドチルダ市民に害をなすものですか?」


 そう言う事か…
 この問いに嘘八百を並べ立ててこの場を取り繕うのは簡単だが、星奈の観察眼には意味がない。
 尤も、その問いに対しては嘘は吐かないがな。


 「お前達に敵対する者ではない…寧ろ私達の敵は最高評議会だよ。
  そして、平和に暮らす者の安息を砕く心算は毛頭ない……私達が望むのもまた平和さ…」

 信じるかどうかはそちら次第だがね。


 「いえ…嘘かどうかは相手の目を見れば分ります。
  今の貴女の答えに嘘はありません……貴方の目には強い決意と覚悟が見て取れましたから。
  ふむ…では、貴女方に関しては此方の任務とかち合った場合は協力すると言う事にしておきましょう。」

 「ソレで良いのか?」

 「我等の総司令は頭が柔らかい方なので、敵で無いならソレ位は了承するはずです。」


 …確かに、はやて嬢ならそうだな。


 OKだ、私達とて無用な戦いをする心算はないからな。
 まぁ、適当にやって行こう。

 「取り敢えずこの場は退くぞ?増援も退けたしね。」

 「えぇ、ご自由に。ご協力感謝しますよ…月の襲撃者。星光の殲滅者に宜しくお伝え下さい。」


 あぁ、伝えておこう。
 では、何れまたな。



 ――シュゥゥゥン




 ふぅ…戻ってきたか。
 まさか自分自身と戦うとは思っていなかったが……大丈夫かなのは?


 「うん、大丈夫…あんまり良い気分じゃなかったけどね。
  て言うか、私のコピーは性格弄りすぎ。私は相手に笑顔で『死ね』なんて言わないからね!?」

 「…なんと言うかバイオレンスに性格改変がされていたんだなお前のコピーは…」

 私の方はそうでもなかったんだがな…

 と、皆もお疲れ様だ。
 サイファーはまた腕を上げたじゃないか。


 「お前やなのは、それにドゥーエと訓練をしていれば嫌でも腕は上がるさ。
  まぁ、自主訓練も怠らないがな……ソレでもお前の域にはマダマダ遠いけれどな。」

 「早々抜かせはしないさ。」

 まぁ、味方が強くなるのは喜ばしい事だ。
 ウーノとクアットロ、ドクターもお疲れ様。
 矢張り戦場に置いて、バックスの存在は大きい。


 「いえいえ、この不肖クアットロ、お姉様方の為なら例え火の中、水の中!」

 「草の中、森の中〜〜。」

 「土の中、雲の中、あの子のスカートの中〜〜♪」

 「きゃ〜〜〜〜♪って違いますわ!!」


 いやぁ、そのフレーズを聞くとつい。
 冗談は兎も角として、本当にバックスの存在はありがたい…これからも頼りにしているぞ?


 「お任せを〜〜〜♪」

 「任せてください。」

 「君達だけに負担はかけんさ。」


 中々良いチームだな私達も。

 さて、コピーは六課が確保しただろうが……どんな結果が出るだろうな?








 ――――――








 Side:星奈


 「コピー…クローンと言う事ですか?」

 「分り易く言えばそうなるな……遺伝子的には100%なのはちゃんとルナさんやけど……ルナさんがプログラム生命体やなくて正真正銘の人間や。
  あ、勿論ルナさんは人間やで!?ソレはそうやけど、プログラム生命体の反応が出なかったのはオカシイやろ?」


 確かに…つまり彼女達2人は、最高評議会が人工的に生み出した、ナノハとルナのクローンの可能性が高いと言う訳ですか。
 言われてみれば、ナノハとルナにしては少々戦闘力が低かったようにも思いますからね。
 ですが、そうなるとナノハとルナの生存は此れで確定でしょう?
 いえ私達が存在している時点で確定なのですが…少なくとも評議会は2人の遺伝情報を持っている。
 だからこそクローニングが出来たわけですからね。


 「やな…ソレと星奈ちゃん、此れはあくまでも私の勘なんやけど…星光の殲滅者と月の襲撃者…あの2人はなのはちゃんとルナさんやないの?
  ホントに勘と言うか、本能的にそうだと思ったんやけど…」

 「なんと、貴女もですか夜天の主。…実は私もです。」

 モノレール襲撃時の映像を見たときからそう思っていました。
 容姿が違うのは恐らく変身魔法でしょうが…なんと言うか雰囲気がとても良く似ているのです。
 此れは冥沙と雷華、そしてゆうりも思ったことです。


 「やっぱそう思うか…とは言っても確証はないから仮説の域を出ないんやけどね…」

 「そうですね…」

 今はまだ可能性の1つとして考えておく方が良いでしょう。
 ともあれ、此度の任務は色々有りすぎました……お互いにゆっくり休むとしましょう。

 幸いもう直ぐ久しぶりの休暇です。
 ゆっくり休んで英気を養うとしましょう。


 「せやな……とは言っても総司令は書類精査が多過ぎる〜〜。
  王様も一緒にやってるとは言え、今度の休暇までに全部終るんやろか?
  レジアスのおっちゃん、お願いやから司令のほうに事務員回してんか〜〜〜!!」

 「直接打診しては如何でしょう?多分回してくれますよ?」

 「やなぁ…本気で申請してみよ…休日まで書類精査に追われて堪るかい!只でさえ休暇の半分はカリムに呼ばれてんのに…」


 大変ですね総司令殿も。
 ですが、互いに頑張りましょう。

 「最高評議会を解体し、そしてミッドに真なる平和を齎すために。」

 「勿の論や!」


 必ずや成し遂げましょう、私達ならば出来ます。
 ソレに彼女達とも協力は出来るのですから。


 まぁ、唯一の不安要素は――我等ヴァイスリッターが等しく感じて居る『言い様の無い不安』なのですが…
 この不安は一体なんなのでしょう?



 まるで『世界を終らせてしまう』様な強大な力の影を感じてしまうのは…

 或いは、貴女達も同じ不安や危惧を思っているのですか?…ナノハ、ルナ……













  To Be Continued…