Side:なのは


 ホテルアグスタでのオークション当日、其処に潜り込む為に只今着替え中。
 クアットロさんが用意したドレスだから微妙に心配だったけど、意外と普通だったね。

 うん、此れなら大丈夫。
 如何かな?


 「お姉様、結婚してください!!」

 「うん、断る♪」

 いきなり何を言ってるのかなぁ…まぁ、クアットロさんの反応からすると似合ってるんだね。
 ドゥーエさんとサイファーも良く似合ってるよ?


 「余り着慣れない服だが…悪くないな。」

 「まぁ、クアットロは服のセンスは悪くないからね。」


 そうなんだ。
 サイファーはスーツな辺り、どんな服が似合うかとか考えてるみたいだね。

 残るはルナだけだけど…


 「ど、如何だろう?おかしくないかな?」


 !!こ、此れは…!おかしくなんかないよ!スッゴク似合ってる!!
 無駄な装飾のないワインレッドのドレスはルナにピッタリ!!
 クアットロさん、このチョイスはGJだよ!


 「お褒めに預かり光栄ですわ〜〜♪」


 兎に角凄くかっこいいよルナ♪











 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福87
 『防衛の任−襲撃−』










 「そうか、ソレならば良かった――なのはも良く似合ってるぞ?」

 「そう?そう言ってもらえると嬉しいかな♪」

 お仕事だと分ってても、やっぱり今回はお洒落したいもんね。
 まぁ、ドレスやらなにやらはソレで良いんだけど…

 「何でクアットロさんにウーノさん、挙句にはジェイルさんまで正装なのかな?」

 「いやぁ、折角だから私達も参加しようと思ってね。
  ドゥーエのライアーズマスクで、顔を変えれば取り敢えず身元が割れる事もないだろうし。」


 ソレはそうですけど…まぁ、いっつもアジトに居るだけじゃストレス溜まりますからね。
 息抜きって事で良いと思います。

 「と言うか意外と正装も似合いますねジェイルさん。」

 「ふ…こう見えても私は紳士だよ、なのは君。
  ソレ相応の場所に出向く時には、きちんと身形は整えるさ。」


 そうですか…正義のマッドで紳士って、なんだかなぁ…
 けど、直接出向くって言う事は、息抜き意外にも目的があるんですよね?


 「うむ、流石に鋭いね……とは言っても此れは個人的な目的でね。
  オークションに出品される物の中に、予てより手に入れたいと思っていた代物があったのさ。」

 「お前が手に入れたいものとは、少しばかり…いや、大いに興味があるな?」

 「ちょっとしたアンティークと言うか、大成できなかった画家の絵画でね。
  大成はしなかったが、その勢いのある筆使いと、パワーのある構図から意外とファンが多いのだよ。
  それに、このアジトも少々殺風景だからね、絵画の1つくらいは有っても良いだろう?」


 確かに、それくらいは飾ってあっても良いかもしれないですね。
 でも、ジェイルさんが絵画に興味を示すなんて意外でした。


 「まぁ、自分でも似合わないとは思うのだが、本当に良い物は矢張り手に入れたくなるのだよ。」

 「その気持ちは良く分ります♪」

 ならなんとしても競り落とさなきゃですね。


 ソレは兎も角、このオークション会場にも、評議会は間違いなく仕掛けてくるよね?
 取引許可が下りているロストロギアを、みすみす見逃すなんて事はない筈だから。


 「まぁ、仕掛けてくるだろうな。
  取引許可が下りているとは言え、ロストロギアを連中が放っておくとは思えないからな。」

 「適当に仕掛けてくるだろう?…返り討ちにするがな。」

 「そうだね。恐らくははやてちゃん達、機動六課も防衛や出展品の護衛に来るはずだから、戦力的には私達が有利だよ。」

 ガジェットやら何やらが出てきても、多分鎮圧出来る筈。
 ガジェットなんて、結局はジェイルさんの新たな発明の材料にしかならないからね。


 「うむ、アレの残骸は色々使えて便利なのだよ。
  新しい素材が増えるというのは実にありがたく嬉しいものだね。」

 「まぁ、やりすぎませんように。」


 ウーノさん達も面が割れると面倒だから、ライアーズマスクで変装ですね。
 なはは、それにしても此れだけ揃うと華があるなぁ…会場で注目されちゃうかも。


 「別に構わないんじゃない?そこで注目されたからって、さして問題ないわよ。
  それに、其処に居る私達は二度と現れる事はないんだから…化粧を変えるからね。」

 「ですね。」

 けど、目的とは別に競売会なんて初めてだから、ちょっと楽しみ♪
 何か良い物有ったら競り落としてみようかなぁ?


 「まぁ、止める理由は無いが、程々にな?」

 「は〜〜い♪」

 それじゃあ行こうか……ホテルアグスタに!!








 ――――――








 Side:冥沙


 のう小鴉、レジアスは『戦闘員は出向できない』とか言っていなかったか?
 我の見間違い出なければ、ナカジマ姉妹の母親や、若本ボイスの何かが見えるのだが?


 「見間違いやあらへんよ?まぁ、物は言い様ってやつや。
  レジアスのおっちゃんは『出向』させたんやない……今回の任務を『六課と地上部隊の合同任務』扱いにしたんや。
  それなら陸の戦闘員がこの場に居てもおかしくないやろ?」

 「成程な…確かに物は言い様だ。」

 我等六課と地上部隊の精鋭、そう言えばナカジマ家の長女も六課に出向してきていたな。
 此れだけの戦力ならば、何が襲撃してこようとも大丈夫とは思うが…まぁ、油断は禁物であるな。


 しかし、競売会というのも中々如何して人が集まるものだな?
 お約束的に金の有る連中なんだろうが……


 『では此方の商品は15万で、ジェイク・スカリーさんが落札されました。』


 絵画一つに15万とは理解できん。


 「物の価値は人夫々やしね。てか、絵画で此れやと、取引許可のロストロギアとかドンだけの値が付くねん…」

 「100万は下らんだろうな。」

 出来ればソレは我等で競り落とす――回収をしたいところであるな。
 一応資金は持ってきているが、果たしてどれだけの値で競り落とす事になるのやら…


 『此方の商品はシュテル・スタークスさんが11万で落札されました。』


 「「「!!!!」」」


 な…シュテルだと?
 この間のモノレール襲撃事件の際に現れた、砲撃魔導師と同名?
 いや、それ以前に……以前に多発した、違法研究所襲撃事件の現場に残っていた『星光の殲滅者』とも関係が…


 「有るかも知れませんね…己の名を改竄した偽名であるならば。」

 「殲滅者とは程遠い外見であるが…」

 「せやけど、モノレール襲撃に現れたシュテルとあの人では容姿がちゃうやろ?
  星光の殲滅者本人かどうかは判断しようがないけどな…」


 うむ…まぁモノレール襲撃か、今回かのどちらかが変身魔法で姿を変えているという事もゼロではないがの。
 だが、もしも奴が=星光の殲滅者だとしたら、ただオークションに参加とは考え辛い部分がある。
 最高評議会の連中の襲撃と併せ、警戒を怠らぬ方が良いであろうな。



 ――ズゥゥゥン…



 !!!!な、何だこの揺れは!?
 地震…いや、違う――来たか最高評議会!!


 『こちら保管庫警備のフェイトです。
  ホテル外部警備部隊より『接近するアンノウンを視認』の伝令あり。此れより迎撃態勢に入ります!』

 『こちら外部警備部隊隊長の美由希!
  アンノウンを完全視認!正体不明の魔導師10名と、ガジェットドローン推定100体を確認!此れより交戦を開始します!』


 矢張りか…!我等も出るか小鴉!


 「ちょお待って、先ずは会場の混乱抑えて、ホテル内の市民を避難させるのが先や!
  混乱は私が抑えるから、王様と星奈ちゃんは地上部隊の人達と避難誘導を!ソレが済み次第迎撃に!!」

 「了解だ!」

 「了解しました、八神総司令。」


 行くぞ星奈、1人の怪我人も出すなよ!
 全員無事にホテルの外に避難させるのだ!


 「御意に…!」


 うむ!

 む…時に奴は――シュテルは?……居らぬ。
 即刻避難したのか、或いは……

 外部警備部隊に一応の報告をしておいた方が良いかも知れぬな。








 ――――――








 Side:ルナ


 ふぅ、マッタク派手に襲撃をかけてきたものだ。
 人造魔導師10名に、ガジェットが150機だと?…其処までして手に入れたい物なのかレリックとやらは?


 「知らん…だが、来た以上は潰す。それだけだろう?」

 「勿論その心算だよ――一機残らずスクラップにするから!」


 ふ、そうだな。
 六課のメンバーも奮闘するだろうから時間は掛からないはずだ。

 ホテル内部もドクター達が巧くやってくれるだろう。
 この襲撃者達を退ければ、此処はソレで終いだ……行こうか!


 「うん、全力全壊!」

 「切り捨てる…!」

 「喧嘩売った相手を間違えたって教えてあげないとね。」


 そうだな。
 と、砕け散れ屑鉄!意志なき機械風情が私達を如何にか出来ると思ってか?

 私達を倒したいなら、その10倍の性能の物を1000機以上連れて来い。
 尤も、それでも負ける気は無いがな!


 「中々やるな…管理局員ではないようだが、正義の味方気取りの民間人か?」

 「さて如何だろうな?」

 次はお前が相手をしてくれるのか?
 悪いが、私は――私達はお前達の5倍は強いぞ?


 「大きく出たな…だが、SSの実力を持つこの俺に勝とう等とは身の程知らずも良いところと知れ!
  一撃で終らせてやろう…喰らえぇぇぇぇぇ!!!」

 「阿呆が、そんな見え見えの砲撃を喰らうのは三流以下だろう。
  魔力ランクは高くとも、戦闘技術は良くて二流だな……相手を攻撃するとは、こうやるんだ!」


 ――バキィィ!!


 「ぐへぇ!!ば、馬鹿な…拳が見えなかった…ごふあ!!」

 「如何した?お前に挑むのは身の程知らずなんだろう?私の身の程を教えてもらおうじゃないか?」

 「ぐ、貴様ぁぁぁあ!!!」


 遅い!!


 ――バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ、ガスゲスゴスゴスドガガガガガガガガ!!


 「おぶ!ばぶ!!げへ!!!ぐはぁぁあぁぁぁ!!」

 「そちらから先に誘ってきたダンスなんだ…先にへこたれるのは無しだぞ?」

 まぁ、強制的に眠ってもらうがな……魔導の力は、お前が持つべきものではない!
 真八稚女…闇慟哭!!


 ――グシャァァァァ!


 「ギャァァァァァァァァァ!!!」


 リンカーコアを失えば魔導は行使できない。
 そして魔導の力を失えば飛ぶことも出来ないだろう?…まぁ、精々ガジェットに拾ってもらうと良い。
 仮に拾われなくとも、バリアは張ってやったから、地面に激突しても一命は取り止める……重傷は免れないがな。


 さて…次に同じ目に遭いたいのは誰かな?
 誰でも良いぞ?何なら複数同時に来ても結構だ。


 「ぐ…」

 「おのれ…」

 「正義の味方気取りかと思ったら悪魔か…」


 生憎と、私達は正義の使者だとしても、どちらかと言うとダークヒーロー系でね。
 正統的なヒーローは六課の方さ。


 まぁ、ソレは兎も角来ないのか?
 それとも、これしきの事を見ただけで足が竦んだか?

 だとしたらトンでもない臆病者だな。
 大人しく家に帰って引き篭もっていた方が良いんじゃないか?


 「!!舐めるなクソアマが!!」

 「1人では敵わなくとも、3人ならば!!」

 「消し去ってやる!!!」


 ……単純だな大概。
 まぁ、纏めて来てくれるなら逆に好都合……一気に終わらせる事が出来るからな。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


 「おぉぉぉぉ…真・昇龍拳!!!」

 「ぐ…げへぁぁあああ!!!!」


 なんだ、3人がかりでも掠り傷一つつけられないとは……私が強いのかそれともこいつ等が弱いのか…
 なのはとサイファーとドゥーエもまるで問題なさそうだな。

 六課のメンバーも巧く立ち回っている。
 此れならばもう直ぐ終りそうだが…


 『聞こえるかね?私だ。』

 「ドクター?どうかしたか?」

 『こちらで転移反応を確認したのでね…恐らくは増援と見て間違いない。』


 増援か…了解だ、そちらの方も何とかする。
 市民の避難は?


 『六課と地上部隊の諸君が巧くやってくれたよ。
  1人の怪我人もなく避難完了だ
――だから遠慮なくやってくれたまえ!』


 ふ…言われなくともその心算だ。
 来たか増援………………待て、此れは何の冗談だ?

 新たに現れた無数のガジェット――ソレは良い。
 だが、ソレと共に現れた人造魔導師の内の2体……アレは…!!

 「私と…なのはだと!?」

 クローン培養で創ったとでも言うのか…!
 何処までもふざけたことをしてくれるな――神にでもなった心算か?


 致し方ないか…
 闇の欠片の時もそうだったが、自分自身と戦うというのは中々如何して慣れないものだ。


 だが、それ以上に私となのはが評議会の手駒として使われるなど我慢できん。
 奴等に良いように使われるくらいなら、私が自らの手で引導を渡してやる!!



 ――轟!



 『月の襲撃者』こと、このリインフォース・ルナが直々にな…!













  To Be Continued…