Side:雷華
「「「ナノハとルナの魔力!?」」」
「ソレはホンマなんか美由希さん!?」
「正確じゃないし、確証はないけど、ルナとなのはにとっても良く似た魔力の残滓を感じたんだ。
でもルナとなのはとは微妙に違うけど、赤の他人と言うには似すぎてる…そんな感じ。」
ナノハとルナの魔力が…って事は2人は現場に来てたってこと!?
そうだよね!?
「落ち着け雷華、まだそうと決まったわけではない。
それにもしナノハとルナだとするなら、少々解せん点があるのは否めぬであろう?」
「何故に私達が現場に到着する前に現場から立ち去ったのかですね。
もっと言うなら、スバル達の証言からして、現場に現れた人物はルナとナノハとは別人の線が…」
「けどソレは外見の話ですよね?容姿は変身魔法で変える事は可能ですから…」
そうそう、ゆうりの言う通り!見た目はいくらでも変えられる!
だけど、ミユキは魔力を感じ取ってるんだよ?
それもすっごく2人に似た魔力を!
もしもだけど、行方不明になってから色々有って、2人の魔力の質がちょっとだけ変わってたらどう?
少しだけ違う事のせつめーにはならないかな?
「…有り得るかも知れへんな。
そしてなのはちゃんとルナさんには、私等と一緒に居られへん理由がある…そう考えるのが妥当やな。」
「そうそう、ソレだよ!」
流石は小鴉ちん、伊達に司令はやってない!
すごいぞ〜〜パチパチパチ〜〜!!
ってそうじゃないだろ僕!!
2人があの現場に来たかのーせいは高いんだ……なら入念にちょーさしなきゃ!
やっと…8年ぶりに会えるかもだからね!
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福86
『Eye Of The Volcano』
Side:ルナ
「人造魔導師…」
「矢張りか、予想はしてたがな。」
「とことん外道だね、最高評議会…!」
だな。
最早連中には欠片ほどの慈悲もない。
徹底的に潰してやらねば、奴等の犠牲になった人達も浮かばれないだろう。
それでドクター・ジェイル、私が沈めたアレは人造魔導師とのことだが…
「正確に言うなら『クローン合成魔導師』と言うべきかな?
優秀な魔導師の遺伝子を人工的に融合して身体を造り、更に高ランクの人工コアを移植したんだろう。
尤も試作段階だろうが、それでいてSランクを造り出すというのは侮れないね。」
成程な……確かに侮ると危険そうだ。
私達や六課の隊長クラスなら兎も角、新人には荷が重い相手だ。
尤も六課が出撃するような事が起きれば、私達も出る事になる。
新人達は巧くフォローしてやれば良いだろう?
「ソレが一番だね。
けど、よくよく考えると少しおかしいよね、評議会の構成員て。」
「オカシイ?如何言う事だ、なのは。」
「うん…何て言うか裏工作とかはきっと凄く得意な人達が集まってるんだろうし、評議会のトップもそうなんだと思う。
でも、クローン魔導師や人工コアの開発、果ては戦闘機人の調整をやってるのは一体誰?
評議会専属の科学者だったジェイルさんは、表向きには死亡してて、今はこうやって私達といるのに…」
言われてみれば確かにそうだな。
少なくとも私となのはが知る管理局の科学者に、最高評議会に靡くような人物は居なかった筈だが…
「私達の目の届かない人材を何処かで確保していたのかもしれないな……恐らくは非合法な手段で。
管理局員で見つからないとなると、裏社会の犯罪者や、或いは管理局が逮捕した者を利用している可能性もある。」
「うむ、実にタイムリーな話題だね。」
「?」
タイムリーだと?如何言う事だ、ドクター・ジェイル。
「うむ、私としても最高評議会の科学力が些か気になってね、ウーノとクアットロと共に調べてみたのだよ。
そしたら……出たよ、大当たりだ。……此れを見てくれたまえ。」
モニターに出た此れは…管理局の資料と言うか報告書か?
此れが何か?
「此れはとある受刑者の事なんだがね……今から7年前、ある受刑者が獄中で不審な死に方をした。
当然司法解剖が行われ死因を特定しようとしたが…不明だったらしい。
外傷はなく、体内からは毒物、薬物、病原菌ウィルスも未検出…『突然死んだ』としか言いようがない状態だよ。」
「奇妙だな……曲がりなりにも管理局の収容施設だろう?
公僕共が交代制で囚人共を見張ってるんじゃないのか?異常にだって気付くだろう?」
確かにサイファーの言う通りだ。
管理局の収容施設なら看守の目が光っているはずだが……いや、そうか!!
「同じ看守でも最高評議会の傘下なら…!」
「自分達に都合良いように事を進める事が出来る…!!」
そうなれば、自分達の欲しい人材を確保した上で、更にその引き抜いた囚人を『死んだ事』にする事も難しくない。
クローン培養で身体だけを用意すれば良い事だからな……
「その通り!そう、この発見された不審な遺体は最高評議会が造り出したクローンと見て間違いないだろう。
生命活動を行っていない肉体を培養する事はそれほど難しい事じゃないからね。
恐らくは同様の手口で幾つかの収容所から凶悪犯罪者を手駒として引き抜いているのだよ。
そしてその中には、ジュエルシード事件の黒幕――キスティ・テルミット・アルマシーも含まれている。」
「なんだと…!!」
あの偽プレシアが…!いや、だがソレならば納得も出来る。
結局はプレシアの魔力に頼っていたとは言え、無数の傀儡兵に、次元移動要塞、生体バッテリー…技術力だけは確かに凄かったからな。
アイツが最高評議会の傘下に加わったとなれば、人造魔導師や戦闘機人の調整も容易に出来るだろう。
「使えるモノは何とやらだな……正直、頭が痛くなってくる…」
「呆れて物が言えないよ…其処までして何を求めるの?
不老不死の力を得て、世界を自分の思うように支配しようとか考えてるのかな?」
「可能性は0じゃないかも知れんぞ?
人を平気で実験材料にするような輩だ、そんな反吐が出そうな考えを持っていてもなんら驚かん。」
本当にな。
せめて連中の本拠地でも分れば、直接叩いてTHE ENDと言う事も出来るんだが…
「ソレはちょっと難しいですわお姉様……最高評議会の存在は知られていても、一体何処に潜んでいるかは誰にも…
リンディ提督やレティ提督でも把握していないみたいですもの…」
「彼等が目的を果たすために表舞台に上がってきた所を叩く…矢張りソレしかないでしょう。」
ソレしかないか…まぁ、仕方ない事か。
時に、連中が何か戦力や兵力面で巨大な何かを隠し持っている可能性は無いのか?
何と言うか、この間のモノレール襲撃から物凄く嫌な予感と言うか、胸騒ぎがするんだ――杞憂なら良いんだが…
「ん〜〜…ガジェットや戦闘機人、レリックウェポンにクローン以外には特に。
だが、何をどんな形で出してくるかは予想が付かない部分があるからね……調べてはいるが中々…」
「そうか…」
この間の襲撃程度の事の繰り返して終るならマダ良いんだが…恐らくそうは行かないのだろうな…
「ですわね…でも、ある程度は先手が打てる場合も有りますわ〜〜。」
「先手を?如何言う事、クアットロ?」
「ハブッ…い、イキナリの呼び捨ては反則ですわ、なのはお姉様……これで良しと。
んん、近々ミッドのホテル『アグスタ』で大規模なオークションが開かれるんですよ〜〜。
其処には様々な骨董品やらお宝が出品されるんですけど〜〜……取引許可が下りたロストロギアも有るんですわ〜。」
取引許可の下りたロストロギアだと!?
いや、まぁそう言った物があるのは知っていたが…競売に出すか普通?
と言うか、鼻にティッシュを詰めたまま真面目な話と言うのも恐ろしく締まらないものがあるな…仕方ないが。
「……よし、止まりましたわ。コホン、話を続けて…取引許可が下りている以上は危険は少ない筈〜〜…
ですが、其処に紛れ込んでいる可能性があるのですわ…レリックが。」
「「「「!!!!」」」」
レリックが紛れ込んでる可能性だと!?
それじゃあ、そのオークションは…
「評議会の襲撃を受ける可能性が高い…」
「と言うか、ソレを知ったら先ず間違いなく強奪を企てるだろう、アノ駄脳味噌共は。」
「うん、ピッタリなネーミングだと思うけど、語呂が悪いよサイファー?」
「なら、腐れ脳か汚物だな。」
それなら腐れ脳だな。脳味噌だけで生きてるわけだから。
だが、確かに連中がソレを見逃すはずが無い。
「つまり、私達がオークション客に紛れて会場の防衛を行うということか?」
「そう言う事になります。
六課の方でも此れの情報は掴んでいる筈ですし、防衛とその他諸々には備えるでしょうが、Sランク人造クローンや戦闘機人が出てくると面倒ですので。」
しかも、ガジェットとの連携を使っての数で来られると六課の面々――特に新人達にはキツイだろうしな。
OK、了解だ。
次の私達の目的はオークション会場の防衛と、レリックの死守で決まりだ。
だが、オークションに入り込むなら入場券やらなにやら必要じゃないのか?
其れに、容姿はドゥーエのライアーズ・マスクで変えるにしても、高級ホテルでのイベントに着ていくような服はないぞ?
「ソレはご安心を〜〜。不肖クアットロ、お姉様方の為に、偽造入場券と素敵なドレスアップコスチュームを用意しましたわ〜♪
ドレスにスーツ、和服に色々取り揃えましたから、きっとピッタリのがありますわよ?」
何時の間に!!…まぁ、その行動の速さは評価しておくよ。
ドレスコードがありそうな現場に入り込むなら、偽造入場券以外に服も必要だからな。
「よくやったね♪ありがとうクアットロ♪」
「はぐぁあ!!!な、なのはお姉様…その天使の笑顔は反則ですわ……あぁ、我が人生一片の悔い無し…」(ガクリ)
限界点を突破したか…うん、どうせ直ぐ復活するだろうからスルーで。
ウーノ、そのオークションとやらは何時行われるんだ?
「5日後の17:00から、ホテル・アグスタの大ホールで行われる予定です。
六課が情報を掴んでいるとした場合、前日までに防衛その他の布陣を完了していると見るべきでしょうね。」
「前日…それくらいでなければ困るさ。
何れにしても、このオークションは、恐らくその後の色んな事に影響がある筈だ…必ず護らないとな。」
「そうね…脳味噌共の思い通りになんてさせるもんですか。」
あぁ、連中の思い通りになどさせはしない。
必ず終らせてやろうじゃないか、私達の手で。
まぁ、願わくば、私のこの胸騒ぎが杞憂であって欲しいと言うのは、偽らざる所だがな…
――――――
Side:ゆうり
「犯人グループの手掛り?」
「現場に残ったガジェットの残骸から…」
この間のモノレール襲撃事件ですけど、何やらきな臭い事があるみたいです。
ミユキがナノハとルナに極めて良く似た魔力を感知したとは別に…
「そうや…残されたガジェットの残骸やけど、其処に相手のメッセージが残されていたんや。」
「正直、メッセージを残すなど、我に言わせれば愚の骨頂だがな。」
冥沙は容赦無いですね……ですがソレには私も同意です!
個人を特定できるかもしれないメッセージを残すなんて普通じゃないです。
余程自分に自身があるのか、それとも自己顕示欲が強いだけなのかですね。
「まぁ、恐らくはゆうりの予想の後者の方やな…コイツが犯人の1人や…見てみ。」
あれ?この人は…
「!!!コイツは…!!!7年前に不審死をした筈なのに…生きてたんだ……キスティ…!」
「フェイト?」
ど、如何したんでしょうか?
普段はクールなフェイトが怒りを顕にしています…だ、誰なんですかこの人は!?
「キスティ・テルミット・アルマシー。
嘗てのジュエルシード事件の黒幕であり、フェイトの母を生体バッテリーとして利用していた真正で真性の外道ですよ。」
「もっと言うなら、へいとのお姉ちゃん殺した極悪人。
ぶっちゃけ言うと一刀両断、完全粉砕したい感じ……僕もコイツ嫌い。」
そんな人が!!…さ、最悪ですね…
「うん…最悪だよ…本当に最悪。
アリシアを殺して、ずっと母さんを苦しめてたコイツが、再び自由を得て、しかもまた外道を働いてるなんて…!
今度は容赦しない……コイツには、私が直接引導を渡す!構わないよねはやて?」
「咎める理由はない…やけどソレはマダ先の話や。
当面の目的はこっちやからね。ツヴァイ、モニターに出してくれるか?」
「はいです♪」
?……此れはホテルですか?
確か『アグスタ』って言う、ミッドチルダでも屈指の高級ホテルですよね?
「せや…で、近々このホテルでオークションが行われるんや。
……取引許可の下りたロストロギアまで出展される法律ギリギリのオークションがな。」
「本当ですか!?」
ソレは確かに見過ごせないです!
ロストロギアを狙ってくる人――最高評議会だって狙ってくる筈ですから!!
「その通り…やから私等六課でソレの護衛と防衛を行うんや――レジアスのおっちゃんも手伝ってくれるしな。
それに、それだけのオークションやと、モノレールの時の『謎の協力者』も現れるかも知れへんしね。」
ルナとナノハの魔力と良く似た魔力を持つ人たちですか…確かにあるかもです。
スバルやノーヴェの話だと犯罪行為を見逃せる人達では無いみたいですし。
もし本当にルナとナノハが居るなら、これだけの事にはきっと介入してくるはずです――間違いなく。
でも、それなら、もしも可能ならその人達と話をしてみたいです。
もしルナとナノハなら……どうして戻ってこないのか、ソレを聞きたいですから。
もしも謎の介入者が2人なら…戻ってきて欲しいです。
私も冥沙達も、もう8年も2人の帰還を待ってるんですから……
でも、ルナとナノハだとしたら何故こんな事を?
如何して犯罪者相手とは言え、八つ裂きにするような攻撃を加えた上にリンカーコアの完全破壊なんて…
少なくとも8年前では考えられない事です。
もしも貴女達なら、一体この8年の間に何があったんですか……?
その8年の間の出来事が、生きていても私達の元に返ってこない理由なんですか?
貴女達は何を思い、何を望んでいるんですか…ルナ、ナノハ…
To Be Continued… 