Side:星奈


 「此れがアタシ達の新しいデバイス…」

 「す、凄い…」

 「気に入りましたか?」

 入隊から随分経ちましたし、日々の訓練でアナタ達の力量も高くなっています。
 ナカジマ家の面々とティアナは魔導師ランクも昇格していますし、エリオとキャロも力を付けています。
 自作のデバイスも壊れてしまうくらいに熱心な訓練の賜物でしょう。

 技術部のマリーとシャーリーで作ったハイスペックデバイス故に、力量が伴わないと危険だったのですが…今の貴女達なら大丈夫ですね。

 「デバイスは魔導師や騎士の大切な相棒です。
  大切に、ですが彼等の性能を限界まで引き出すように使ってあげてください。」

 「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」


 良い返事です。
 これからも慢心せずに励んで…


 ――ビーっ!ビーっ!!


 …緊急アラート?


 『星奈よ。』

 「冥沙…緊急アラート……問題発生ですか?」

 『うむ。山岳地帯にガジェットが多数出現した――狙いはモノレールだ!
  そのモノレールから『レリック』の反応が検出されたのでな……其れを狙っているのだ!』


 なんと……其れは見過ごせませんね?


 『うむ。我と小鴉は司令塔として指揮に当たるゆえ現場には出れぬ。
  ……小鴉からの命令だ、スターズとライトニング…出撃せよ!!』


 「了解しました。」

 ……さて、そう言う事です。
 モノレールの護衛とガジェットの掃討は私達武装隊が行なうことになりました。
 初の実戦で緊張はあるでしょうが、各々ベストを尽くして事に当たってください。


 「「「「「「「了解!!」」」」」」」


 さて、お仕事と行きましょう。
 頼みますよ、ルシフェリオン…!


 『All right.』











 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福85
 『暴走列車を停止せよ』










 Side:なのは


 山岳地帯でキャッチしたガジェットとレリックの反応…此れは見過ごせないね。
 多分はやてちゃんの機動六課も出撃してるだろうけど、強化ガジェットだと苦戦は必須。

 少し、派手に行こうか?


 「良いんじゃないか?派手な方が印象にも残るだろう?」

 「自分達が苦戦した相手を軽く一掃したら、連中はどんな顔をするだろうな…楽しみだ。」

 「サイファー、アンタはホントに…まぁ良いけどね。…見えたよ!」


 うん、疾走するモノレールに群がるガジェット…六課の皆の方が先に着いてたみたいだね。


 ブラスト…ファイアー!!

 アロン…ダイトォォ!!!

 ヒートダスター。

 「エリアルショット…5連打(ゴルンダァ)っス!!」



 意外と出来るね新人さんも。
 特に蒼髪の子と2人の赤髪の子と栗毛の子は新人さんの中でも特出してる感じ。

 確かあの4人は姉妹なんだっけ?……だから動きに無駄が無いんだね。
 夫々が最も得意な間合いを維持しつつ、仲間の不得手な間合いをカバーしてる…最高のチームかな。

 けど、やっぱり強化AMF相手には少しばかり相性が悪いね…よし!

 「ガジェットの方は私とルナとサイファーで!ドゥーエさんはモノレールの制御とレリックの確保を!」

 「其れが一番ね…じゃあ行こうか?」


 うん!作戦開始!!
 先陣突破、ルナ、サイファー!!


 「「任せろ!!」」


 ――ズバァ!!!


 お見事…!
 AMFキャンセラーを搭載したデバイスならガジェットも敵じゃない。

 と、逃がさないよ!レイジングハート!


 『All right.Hyperion Smasher.』

 ハイペリオン…スマッシャー!!


 ――ドゴォォン!!


 よし、撃破!
 このまま一気に行くよ!!








 ――――――








 Side:ルナ


 「アンタ等は誰だ?」

 「お節介な民間人ということにしないか?取り敢えずお前達の敵ではないさ。」

 尤も其れで納得しろと言うのは無理な話だろうがな。
 だが、取り敢えずはガジェットの制圧とレリックの確保が重要だろう?

 ガジェットは私達で抑える……君はレリックの方を!


 「つってもよぉ…」

 「赤毛、お前達ではガジェットは難敵だろう?
  このガラクタは私達が排除してやると言っているのだ……さっさと行け。」

 「ちとムカつく言い方だが…でもその通りだな!…ワリィ、ここ任せる!!」


 あぁ、任された…だから思い切り行って来い。


 「おう!スバル、ディエチ、ウェンディにティアナ!モノレールを止めるぞ!そんでもってレリック確保だ!!」

 「ちょっとノーヴェ!?」

 「取り敢えず敵じゃねぇってんだから良いだろ。レリック確保してからジックリ聞きゃいい。
  指揮その他を頼むぜ、ティアナ!」

 「〜〜!分ったわよ!」


 ふむ…荒削りだが中々良いチームのようだな。
 此れは美由希や星奈達に相当鍛えられたな………


 「なに難しい顔をしている?」

 「いや、きっと地獄のような訓練を潜り抜けてきたんだなぁと…」

 「……そんなに凄いのか?」

 「凄いぞ?」

 美由希は私と互角にやりあえるくらいだからな。


 「ソレはまた……まぁ、その話はまた後でだな。」

 「合計40……「シューーーート!!」……20機に減ったな。」

 「マッタク余裕だ…と、マダマダ湧いてくるな?相当にレリックとやらが欲しいらしい。」


 みたいだな。
 数でこられると厄介極まりない……10分で片付けるぞ。


 「まさか…5分だろう?」

 「!……楽勝だ。」

 撃ち貫け!!


 ――バガァァン!!


 なんだ、強化型とは言っても表面装甲はそれほど強化してないのか?…存外脆いな。
 AMFキャンセラーがあれば敵にもならないか……ん?


 「…………」


 如何したんだ、あのピンクの髪の子は?
 デバイスが起動していない……初めての実戦で足が竦んでいる――と言う訳でもなさそうだが…


 「如何した?」

 「!!」


 あぁ、別に怪しい者じゃない。
 騒ぎを聞きつけてやってきたお節介な民間人とでも思ってくれ。
 ……見た所デバイスが起動していないようだが…何かあったのかな?


 「…………」

 「怖いか?………自分の力が。」

 「!!」


 図星か……『如何して分った?』と言いたそうだな?
 私も以前はそうだった事がある……この身の強大な力は滅びにしかならないと、半ば諦め抗うことを止めていた。

 だが、仲間を得て力の使い方を知り私は力と向き合う事が出来た。

 「その本質が如何であれ、力は所詮力であり、極論を言うなら道具でしかない。
  救いの力も邪な心で揮えば滅びを導き、滅びの力でも正しき心で扱えば救いとなる。
  全ては自らの心次第………君は自分の大きな力を使うなら如何使いたい?……それが、君の力の本質になる。」

 「私は……私は皆を守りたいです!大切な仲間と温かくて優しい場所を!!」

 「なら迷う事はない、其れで行けば良い。」

 「え?」


 君のその思いを力に込めろ。
 そうすればその力は君の正しき思いを叶えるモノとなる……と、また数が増えてきたな?

 私が言えるのは此処までだ……後は思うようにやってみると良い!


 「はい!…あ、あの…ありがとうございます。」


 ふ、まぁ頑張れ。


 さてと、遅れた分を一気に取り戻すか……失せろ――疾走居合い!


 『Slash.』


 ……花と散れ。


 ――キンッ……バァァァァァァッァァァァン!!


 「居合い切り一発で此れは流石に反則過ぎないか?」

 「絶刀なら一撃でもっと狩れるが?」

 「この極悪チートめ…シュテルも似たようなモノだがな…」


 今更だろう私達は?
 と言うか、お前とドゥーエも一般的な魔導師と比較したら充分チートだからな?


 まぁ良い、そろそろ終るだろう。
 さっきの子も迷いが吹っ切れたようだしね……成程『竜召喚士』だったのか――自分の力を恐れるわけだ。


 うん、六課の新人達の息の合った連携にアルザスの飛竜、更に私達も居るんだ、ガジェットなど敵じゃないか。
 …しかしスバルとノーヴェと言ったか?あの子達は格闘メインだからAMFはあまり障害じゃないみたいだな。


 『聞こえる?此方ドゥーエ、レリックを確保したわ。』

 「了解だ。ガジェットも間も無く掃討できる。」

 引き際くらいは弁えているだろう、流石に。
 無駄に戦力を磨り潰すような真似だけはしないはずだ……と思いたいんだがな。

 あ、レリックは六課に渡してくれ。
 私達が持って行くとなると余計な面倒が起きるからな。


 『OK。………ってちょっと待って!皆の居る所に転移反応!!しかも…魔力ランクS+レベルの!!!』

 「なに!?」

 転移反応…しかもオーバーSだと!?


 「スレイヤー!!」

 「シュテル!」

 お前も気付いたか!!……来るぞ!!


 「ふははははは!!下賎な屑共が…レリックは私が頂いて行く!!」

 「「「え?」」」

 「「「「「「「は?」」」」」」」


 誰だ?
 と言うか黒の全身タイツで黒いマスクして黒いマント纏って…

 …シュテルとサイファー、そして六課の諸君に問題です。
 今現れたコイツは一体なんでしょうか?


 「「「「「「「「「只の変態。」」」」」」」」」

 「大正解!」

 と言うか、こんなのがオーバーSだと!?
 管理局の一般魔導師が怒り臨界点で反乱起こすぞ!?


 「変態だと?…ふ、私のハイセンスなバリアジャケットが理解できんとはな!
  …まぁ良い、レリックを渡してもらおうか?……なに、大人しく渡せば殺しはしない。」

 「ソレは出来ない相談かな?
  レリックは私の仲間が確保したけど、ソレは六課に渡す事にしてるからね…ガジェットの残骸は貰っていくけどね。」


 シュテルの言う通りだ、お前に渡す物など無い…早急に立ち去れ。
 大人しく退けば痛い目を見ないで済むぞ?


 「ほう?あくまで聞かないか?ならば少し痛い目を見てもらおう!!」


 直射砲?…だが!!


 ――バガァァァン!!


 「な!?テメェ、そいつ等は局員じゃねぇ!詳細不明だが多分民間人だぞ!!」

 「其れに向かって攻撃なんて…傷害罪じゃすまないわよ?」


 「知らんな?逆らった方が悪いのだ!!」

 「…成程、一理あるかもしれないが……相手を間違えたな、お前。」

 「なに!?」


 「「「「「「「無傷!?」」」」」」」


 悪いが私達3人に魔導は一切効かない…殺傷設定であってもな。
 我等3人は魔導を行使しながらも、魔導が効かない『魔導殺し』だ…覚えておけ。


 「馬鹿な…!!」

 「そして、此れも覚えておくと良い……相手を仕留められなかった時、死は己に跳ね返ってくるとな!」

 シュテル、サイファー!!


 「スマッシャー!!」

 「クロウラー!!」

 「!!」


 辛うじて避けたか?
 だが、そもそも今のは囮………本命はこっち!遊びは終りだ!


 「な!?」

 「泣け!叫べ!そして……逝けぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ――ドォォォン!!!


 「ぐあぁぁあぁぁ!!」

 「未だだ!!」

 お前も最高評議会の傘下だろう?……魔導師としての命は今日此処で終りだ!!


 ――ズルリ…


 「わ、私のリンカーコアだと!?」

 「……お別れだ。」


 ――グシャ…!!


 「ぐあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 …意識を失ったか。
 まぁ、今回の襲撃はコイツが指揮していたというわけか……処理は任せるぞ六課諸君?


 「待ってください…貴女達にも同行を求めます。
  協力には感謝しますが、ですが犯人への過剰攻撃は見過ごせません……来ていただけますよね?」

 「断る。私達がお前達に従う義理は無いぞ公僕。
  よもや、実力行使で私達を如何にか出来るとは思っていないだろう?」

 「く…!」


 こらこら、あまり苛めてやるなサイファー。
 だが、悪いがそちらの言うことには従えない……今は未だな。

 それと犯人への過剰攻撃?
 こうしなければ此方がやられていた……コイツは殺傷設定で来ていたからね。
 何れ教わるだろうが、自分達が非殺傷だからと言って相手がそうとは限らない。

 戦いの場に出るなら、命を奪う覚悟と奪われる覚悟だけは常にしておいた方が良い。

 「まぁ、この場は退かせてもらうさ……隊長さんが来ると面倒な事になるからね。
  あぁ、同行は拒否させてもらうがレリックはそちらに渡しておこう……また会うことも有るだろうがね。」

 その時にまたな。


 「待って……!」


 ――シュゥゥン…!



 あっという間に転送完了と……便利だな本当に。
 ドゥーエもお疲れ様だ。


 「まぁ、此れくらいなら楽勝よ。」

 「少しばかりやりすぎたか?だが、連中には覚えられただろうな。」

 「あんまり印象良くないかもだけどね…」


 まぁ、私達はどちらかと言えばダークヒーローだ…此れくらいが丁度良いさ。

 だが、あの魔導師……私達の敵じゃないが、六課の新人達には手に余る相手だった。
 オーバーSの魔導師……最高評議会め、人工的にランクの高い魔導師まで作っているのか…!

 恐らくはやて嬢たちも、アイツを調べて何かに気付くだろうが……なんだこの胸騒ぎは?

 レリックでも人造魔導師でもエクリプスでもない……何か、何か巨大な力の存在を感じるのは一体…?
 最高評議会の目的は――最終的には一体何なんだ…








 ――――――








 Side:美由希


 「正体不明の武装グループねえ?」

 「はい。全員が凄い力で……コイツの砲撃もマッタク効いてませんでした。」


 現場に来てみて吃驚、全部終ってた。
 皆が頑張ったのかな〜〜って思ったら、謎の集団が助太刀…しかも其れがチートレベルの強さって…なんだかなぁ?

 しかもこの男の人を瞬殺して、リンカーコアまで破壊って…ドンだけ!?

 まぁ、その集団は間違いなく超一流の使い手の集まりだろうけど…
 
 !?……此れは!!!


 「美由希教官、どうしたっスか〜〜?」

 「あ、なんでもないわウェンディ、ちょっとその人達の強さに驚いただけだから。」

 「そッスか。」

 「そうそう、それだけ。」

 ふぅ、顔に出てたのかな?
 ……でも仕方ないわよ此れは……だって此処に僅かに残る魔力の残滓…

 ホンの僅かだけど、此れはルナとなのはの魔力の……!!
 若しかしたら違うかもしれないけど、別人と言うには似すぎてる…



 一体、何がどうなってるんだろう……













  To Be Continued…