Side:ルナ


 「此れが?」

 「あぁ、八神はやて君が新設した『機動六課』の主なメンバーだよ。候補メンバーも含めてね。」


 なんとまぁ、そうそうたる面子を揃えたものだ。
 八神家に冥沙達と美由希、其れにフェイトもか。
 此れだけでも十分すぎるだろうが、候補メンバーの大半は…


 「冥沙に懐いてたあの子達…」

 「ミッドに来ていたとは驚きだな。」

 まさかあの小さな子達が揃いも揃って管理局入りするとはな。
 まぁ、この子達の実力は未知数だが、美由希や冥沙達が鍛えるだろうから……うん、将来的には激強レベルは間違い無いな。


 うん、機動六課の事は良く分ったが、最高評議会のほうは如何だ?
 あからさまに自分達の対抗勢力である『機動六課』なんてものが出てきたんだ――何かしら動きがあると思うんだが…?


 「其れが表立っては碌に動いていないんですよ〜〜…チビたぬきちゃんに気取られないようにかも知れないんですけど〜。
  でも…裏では色々やってるみたいですわよ?
  8年前にお姉様達を落としたガジェットの強化改良型の大量生産と、レリックの探索なんかですわね。」


 アレの強化改良型だと!?
 いや、AMFキャンセラー搭載デバイスを持っている私達には意味が無いが、六課の面々にはキツイか…

 それと、レリック?…なんだソレは?









 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福84
 『夫々のスタートライン』










 「超高エネルギー結晶体で、第一級捜索指定ロストロギアだね。
  極めて危険な物質で、小規模の外的刺激で爆発する恐れのある言わば天然の爆弾だよ。
  恐らく『戦闘機人』『エクリプスドライバー』に継ぐ、第3の人造戦闘員、言うなれば『レリックウェポン』でも造る気かもしれないね。」

 「なんとも胸糞の悪くなる話だな…」

 「サイファー…うん、確かにそうだね。
  何処まで行っても外道は外道だよ…裏ではやてちゃんや私達に対抗する手段を用意してるんだ。
  それも自分達が正面切って出てくるんじゃなくて、他の誰かを利用して…!」

 「腐れ脳の考えそうな事だね……反吐が出るわ。」


 サイファーになのはにドゥーエ…その通りだな。
 己の手を汚す覚悟もなく人を利用するなど言語道断だ。


 ん?だが、此れくらいははやて嬢の方でも得ていそうな情報だが?


 「あぁ、勿論彼女もレリックの事は知っているよ?
  寧ろレリックの存在を、六課の存在意義にしたようなものだからね。」

 「如何言う事ですか?」

 「六課は表向きには『古代遺物管理部』となっているが、それだけでは余りにも範囲が広く不明確だろう?
  だが、目の前にレリックと言う分り易い物があれば、六課の存在意義は必要不可欠になる。
  まぁ、此れもまた彼女の手腕がモノを言った結果だがね。
  マッタク、随分と凄まじい者を後ろ盾につけたものだよ彼女も。
  伝説の三提督に、リンディとレティ、そしてクロノ君の管理局トップ3提督に、陸のトップのレジアス・ゲイズ。
  此れだけの後ろ盾があるならば、相当層の厚い部隊が出来上がる……最高評議会など相手にならないほどのね。」


 更に、部隊の武装隊は冥沙達とヴォルケンリッターの面々が居る。
 …正面切って六課に挑んで勝てる奴は、私達以外に居るのか?


 「「「居ない。」」」

 「即答か!…まぁ、確かに居ないだろうな。」

 とは言っても、最近の評議会の動きは読めないから楽観は出来ないが。
 常在戦場の心構えは持つとして、矢張り私達もレリックの回収、或いは破壊は行うんだろう?


 「其れが良いと思う。
  AMFキャンセラー未搭載のはやてちゃん達じゃ、ガジェットは厄介な敵になりかねないからね。」

 「そこで簡単に死なない身体と、AMFキャンセラーを持った私達の出番と言うわけか。
  とは言っても、表立って管理局に協力と言うわけにも行かないだろう?」


 そうだな、如何に違法研究施設とは言え、私達が此れまでやってきた事は一種のテロのようなものだ。
 表立って管理局と協力体制と言うのは難しいと思う。

 機動六課も最高評議会の解体は当然として、其れとは別に私達の事も探しているだろうからな。

 まぁ、何れは何処かで正体を明かして協力体制を布かねばならないだろうが…其れまでは極力接触は控えたい。
 取り敢えず違法研究所は全て叩き潰したから、レリックの確保さえさせなければ最高評議会の戦力が増える事もないだろう。

 外と中から逃げ場をなくしていけば良い。

 「当面は、ミッド各地に出現してるガジェットの掃討が主な仕事になりそうだな。」

 「うん、地道に、でも確実に破壊していかないとね。」

 「私達の敵じゃないがな……しかしだ、何故に毎度破壊したガジェットのモータやら何やらを回収せねばならんのだスカリエッティ?」

 「いやぁ、表立って色々な資材が調達できる立場ではないからね?
  使える物は何とやら、リユース&リサイクルと言うやつだよ。」


 そうだったのか!?
 いや、碌に資材調達が出来ていないのに施設の機能が向上してるとは思ったが…成程納得だ。


 まぁ、なのはの言うように、暫くは地道に堅実に…そして最終的には――だな。








 ――――――








 Side:蒼髪の少女


 よし、そろそろゴール!
 このまま行けば、時間内に余裕で着けるねノーヴェ、ウェンディ!


 「ソッスね〜〜。ティアナとディエチのタイムにゃ負けられねっスな!」

 「まぁ、ダチと姉つっても負けたかねぇな!けど、ゴール直前てのはお約束的に…」


 ――ゴゴゴゴゴゴゴ…



 出るよねボスが、やっぱり。
 う〜〜ん、3人だからかな?ティア達のときよりも若干大きくないこの仮想敵?
 倒すとしたら時間掛かりそう…


 「んじゃあ、倒さないで良いんじゃねぇスかね?アレの注意を一瞬逸らして、其の隙に横すり抜けて全力疾走すれば余裕で間に合うっスから。」

 「其れが一番だろうけどよ、アレの注意を逸らすってなると…やっぱオメェだなスバル!」

 「え?アタシ!?」

 若しかして『アレ』をぶっ放せって!?
 いやまぁ、効果的かもしれないけどまだ未完成だよアレ。


 「未完成であの威力かコラ…兎に角其れが一番なんだから頼むぜ?」

 「りょーかい。それじゃあ…」

 4年前の空港火災でアタシを助けてくれたおーさまおねーちゃん。
 一撃で瓦礫を吹き飛ばした、あの凄い技。
 我流で未完成だけど、頑張って使えるようになった!

 一撃必殺!!

 アロン……ダイトォォォォォォォ!!!



 ――キィィィン……バガァァアッァァアァァァン!!!



 「んなぁ!?前より威力上がってるじゃねぇか!此れで未完成とかどの口が言うんだお前!?」

 「え〜〜、だっておーさまおねーちゃんのはもっと着弾時の爆発が凄いし砲撃の幅も広いし射程も長いよ?」

 「あんなスーパーサイヤ人と自分を比較すんじゃねぇ!!」

 「てか、牽制の筈が倒しちゃったっスね♪」


 あれ?…まぁ、結果オーライだよね♪
 此れで余裕でゴール到着!!っと。


 ――ぱちぱちぱち



 「「「ん?」」」

 「うむ、見事であるぞ!全組の中で最速タイムで到着したな。
  最後のアレは…まぁ、録画映像を見ても牽制しようとしたのは分るからな、倒してしまったのは不可抗力としておこう。」


 この偉そうな喋り方は…!

 「おーさまおねーちゃん!」

 「お久しぶりスな〜〜♪」


 「ば、お前等!!この人、六課の副指令だぞ!?
  す、スミマセン高町副指令、こいつ等ちょっと適当に馬鹿な部分があるモンで…」


 む、馬鹿じゃないよ?
 こう見えても座学は主席だよ!


 「一部隊の副指令様にタメ口利く奴なんざ馬鹿で充分だ!」

 「ククク…いやいや、別に良い。
  階級なぞ所詮は飾りに過ぎん――我も八神総司令を小鴉と呼んでおるしな。プライベートでだが。」

 「良いんですかそれで…」

 「公私を分ければ問題あるまいよ。我も、お前達に副指令として話しかけた訳ではないからな。
  だが、公の場では、まぁ上司に対しては敬称か役職・階級を付けて呼ぶようにな?我との約束ぞ?」


 はい!


 「はいっ!」

 「はいっス!」

 「うむ、良き返事だ!では中に入れ……合否と配属先を発表するのでな。」

 「「「はい!!」」」


 発表か〜〜…さっきの評価だと受かってるっぽいけど油断は禁物。
 あ、ティアとディエチも合格してると良いな〜〜。
 やっぱり、同じ部隊にスカウトされた以上は、一緒に働きたいモンね。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「それじゃあ全員揃ったね〜〜はっぴょーするよ〜〜♪」

 「「「「「「「「「「ノリ軽!!」」」」」」」」」」


 あはは…おーさまおねーちゃんの妹さん…雷華さんが発表役だったんだ。(苦笑)
 確かにノリ軽いけど、逆に皆の緊張解けてるよね?

 
 「其れを狙ったんじゃねぇか?ガチガチに緊張しまくってるよりは良いだろ?」

 「そっスね。…しかし、あの人も10年前から性格変わらねっスな。」

 「だね。」

 受かってるかなぁ?


 「ん〜〜〜〜とね、うん、君達全員合格!」

 「「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」」

 「流石は王様と小鴉ちんが選抜しただけあって皆ゆーしゅーだよ。
  けど、この中から機動六課の武装隊に配属されるのは8名!
  そして、その武装隊のうち1名は外部からの出向者で決まってるから、じっしつ7名。其処は理解してるよね?」


 やっぱり武装隊――スターズとライトニングに配属されるのは事実上7人なんだ。
 外部出向者って人はきっと凄く優秀なんだろうなぁ…


 「それじゃーはっぴょーするよ!先ずは…『エリオ・モンディアル&キャロ・ル・ルシエ組』!」

 「「は、はい!!」」

 「お見事!さいねんしょーで全体3位の成績はすごいぞーー♪
  流石はへいとが育てただけの事はあるって感じ!期待してるよ〜〜ん♪」

 「「はい!!」」


 うわぁ、あの子達あんなに小さいのに合格したんだ…凄いなぁ…
 残りは5人。
 3人のチームが選ばれたらアタシ達は落選て事になるけど…


 「次は…『ディエチ・ナカジマ&ティアナ・ランスター組』!総合成績1位って凄いね君達!」

 「あ、ありがとうございます!」

 「ありがたく拝任します…。」


 ティアとディエチ!すご〜〜い!総合1位だったんだ!
 ん?普通総合1位って最後に発表しないかな?…まいっか。


 「そして最後は……『スバル・ナカジマ&ノーヴェ・ナカジマ&ウェンディ・ナカジマ組』!最終試験はぶっちぎりの1位!おめでと〜〜!!」

 「「「!!!」」」


 武装隊に選ばれた…ナカジマ家全員!!
 や…


 「「「「やったーーーー!!!」」」」

 「姉妹全員て、凄いわアンタ等マジで…」


 ティアも一緒だよ?
 頑張ろうね!!


 「あ〜〜、はいはい、私等だけじゃないからね?あの子達とも…ね?」

 「おう、当然だな。」


 後で挨拶しないとね。


 「それじゃーこれではっぴょーはお終い!
  武装隊から漏れた人も、ゆそー部隊や事務に回されるから、ソレは各自につーたつが行くからそのつもりで〜〜。
  とにかく、これからこのメンバーは機動六課の仲間だから息を合わせてバッチリやっていこーー!!」

 「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」


 さぁて、機動六課の隊員として頑張らなきゃ!!

 ん?あれ、でも武装隊って事は凄く強い人達との訓練があるんだよね?
 確か六課の教導官ておーさまおねーちゃんのお姉さんじゃなかったっけ…?


 …うん、死なないように頑張ろう!!








 ――――――








 Side:キスティ


 機動六課ね……目障りな部隊を作ってくれたものだわ。
 まぁ、所詮は寄せ集め――私の力で潰してあげるけれど…


 「キスティ博士、首尾は如何だ?」

 「問題ないわ。戦闘機人も、クローン戦士もガジェットも完璧に仕上がっているわ。
  私もエクリプスと馴染んでいるしね……」

 感謝してあげるわ彼方達には。
 私を牢獄から連れ出して、しかも力を与えてくれたんですもの……この絶対的な力を!


 「ソレは良かった…。
  しかし、よもや管理局の真下の地下数100メートルにこんな場所がある等とは誰も思いはしないだろうね。」

 「でしょうね……まぁ、各地に点在していた研究施設に目が向いたようだし…正直此処が無事なら如何とでもなるわ。
  期は熟したしそろそろ始めるのでしょう?……あの脳味噌共も待ちきれないでしょうし。」

 「…脳味噌か。本人が聞いたらどんな反応をしたものか…」


 本当の事でしょう?
 まぁ、助けてもらった恩もあるし、働いてあげるわよ……邪魔者を残らず叩き潰すまでね。


 さぁ、始めましょうか……壮大なショーを!
 ミッドチルダ全域を舞台にした、血と破壊に彩られた地獄のショーをね!


 精々絶望と恐怖を楽しむと良いわ。

 うふふふ……あははははははははははははは!!!!













  To Be Continued…