Side:星奈


 ナノハとルナが行方不明となり1年が経ちました。
 未だ2人に関する有力な情報はありませんが、私達が存在している以上は生きているのでしょう。

 私達の存在がモモコやシロウ、引いては高町家や彼女達に縁ある全ての者に希望を与えているのでしょうね。
 ですが、無事ならば何故戻ってこないのでしょうか?

 1年が過ぎても治りきらないほどの重傷を負っているのか、或いは戻ってこれない理由が有るのか…

 まぁ何が如何であれ、私達は2人の帰還を待つのみです。
 正局員になるのは小学校を卒業してから…ソレまでは辛抱です。

 無論ソレまでに2人が戻ってくれば最高ですが、そうでない場合は正局員になったら即刻2人を探しに出ますよ。
 ソレこそあらゆる次元世界を虱潰しに!!


 「おぉ、星奈んが燃えている…」

 「本より炎属性であったが…まるで燃え滾るマグマの様だの…」

 「星奈凄いです〜〜♪」


 今の私の焔は太陽すら凌駕しますよ?

 と言うか冥沙とゆうりは良いとして、雷華も動いてください。
 日曜日の翠屋は戦場なんですから。

 止まってる暇は無いですよ?


 「了解〜〜♪」


 さて、お仕事を頑張りますか。










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福80
 『Ready to Set up!』










 忙しいとは言え此れもまたいいことですね。
 ナノハとルナが行方不明になった時には翠屋の運営が出来ないほどでしたから。

 今ではモモコも立ち直って以前の様に戻っていますね。
 故にこの忙しさも嫌いではありませんが…


 ――リンリ〜〜ン


 「あ、いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか?」

 「ううん、持ち帰りで。
  ショートケーキとシュークリームを6個ずつお願いできるかな?」

 「畏まりました。」

 ショートケーキもシュークリームも1つ150円なので、合計で1800円になります。


 「じゃあ2000円で。」

 「2000円お預かりして…200円のお返しに…」

 「♪」


 って、何をしているんですかなはと?


 「〜〜♪」

 「な、この子は?」

 「…申し訳ありません、当店のマスコット的存在です。
  余りお客様になつく事は無いのですが…」

 戻ってくださいなはと。
 一体どうしたと言うのですか?


 「!!〜〜!!!!」

 「この人からルナと同じような気配を感じた?…意味が分りません。」

 そもそもまるで似ていないでしょう?
 まぁこの方も極上の美人に入る部類とは思いますがルナとは全然似ていませんよ?勘違いでは無いのでしょうか?


 「きゅ〜〜ん…」


 あの…そんなに落ち込まないで下さい、物凄い罪悪感に苛まれますので…

 と、申し訳ありません横道に逸れました。
 2000円ですので200円のお返しになります。


 「良いよ、中々可愛い子だね?…此れは売り上げに貢献してくれてるんじゃない?」

 「えぇ、正に。この子は看板娘と言っても過言ではありませんので。」

 「だろうね…まぁ、買ったお菓子は家に帰って堪能させてもらうわ。
  気に入ったらまたくるね?」

 「是非に。」

 ですがモモコの味力に果たして抗えるかどうか…
 今後とも是非ご贔屓に願いますね?


 「多分そうなるかもね。」


 だといいですね。
 さて、なはとは所定の位置に戻ってくださいね?








 ――――――








 Side:ドゥーエ


 危なかった…まさかあのキツネみたいなのに勘付かれるとはね。
 あの子が人語を話せないのが救いだったか…

 なんかあの子達にも悪い事をしてるね…
 本当ならルナとなのはの無事を知らせてやりたいけどソレは出来ないから。

 取り合えず無事で平和だと言う事をなのはに教えてやれるのは良いか。
 ソレに最高だって言うスウィーツも手に入ったからね。

 さてドクターの所に転移…っと…


 で、此れどういう状況?


 「やぁ、おかえりドゥーエ。状況は如何だったかな?」

 「はぁ、高町家は皆無事ですが…ではなくて何してるんですか此れ?」

 「ふむ、見てのとおり模擬戦だよ。
  なのは君もルナ君も1年間のリハビリですっかり回復したからね、戦闘の勘を取り戻すために模擬戦を行っているのだよ。」


 戦闘的リハビリってところか…けど仮想敵が敵になってないですよね此れ。


 「そうなんだよねぇ…彼女達に深手を負わせたガジェットを模したんだがまるで敵じゃないね。
  強化改修したデバイスも彼女達の手に馴染んでいるようだ。」

 「そう言えば結構な改修をしていたようですが…如何変わったんです?」

 なのはの『バスターカノン』は見たまま相当に変わっていますが…


 「うむ、主な変更点としてレイジングハートはバスターカノンの形状変化と新装備の追加だね。
  バスターカノンは此れまでよりもより『砲台』としての機能を高めたのだよ……そのせいで最早『杖』とは言い難い形状だがね。」

 「殆ど大型のキャノン砲(Forceのストライクカノン)に…」

 まぁ、砲撃型のなのはにはピッタリだと思うけれど。
 追加装備は独立機動ユニット『イージス』と『ドラグーン』、どっちもビット兵装でイージスが盾でドラグーンが砲台か。

 ルナのブライトは随分スッキリした感じになってる気がしますけど?


 「ブライトの方は次世代型の融合デバイスの機能を転用したのさ。
  起動時には使用者に『装着』されるのではなく、使用者の四肢と『融合』していると言った方が正しいかな?
  アレを使用中のルナ君の四肢は正に鉄拳と鉄脚と言ったところだね。」


 ソレはまた…月影の方は特に弄らなかったので?


 「外見的には…だが新たに刀身に魔力刃を纏えるようにした。
  物理的切断力と魔力的切断力の双方を使えるように……まぁアームドデバイスとしては最高の物が出来たと自負しているよ。
  尤も、ソレ等も彼女達という至高の使い手だからこそその能力を120%引き出せるわけだがね。」


 ソレにしたって幾らなんでもリハビリ終了直後とは思えないんですがあの強さは…
 この仮想敵は、一応AMF搭載なんでしょう?


 「無論搭載しているよ?
  そうでなくてはデバイスに搭載した新たな装置『AMFキャンセラー』の機能テストは出来ないからね。」

 「AMFキャンセラー!!…成程、それならアレが相手でも本来の自分の力が十二分に発揮できるって訳か…」

 「その通り…実はこの模擬戦を始めて未だ15分ほどだがね、彼女達が何機落としたと思う?」


 何機って…120機ほどかな多分。


 「いやいや……何と既に500機以上だよ。
  AMFキャンセラーも巧く機能しているからね、なのは君の砲撃一発で50は消し飛ぶ。
  砲撃の射線上から外れたのはルナ君とドラグーンが殲滅しているからね……マッタク恐ろしいコンビだよ。」

 「なのはも近接は出来るけど、本領は砲撃……ルナはオールラウンドでクロスレンジは特に強い。
  オーソドックスな前衛後衛陣形の究極型というとこですね此れ…」

 成程、脳味噌共が危険視するわけだ…

 ん?そう言えばクアットロは………そう言えばこのガジェットの動きは…
 ドクター、このガジェットを操っているのはまさか…


 「クアットロさ。自分で動かしてみたいと言うのでね。
  地下最深部のコントロールルームで操っているんじゃないのかな?」

 「あそこか…」

 特殊電子キーが必要なあの部屋ね。
 安全な場所に身を置いて攻撃って言うのは戦闘力皆無のアノ子にとっては常套手段だけど相手が悪すぎるわ。

 ソレにそろそろあの2人だってカラクリ『見破る』と思うよ?


 ……取り合えずクアットロ御愁傷様。
 アンタの分のケーキとシュークリームは代わりに食べておいてあげるわ…








 ――――――








 Side:クアットロ


 ウソ……幾らドクターが改造したデバイスがあるからってこんな…!
 そろそろ戦闘開始20分になるけど…たった此れだけの時間で600機近い仮想敵が殲滅されるなんて…!

 でも、確かに凄い戦闘力だけど…私を止めない限り仮想敵は無くならない。
 幾ら強くてもそれだけじゃあ…



 ――ヴン…



 !!

 「此れは…あの子の誘導弾?…まさか!!」

 エリアサーチ!?
 模擬戦が始まってから今まで、ずっと私を探してた?


 『見つけたよ、クアットロさん♪』

 「まさかこんな広域サーチが出来るとは驚きだわ〜〜…」

 だけど此処は最深部。
 専用のエレベータでしか来れないし、ドアは特殊電子キーを使わないと開けられない。
 幾ら見つけても此処まで来る事なんて…


 『レイジングハート!』

 『ブライトハート!』

 『『カートリッジフルロード!!』』


 『『All right.My Master.Load Cartridge!!』』


 え?


 『『ディバイィィィン…バスターァァァァァァァ!!!!』』

 『『Kill You!!』』


 壁抜き!?そんな馬鹿げた事が…馬鹿げた事が…



 ――ドッゴォォォォン!!!!



 うっそ〜〜……
 外れたとは言え地下100階までを撃ち抜くなんて…


 『どうやら此処までの様だねクアットロ。
  君の戦術も悪くは無かったが、相手が悪すぎた……』


 「ドクター?」

 『君の負けだよ…潔く散りたまえ、君を送るBGMも用意してある。』


 いや、要らないですよそんなの〜〜。
 それに外れた以上、更にそれを上回る攻撃なんて…


 「何勘違いしているんだ?」

 「ひょ!?」

 「私達のバトルフェイズは、まだ終了していないの!!!」


 『ふむ…ではポチッとな。』


 ――タ〜〜タラタ〜タララ〜〜…


 この音楽は!!


 『クリティウスの牙…別名『眼鏡処刑BGM』とも言われているね。
  ……まぁ頑張りたまえ、彼女達の力を其の身に刻み込む良い機会だろう♪』


 「えぇぇぇぇ!?」

 そんな機会は要りません〜〜〜!!


 「フルバーストバスター…セット!!」

 『All right.Standby Set up.』

 「この魔力刃の威力を試してみるか…」

 『Die.』



 あ、あぁ…いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!








 ――――――








 Side:ルナ


 よし、殲滅完了!
 私達の力に疑問があったようだが、納得したかクアットロ?


 「……………」

 「クアットロ?」

 「クアットロさん?」


 非殺傷とは言えやりすぎたか?
 ……私となのはも1年振りの魔導行使で張り切り過ぎた…かな?


 ――グワバ!!


 「「!!!」」


 ど、如何した!?
 行き成り起きるな、驚くだろう!


 「素敵……」

 「「は?」」

 「私の謀略策略たっぷりの戦術を力で打ち破るなんて…更には模擬戦でも手を抜かないその心意気…素敵ですわぁ…
  是非、是非お2人の事を『お姉様』と呼ばせて下さい〜〜〜〜♪」


 何故そうなる!?
 大体、私は兎も角としてなのはよりもお前の方が年上じゃないのか?


 「外見はそうですけど〜、稼働時間で言えば10年に満たないもので〜〜、なのはお姉様よりも年下かも〜?
  ねぇ、良いでしょう……お姉様…♪」

 「にゃぁぁあぁ!?」


 ま!お前何してる!?
 なのはに抱きつくな、しな垂れかかるな、耳に息を吹きかけるなぁ!!!

 「なのはから離れろぉぉぉ!!覇ぁぁぁぁ…疾風迅雷脚!!!」

 「怪しい事をするな、この愚妹がぁぁ!!!エックスキャリバー!!!」



 ――ガッスゥゥ!!!



 「はぶっ!!」

 「マッタク…お前の怪しい毒牙に掛けるんじゃない、トラウマになったら如何するのよ?」


 本当にな……大丈夫かなのは?
 変態は私とドゥーエでやっつけたから安心しろ。


 「ふぇぇぇん…怖かったの〜〜…」

 「ゴメンねなのは、この変態はもっとキッチリ〆とくから。」

 「変態だなんて酷いですわ〜〜。」

 「…私とルナをモデルにして怪しい本作ってる奴なんて変態で充分よ。」

 「GLやBLが嫌いな女子なんて居ませんわ〜〜♪」


 ソレは絶対に間違っている!
 と言うか勝手に人をモデルにするな!!それ以前に作るな腐女子!!

 取り合えずそれらの本は見つけ次第処分をするとして、随分高速で来たなドゥーエ?


 「アンタ達が開けた大穴通ればエレベーター使うより速いからね。空飛べる事が前提だけど。」

 「成程。」

 ん?そのエレベーターが…


 「矢張り地下100階は直通でも時間が掛かるね?
  この大穴を有効利用するためにも簡単な飛行用ユニットを作る事を検討した方が良さそうだ。」

 「…一応重要施設ですから穴を塞いだ方が良いと思うのですが…」


 ドクターとウーノか…まぁその辺は後々に。
 此れで全員此処に集まったが――私達が戻るまで上に居てもよかったのに。


 「いやいや、実際に最終決戦地がどうなったか実際に見ておきたくてね。
  …ふむ、デバイスの性能は良し、君達の身体もすっかり回復したようだね。」

 「はい!もうバッチリ元気です!!」


 おかげ様でな、寧ろ前よりも私達自身の力も増している様だ。
 改修してくれたブライト達の性能も申し分ない。

 もう何時でも動く事は出来るぞ?


 「その様だね――此方もウーノが1年間で可也な量のデータを集めてくれたから情報も充分にある。
  ……始めるとしようか、最高評議会への反抗を。」


 いよいよか……先ずは連中の戦力の増強を少しでも止める為に違法研究施設の破壊だったか?


 「そうなります……戦闘行為はルナさんとなのはさん、それとドゥーエで行うことになりますが……良いんですね、なのはさん?」

 「……はい。」


 …本当に大丈夫か?
 此れからの戦いは此れまでとは違う――非殺傷設定を解除して行わなければならないんだぞ?


 「大丈夫…覚悟は出来てるし、殺されかけて初めて分ったから――認識が甘かったって。
  幾ら私達が非殺傷設定であっても、相手もそうとは限らないの。
  フェイトちゃんもシグナムさんも、私達を殺傷する事が目的じゃなかったから非殺傷だっただけ。
  相手が殺傷モードなのに自分が非殺傷なんて…そんなの本物のピストルに玩具のピストルで挑むようなものなの。
  ソレに…私とルナを殺そうとした人達に情けを掛ける程、馬鹿な慈悲深さは持ち合わせてないよ。
  オリヴィエもそうだったけど、やるべき時にはやらなきゃならない…此れは私の信念なの!!」


 成程…流石と言うか何と言うか――ソレでこそなのはだ。
 力に覚悟と責任を持ち、己が信念を貫き通す……そう来ないとな、我が主よ。

 ふむ、ちょっと失礼。


 「ふにゃ!?る、ルナ、顔が近いの///!」

 「……うん、澄んでいるな。」

 「ほえ?何が?」


 お前の瞳だ。
 人を傷付ける……最悪殺める覚悟をした人間は、その覚悟が負の方向に向かい瞳が淀み、濁る。
 その結果最初の目的を忘れて『人殺し』の邪道に堕ちるんだが、お前は大丈夫そうだ。

 尤も、大戦期のオリヴィエの記憶を取り戻したお前ならば戦う意味を履き違えて忘れる事は無いか。


 「大丈夫!ソレに間違いそうになったら止めてくれるでしょ?」

 「あぁ、勿論だ。」

 「殴ってでも止めてやるから安心して良い。」


 ドゥーエもこう言っているしな。


 「ふむ、素晴らしい!此れは最高のチームだよ!!
  では宣言してくれたまえなのは君!彼等への反抗を!!」

 「はい!……今この時より時空管理局最高評議会への反抗を――白夜の聖王・高町なのはの名に於いて宣言する!!」


 決まったな!


 覚悟しておけ最高評議会の老害達よ。
 今は未だ、お前達を直接的には叩かないが……己を狩ろうとする者達の存在に精々怯えるといいさ。



 そして後悔しろ、私となのはを殺そうとした己の愚行をな…!!












  To Be Continued…