『星と月の力は強大なれど、星と月は其の力を世界の為に揮わんとする。
  されど法の番人の闇は其の力を恐れ、星と月を砕かんと謀略を巡らすだろう。
  しかし、星と月は傷つけど砕かれる事ならず。
  法の番人の闇を知る時、星と月は地獄よりの使者と化す。
  なれど、法の番人其の事実に気付く事はあらず。
  滅びか救いか……どちらの道に進むかは夜天の主によってのみ決定される…』

 ――
聖王教会騎士:カリム・グラシアの予言より










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福76
 『Break The Reinforce』〜砕かれた祝福〜










 Side:なのは


 ルナ達と出会って早2年。
 私達は小学5年生になりました。


 「だ・か・らソレは絶対に着ないと言ってるだろう!何度言えば分るんだ桃子ぉ!!」

 「じゃあ代替案としてこっちの花魁風和服ね♪」

 「全力で拒否する!!燃えつきろぉぉぉ!!!」


 そしてルナと母さんは相変わらずなの。
 最近はルナが拒否した衣装は問答無用で燃やされて…ルナは何時の間に炎熱系を覚えたんだろう?

 ソレは兎も角、今年の春先には色々有ったの。

 先ず、お兄ちゃんが忍さんと結婚。
 忍さんは新しいお姉ちゃんになって、すずかちゃんは私の妹なの♪

 アリサちゃんは『なのはがすずかの姉って違和感あるわね…』って言ってたけど、誕生日は私の方が先だも〜ん。

 それから、はやてちゃんが歩けるようになった!
 一生懸命頑張って、遂に今年の春に車椅子無しでも歩けるようになったの!

 はやてちゃんもシグナムさん達も嬉しそうだったなぁ…


 私に、時々オリヴィエの記憶が戻る事もあった。
 なんか変な感じだけど、大抵は『夢』でその頃の記憶を見てる感じかなぁ…大変だったんだねオリヴィエ。
 クラウス殿下やエレミアも転生しているのかなぁ?
 してたら会ってみたいなぁ♪


 其れから此れが一番大きな事なんだけど……

 高校を卒業したお姉ちゃんが管理局に就職しました!


 「アレが一番驚いたのう…」

 「リンディとレティから直々のスカウトですからねぇ…」

 「ミユキさん凄いですぅ!」

 「ミユキの強さは折り紙つき!序でに僕等はしょくたくまどーし!」


 本当に驚いたの。
 レティさんとリンディさんが直々にスカウトに来るんだもん。

 私とルナ達は其れより前に『嘱託』としてお手伝いしてたけど、正局員とは驚き!
 まぁ、その時、私達にも正局員のお話しはあったんだけど、取り敢えずは保留。

 まだ小学生だし、じっくりと決めたいから。
 ルナもウェイトレス業との事を考えて返事は保留状態。

 けど、特に進みたい道が決まってなかったお姉ちゃんには朗報だったみたい。
 お父さんとお母さんと相談して、入局を決めたの。

 にゃはは、若しかしたら将来はお姉ちゃんが上官なんて事もあるのかも♪


 ともあれ充実した楽しい日々を送ってるの。
 嘱託として魔導師のお仕事もキッチリこなしてるし、学校の勉強も魔法の勉強もバッチリ♪

 お休みの日にはルナと一緒にウェイトレスをやって……本当に言いようが無いくらいの充実さ。





 けど、充実しすぎてたから――きっと気付かなかったんだね。



 私に――うぅん、私とルナに暗い欲望から、破滅の魔の手が伸びてる事には…








 ――――――








 Side:ルナ


 「寒いの…」

 「辺り一面雪だからな…ブライト、今の気温はどれくらいだ?」

 『−30℃.』


 なんとまぁ…騎士服やバリアジャケットでも防ぎきれないわけだ。
 嘱託として任務を受けたが、よもやこんな場所での任務だとはな…

 まぁ、後ろ暗い違法研究をやってる連中からしたら身を隠すのに絶好の場所なんだろうが…妙だな。

 貰ったデータ通りなら、この付近に違法研究の研究所があるはずなんだが…何処だ?
 針葉樹の林が有る以外は一面の雪原で其れらしい建物は見えないが…


 「若しかして地下にでも埋まってるのかなぁ?」

 「可能性は0じゃないだろうが…」

 其れにしたってどこかに不自然な『何か』があっても良い筈だろう?
 まして此れだけの雪原で、仮に地下に研究所を設けたとしても、入り口を完全に隠すのは難しいんじゃないか?

 こんな場所だったら、どれだけ巧く作っても人工物は直ぐに分るだろう?


 「言われてみれば確かになの。
  う〜ん…それじゃあ、実は貰ったデータが間違ってたとか?」

 「其の可能性も無い訳じゃないが…」

 何なんだ、この胸騒ぎは?
 まるで此処で良くない事が起きるような嫌な予感は…


 『『Master.』』

 「ブライト?」

 「レイジングハート?」

 『Emergency.It approaches at a high speed.』

 『Caution.It comes.』



 何かがこっちに向かって来ているだと!?
 一体何が…



 ――ギチギチギチ…ガシャン…!



 「な!此れは…!!」

 「ジュエルシードの時の、傀儡兵!?」


 いや、良く似ているが――違う。
 少なくとも魔力駆動じゃないな、一切魔力を感じない。

 ……研究所の警備兵と言った所か?
 そうなると矢張り近くにあるんだろうが――

 「取り合えず御退場願おうか?」

 「そうだね。悪いけど、退いてね!!」

 『『Divine Buster.』』


 ?…何だ?何か違和感が……って馬鹿な、無傷だと!?
 私となのはの砲撃をマトモに受けて?まさか…有り得ない!

 巨大ビル10個を元の形が分らなくなるくらいに出来る威力があるというのに…!

 「く…貫け、風神爪牙!」

 アクセルシューター!


 !!又だ、何だこの違和感は?
 何時もよりも魔力が低い?……いや、魔力の結合が弱い?
 いや、だとしても何故?


 ――ウィィィィン…


 !!アレは!!く…そういう事か!!

 「なのは、近接戦に切り替えよう。こいつ等に射撃や砲撃は効果が薄い!」

 「ふえ?どう言う事?」


 今、私とお前の射撃が当たる寸前に見えた――アレには恐らく『魔力結合阻害機構』が備えられている!


 「若しかして古代ベルカの戦乱期に開発されてた『アレ』!?」

 「オリヴィエの記憶か?なら説明せずとも分るだろう?」

 「うん…確かにアレが相手じゃ砲撃はあんまり相性は良くないね。」


 最近の資料ではAMF――アンチ・マギリング・フィールドなんて呼ばれ方もされているようだがな。
 防護服やデバイスを解除するほどの強さは無いが、固定形態でない砲撃や射撃は分解されるか…

 それで、初撃のバスターも効果が薄かったと言う事か。

 だが、正体が分れば何と言う事はない。

 「撃って放ってダメなならば!」

 「叩いて殴って砕くだけなの!!」



 つまりそう言う事だ!
 来い月影、消え去れ…絶刀!!


 『Die.』

 ディバインスティンガー!!

 『Stinger.』


 さぁ、殲滅開始だ!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「はぁ、はぁ……ど、どれだけ倒した?」

 「はぁはぁ…く…3桁は下らないの…!」


 一体どれだけ沸いてくる、こいつ等は…?
 如何に私となのはでも…かれこれ2時間以上休み無しで戦っていると流石に疲労は誤魔化せないな。

 倒せど倒せど現れる機械兵…だが、何故管理局からの増援が来ない?
 数が多くなってきたところで増援要請をしたのに…!


 『ゴォォン…!』

 「ちぃ…!真・昇龍拳!!!」

 『Riging Dragon.』


 いい加減厳しいな…私もなのはも反応速度が少しずつ鈍くなっている…このままだと…!


 「きゃあ!!!」

 「なのは!?」


 しまった!!鹵獲型の機械か!!
 今助ける…


 ――バガァァァン!!!


 「え…?」

 爆発?…自爆兵器!?
 なのは!!!!!


 「あ………」

 「く…バリアジャケットのおかげで致命傷には至らなかったか…」

 だが、幾らなんでも傷が深すぎる!
 レイジングハートも……大破か、最悪だな。

 おまけに…!


 『『『『『『ギギギ…』』』』』』


 新たに次から次へと…!
 鬱陶しい!大人しく消えろ!!


 『Die.』


 ――ババババババ!!



 絶刀で一網打尽だが…限がない。
 ブライト、トランザムを!
 能力9倍で一気に終らせる!
 なのはの事もあるからな!!


 『All right.My Master.Tran−S・A・M Driveignition.』


 9倍能力なら軽減されてもお前達を静めるくらいは容易い!
 無に帰せ…無か――ザシュ…!………え?


 『Master!!』


 此れは…私の…腕?

 「う、うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」

 空間攻撃のために振り上げた所を狙われたのか?
 く…最悪だ…、消耗状態で、しかも片腕じゃあこの大群は…!!


 「うぅ……」

 「…なのは…!」

 だが、だがそれでもなのはは絶対に護る!!
 例えこの身が朽ちようと、絶対に…!

 ブライト、全魔力解放!そしてカートリッジをフルロード!
 後の事はいい、こいつ等を纏めて吹き飛ばすぞ!


 『Master……All right.Load Cartridge.Buster Rage!』

 「吹き飛べぇぇぇ!!!」



 ――バガァァァァン!!!!



 どうだ…此れが人の『必死の力』だ。



 く…限界か…!


 ――ドス…


 「がはっ…!!」

 ま、マダ居たのか?
 く…急所は外れたが胸を貫かれたか…!

 不味いな、出血が酷いしこの寒さでは……


 『『『『『ギャギャギャ…』』』』』


 しかもまだ現れるのか?
 諦めたくは無いが……もう動けん……此処までか…


 「…ゲームオーバーギリギリで間に合ったかな?」

 「…?」

 誰だ?


 「取り合えず、アンタ等は邪魔。」


 ――バガァァン!!



 なんとまぁ、あの数を一撃でか…
 やっと増援が来たのか……ホント、ギリギリだが……間に合ったか…








 ――――――








 Side:???


 はぁ…ギリギリ過ぎた…。
 てかヤバイよ…2人とも『死んでない』レベルだ。

 特にこっちの融合騎…如何にプログラム生命体でも胸を貫かれたら…しかも右腕も失ってる。
 聖王様の方も致命傷じゃないか…!


 『2人は確保できたかい?』

 「ドクター…一応は。
  ですが非常に危険です…一応応急処置を施しておきますが2人とも危険域です。
  更に融合騎の方は右腕を切断されていますので再生治療が必要かと。」

 『ソレは又酷いな…分った、直ぐにクアットロに命じて準備をさせよう。
  君は直ぐに2人を此方に連れてきてくれドゥーエ。』

 「了解しました。」

 さてと…じゃあ回収しますか。
 聖王様はマダ子供だし、まぁ2人位なら運べるか。

 それにしても…

 「こんだけボロボロになってもご主人様を護ろうとするなんてね…
  プログラム生命体なのに、人以上に人らしいよ……あの脳味噌共とは偉い違いだ…」

 だから、少しだけ頑張ってよ?
 アンタも、アンタのご主人様も必ず助けてやるからさ。

 アンタ等を失うわけには行かないんだ……私等の為にもね。


 さて、帰ろうか…








 ――――――








 Side:シグナム


 「此処か!!」

 「おい、返事しろ高町なのは!!!」


 リンディ提督の要請で来た場所は…まるで戦争のあとだな。
 砕けた機械に抉れた大地……どれだけ激しい戦いがあったのだ?


 いや、それ以上にルナとなのはは何処だ?
 ルナからの『増援要請』をリンディ提督がキャッチしたからこそ私とヴィータが来たんだが…


 「何処にも居ねぇ…あいつ等がやられるとは思えねぇよな?」

 「ソレはそうだが…逆にあの2人が増援要請となるとそれだけの相手だったのだろうが…」

 だが、それでもオカシイ。
 そもそも、リンディ提督はらしくないほど慌てていた…何時もなら冷静に出動を言うだろうに…
 其れに『あくまで秘密裏に』と言うのも……


 「お、オイ、シグナム!!!」

 「如何した……!!!

 此れは…!!人の腕!!しかもこの特徴的な指開きグローブは…!
 ま、まさかルナが…!

 其れによくよく見れば、雪の上に血痕が……まさか…嘘だろう…?

 「あ…あぁぁぁぁ!!!馬鹿な!!そんな事があってたまるか!!
  何処に居るんだルナ!!居るなら返事をしろぉ!!!!」

 「何処に居やがる高町なのは!!返事しろこのバカ!!!」


 ――シ〜〜ン……


 返事がない…そんな…!
 ルナよ…どうしてだ…如何してお前が…!!







 その後1時間、ヴィータと共に周囲を捜索したが遂に2人の事は見つからなかった。


 そして、高町リインフォース・ルナと高町なのはの2人がMIA(戦闘中行方不明)認定されたのは、3日後の事だった…


 ルナ……何故お前が…













  To Be Continued…