Side:ルナ


 季節は秋深まり、もう直ぐ冬。
 今宵はハロウィンで、皆で仮装の真っ最中だ。

 今年はテスタロッサ家と八神家も加わって去年よりも賑やかになるのは間違いないだろうな。


 それでだ…去年もそうだったし、そもそも仮装と言う時点で予想はしてたさ。
 あぁ、公然と仮装するイベントに貴女が黙っている筈が無いとは思っていた!

 だが其れを分った上で敢えて言おう!

 「桃子…『BMG衣装』と『キリン装備』は心の底から…もう分子レベルで力の限り全力で拒否する!!!」

 「え〜〜?」


 『え〜〜?』じゃない!!
 夏の浜辺は兎も角、冬も近い街中練り歩く仮装でこんな布面積が小さい服が着れるかぁ!!
 大体にして今の季節じゃあ寒いだろう!

 私に風邪を引けというのか!!


 「…そうね…ルナが寝込みでもしたら大変ね…仕方ないわね…仮装はなのは達に任せましょう♪」

 「お前…端からやる心算無くて私をからかっていたな…?」

 「さぁ?♪」


 絶対そうだ!
 ふぅ…マッタク……まぁ良い、じゃあなのは、頼めるか?


 「うん!任せて!」


 さて、なのははどんな物を私に用意してくれたんだ?










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福75
 『Trick or Treat?』










 「何だ、私以外は皆仮装は終わっているのか。」

 「うむ…まぁ、似合っているであろう?」


 あぁ、良く似合っているよ。
 冥沙は…え〜と、うん魔神だったかなソレは?顔にペイントも入れて本格的だ。

 雷華はドラキュラか?
 はは、こんなに可愛いドラキュラなら或いは皆が血を分けてくれたりしてな。

 ゆうりは三角帽子の魔法使い?
 箒とローブで本格的だな…少し大きめの衣装も可愛い。

 なのはと星奈はネコ娘?
 色違いの双子ネコ姉妹かな?

 美由希は…え〜と『ブリザード・プリンセス』?
 どうやって作ったその衣装は……まぁ、似合ってるが。

 よくよく見ればなはとも簡単に飾ってるし、ナゴ(沖縄から来たイリオモテヤマネコ)も仮装してるのか。

 ハロウィンを楽しむ気は全開だね。


 うん、それじゃあ私も準備した方がいいだろうが…此れが私の衣装?

 「なんか和風な感じだな?」

 何処かで見た事があるような感じだが…?
 まぁ、取り合えず着てみるか。

 インナーも上着も、赤と黒で此れは袴だよな?袴も同じような色合い。



 あぁ、そうか此れは!

 「ゆうりの紫天装束を私のサイズで作った物か。」

 「うん!良く似合ってるよルナ!」

 「あぁ、確かに悪くない。」

 上着や袴は結構ゆったりしてるから動きやすいし、腹部露出型といっても此れならあまり寒くないしな。
 しかし、このカラーは暴走状態じゃなかったか?何でこれなんだ?


 「ルナは騎士服も戦闘装備も基本が黒で、アナザーが白でしょ?
  ゆうりも初期版が白で今が黒なの…で、そうなるとルナのカラーで被ってないのは赤だからそれで。」

 「成程。」

 ふむ…じゃあヤルなら徹底的にやるか?
 ペイントグッズで顔と、あとお腹に――確かこんな感じだったかな。


 「完璧です〜〜♪」

 「うむ、あの時の紋様を再現か?其れがあると、グッとハロウィンポさが増すの。」

 「ルナかっこいいぞ〜〜♪」

 「お見事、再現率98%ですね。」


 どうせ赤なら紋様もな。

 さて、此れにて準備は完了だ――じゃあ行くか、先ずは一番身近な所から!
 最初のターゲットは桃子だ!

 せ〜〜の!!


 「「「「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」」」」

 「は〜い、準備できてますよ〜〜♪桃子さん特製のパンプキンシュークリーム・ジャックオランタンバージョン〜〜♪」



 ――ドンガラガッシャ〜〜〜ン!!



 用意はしていたか…うん、ソレはそうだろう。
 今日は翠屋もハロウィン仕様だからな……だが、だがしかしだ桃子!!

 「何を考えてるんだお前は!?」

 「お母さん其れは無いよ!?」

 「言っちゃ悪いけど歳考えようよ!?」

 「あら、似合ってない?」


 似合ってるとか似合ってないとかの問題じゃない!!
 何処からも持ってきた『偽プレシアのバリアジャケット』!!
 何か?フェイトのバリアジャケット情報同様にレイジングハートから映像提供させて作ったのか!?


 「正解〜〜♪」

 「正解〜〜♪じゃないだろう!!」

 兎に角その衣装は色々不味い!
 歳とかそうじゃなくて、お前は見た目が20代を保ってて美人でスタイルも良いんだからそんな露出過多な魔女はダメだ!
 士郎も何か言ってやってくれ。


 「桃子さん……僕以外の人には見せないでほしいなぁ?」

 「士郎さん…それじゃあ仕方ないですね…」

 「…最終的に惚気であるかこやつ等は…」

 「流石は永遠の新婚夫婦ですね。」


 本当にな、マッタク……ふぅ、此処に居たら糖分過多でおかしくなってしまうな。
 出かけるか?


 「其れが良いの。」

 「ですね〜、はやてさん達も待っているかもしれません。」

 「うん、それじゃあ出発だ。行くぞ、なはと。」

 「♪」

 「参りますよ、ナゴ。」

 「ナァ〜〜ゴ♪」


 なはとは私の肩に、ナゴは星奈の肩に乗っていざ出発だ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 で、歩く事十数分、目的地の八神家に到着だ。
 途中でアリサとすずかとテスタロッサ家も合流し…


 「「「「「王様お姉ちゃんカッコイイ〜〜〜。」」」」」

 「うむ、うぬ等も良く似合って居るが…又増えてないか?」

 「ギン姉〜〜、私のお姉ちゃん。」

 「…母親が連れてきたのではないのだな?」

 「違う〜〜♪」


 何でか何時ぞやの小さい子達も合流。
 まぁ、大所帯は何時もの事だから別に構わないし、はやて嬢も特に問題にはしないだろう。


 「いらっしゃ〜〜い!おぉ、なんや大所帯やなぁ?」

 「にゃはは、なんか大所帯になっちゃったの。」

 「ゴメンねはやて?」

 「あはは、良ぇよ。賑やかな方がたのしいしな。」


 ふふ、思ったとおりだな。
 はやて嬢は…え〜と、キツネ娘?九尾のキツネという奴かな?…うん、なかなか似合っているな。

 で、如何した冥沙?


 「いや…ふむ、ちょっとこちらに来い小鴉。」

 「王様?」

 「どうせだから…そりゃぁぁあぁ!!」

 「わひゃあ!?ちょ、王様!?」

 「大人しくせんか小鴉!直ぐ終るわぁ!!」


 …冥沙何をしている?
 いや、危険は無さそうだが…


 「よし出来た!」

 「何でこうなるのん?」

 「あ〜〜…髪色を冥沙と入れ替えたのか…」

 冥沙が茶髪で、はやて嬢が毛先がグレーの銀髪か……うん、はやて嬢が車椅子じゃなかったら見分けがつかないな。

 お前はつくか将よ?


 「いや、正直どちらがどちらかは車椅子の有無で判断するしかない。
  アインスは……完全に迷っているな。」

 「いやいや、魔導書の管制騎なら見分けて欲しいんだが…」

 まぁ、少しばかり厳しいかもだがな。

 それにしても将は侍の仮装か、似合っているじゃないか。
 矢張り将は凛とした雰囲気が侍を連想させたんだろうね。


 「主はやてが選んでくださった物だ…其れが似合うといわれるのは嬉しい物だな。
  お前も、その独特な袴…紫天装束といったか?似合っているじゃないか。」

 「これもなのはが選んでくれた物さ…ふふ、互いに主人のセンスは良いみたいだな?」

 「その様だ。」


 それにしても皆一様に仮装が似合っているな。
 フェイトは死神少女でプレシアは王道的な魔女、アルフとリニスは其れに従うネコマタと化け狼か…あまり変わってないが。

 アリサとすずかはお転婆お化け少女といった出で立ちで、ちびっ子はトランプの絵札がモチーフか。

 で、はやて嬢がキツネ娘で、将は侍。
 ヴィータはブラックフランス人形で、シャマルは……ブラックナース?ツヴァイはそのサポート堕天使かな?
 アインスは海賊で…ザフィーラはフランケン?いや、寧ろ『腐乱犬』か?


 「私は狼だ!」

 「だとしても愛犬扱いだろう?」

 「否定は出来ぬ!」


 ならいいじゃないか。
 お前のような巨躯ならフランケンシュタインもはまり役さ。


 さて、それじゃあ全員揃った所でいこうか?


 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「Trick or Treat!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 私達は桃子から特製シュークリームをタンマリと預かっているから問題ないぞ?


 「甘いわね、私とすずかだってちゃんと用意してるわ!」

 「わ、私はお母さんがクッキー焼いてくれたから…」

 「初めてだから巧くいったか不安だけれどね。」

 「飴玉沢山〜〜〜♪」

 「私も3段重ねの大型ケーキ作ってある…なんや、皆Treatやな♪」


 ま、抜かりは無いと言うことさ。
 ふふ、じゃあ此処からは持ち寄ったお菓子でハロウィンのお茶会かな?


 「其れが一番だね♪」

 「ほな、コーヒーと紅茶入れるさかい中に…は入れへんな全員は。
  庭でまっとって、直ぐに準備するから。」

 「あ、手伝いますよはやて。」


 矢張りお茶会か。
 ……この場にリンディが居なくてよかったかもしれないな…
 もし緑茶が出てきたら、考えるだけで恐ろしい事になるからな。


 まぁ、彼女は彼女で楽しんでいるのかもしれないな。
 取り合えず、このお茶会を楽しむとしようか。


 「♪」


 はは、分っている。
 お前のお菓子もちゃんとあるから安心しろなはと。








 ――――――








 Side:なのは


 はやてちゃんの家でのハロウィンお茶会も終って、今は家。
 すっかり夜になってあとは寝るだけなんだけど…ハロウィンの最後にやっておかなくちゃ。


 ルナの部屋の前に来てドアをノック…え〜と入って良い?


 「なのは?あぁ、構わないぞ。」

 「失礼しま〜す。」

 「如何した夜にイキナリ?」


 にゃはは…ハロウィン最後にね。

 「ルナ、トリック・オア・トリート♪」

 「は!?ちょ、ちょっと待ってくれ…え〜と机の中に確か飴玉が…って無い!?
  あ〜〜!!この前咳きしてた美由希にやったんだった!…他には…何も無い!?」


 無いんだ…だったら悪戯だね♪


 「な、何でそんなに嬉しそうなんだお前は!?…いや、持ち合わせが無い以上仕方ないが…お手柔らかにな?」

 「大丈夫、へんな事はしないから♪ただ目を瞑ってくれればいいの。」

 「目を?…此れで良いか?」


 ん、OK。
 それじゃあ、悪戯なの♪



 ――ちゅ♪



 「!?な、なのは?///

 「えへへ…悪戯だよ?///

 とは言えやっぱり少し恥ずかしいかな?
 悪戯は『ほっぺにチュー』…にゃはは、大成功♪


 「マッタク…ならなのは、Trick or Treat?」

 「へ!?」

 ま、まさかのカウンター!?
 持ち合わせは無いの〜〜!!



 「なら悪戯だな?…目を瞑ってもらおうか?」

 「うえ〜ん…仕方ないの…此れで良い?」

 「あぁ、充分だ…」



 ――ちゅ



 ふえ!?

 今のは…若しかして…!


 「お返しだ。やられっぱなしは好きじゃない。」

 「あう…まさかのデコチューなの…///

 う〜〜…やっぱりルナには勝てないの。


 「まぁ、このくらいにしておこうか?…そろそろ寝たほうが良い。」


 ソレはそうかもだけど…けど、少しわがまま。

 「今日はルナと一緒に寝ちゃダメ?」

 「は?…いや、別に構わないが…」

 「なら良いよね♪」

 「やれやれ…仕方ないな。いいよ、一緒に寝ようか。」


 うん♪
 ルナの腕枕なの♪


 「はぁ…こんな物がそんなに良いとは思わないが――お前がいいなら構わないか。
  別に私の腕くらいなら何時でも使ってくれていいぞ?」

 「なら、堪能したい時にはお願いするね。」

 お休みなさいルナ…良い夢をなの。


 「あぁ、お休み。お前にもよき夢があらん事を…」

 「うん…」

 ちょっと甘えてルナの胸に耳を……


 ――トクン、トクン…


 ルナの鼓動…凄く落ち着くなぁ…



 ずっと一緒だよルナ…ずっと、ずっと……Zzz…








 ――――――








 No Side


 平穏な日々はこうした感じで過ぎていった。
 その中で白夜の聖王と、月の祝福、そして白夜の騎士達の絆が深まったのは言うまでも無い。

 だが、平穏は一時に過ぎない。


 新たな戦いの火種は既に上がっている。


 その火種は、更に1年後に燃え上がる事になる。

 果たしてソレは偶然か必然か…


 何れにせよ力を持つ者にはどんな形であれ戦いの宿命が付いて回る。


 新たな幕を上げよう。

 新たな物語の序章となる話の幕を。
 そしてその先に待ち受ける『StrikerS』へ至るであろう幕を…



 時は凡そ1年後の次元世界。
 其処で何があったのか…ソレは幕が上がってからのお楽しみとしておこう。





 唯一つ、その次元世界での一件が、或いは世界全体のターニングポイントであったのかも知れない…













  To Be Continued…