Side:ルナ


 ゆうりを助け出し、エクザミアの暴走体を破壊し、事件は終結した。
 アミタとキリエも自分達の世界に帰り、ゆうりは無事高町家の一員となった。

 まぁ、予想通り桃子はゆうりの事が即お気に入りになったみたいだけれどな。

 ソレと恭也が美由希の思わぬ強化に驚いていたな。
 …なのはがオリヴィエの転生体と言うのには流石の桃子と士郎も吃驚していたが…


 ともあれ、平和な日々だ。
 なのは達は今日も学校――とは言っても終了式だから半日で終りか。

 ゆうりは新学期から学校に通うことになっているが、少しの間は私と一緒にウェイトレスだ。

 「宜しくなゆうり。エプロンも中々似合ってるじゃないか?」

 「そ、そうですか?い、一生懸命頑張ります!」


 あぁ、可愛いなぁ……無事救えてよかったよ。


 ――カラン、カラ〜ン


 と、最初のお客さんだ。
 いらっしゃいませ!…って

 「アミタにキリエじゃないか!」

 エルトリアに帰ったはずだが…一体如何したんだ?










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福71
 『Always With You…』










 「こんにちわルナさん、お久しぶりですね。」

 「あぁ、こんにちわ。」

 だが、お久しぶり?まだ1週間程度な筈だが…
 あ、お前達は別の時間軸から来ているから、体感時間にズレがあるのか。


 「そう言う事よ〜、私達の感覚ではアレから5年近く経ってるのよね〜。」

 「そんなにか。」

 ソレは確かに久しぶりだな。
 で、一緒に居るその男性は何方だ?


 「いや〜どうも初めまして、グランツ・フローリアンです〜。娘達がお世話になりまして。」

 「初めまして。貴方が……不治の病と聞いていたが……」

 「いやははは…恥ずかしながら僕の早とちりでねぇ。
  よくよく思い出したらその病気の中期症状と似たような症状を引き起こす毒キノコを間違って食べちゃってたんだよ。
  娘達もその病気の事を知っていたから、スッカリそうだと思い込んじゃってねぇ〜…イヤイヤ面目ない。」


 つまり何か、父親を思ってのキリエの先走った行動も全部勘違いから来ていたということか?
 なんと言うか……まぁ、ソレのおかげでゆうりと出会えた訳だし、お前達とも知り合えた、ソレで良しとしておこう。


 「ホントに博士ってば少しおっちょこちょいな所があるんだから〜。」

 「致死性の毒で無いとは言え、本気で心配したんですから。」

 「ハハハハ、ゴメンゴメン。」


 仲は良さそうだな。
 さて、立ち話もなんだし奥の席にどうぞ、本格的に混むのは昼からだからソレまでは多少時間が有る。


 「そうかい?それじゃあ失礼しようかな。」

 「どうぞ。ご注文は?」

 「お任せしようかな?僕はあんまり分らないし。」


 お任せか…ならばシュークリームとコーヒー以外にはありえないな。
 桃子の絶品シュークリームと、士郎の至高のコーヒー……この組み合わせを食さずに翠屋は語れない!

 「それじゃあゆうり、注文表を桃子達に渡してきてくれるか?」

 「はい、分りました♪」


 う〜む、なんと言うかゆうりには小動物的な可愛さがあるな。
 ここ数日でファンが出来たのも頷ける。




 さてと、お前達が此処に来たのは単に挨拶に来たというわけじゃないだろう?
 もしかして終ったのか、エルトリアの復興が?


 「はい、そうなんですよ!ソレを皆さんに報告しようと思いまして。」

 「そうか……だが、相当に復興は難しいと言っていなかったか?」

 だからキリエはエクザミアのエネルギーを求めてきたわけだし。


 「まぁ、キリエがこの世界に渡航したのは無駄じゃ無かったって所かなぁ?
  キノコ中毒から復帰して聞いた2人の話は、私には天啓だったよ。」


 と言うと?


 「エルトリアの復興と言っても、僕達はソレまで『死蝕』――エルトリアの荒廃現象の事だけれど、ソレを食い止めることばかり考えていた。
  病気の治療で言うなら、薬で症状を鎮圧させて治していく投薬治療と言った所だね。」


 ふむ…それで?


 「だが、死蝕は一行に止まることはなかったんだけど、2人の話を聞いてね『此れだ!』って思ったよ。
  君達が暴走したエクザミアとやらを破壊したと聞いて『悪い部分は切り取れば良い』ってね。」

 「外科的な切除手術か。」

 「まぁ、そうなるね。
  幸い植物なんかを短期間で育てる方法は出来ていたからね、後は簡単だった。
  死蝕で荒廃してる部分は魔法や機械で削り、其処に元気な土や植物を入れていったんだ。
  そうしたらね、死蝕の50%を削った所でエルトリアが元気になって、自ら再生を始めたんだよ。
  ソレからはあっという間、此れまで苦労してたのが嘘みたいにね。
  今じゃエルトリアは以前の様に緑豊かな綺麗な場所になっているよ。」


 ソレは良かったな。
 キリエの無茶な渡航が、結果としてエルトリアを救ったと言う事か。

 私達もゆうりを助けてエクザミアを砕く事が出来たから、『終り良ければ全て良し』だな。

 「なのは達も聞いたら喜ぶ。
  昼頃には帰ってくるし、将も昼からのシフトだ、是非聞かせてやってくれ。」

 「はい、勿論!」



 「お、お待たせしました〜〜。」

 「おっと…ご苦労様ゆうり。では、此方が翠屋特製のシュークリームとコーヒーのセットになります、と。」

 どうぞご賞味あれ。


 「「「いただきま〜す。………!!!」」」


 ふ、どうやら一瞬で虜になったようだな。


 「こ、此れは!!」

 「素晴らしいね!こんなのは初めてだ!」

 「美味しくてほっぺがとろけちゃうのOHTね♪」


 よし、桃子と士郎の勝ちだ!
 まぁゆっくりして行ってくれ。



 …ゆうりとなはとは休憩時間まで待とうな?


 「はいっ!」

 「(コクリ)」

 「良い子だ。」


 ――カランカラ〜〜ン


 さて、お客さんだ。

 「いらっしゃいませ♪」

 ウェイトレス業に精を出すとするか!








 ――――――








 Side:なのは


 ふぅ〜〜今日で3年生も終り。
 4月からはゆうりも一緒に登校出来て嬉しいな♪

 3学期も成績悪くなかった、寧ろ前より上がってるしね。


 「まぁ、ジュエルシード事件と闇の書事件が関係はしているでしょうね。
  事、なのはの体育の成績に関しては闇の書の時に、ミユキに近接戦闘を鍛えられたのが大きいのでは?」

 「だよねぇ〜…今までは見切れても避ける事も出来なかったドッジボールのボールを回避してキャッチできるんだもん。」

 自分でも驚き。
 多分オリヴィエ(自分の前世に敬称付けるのはオカシイってお姉ちゃんに言われたの)の力を継いだ影響も有るのかな?
 私の前世――オリヴィエは近接格闘の方が得意だったから。


 「かも知れぬな。」

 「なんだっていーじゃん、ナノハは凄いんだから!!」


 にゃはは、ありがとう雷華。
 けど皆も凄いよね?特に星奈。
 図工の成績が『測定不能』って何?ソレって成績に使う言葉なの?


 「木版画で『最後の晩餐』、粘土細工で『1/500アースラ』、紙細工で『1/50青眼の白龍』を作り、加えて風景画は写真の様であったからの…」

 「星奈、芸術家に向いてる?」

 「さぁ、如何でしょうか?」


 少なくとも不向きじゃないよね。

 はい、到着。
 皆で話しながらだと直ぐ家に着いちゃうの。


 「「「「ただいま〜。」」」」

 「あぁ、おかえり。」


 ルナ……今日はライダースーツなんだ…いよいよお母さんの目指すものが分らなくなってきたの。


 「…フェイトのバリアジャケット(マント&腰マント無し)の白よりは遥かに良いさ。身体の線は出ても肌の露出少ないし。

 「…フェイトちゃんのバリアジャケットは近々プレシアさんが『軍服風』に作り直すらしいの。」

 「そうか……と、そうだ珍しいお客さんが来ているんだ、奥の席に居るから会って来ると良い。」


 珍しいお客さん?
 会って来ると良いって事は私達が知ってる人だよねぇ?

 誰かなぁ?



 「!!アミタさんにキリエさん!!」

 「なのはさん!ソレに皆さんもお久しぶりです!」

 「は〜〜い、王様元気してた〜?」

 「うむ、変わらず健在よ。おぬし等も元気そうだな?」


 うわ〜〜、又会えるとは思っていなかったの!
 如何したんですか?ソレとそちらの方は?


 「初めまして、グランツ・フローリアンです。僕の事は是非『博士』と呼んでくれたまえ。」

 「初めまして、高町なのはです。宜しくお願いしますグランツ博士。」

 「いや〜素直で可愛いねぇ♪」


 ありがとうございます。
 ほら、皆もご挨拶。


 「うむ、高町冥沙だ。」

 「高町星奈です、以後お見知りおきを。」

 「僕は高町雷華!宜しくね博士!!」

 「ハッハッハ、宜しく!皆良い子そうだねぇ、アミタとキリエの言う通りだよ。」


 にゃはは、ちょっとくすぐったいかなぁ?
 でも、無事だったんですね博士。
 アミタさんとキリエさんからは『不治の病』って聞いてたんですけど。


 「ソレなんだがな、難病の中期症状に似た症状を引き起こす毒キノコを食べただけらしい。
  幸い致死性の毒じゃなかったから、暫く安静にしていたら治ったとのことだ。」

 「何ナノソレ…でも毒キノコ食べて無事って、致死性じゃなくても凄いですね…」

 「いや〜思ったよりも生命力強かったらしいね僕も。」


 頑丈ですね〜。
 それで、如何して此処に?
 確か時間移動って滅多にしちゃいけないんじゃ?


 「今回は特別よ〜ん。」

 「エルトリアが復興したのでその報告に来たんです。矢張り、皆さんには知らせておきたいので!」

 「エルトリアが復興したんですか!?」

 「ソレはとても良き事ですね、心より祝福いたします。」

 「うむ、良いことだな。」

 「凄いぞ〜〜ぱちぱち〜〜♪」


 本当に良かったですね!
 もう直ぐシグナムさんも来ますし、お昼少し過ぎたらフェイトちゃんも来るので教えてあげて下さい!


 「勿論よ〜〜ん。それにしても、このシュークリームは絶品ねぇ。つい食べ過ぎちゃうわ。」

 「お母さんのシュークリームは最強ですから♪」

 多分世界のお菓子コンクールに出してもグランプリ取れると思うの♪


 「否定できぬなソレは。」

 「でしょ?」

 って、ソレよりも折角会えたんだから色々聞かせてください。
 エルトリアの事とか沢山!


 「はい、喜んで!!」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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 ・・・・・・・・・・・・・・・

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 ・・・



 あのあとシグナムさんがアルバイトで来て、その仕事ぶりを見にはやてちゃん達が来て、お姉ちゃんが帰ってきて、フェイトちゃんが来て…
 更に狙ったようにクロノ君とエイミィさんまでシュークリームを買いに来て、あの事件に関わった全ての人にエルトリアの事は伝わった。


 で、気がつけばあっという間に夕方。
 あまり長居は出来ないからって、アミタさん達はエルトリアに帰っちゃうらしいの。

 その見送りの為に、今は皆で海鳴公園の広場に。
 シャマルさんが結界張ってるから普通の人がはいってくることは無いね。


 「それじゃあ皆さん、本当にお世話になりました!」

 「ありがとね〜、おかげでエルトリアは復興できたし♪」

 「娘達が本当にお世話になったね、父親としてお礼を言うよ。」


 いえ、私達は出来ることをしただけですから。
 それに、私達だってゆうりを助けるのをアミタさんとキリエさんに手伝ってもらいましたからお相子です♪

 けど…

 「もう、会えないんですよね…」

 「ん〜〜、やっぱり時間移動は乱用して良いものじゃないしね〜〜?」

 「まぁ、僕も頑張って影響のない時間移動の技術を作り出してみる予定だから、もしかしたら又会えるかもしれないさ。」


 そうだと良いですね…うん、期待していますね博士!


 「はは、じゃあ期待には応えないとねぇ。頑張ってみるよ。…さて、そろそろだね。」

 「行くか……その技術が完成したら何時でも来てくれ、又コーヒーとシュークリームを用意しておくよ。」

 「はい!楽しみにしています!」



 ――キィィン……



 時間移動特有の魔力のうねり……きっと来て下さいね?待ってますから!!


 「はい!それじゃあ皆さん、又会いましょう!!」

 「また会う日まで元気でね〜!MAG!」

 「では又会おう諸君!」



 ――ゴゴゴゴゴ…シュゥゥン!!



 「…行ってもうたな…」

 「うん、でも此れで本当に、あの事件は終ったのかも…」


 かもね……でも、やっぱりちょっと寂しいかな?
 もう会えないと思ってたのに、又会えたから余計に…


 「なに、又会えるさ……何時の日かきっとな。」

 「博士も頑張って影響のない技術作るって言ってたしね。」

 「ルナ、お姉ちゃん…」

 うん、そうだよね。
 何時かきっと会えるよね!

 信じてればきっと……



 だからその時まで……バイバイ、銃使いのお姉さん達…








 ――――――








 No Side


 月の祝福と少女達は此れよりしばしの休息の時に入る。
 だが、忘れることなかれ……力を持つ者には戦いの宿命が付きまとう…どんな形であれ。

 だが、彼女達ならばその宿命も真っ向から受け止めて、その上で打ち砕いて先に進むだろう。

 次なる戦いは少し先のこと…
 なれば、しばしは彼女達の賑やかでも平穏な日々を語ろう。


 新たな戦いまでの間の、束の間の休息を……













  To Be Continued…