Side:なのは
「え〜っと…アレもジュエルシードの影響なの?」
新たなジュエルシードが2つ発動したってユーノ君が言うから、その内の1つがある神社に来たけどアレはなんなの!?
「お〜、何かゲームに出てくるモンスターみたい!」
「だが、所詮は雑魚ボス程度の力であろう?」
本当に、雷華が言うとおりに此れじゃあRPGのモンスターなの!
てか冥沙、雑魚ボスでも舐めてかかると痛い目に遭うの…
「ジュエルシードが現地生物…多分犬かなんかの願いに反応して取り込んだんだと思う。」
「ど、どんな願いなの…」
うん、一体何をどんな風に願ったら、(多分)犬がこんなモンスターになるのか知りたいよ〜!
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福7
『固められた決意』
「ま、取り合えずちゃっちゃと封印しちゃおうか!」
「そうだね。犬さんも解放してあげないと。レイジングハート。」
「All right.」
初めて魔法を使った次の日、ジュエルシードの封印云々で色々決めてる最中に、色々分かったことがあった。
最初は私しか封印できないって事だから、基本は反応があったら私と誰かで出るって事だったんだけど、
本当に私しか封印できないのかなぁ、って思ってレイジングハートで皆をスキャンしてみたら、ルナは封印を出来ることが分かった。
ルナは驚いてたけど、『まぁ、これでなのはの負担は減るか。』って納得してた。
で、最終的に私とルナが交代で出動って事になったんだけど、いきなり新たに2つも発動しちゃったからルナは星奈ともう1つの方に。
ルナと星奈は大丈夫かなぁ…
「ナノハ、そっち行った!」
!!
と、考え事は後にして…先ずは目の前のジュエルシードを封印するの!
「wGaaaa!!!」
速い!…けどお父さんと比べれば大した事無いの!
「はっ…フィニ〜ッシュ!」
教わった護身術を応用して攻撃を避けて、レイジングハートの柄の部分で反撃!
この前と違って、こういう相手なら護身術も使えるの!
「レイジングハート!」
「Enemy scan.」
うん、この暴走体にこの前みたいな再生能力は無いみたい。
それなら!
「雷華、冥沙、思いっきり行くよ!」
「よっしゃ〜!パワー極限〜!全力で行っちゃうもんね!」
「ふん、所詮は雑魚に過ぎん。闇の真髄、見せてやろう。」
攻撃開始!
先ずは、
「堕ちろ塵芥が!『ドゥーム・ブリンガー』!」
冥沙の広域魔法、
「いっくぞ〜!パワー極限!『雷神封殺爆滅剣〜〜』!!!」
雷華の必殺技……ってちょっと強すぎるの!!
「強すぎだ大虚けが!!ジュエルシードが吹き飛んでしまうだろう!!」
「え〜だってナノハが思いっきりって言ったじゃん!」
「その言葉の中に隠された意味を汲み取らぬかぁ!!!対象物が壊れぬ程度の手加減は当然であろうがぁぁぁ!!!」
「ぶ〜王様が虐める〜〜。いいじゃん、じゅえるしーど露出したんだし。」
うん、まぁそうだね。(汗)
取り敢えずは封印だよね。
「レイジングハート。お願いね?」
「All right. sealing mode. set up. stand by ready.」
行くよ!
「ジュエルシード、シリアル16……封印!」
「Sealing. receipt number XVI.」
…うん、封印成功!
犬さんも元に戻って良かった。
「ふむ…まだ2回目だと言うのに中々ではないか。」
「おぉ、ナノハ凄いぞ〜!パチパチパチ〜♪」
「にゃはは、雷華と冥沙が手伝ってくれたからだよ?」
私1人じゃこんなにスムーズには行かなかったはずだから。
「それでもだ。」
「ナノハはもっと自分に自信を持っていんじゃないかな〜?」
にゃはは…ありがとう2人とも。
さてと、ルナ達のほうはどうなったかなぁ?
――――――
Side:リインフォース
「…妙だな。」
「えぇ、何者かの願いに呼応したようですが、アレからはまるで生き物の気配が感じられません。」
新たに発動した2つのジュエルシードのうち、1つをなのは達に任せて私は星奈と共に海鳴の郊外に。
それにしても私にもジュエルシードを封印する力があるとは…
これも前の世界でなのはのリンカーコアを蒐集した影響なのだろうな。
まぁそれは良いとしてだ。
目の前のジュエルシード発動体は実に奇妙な感じだ。
先ず、星奈の言うようにまるで生き物の気配を感じない。
そのくせ非常に強い願い、願望は感じ取ることが出来る。
何より異様なのはその風貌。
大昔の鎧を髣髴させる外見でありながら、その姿はまるで安定していない。
日本の鎧兜かと思えば、西洋の甲冑に変わり、かと思えば今度は鎧を纏わない武芸者さながらの姿に…
「如何言う事でしょうか?」
「分からない。分からないが、放置しておくことも出来無い。それに封印してしまえば何者かはおのずと答えが出るはずだ。」
「確かにそうですね。…では行きます!『ディザスターヒート』!」
最初から3連発の砲撃魔法か、ならば私も!
「恨みは無いが、世界の平穏のために封印させてもらうぞ?貫け…『蒼嵐滅掌』!」
星奈の砲撃と、私の魔法掌底を受けた発動体は動きを止める。
このまま封印を…!
「ジュエルシード、シリアル12…封印!」
ジュエルシードが壊れてしまわないよう、しかし発動体の力を吹き飛ばすようにして魔力を叩き込む。
…意外と難しいな、初めてで此れを成功させたなのはは心底すごいと思っても、きっと罰は当たらないな。
よし、封印完了。
「…此れは一体なんでしょうか?」
封印が完了した場所には、不思議なモノが落ちていた。
…此れは一対の篭手と具足か?……あぁそう言うことか。
「分かったのですか?」
「あぁ、略完璧に。恐らくこのジュエルシードは、その篭手と具足に『残った』使用者の念に反応したんだ。」
まさか既に肉体は滅びてしまった者の意志が無機物に宿るなんて、不思議なものだ。
本来ならば、滅するべきなのだろうが…
「死して尚、其処に留まる思念達よ、お前達の力を貸してはくれないか?」
それは出来ない。
何でもかんでも消してしまえば良いんじゃない。
特に強い思念の宿ったこの篭手と具足を消し去ることなど、私には出来ない。
この子達は嘗ての私と同じだから。
そして私が手を伸ばすより早く、その武具は浮かび上がり私の元へとやってくる。
「力を貸してくれるのか?」
この武具は『インテリジェントデバイス』ではない。
そもそもデバイスですらない。
しかし、それでも人の言葉は分かるらしい。
淡く光り輝き、私と融合するようにしてその姿は消えた。
「消えた?」
「いや、私の中に取り込まれた。成程、使用時には簡単な掛け声で起動するらしい。」
過去に多くの武芸者によって使われ、年月をかけてこんな不思議な機能が備わったのだろう。
使用者の技量によっては性能に大きな差が出るだろうが、私にとっては嬉しい誤算的なモノだった。
「取り合えずジュエルシードは封印して回収したから、家に戻ろう。」
「それが良さそうですね。」
なのは達のほうは…終わったみたいだな。
――――――
Side:桃子
「皆お疲れ様。はい、翠屋特製シュークリーム♪」
ジュエルシードが発動したって言って、そのまま封印とやらに出て行った皆が無事に戻ってきてくれた。
本当に無事で、擦り傷1つ無く戻ってきちゃったのには、桃子さん流石に吃驚。
皆すごいわねぇ…
「任せてよ!ナノハとクロハネ、そして僕達が組めば絶対最強、誰にも負けないモンね!」
あら、頼もしい♪
「でも、大袈裟じゃないの。皆が一緒ならきっと上手く行くの!」
ふふ、なのはもやる気は充分なのね。
「いいチームだわ貴女達。」
きっとリイン達の存在はなのはにとってとても大切なものになっているのよね。
うん、この子達ならきっと大丈夫だわ。
「桃子、考え中のところすまないが、このシュークリームはまだ有るだろうか?」
「あら?足りなかった?」
結構用意したつもりだったんだけど…
「いや、5人で食べるには充分だったが……殆ど雷華と冥沙が食べてしまった…私はまだ1個も食べていないのに…」
あら〜…
「うん、ちょっと待っててね。今もって来るから。」
でも雷華ちゃんがまだ食べるでしょうから、今の倍は持ってきたほうが良さそうね。
――――――
Side:リインフォース
桃子が用意してくれたおやつを食べ終え、今はなのはの部屋で状況整理中。
「今日の一件でジュエルシードは合計4つになった。更に私は新たな武具を手に入れることが出来た。」
手に入れたジュエルシードをなのはに渡し、レイジングハートに収納させる。
と、同時に先程手に入れた武具を展開してみる…うん、悪くない。
「この短期間で合計4つならペースは悪くないと思う。でも無理はしないで。」
分かっている。
しかし、この状況が余り穏やかでないのは確かだ。
「ねぇユーノ君、事前にジュエルシードの場所の特定って出来ないのかな?」
「難しいと思う。例えば街中にサーチャーを飛ばして24時間体勢で監視してれば見つけられるかもだけど、現実的じゃないよ。
現状では、発動したのを被害が出る前に封印するしか策は無いと思う。」
そう、最大の難点はジュエルシードは発動してからでないとその存在を探知できないこと。
確かに偶発的に美由紀や恭也が道端で未発動のジュエルシードを発見する可能性は0ではないが…確率は低すぎる。
かと言ってユーノが言ったような街全体の監視などそれこそ非現実的で、私達だけではとても不可能だ。
「まぁ、不可能なことを幾ら考えても仕方あるまい。」
「後手に回ることになってしまいますが、発動体を迅速かつ確実に封印して行くのが一番でしょう。」
矢張りそれしかないか。
「うん、でもそれならそれで頑張ればいいの!ところでユーノ君。」
「ん、なに?」
「この前の病院のと今回の犬さんでは随分形が違ったけど何でかな?」
「あぁ、其れは私も気になるな。なのは達の方の発動体がどんなものだったかは知らないが、この武具を取り込んだ発動体は異様過ぎた。」
若しかして願望や念の強さで差が出るのか?
「うん、多分それは願望や念の強さの差だと思う。」
矢張りか。
「ですが、何故あれほどまでに異様な姿となるのでしょうか?」
「そうだぞ。さっきの犬っころなんて殆どモンスターだった!」
「実は其れこそがジュエルシードが『危険なロストロギア』とされている要因でもあるんだ。
只純粋に願望をかなえるだけなら、勿論願望にもよるけどそれほど危険なことは無い。
でもジュエルシードは、願望を『歪な形』で叶えてしまうんだ。」
成程…それは確かに危険だな。
仮に、嘗て私を手にしてきた者達の様にそもそもの願望が歪みきった者がジュエルシードを手にしたとしたら…想像したくも無い。
「そ、其れって!もし悪い人が手にしたら…!」
「とんでもないことになると思う。
でも、その願望に反応して、対象を取り込んで暴走するまでには少し時間が掛かるから発動さえ感知できれば大丈夫な筈だよ。」
暴走前に止めるしかないだろうからな。
願わくは、そんな連中が此れを見つけてしまわない事だ。
しかしまぁ、
「何が何でも、ジュエルシードは全て回収しなくては…」
「うん、絶対やり遂げよう!」
「もっちろん!僕も頑張っちゃうもんね!」
「ふん、言うまでも無かろう。」
「無論、集めてみせましょう。」
私達の決意は固まった。
しかし、数日後にジュエルシードの恐ろしさを真に知る事になるとは、この時は私を含め誰も思っては居なかった…
To Be Continued… 