Side:なのは


 凄い……!
 分かる…私の中の大きな力の存在が、『白夜の魔導書』の使い方が!

 でも、何で?
 金色の杖――レイジングハートを起動させたら、其れに応える様に白夜の魔導書も使い方が分かるなんて…
 まるで最初から2つ揃う事(・・・・・)で力を発揮するみたいな…

 ううん、考えるのはあとで!
 「今はアレを止めないと。力を貸してレイジングハート!」
 「All right My master.」










  魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福6
 『魔法少女営業開始!』










 フェレット君を肩に乗せ、ルナ達の所に。
 「お待たせ!」

 「なのは、デバイスを起動させたのか?」

 うん。
 此れで戦えるよ!

 「よっしゃ〜!ナノハが戦えるようになったら百人力!此れなら絶対負けないもんね〜〜!」
 「それは良いが、如何するのだ?アレは幾らでも再生をするようだぞ?」

 うん、其れなんだけど…
 「ちょっと白夜の機能を試してみようと思うんだ。レイジングハート。」
 「OK.Enemy scan.」

 私が命じると、レイジングハートから桜色の光が溢れ、黒い影を包み込む。
 此れは攻撃じゃなくて、調査。
 うん、レイジングハートがスキャンした結果が白夜の魔導書に記されてる。
 …よし、分かった!

 「アレは同時攻撃や、間髪入れない連続攻撃じゃダメ。」

 「ならば如何すれば…?」

 「再生が始まった所に次の攻撃を。それを繰り返していけば、アレの本体…ジュエルシードが姿を現すの。」

 「成程…一拍待っての波状攻撃と言うわけか。」

 流石ルナ、そう言うこと。

 「ならばなのは、ジュエルシードを露出させるまでは私達でやる。封印は…任せるぞ?」
 「うん!」

 今の私じゃ、幾ら大きな力があると言っても、闘いに関しては素人同然。
 この相手じゃ、お父さんから教わった護身術もきっと役には立たないと思うから。

 「それじゃあ先ずは僕からいっくよ〜〜!吹き飛べ、『爆光波』!」

 雷華の一撃から攻撃再会!
 今の一撃を受けて、直ぐに再生が始まるけど…

 「させぬわ!闇に滅せよ…『エクスカリバー』!」

 再生を始めた直後に冥沙の一撃……うん、やっぱり再生が止まった上に更にダメージを与えられた。

 「焼き尽くせ…『パイロ・シューター』!」

 更に星奈の攻撃でダメージを与えて、

 「刃以て、虚空を裂け。穿て『風神爪牙』!」

 ルナの放った無数の短剣が、遂に黒い影を吹き飛ばしてジュエルシードが現われた。

 「なのは!」

 「うん!」
 さっきのスキャンで、ジュエルシードの封印方法は分かってる。
 強烈な魔力を叩き付けて……黙らせる!

 「封印すべきは忌まわしき器…ジュエルシード。」
 「Sealing mode. set up. stand by ready.」

 初めて使う魔法…行くよ、全力全開!
 「ジュエルシード、シリアル21…封印!!」
 「sealing. receipt number XXI.」

 溢れ出した桜色の光をジュエルシードに叩き付ける。

 「す、凄い…ここまでだなんて…!」

 フェレット君が驚いてるけど、実は私はそうでもないの。
 だって冥沙が『高層ビルも木っ端微塵』って言ってたから、きっと使いこなせるようになった時の力はもっとすごい筈。
 「ジュエルシード21…封印完了!」

 封印が上手く出来たみたいで、黒い影は消えて、代わりに綺麗な青色の宝石が転がってた。








 ――――――








 Side:リインフォース


 「…矢張り凄いな。」
 ジュエルシードを封印したなのはを見て、素直にそう思う。
 魔法を使うのは初めてだったにも拘らずアレだけの力……暴走した私に対抗出来たのも頷ける。


 しかし、だからこそ『この世界』で闇の書に、なのはとテスタロッサの魔力を蒐集させる訳には行かない。
 暴走した私がアレほどまでに異常な強さを得たのは2人の魔力を蒐集した事が大きい。
 暴走体の強化を避けるためにも、此れだけは絶対に阻止すべき事だな…。

 まぁ、今はまだ起動もしていないから其れは追々考えるとして…
 「…面倒な事になる前に帰ったほうが良さそうだ。」

 遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

 「賢明な判断です。戻るとしましょう。」

 なのはは……自力で飛んでも大丈夫そうだな。



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 「…何故居る?」
 家に戻ると玄関には恭也が立っていた。
 まぁ、色んな意味で『予想通りと』とは言えるかもしれないが…

 「こんな時間に何処に行っていたんだ?」

 「アレ?クロハネ、モモコに言ったって言ってなかったっけ?」
 「…そう言えば『何処に』とは言っていなかったな。」
 桃子なら言わなくても察しているような気がするけれど。

 「それで?何処にいt「槙原動物病院だ。」…動物病院?」

 「夕食の時に話したであろう?珍種のフェレットを預けた場所よ。」
 「彼から救難信号が届いたんです。…無視して捨て置く事は出来ませんから。」

 「いや、だからって何で窓から出て行くんだ?普通に出て行けばいいだろう!」
 恭ちゃんうっさい!!


 ――ベゴン!


 「ぐはっ…!

 うん、見事だ美由希。
 気配を完全に消しての背後からの一撃とは…

 「恭ちゃんには此れくらいしないと一撃は入らないし。それよりもほら、中入って。風邪引いたら大変。」

 「そうだな。色々と説明する事もある。……ところで恭也はいいのか?このままで…」

 「説明始める頃には復活するって。大体頑丈さだけなら恭ちゃんはお父さん以上なんだから心配無用。」

 そう言うものなのか?
 いや、まぁ開けてないジュースの缶が凹むほどの力で殴られて瘤1つ出来ていないのは…確かに凄いな。



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 「と言うことで、このフェレット…ユーノの頼みでジュエルシード…なのは出してくれるか?」

 「うん、この青い宝石がジュエルシード。全部で21個あるんだって。」

 極めてザックリとだが、桃子達に事の顛末を説明し、なのはがレイジングハートからジュエルシードを取り出して見せる。

 「このジュエルシードを集める事になった。」

 皆興味しんしんといった様子で話を聞いている。

 因みに恭也は、美由希が言った通り、何時の間にか復活していた。
 若しかしたらこの頑丈さだけなら鉄槌の騎士に匹敵するかもしれないな…

 「成程ねぇ…なのは。なのははそれを集める事…そのユーノ君を手伝うことを決めたんだね?」

 「うん!私にはその力があるから。私でも役に立てるんなら…私は全力でユーノ君を手伝いたい!」

 力強い言葉だ。
 矢張りなのはは心が強い……『不屈の心』レイジングハートは正になのはが持つに相応しいデバイスだと改めて思う。

 「そうか…。」

 そんななのはの言葉に士郎は目を閉じ腕を組んで考える。
 親としては娘が危険に自ら飛び込むのは避けたいのだろうな…
 でも、だからこそ!

 「士郎、心配は分かるがなのはに任せてみてはもらえないか?
  ジュエルシードの暴走体と戦うだけなら私達でも可能だが、封印は、恐らくこのメンバーではなのはにしか出来ない。
  勿論、なのは1人では無く、必ず私達の内誰かがなのはと行動を共にする……許可してくれないだろうか?」

 私はこの件に関わる事を是として欲しいと頼み込む。

 「クロハネの言うとおり!!必ず僕達の誰かがなのはと一緒に居るから!ねぇシロー良いでしょ?」

 雷華も頼み込んでくれる。

 「……分かった。良いかな桃子さん?」
 「えぇ。なのはが決めたなら私達は何も言わないわ。」

 士郎、桃子…

 「でも約束して。やるからには中途半端はダメ。怪我をするなとは言わないけど無茶は禁物。
  怪我くらいは仕方ないかもしれないけれど、只の1人も死なせてはダメ…此れだけは守って。」

 1人の命も…か。
 中々に難しいが…

 「分かっていますよ桃子。むやみな犠牲は私達の望む所ではありません。」
 「うん、約束する!」

 決意を固めたなのはには壁にもならないだろうな。
 無論、私も犠牲者を出すつもりなど無い。

 「ちょっと待ってくれ父さん、母さん!本気なのか!?」

 と、決意が固まった所で矢張り反応したか恭也。
 「一体何だ?なのはが本気だという事は、本人が言っただろう?」

 「そうじゃない!!そんな危険な事に首を突っ込むなんて正気かなのは!父さんと母さんも許可するなんて!」

 う〜む…妹思いではあると思うが、その妹の決意を酌んでやらないのは如何かと思うんだが…

 「キョーヤ、なのはは僕達で護る!なのはを傷つけようとする奴は全部僕がやっつける!!」
 「少しは妹の事を信用しても良いのではないでしょうか?」

 雷華達の言うとおりだな。

 と言うか雷華から即座に反論されるとか…大丈夫かお前?

 「俺は大丈夫だ!!別にお前達を信用していない訳じゃないが、心配はするんだ。」

 「その心配は無用なものよ。第一にしてレイジングハートは我の知る限り最高のインテリジェントデバイスだ。
  そやつと白夜の書を併せ持つナノハならば早々やられることなどありえん。我等が一緒なら尚更よ。」

 「そのデバイスが優秀だというなら、何故そのユーノ君とやらは失敗したんだ!!」

 そう来たか。

 「あ、あの、其れはデスね…レイジングハートの性能が悪いんじゃなくて、僕が使いこなせていなくて…」

 「ならなのはは使いこなせるとでも言うのか〜〜!!」

 …如何したものだろうかこのシスコンは…

 「don't speak sister conplex.」

 !!?レイジングハート!?

 「えっと、何て言ったの?さっきの戦いの時のは分かったけど今のは…」
 「要約すると『黙りやがれこのシスコン野郎』と言ったところですね。」

 いや、合ってはいるが要約しすぎだろう…

 「何だと!?俺はなのはを心配してだなぁ!!」

 「…your fool?」

 『お前はバカか』って…意外と辛口だなレイジングハート…

 「誰がバカだ!誰が!!」

 いや、お前だろう?
 「と言うか、度の過ぎたシスコンは妹から嫌われるぞ?」

 「何だとぉ!」

 と、言うか少しは周囲を気に掛けたほうがいいぞ?

 「恭ちゃん…」
 「み、美由希?」

 少し黙ってて!!


 ――ゴガン!


 「わぁお姉ちゃん凄い!」
 「今のは確か『ジャーマン・スープレックス』でしたか…」
 「うむ、実に見事なブリッジだ。」
 「それ、カウント…1,2,3!ミユキの勝ち〜〜!!」

 本当に見事だな。

 「まったく、なのはがやるって言ってるんだし、リイン達が一緒なんだから少しは信じようよ。
  剣の腕だけじゃなくて人間としても成長しなきゃ……その内忍さんに嫌われるよ?」

 「ゴファ!!」

 うん、今の一言は止めだな。
 なんか、多大な精神的ダメージを負ったみたいだが、此れで話を進められるから良しとしよう。

 「まぁ、そう言うことで、危険は百も承知だがこの件を解決できるのは私達しか居ないんだ。
  100%とは行かないだろうが、桃子の言った事は守るようにする。特に『1人の命も犠牲にしない』と言うことは厳守する。
  ジュエルシードの関する今回の事を私達に当たらせて欲しい。」

 何が何でも、この件には関わらないとダメなんだ。
 そうしなければなのはとテスタロッサは出会うことが無くなってしまう。

 それだけは避けなければならない……この後に起きる大事件を解決する意味でも!

 「さっきも言ったけど、なのはが決めたなら私達は何も言わないわ。」
 「リイン達が一緒なら、そうそう大変な事にはならないだろうしね。美由紀もいいかな?」

 「私は、元々反対する気は無いよ。私が直接的に出来る事はないわけだし。
  でも私達でも出来る事は協力するから遠慮なく言いなさい?」

 「うん!」

 美由希は本当に良い姉だな。
 人間的には恭也よりも上なのではないだろうか…?

 しかし出来る事か…そうなると。
 「ならば、ジュエルシードを見つけたら教えて欲しい。」

 「OK。見つけたら直ぐに連絡するね。」

 私も星奈達も『必要だろうから』と携帯電話と言うものを持たされている。
 それが意外なところで役に立ったな。

 「それじゃあ、この話は此れで良いかな。」

 そうだな。
 必要な事は話したし。

 「じゃあ、そろそろ休みなさい?こんな時間に出かけて疲れたでしょう?特になのはは朝に弱いんだから。」

 「は〜〜い。」

 ふふ、確かに。

 詳しい事は、又今度決めるとして今は休むとしよう。


 …そう言えばユーノは如何したものだろう?
 人語を話せる事はばらしたが……正体が人間の男の子と言うのは黙っていた方がいいだろうな…


 もし正体を知ったら恭也が殺しかねない……うん、黙っておこう。



















  To Be Continued…