Side:なのは


 オリヴィエさんの力を継承して、私達はアースラに戻ってきた。
 そのアースラのブリッジのモニターが映し出してる映像に――ゆうりが居た。

 って言うかゆうりの周囲を囲ってるアノ赤い幕みたいなのはなんなの?
 まるで『繭』みたいな感じがするの…


 「其れを含めてこれから皆に説明する。
  本来ならブリーフィングルームで行うべきなんだろうが、状況が状況だ。
  彼女が何時動き出すか分からない以上、直ぐに動けるブリッジで勘弁してくれ。」

 「うん、其れはいいけど――今のゆうりはどんな状態なの?」

 「ゆうり?」


 アノ子の名前。
 砕け得ぬ闇やU-Dなんて名前はあんまりだから。


 「成程な……では此れより彼女の個体名を『ゆうり』としよう。」

 「うん、そうして欲しいな。」

 ゆうり……一体如何いう状態になってるんだろう?

 ううん、どんな状態でも良い。
 貴女を絶対助けるって決めた――だから、其れを成すだけなの!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福67
 『Battle Stand by』










 それで、今のゆうりはどんな状態?
 其れと、アノ赤い繭みたいなのは…


 「順を追って説明する。
  まず、彼女――ゆうりは現在は『休眠状態』とも言うべき状態に入っていて、一切の動きが観測できない。
  アノ赤い繭は、現在の彼女を保護するための防御膜と思ってくれれば分りやすいと思う。」

 「防御膜――その防御膜を破壊することは出来ないのか?
  もし破壊できれば、無防備な今なら比較的楽にエクザミアの停止ができると思うんだが…」


 防御膜……けどルナの言うように、其れを突破できればゆうりに有効だを与えてエクザミアを停止できると思うの。
 無理なのかな?


 「其れは相当に厳しいと思う。
  現場の武装隊員によると、異常なまでの強固な防御膜らしくて――それこそシャマルの結界を数倍上回る堅さだそうだ。
  エイミィの解析結果を見る限りだと、君とルナの全力の集束砲を使っても防御膜に傷がつけば僥倖というレベルだ。」

 「何とそれほどか……ナノハとルナの集束砲でも破りきれんとは相当だな…」


 確かに、其れは少しきついかも。
 自慢する訳じゃないけど、私の集束砲――スターライトブレイカーは他の追随を許さない威力と自負してるの。

 それに、私よりも強いルナが使えばその威力は更に絶大なはず。
 でも、それでも突破できないほどにゆうりの防御膜は強固なんだね…

 「でも、其れだと如何すればいいのかなクロノ君?
  今のゆうりにはこっちからの攻撃は一切通じないんだよね?」

 スターライトも通じないとなると、残された攻撃手段は『アルカンシェル』位しかないの。
 けどあれを地上で撃ったら海鳴どころか地球だって無事では済まない筈だから却下だよね?


 「勿論アルカンシェルを使うわけにはいかない。
  結局の所、余り良い手じゃないんだが彼女が目を覚まして防御膜を解除するのを待つしかない。
  ただ、そうなった場合は彼女の力が完全に解放した事を意味するから――ナハトヴァールの鎮圧以上に厳しい戦いになるはずだ。
  現に、今も『休眠状態』であるにも拘らずドンドン魔力が上昇しているんだ…」

 「アレよりも上とかドンだけだよアイツは…」

 「何れにせよ一筋縄では行かない相手――充分な準備をして戦いに望むべきでしょう。」


 星奈の言う通りだね。
 ヴィータちゃんの言うようにトンでもない相手な訳だから、備えは幾らしても足りない事は無いから。

 けど充分な準備って言っても何をすればいいのかな?
 ゆうりが目覚めるまで休んで…っていうだけじゃ無いよね?


 「勿論!其処は私の出番です!!」

 「マリー?」

 「マリーさん!」

 何か自信満々ですね……如何したんですか?


 「ふっふっふ…エイミィ先輩の解析結果から、U-Dもといゆうりさんに有効な攻撃プログラムが構築できたんだ〜。
  此れをプログラムカートリッジにすれば、カートリッジユニットを搭載したデバイスで使えるようになる!
  そうすれば、ゆうりさんにも可也有効な攻撃が出来るはずだよ!」

 「まさか、私達がオリヴィエの欠片に会いに行っていた時に組んだのか?」

 「勿論!!」

 「その技術力には、正直頭が下がるよ…」

 「お褒めに預かり光栄です♪」


 本当に凄いなぁマリーさん。

 うん、ゆうりに有効な攻撃手段があるなら其れは搭載すべきなの!
 カートリッジ搭載は、私と星奈と雷華、それにフェイトちゃんとヴィータちゃんとシグナムさんの6人。
 6人分ですけど…


 「心配御無用!基本プログラムは出来てるから――後は夫々のデバイスにあった形でカートリッジにすればいいだけ。
  それにプログラムカートリッジは、魔力カートリッジと違ってマガジンやローダーに何発も入れるものじゃないの。
  1機につき1個、練習用と実戦用のプログラムを1つずつだから問題ないよ。30分もあれば楽勝かな♪」

 「さ、30分ですか!?」

 其れは凄いと思うんですけど……でも、その間にゆうりが目覚めるかもしれないんじゃ…?


 「其れについては大丈夫だ。
  観測した現在の魔力上昇スピードを考えると、動き出すまでには最低でも1時間は掛かる。
  勿論時間は前後する可能性もあるんだが、覚醒予定時間の半分で出来るというなら問題ないさ。
  其れに、残りの30分をプログラム試運転の模擬戦にも使えるからな。」


 成程、納得。
 それじゃあ、プログラムができるまでの30分間は――自由行動?


 「あぁ、僅かな時間だが身体を休めておいてくれ。
  但し、何時何が起こるかは分らないから、緊急事態には即時出動できるようにしておいて欲しい。」

 「りょ〜〜か〜〜い!」

 「はい、良いお返事や。雷華ちゃんは何時も元気やなぁ♪」

 「其れが僕のみかくだもん!」

 「其れを言うなら『美徳』であろうが…」


 にゃはは、雷華が居ると場が和むなぁ。
 大きな戦いの前の緊張感も吹き飛んじゃうね。


 「本人は無意識だろうが――ムードメーカーという奴だな。
  マッタク緊張がなくなるのは問題だが、固さがなくなるのは喜ばしい事だ。」

 「うん、そうだよね♪」

 それじゃあ30分は休憩だね。

 あ、さっきのオリヴィエさんとの事は皆に話したほうが良いかな?


 「そう、だな――話して良いんじゃないか?
  お前が誰の生まれ変わりだろうと、フェイトもはやて嬢も、騎士達も受け入れてくれるさ。」


 まぁ、其れは心配してないの。
 さて……皆はどんな反応をするかなぁ?








 ――――――








 Side:ルナ


 「なのはちゃんが…」

 「古代ベルカの聖王…」

 「オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの…」

 「生まれ変わりだと…?」


 うん、皆予想通りの反応だな。
 将、表情崩壊を起こしているぞ?


 「む…スマン――いや、だが此れは驚くだろう普通に?」

 「会話までは傍受できなかったが、まさかそんな事になってたとは僕も驚きだ。
  それじゃあ、最後にオリヴィエの欠片が君に何か託したように見えたのは…」

 「私に自分の力を継承してくれたの。」


 つまりそういう事だ。
 なのはが白夜に選ばれたのも、ある意味オリヴィエ自身と言える存在だったから。
 それと、リンカーコアが無い桃子と士郎の子供であるにも拘らずこれほどの魔力を持っているのも其れが関係しているんだろうな。


 「成程ね〜…でも、そのオリヴィエさんの記憶とかがなのはにあるわけじゃないのよね?」

 「うん、其れはないよお姉ちゃん。あくまでオリヴィエさんの力だけなの。」

 「良かった〜〜……なら、行き成りオリヴィエさんの記憶に有る事を呟いたりとかはしないね?」

 「にゃはは、其れは大丈夫なの。」


 まぁ、純粋に力だけさ。
 あのオリヴィエも、なのはに余計なモノを背負わせないように記憶は継承しなかったんだろう。

 それにしても、

 「お前は思ったよりも驚いていないな、鉄騎?」

 「まぁな。
  いや、驚いちゃいんだけど――アイツの魔王的強さも納得ってとこだな。」

 「成程な。」

 だが、魔王呼ばわりは止めてやってくれ――なのはは女の子なんだから。


 「ん、あぁ気をつける。」


 そうしてやってくれ。
 さて、クロノ執務官そろそろ30分じゃないか?


 「そうだな………と、マリーからだ…………OK、カートリッジが出来上がったそうだ。」

 「お見事、時間ピッタリだな。」

 なら、これからプログラムを受け取って、試運転の模擬戦か。
 プログラム有が6人で、無しが美由希とフローリアン姉妹も入れて11人か――まぁ模擬戦の対戦人数は大丈夫か。


 「私の相手はお前にお願いしたいなルナよ?」

 「態々ご指名か?…ならば応えようじゃないか将。」

 だが、あくまで模擬戦だからな?


 「あぁ、分っている――分っているが腕がなるな…?

 「…いや、お前絶対に分ってないだろう?」

 ヤレヤレ…将のバトルマニアはこっちでも健在か。
 まぁ良いか、今の私なら止める事は造作もないからな。

 余りやりすぎたら止めるからな?……物理的に。


 「ほう?其れは面白い…」

 「…火に油だったか…」

 しょうがない、覚悟を決めるか…



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「うむ、実に良いな此の攻撃プログラムは!此れならば行ける!…舞え、レヴァンティン!!!」

 『Schlangebeissen.』


 其れを使うか室内で!?
 く…やっぱり模擬戦と言う事が頭の中から吹っ飛んでいるな……此の戦闘狂!

 プログラムの有効性と運用法はわかったから…止めるぞ、ブライト!


 『All right My Master.“Tran−S・A・M”Drive ignition.』

 「覇ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「!!速い……テスタロッサと雷華以上だと!?」


 マリーが究極のパワーとスピードを追求してくれた結果だ!
 と言うか将、此れは模擬戦だといっただろう!!


 「…しまった!!」


 此れで模擬戦終了だ!

 真・昇〜龍〜〜け〜〜〜〜ん!!!!

 『Truth Riging Dragon.』


 ――ドコッ!バキッ!!メキィィィ!!!


 「うわぁぁあぁぁ!!」

 「私の勝ちだな?」

 満足したか、将?


 「うむ…負けはしたが実に心踊る戦いだった。」

 「心踊っていたのはお前だけだろうに……頼むから模擬戦で本気を出さないでくれ…」

 「……善処しよう。」


 出来ればこっちを見て言ってほしいんだが……仕方ないか。

 さて、他の5人は如何だ?


 「へ〜〜、意外と器用だねヴィータちゃん?そんなゴツイ武器で…けどちょっと柔軟性が足りないかな?」

 「へ?うわぁぁぁ!!」

 「ちょ〜っと直線的過ぎるかもね?けど、筋は悪くないよ。プログラムも巧く起動してるっぽいし。」


 美由希はヴィータを完封か……魔法は素人でも武器戦闘では無類に強いからなぁ…

 クロノ執務官も雷華を巧くいなしているな。
 だが、雷華も其れに負けないで喰らい着いてる。

 リインフォースは、フェイトとか――あのスピードは流石に捌ききるのは難しいみたいだな。

 星奈もアミティエと巧くやっているな。

 プログラムは全員無事起動というところか?
 と、なのはは如何だ?

 確かザフィーラと模擬戦だったはずだが…?


 スマッシャー!!

 『Break.』

 「おぉぉぉ!烈鋼牙ぁ!!!


 ちょっと待てなのは、何故聖王モード!?
 まさか、プログラムと一緒に聖王モードもテストする気だったのか!?

 ひょっとして、それでザフィーラに模擬戦を頼んだのか?
 ……まぁ、ザフィーラならなのはの砲撃でもそうそう落ちる事は無いとは思うが…


 「うむ…見事な威力だ。プログラムも問題ないようだな?」

 「はい!ありがとうございましたザフィーラさん!」

 「……出来れば敬称と敬語は無しにして欲しい。守護獣と言う立場ゆえに少し戸惑うのだ。」

 「そうなんで…そうなの?…分った。その代わり私の事も『なのは』って呼んでね?」

 「善処しよう。」


 本当に無事だったな、流石はザフィーラ見事な堅さだ。
 なのはのプログラムも問題無しと………そろそろ1時間だが…


 『はいは〜い、訓練室の皆さん〜!ゆうりに動きが有ったよ〜〜ブリッジに集合〜〜!』

 「…エイミィ、もう少し普通に艦内放送をやってくれ…」


 そう言ってやるな執務官、彼女なりの緊張の解し方なんだろう?
 それに、予想時間ズバリで動きがあった……幸先がいいじゃないか。


 「そう言えるかもしれないな……取り合えずブリッジに転送だ。」







 で、ブリッジだが……此れは…!

 「アレがゆうり…?」

 「何か色が変わってるの…!」


 アレが暴走状態…なのか?
 白かった服が真っ赤に染まって……顔や身体に紋様が…!

 まるで暴走したときの私――だとすると、あの紋様はエクザミアの異常の証しか。

 「どんな状況だ?」

 「魔力値の上昇は止まったけど、測定限界で力は未知数な上に活動を開始したら更に上がる可能性も否定できない。
  しかも、観測測定結果だと異常を起こしたエクザミアのせいで防御力が物凄く高くなってる。
  尤も其れは、高密度で不可視の魔力障壁を纏ってるからなんだけど、其れを破壊しないと攻撃プログラムも意味ないと思う。
  大体こんな所かな?転送の準備は出来てるから何時でも行けるよ!」


 所謂『スーパーアーマー』という状況な訳か――厄介だな、普通なら。
 だが、これだけの戦力が揃っているんだ、其れも何とか抜けられるはずだ。


 「何とかじゃないよ、絶対に抜くの!ゆうりを助けるために!」

 「…そうだったな。」

 絶対に助けるんだものな。


 さて、如何する執務官?
 私達は何時でも出れるから、後は貴方の命令次第なんだが?


 「言うまでもないだろう?即時出撃だ。」

 「ふ、そう来なくてはな?」

 「いよ〜し、頑張っちゃうもんね〜〜!」

 「我が魔導の全てを懸けましょう…」


 気合も充分だな。

 それじゃあ行こうか?


 「あぁ、マリー転送してくれ!!」

 「了解!座標ポイント固定、転送ポート機動!場所、海鳴沖合い10km海上!転送…開始!!」



 いざ出撃だ!







 …よし、転送完了!

 「…近くで見ると余計に魔力の高さが分るな…」

 「うん、物凄い威圧感なの…」


 まるでナハトヴァールの侵食暴走体――いや、それ以上の強さだな。
 なはと、お前はアースラに戻った方がいい。


 「(フルフル)」

 「戻らないのか?」

 「(コクリ)」


 だが危険だぞ?
 今のゆうりはハンパじゃなく強い……お前にも危害が及ぶかもしれない。


 「(フン!)」

 「大丈夫?……ふぅ、分ったよ。
  なら、私は攻撃に専念するから、バインドなんかの使用はお前に一任するぞ?」

 「♪」


 ヤレヤレ…まぁ、頼りにしているぞ。




 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




 「「「「「「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」」」」」


 始まったか…!
 く、なんて言う濃密な魔力だ……此れがエクザミア暴走の力!!


 だが、退かん!
 お前を助けずに帰還などありえないからな。


 「ゆうり……うん、始めよう!」

 「救済のための全力戦闘をな…!」













  To Be Continued…