Side:ルナ
「オリヴィエ…」
戦乱期のベルカの『悲劇の聖王』、『ゆりかご』の起動主――自らの全てと引き換えに戦乱を終結させた聖女…
そして、夜天の魔導書の歴史において最強の相手…其れが欠片とは言え何故…?
其れに通信とは一体…
「欠片からの通信繋がりました!音声に出します!」
『…聞こえますか?私の名はオリヴィエ……もしも聞こえているなら私の頼みを聞いてください。
この世界に『白夜の魔導書』の主と、そして書に選ばれた守護騎士が居るならば、どうか私のところに来て欲しい…』
「「「「「!!」」」」」
白夜の…と言う事はなのはか!
「…如何する?」
「…勿論行くよ、あの人が何で白夜に用が有るのか気になるし。」
そうだな……行っても良いか執務官?
「警戒を怠らないようにしてくれ……彼女は歴史上間違いなく最強の存在だからな。」
「あぁ、分っているよ。」
私自身、其の強さは身をもって知っているからね。
さて、ベルカの聖王よ――貴女は一体何をしに現れたんだ?
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福66
『受け継がれる聖王』
「…転送完了っと…。」
オリヴィエの欠片から50mというところか?
目視が出来るから大体それくらいだろうな、相変わらずエイミィは良い場所に転送してくれる。
…其れはいいんだが流石に闇の欠片が邪魔だな…
「…貴方達には何の罪もありませんが、今この時は退いて下さい…」
オリヴィエ?
――カッ!!
!!!…い、一撃で30の闇の欠片を消し去っただと!?
此れは…限りなく本物に近いオリヴィエの欠片のようだな…
兎に角先ずは話を聞かないと…
「あの〜スイマセン!!」
「「「「なのは?」」」」」
「貴女の呼びかけに応じて来ました。」
なのは、成程流石だな。
要求に応じてきたとなれば相手も過激な手は取らないだろうからね。
「貴女は…?」
「え〜と…白夜の魔導書の主、高町なのはです。みんなは『なのは』って呼んでくれます。」
「!!ナノハ……そうですか貴女が…と言う事は一緒に居る4人が白夜が選んだ守護騎士…」
その通りだよ聖王陛下。
はじめまして、と言うべきかな?白夜の魔導書の管制融合騎にして騎士、リインフォース・ルナだ、お見知りおきを。
「同じく白夜の守護騎士『ヴァイスリッター』が将、冥沙だ。」
「同じく『理の炎熱』、星奈です。」
「僕は『力の蒼雷』雷華だよ、宜しくね♪」
我等が白夜に集いし白騎士。
聖王陛下、貴女は今の自分の状況を理解しているようだが……私達に何用だ?
「私が思念体だと言う事は理解してます……ですが消える前に会っておきたかったんです『白夜の主』に。
最強の破壊の魔導書『闇の書』への対抗策として私が考案した『白夜の魔導書』の主に…」
「!!白夜が夜天への対抗策だと…!?」
そんな馬鹿な…!
いや、だが白夜が私達を守護騎士として選んだと言う事は…そうなのか?
夜天のバグと、其れを取り除く方法を知っていたから白夜に選ばれた…?
「あの〜〜…少しいいですか?」
なのは?
「貴女が未練を果たすために出てきたのは良く分りました…でも本当にそれだけなんですか?
本当に貴女が考案した『白夜の魔導書』の主に会いたかっただけなんでしょうか?」
「確かに、それだけというのは些か解せませんね…」
言われてみればそうだな。
と言うか只会うだけならそんなに難しくないだろうに…
「…貴女は聡い子ですねナノハ……確かに貴女の言う通り、私は只白夜の主と守護騎士に会いたかっただけじゃないです。
私は――私の力を、『聖王』を継いでくれる者がいて欲しかった…そして其れは白夜の主以外には在り得ない…」
そう言う事か。
己の力を継ぐ存在を欲する……其の気持ちは分るな。
「だが、力の継承などそう簡単に出来るのか?
ナノハならば断る事は無いだろうが、力の継承は簡単な事ではないだろう?」
「其れについては大丈夫です。
私はオリヴィエそのものですが、今は意志を持った魔力体に過ぎません。
なので私を魔力素…疑似リンカーコア化して、其れをナノハのリンカーコアに融合します。
此れならば面倒な手順を踏む事無く、私の力をナノハに継承出来ますから。」
それなら行けるか?
なのはは他者の魔力を利用して使う事が出来る技能を持っているから、魔力素として融合すれば扱えるかもしれない。
「私の力を継いでくれますかナノハ?」
「断る理由が無いです。…謹んでお受けします、聖王陛下様。」
「ふふ、ありがとう。あ、私の事はオリヴィエでいいですよ?もう聖王では無いのですし。」
…なんと言うか、馴染んでいるな?
前々から思っていたんだが、人と直ぐに打ち解ける事ができるのもなのはの才能だな?
「うん、ナノハって凄い!ベルカの王様とお友達になった!!」
「まぁ、才能でしょうね…」
だな。
さてと…継承をする前に少し良いかな聖王――もといオリヴィエ陛下?
「?はぁ、良いですが何でしょうか?」
「幾つか有るんだが…まず1つ、白夜は貴女が考案したと言っていたが、其れは何時の話だ?
今この世界には、機能が正常に戻った『夜天の魔導書』が有るが、その管制人格も白夜の事は知らなかった。
夜天の魔導書は、闇の書として戦乱期のベルカでも其の力を振るっていたはずだ…だとすると少し解せない。」
騎士達は兎も角として、管制人格のリインフォースまで知らないと言うのはな。
「闇の書が正常に戻った…!其れは凄いですね…!
と……白夜は確かに私が考案したものですが、直接的に闇の書と関わる事は有りませんでした。
私が考案し、白夜の書は略完成していましたが、其れと対になるデバイスが完成していなかったんです。」
デバイス?
「当時研究中だった『人格搭載型魔導支援装置』……インテリジェントデバイス『金色の魔導杖』…」
「「「「「!!」」」」」
金色の魔導杖だと?
其れはまさか…!
「私の、レイジングハート…?
そう言えば、初めて起動した時に白夜とリンクしているような感じがしたけど…」
「矢張りそうでしたか。もしやとは思いましたが……少しばかり形が違っていたので…」
まぁ、改修と改造がされているからな。
つまり何か?ユーノがレイジングハートを起動できなかったのは白夜を持っていなかったからと言う事か?
……平行世界とは言え、可也差が出るものだな。
少なくとも前の世界のなのはは白夜の魔導書など持っていなくてもレイジングハートを扱っていたしな。
この世界のレイジングハートが、まさか古代ベルカの遺産だったとは…
「だが、レイジングハートがベルカ製だとしたら、何で術式がミッド式なんだ?」
「確かにの。何故ベルカ式では無いのだ?」
「金色の魔導杖の基本機能は、一般的なベルカの戦闘魔法とは違い『封印』の力を最優先にしていました。
其れには戦闘色の強いベルカ方式よりも、射出や補助に長けたミッド方式の方が都合が良かったんです。
…ともあれ杖の完成は間に合わず、結局はゆりかごの一撃をもって、略相打ちの形でしか止める事はで来ませんでしたが…」
其処は前の世界と同じか…
まぁ、安心してくれオリヴィエ陛下。
さっきも言ったが闇の書は本来の『夜天の魔導書』に戻ったし、自動防衛プログラムも浄化して無害なものとなったよ。
「自動防衛プログラム――ナハトヴァールまでですか?」
「此れが有害には見えないだろう?」
「♪」
「可愛いですね♪」
だろう?
さて、まだ幾つか聞きたいんだが、白夜の主と騎士は何を基準に選ばれる?
更に貴女は、何故なのはが『白夜の主』と名乗った時に驚いたんだ?
「そして…何故力の継承者は白夜の主でなければならない?」
「あ…そう言えば。高い魔力が必要なら、ルナや冥沙でも良い筈なのに…」
「もっと言うなら小鴉やフェイトでも良いな。」
他にもクロノ執務官に騎士達、そしてリンディ提督と強い魔力を持っている者は幾らでも居る。
其れなのに、何故態々白夜の主を選ぶ…?
「…順序だてて説明します。
先ず、白夜の騎士は闇の書――もとい、夜天の魔導書の騎士達に対抗できる力を持ったものが選ばれます。
其れこそあらゆる次元世界から選ぶんですが…貴女達は純然たる『人』では無いですよね?
どちらかと言えば夜天の守護騎士に近い存在なのではないですか?」
「おー!流石はせいおうへーか!そーだよ、僕達はプログラムせーめーたいって言うんだって。
何を隠そう僕と王様と星奈んは元々闇の書のプログラムの一部で、ルナなんて闇の書の管制融合騎だったんだぞ〜♪」
オイコラ雷華よ余計な事を言うな。
面倒な事になるだろう!
「え?あの…其れは一体……」
「星奈!!」
「お任せを…!!」
説明その他は星奈に任せるのが一番だと思うんだが…如何だろうか?
「異論無しなの♪」
「だよな。」
「♪」
なはともそう思うか。
いや、しかし本当に凄いな、こんなに複雑で面倒な事を簡潔適切簡単に説明するとは。
ご理解頂けたかオリヴィエ陛下?
「はい…何と言うか凄い事になっていたんですね…平行世界とは思いませんでした。
まぁ、おかげで何故貴女が夜天の魔導書の管制人格と瓜二つなのか理解できましたが…」
「瓜二つどころかそのものだからな…今は白夜の管制融合騎だけれどね。」
守護騎士はまぁ分ったが、主は?
「…主は…其れは私がナノハを見て驚いた事にも直結します。
白夜の主はアトランダムに選ばれるのではなく幾つかの条件が存在します。
先ず、主の候補となる者が高い魔力と強い意志を持っている事。
主の候補となる者と金色の魔導杖が極めて近い世界に居る事。
そして――オリヴィエの末裔であるか、或いはオリヴィエと略同じ魔力波長を持つ者である事…」
「な!!」
そんな…!!
馬鹿な、なのはがオリヴィエの末裔だとでも言うのか?…流石にありえないぞ!?
桃子も士郎もこの地球の人間だ、古代ベルカの王族と関係なんて――…まさか!!
「気付きましたか?……同じ魔力波長の意味に…」
「あぁ…いや、だが…」
もしそうだとした場合なのはは……
「なのははオリヴィエの転生体…!」
そんな事が……いや、在り得ないとは言い切れないか…
――――――
Side:なのは
「私がオリヴィエさんの転生体?」
ルナはそう言ったの?
つまり私はオリヴィエさんの生まれ変わり?
「桃子と士郎がベルカの王族の系譜で無い事は間違いない。
そうなると『オリヴィエの末裔』の条件は除外されるだろう?
残るは『オリヴィエと同じ魔力波長』が条件になるんだが……此れはオリヴィエの末裔と似て非なる条件なんだ。
魔力波長は基本的には遺伝するもので、オリヴィエの直結の子孫の場合、その波長は極めて近いものとなる。
其れこそ機械での計測でも99.99%同じとなるだろうが…たった1つだけ100%同じ波長になる場合がある。
それが転生――死したオリヴィエの魂が、リンカーコアの情報を変える事無く新たな命として生まれた場合だ。」
「それが私…」
成程、それなら何か納得なの。
「何がだナノハ!うぬはとんでもない存在なのかも知れぬのだぞ!?」
「オリヴィエの転生体……極めて稀有な存在故に欲するものが現れるのでは無いでしょうか?」
そうなの?
でもオリヴィエさんの生まれ変わりでも私は私だよ?
別にオリヴィエさんの記憶とか持ってるわけじゃないし。
「あ、そっか。せーおーへーかの生まれ変わりだとしてもナノハはナノハで変わらないっか♪」
「そうだよ?其れと納得したのは、白夜を手に入れたときのことなの。
何で私にだけ白夜の魔導書が見えたのか、如何してアリサちゃんとすずかちゃんは私が手に取るまで白夜を認識できなかったのか。
ずっと、其れが気になってたけどやっと分ったの。」
アリサちゃんとすずかちゃんは『選ばれなかったから見えなかった』んだ。
それで書の主となる私が手に取ったことで認識できるようになった――で、良いんですよねオリヴィエさん?
「本当に聡い子です貴女は……私の転生体とは思えないくらいに。
貴女が白夜に選ばれたのも、そして私が今この場に現れたのも、必然であるのかもしれませんね。
私が何故現れたのか、其れは分りませんが――相当に厄介な事態が発生しているのでしょう?」
はい…
冥沙の持つ『紫天の魔導書』に存在してた子が目覚めて、その子を止めて助けないといけないんです。
でも其の為には、一度暴走した無限連環機構『エクザミア』を停止しないとダメらしくて…
勿論やり遂げるつもりですけど、厳しい戦いって言う事は間違いないと思うんです。
「そうですか……成程、なら私は其れを確実に止めるために現れたのかもしれません。
私の力を貴女に継承し、かの者を確実に救う為の力を授けるために…ね。」
余りにも出来過ぎかもですけど…そうかもしれないです。
「で、ルナは聞きたい事全部聞けた?」
「あ、あぁ。聞けたよ全部……マッタク驚天動地、寝耳に水とはこの事だな。」
「うむ、マッタクであるな…」
にゃはは、まぁ私も驚いてるしね。
でも、オリヴィエさんの力はちゃんと継承するの!
きっと其れは私がしなきゃならない事だから!
「誰も反対はしませんよナノハ。」
「そーだぞ〜♪其れにせーおーへーかの力を貰えばナノハは更に強くなるんでしょ?
それって凄いぞ強いぞカッコイイ!正に強靭・無敵・最強って奴だね!!」
…粉砕・玉砕・大喝采、なの?
ちょっと違うかな?
でも、私は迷わないの!
それじゃあ、お願いしますオリヴィエさん!
「ふふ…貴女は良き騎士達と巡り合えたようですね。
貴女は私の転生体ですが、私とは違います――貴女は貴女です、其れを忘れないで下さい。」
「はい!」
「其の強固な意志と不屈の心……成程、貴女は白夜の主に真相応しい。
金色の魔導杖――否、レイジングハート…ナノハをお願いしますね?」
『All right.』
「ありがとう……では、力の継承を行います――準備はいいですかナノハ?」
「勿論です!」
何時でも良いです。
オリヴィエさんの力と魂は、ちゃんと受け継ぎますから。
「では……聖王連合統括者、聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの名の下、我が力をタカマチ・ナノハに継承する。
我が力を継ぎし者と、其の仲間達が歩む道に聖なる魔導の加護があらんことを!」
――キィィィン…
!!オリヴィエさんの姿が!!
…そっか、疑似リンカーコア化するから…
「私の力は、ナノハ、貴女の中に解けます――この力で…」
――救ってあげて下さい、貴女の大切な仲間を…
――シュゥゥゥ……カチィィィン!!
「!!」
此れは…継承が終ったの?
物凄い力を感じる――それこそ全てを圧倒するくらいの…!
…うん、分る。
此れがオリヴィエさんの力…これを全身に送り込む!
――轟!!
「「な!?」」
「此れは…」
「おぉ、凄いぞナノハ!!」
凄い力なの…!
ん?なんか感じが…
「どうぞ、鏡です。」
「ありがと星奈。………アレ?」
な、何で髪と目の色が変わってるのかな!?
オリヴィエさんと同じハニーブロンドと赤と翠のオッドアイなんて、此れじゃあ日本人じゃないの〜〜!!
「お、落ち着けなのは!恐らくオリヴィエの力を覚醒した影響だ。
其の力を抑えてみろ、元に戻るはずだ。」
「ほえ?そうなの?」
え〜と…心を落ち着けて…魔力を小さくして…
――シュゥゥゥン…
「うむ、戻ったな。」
「ナノハカッコイイ〜〜♪」
「今のはさしずめ『聖王モード』と言った所ですね。」
にゃはは、まさかルナみたいな変身形態まで手に入れるとは思わなかったの。
ところで皆は大丈夫?
白夜の主の私がパワーアップしたら皆にも影響あると思うけど…
「悪影響は無いよ、少しばかり魔力が強くなったかな?」
「であるな、前よりも我が力、増しているようだ。」
うわ〜〜…私が強化で全員強化とか凄すぎなの。
…でも此れなら、あの子を止めて助けるのも確率が上がるね♪
それじゃあ、アースラに戻ろうか?
――Pipipipipi
「ん?通信?」
クロノ君から?…何か有ったの!?
『なのは、僕だ。』
「クロノ君!」
如何したの?
『たった今エイミィ等観測班が、あの子を……個体認識名『U-D』を補足した!』
あの子を!!
…何処なの?
『海鳴の海上――街から10km程の沖だ。
既にアースラの結界魔導師とシャマルでU-Dの半径500mを封鎖結界で囲っている。
これから作戦会議を行うから至急アースラに帰還してくれ。』
「了解なの!」
まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったの。
でも、其れは逆にあの子の暴走が近づいてるから、暴走寸前の膨大な魔力を補足出来たってこと。
此れはあんまりのんびりは出来ないね。
うん、戻ろうアースラに!
「あぁ、先ずは作戦会議だな。」
「あやつを救う為の、な。」
うん!
必ず救ってみせる――私達の力と、オリヴィエさんから受け継いだ力で!
もう直ぐ貴女の所に行くから待っててねU-D――じゃなくて『ゆうり』!!
To Be Continued… 