Side:はやて


 観測地点――海鳴の海上に現れた女の子…え〜と、どちら様?
 エイミィさんの観測やと相当にトンでもない力持ってるみたいやけど…

 「暴れたりせぇへんよね?」

 ぶっちゃけ測定不能の魔力の持ち主が暴れだしたら、私等じゃ対処しきれへんよ?
 天然チートのルナさんは消息不明やし…


 「今はまだ何もしそうには無いが…もしアレが暴れだした場合、また『アルカンシェル』を使わないといけないかもしれないな…」

 「其処までなのか、あの子は…!」


 アルカンシェルって、ナハトヴァールを消滅させたアレ?
 其れの導入とは、リインフォースの言う通りトンでもない子やな。

 やけど、女の子の姿になってから一切動いてへん。
 ……さて、この子はドナイな子やろうか…










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福64
 『無限連環機構の闇』










 Side:なのは


 それじゃあ、教えてくれるかな貴方の知っている事。


 「はい…」


 冥沙の紫天の書に取り込まれて、辿り着いた場所に居た女の子。
 この子が言うには、この子こそが『砕け得ぬ闇』らしいんだけど、とてもそうは見えないの。


 「私は元々闇の書の構成素体の核で、構成素体が活動を始めたとき、私は王の書の中に居ました。」

 「我の…紫天の中にか?」


 冥沙の魔導書の…どういう事かな?


 「はい。王、貴女は構成素体を総べる存在であると同時に、紫天の管理者でも有りました。
  本来ならば、私は核として王達の補佐を行う立場にありました。
  ですが、王達が負け、そして消滅する過程で私はその役目から切り離され、小さな魔力素として書の中に居ました。」

 「書の中に?…じゃ、じゃあ如何して今出てきたの?」

 「魔力素の状態では自身の身体の構成は出来ないと思うが…」


 ルナ、そうなの?


 「あぁ、私や冥沙のように、確固たる自己と身体を持っている存在ならば変身魔法や、失った身体の再構成は出来る。
  だが、殆どリンカーコアだけの状態とも言える、魔力素の状態では大概の魔導は使えないはずなんだ。」


 そうなんだ…うん、そうなると如何して出てきたのか気になるね?


 「…王達が関わった2つの事件が原因だと思います。
  ジュエルシードに闇の書…この特大クラスの魔力が弾けた2つの事件を通して私が活性化したのかと…
  活性化して、私の身体を取り戻したのは良いんですが…私は私の力を制御出来ないんです…!」

 「「「「「「「「!!!」」」」」」」」


 そんな!
 制御できないなんて……もし暴走したら!


 「とても危険です…この星1つの破壊では治まらない可能性もあります。」

 「え〜〜!!そんなのヤダ!
  地球が壊れちゃったら、たっくさんの人が困るじゃないか!!」

 「止める手段は無いのですか?」


 うん、雷華と星奈の言う事はもっともなの。
 海鳴を、世界を壊す事なんてさせないの!!

 止める手段は本当に無いの?


 「1つだけ方法は有ります。」

 「有るのか!ならば今すぐ教えよ!!」

 「この世界を護りたいんだ…教えてくれないかな?」


 冥沙にフェイトちゃん……教えて、方法を!


 「……貴女達を現実世界に強制転移します――恐らく現実世界にも『私』が居るとは思います。
  方法はただ1つ……完全起動をなす前に私を破壊してください!」


 !!そんな…!
 だ、ダメだよ自分を破壊してなんて!!


 「けど、此れが一番の方法なんです。
  王は既に私への干渉能力を失っています――干渉能力がなければ、私をどうにも出来ないんです。
  今ならまだ間に合います、私が完全起動したら全てが壊れてしまう…だから、其の前に…!!」

 「…却下だ。」


 ルナ?


 「自己の破壊など馬鹿な事を考えるな――本当はそんな事は望んでいないのだろう?」

 「え?」

 「自分を止めて欲しいから、お前は『夢』と言う形で私達にアプローチしてきたんじゃないのか?
  夢の中でのお前は……泣いていたじゃないか。」


 !!
 そうだよ!
 貴女だって本当は消えたくないはずでしょ?だから私達に…!

 「それに、本当に貴女を破壊するしか方法が無いなら私達を取り込む必要なんて無かったよ!
  だって力に任せて暴れれば、私達はそれを止めようとするもん!」

 其れなのに態々私達を取り込んだんでしょ?
 助かりたいんだよね、本当は……


 「…!けれど、私が暴走したら…!!」

 「はいはい、ちょっと落ち着こうか?」

 「てかゴメン、空気読めずにごめんなさいのKYGなんだけどちょっと良い?」


 お姉ちゃん?
 其れにキリエさんも…如何したんですか?


 「あ、キリエさんお先にどうぞ。」

 「あら、ゴメンね〜〜…えっと、ゴメンまるっきり話が見えないんだけど?
  その子達ってやっぱり闇の書の構成素体なんじゃないの?今の話聞いてると…そうよね?」


 あ……成程そう言う事ですか。

 「正確には『元』なんです。今の冥沙達は、さっきも言いましたけど私の持ってる白夜の魔導書の騎士なんです。」

 「だから、其れが分らないのよ〜〜!」

 「詳しくは私が…掻い摘んで説明しますと…










 ――星奈説明中









  と言う訳で、ご理解いただけましたでしょうか?」

 「…マジンコで?ってことは私はそもそも来る世界を間違えてた?……しょぼ〜〜ん…」

 「キリエは少し焦りすぎですよ…」


 にゃはは…なんと言うかなの。
 それで、お姉ちゃんは如何したの?


 「うん、ちょっとその子……え〜〜と、仮の名前として『闇子ちゃん』て呼ぶけど。」

 「「「「「闇子ちゃん!?」」」」」
 「何か可愛いですね♪」
 「いやいや、その名前はどうかと思うんだけど〜〜…」

 「…闇子ちゃんですか…?」


 あう…お姉ちゃんのネーミングセンスって(汗)
 けど、名前が無いと不便だもんね……うん、後でちゃんと考えよう!


 「さっき冥沙が闇子ちゃんへの干渉能力を無くしているって言ったよね?其れは何で?」

 「む…確かに。構成素体を総べる存在であった我が、何故お前への干渉権を失っているのだ?」


 そう言えば…なんで紫天の書の持ち主である冥沙が貴女に干渉できないの?


 「王が既に構成素体を総べる存在ではなくなったからです。
  紫天の主でありながら、白夜の騎士……総べる存在たる王でありながら誰かに仕える存在。
  純然たる統率者でなくなったが故に、私への干渉能力が無くなったんだと思います…」

 「あ、そうなんだ。じゃあ話は簡単、なのはなら貴女への干渉能力が有るって事よね?」

 「お姉ちゃん!?」

 何でそうなるの!?


 「なるほど…其れは有るかもしれないな?」

 「ルナも!?」

 えっと…どういう事なの?


 「冥沙が王で無いから干渉権が無いと言うなら、冥沙の主的存在であるお前ならばこの子に干渉できるはずだ。
  あと、白夜の管制融合騎である私もある程度の干渉は出来るのかな?」

 「…成程、そう言う事なの…」

 如何かな?


 「貴女方が……分りません。
  ですが、仮に出来たとしても難しすぎます――私を壊さずに止めるにはエクザミアの停止が絶対です。
  でも、エクザミアの力は自動防衛システム――ナハトヴァールと同等かそれ以上です…止めるなんて無理です。」

 「いえ、無理ではありませんよ?」

 「星奈…うん、無理じゃない!」

 ナハトは止められたんだもん!エクザミアだって止められるの!
 って言うか止めるの!止めて貴女を助けだす、もう決めたの!!


 「き、危険です!エクザミアを停止するには、暴走に至った状態を鎮圧しなければダメなんです!」

 「ふん、其れが如何した?危険など本より百も承知よ。
  其れに、ナノハが『決めた』と言った……なればそれは絶対!
  何人にもナノハの意志と、一度『こうだ』と決めた決意を折ったり曲げたりは出来ぬ。」


 流石は冥沙、良く分ってるの。
 強情で頑固って言われても良い、『あの時あぁすれば良かった』って後悔だけはしたくないから!


 「で、でも…」

 「デモじゃないぞヤミッチ!大切なのは君自身が如何したいかだろ?」

 「雷華の言う通りだ、お前は真に心から自らの消滅を願っているのか?…違うだろう?」


 うん、雷華とルナの言う通りだよ?
 一番大切なのは貴女が如何したいか。

 貴女は、本当は如何したいの?


 「わ、私は……」

 「うん。」

 「出来るなら…生きたいです。生きて王や皆と暮らしたいです…!!」

 「…うん、分ったよ。」

 貴女の本音が聞きたかったの。
 大丈夫、私達が必ず貴女を助けるから…

 「でも、その為には外に戻ってエクザミアを停止するために、暴走した貴女を攻撃しなきゃならない。
  きっと誰も手加減なんて出来ないと思うけど……痛いの、我慢できる?」

 「が、頑張ります!それで私が私で居られるなら!」


 うん、良い返事。
 それじゃあ約束しようか?


 「約束…ですか?」

 「そう、約束。小指を出して?」

 「はぁ?」

 「私達の世界はこうやって大事な約束をするんだよ?
  ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんの〜ます…ってね。」

 大事な約束の時に此れをするの。
 此れをした以上、交わした約束は絶対のモノ……だから待っててね?


 「はい…貴女達を信じてみます…だから私も頑張ります。」

 「あぁ、必ず君を助けて見せる……月の祝福の名に誓おう。」

 「私も白夜の主の名に誓って!」

 「我等ヴァイスリッターも、白夜の名に誓おうぞ!」

 「はい、誓約を成しましょう…」

 「は〜っはっは!僕達が力を合わせれば出来ない事なんて無い!!」



 「キリエ、私たちもお手伝いしましょう。」

 「…そうね、ちゃ〜〜んと後始末してかないと博士からのお説教も増えちゃうし。」


 アミタさんとキリエさん…ありがとうございます!


 「私もやるよなのは。アルフにも来てもらうから。」

 「ありがとう、フェイトちゃん!」

 さぁ、私達を現実に戻してくれるかな?


 「はい…ですが、貴女達を戻した瞬間、私は何処かに転移すると思います。
  代わりに『闇の欠片』が現れて、貴女達を襲うと思います……くれぐれも気をつけて下さい。」

 「大丈夫、闇の欠片なんかには負けないから!」

 「そう、ですね…貴女達に会えて良かったです…私をお願いします…!」


 うん、任せて!

 あ、それから貴女の名前もちゃんと考えておくからね!








 ――――――








 Side:ルナ


 …戻ってきたか。
 予想はしていたが、矢張り空中か転移先は!
 って、美由希は大丈夫か!?


 「…お姉ちゃん、なんで浮かんでるの?」

 「あ、アレ?あはは…何でだろうね?」


 ……何故に!?
 え?お前、何かしたかブライト?


 『No.』


 レイジングハートが何かした訳でも無さそうだが…

 「まさかとは思うが、バリアジャケットを展開してもらって、アームドデバイスを使って戦闘を行った事でリンカーコアが後天的に出来たとかじゃないよな…?」

 「如何かな〜〜?…サッパリ分らない…」


 …アースラに行って検査して貰ったほうが良さそうだな。

 まぁ、其れは良いとして…あの子の言う通りになったな。


 「うん、あの子は転移したみたいで居ないけど…」

 「私やクロノ君の偽者が一杯居るの…!」


 『闇の欠片』…よくもまぁ此れだけの頭数をそろえたものだな?
 私になのは、フェイトにアルフにはやて嬢に騎士達…執務官までか…手当たり次第に再生されているなマッタク。

 まぁ良い、あの子を救うための前哨戦だ――少しばかり暴れるとしよう。
 この手の欠片も、残しておくと面倒だからな。



 「おぉ〜〜い、なのはちゃ〜ん、王様〜〜!!」


 「はやてちゃん!」

 「来たか小鴉!」


 来たのかはやて嬢!
 其れに騎士達も…!


 「転移して姿を消したが、あれの力は凄まじい、捨て置くことは出来んからな。」

 「成程な……だが、先ずはこの欠片達だ…一気に叩こうか?」

 「ふ、其れが良いな。」


 詳細その他はアースラで話すとして、この欠片達を鎮圧しないとな。


 さぁ、覚悟は良いな闇の欠片よ?
 先ずは一体残らず、夢に戻してやるとしよう!


 「行くよ、皆!」

 「皆…行くで!!」

 「「「「「「「「「「「「おーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」


 ふふ、それじゃあ殲滅戦を始めるとしようか?

 1体残らず狩らせて貰うぞ!












  To Be Continued…