Side:???


 キリエ…なんて馬鹿なことをするんです!
 貴女の気持ちは分ります……私だって出来る事なら…!

 でも、そんな事をしても博士は喜びません!
 貴女に何か有ったら余計に悲しむだけです!

 「…見つけた!」

 キリエが向かったのは『2006年の地球の海鳴市』……其処にあるということですか…目的の物が!
 其の世界の人達に迷惑はかけたくないけど、キリエを止めなきゃ――取り返しのつかないことになる!

 「ごめんなさい博士……キリエを止めるために、博士の教えを破ります!」

 早まらないで下さいキリエ…
 エルトリアの復興にはきっと別の方法がある筈です!

 だから…!!!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福61
 『The Endress Dark』










 Side:冥沙


 ……此処はどこだ?……いや、夢か?
 混沌とした空間…ふん、夢にしては妙なリアル感があるものよ……なんなのだ一体?


 「うぐ…ひっく…ぐす…」

 「む…子供?ソレも女の子か…」

 鈍い金髪の小娘……誰だこやつは?
 いや、ソレよりも何故泣いている?寂しいのか、それとも何処か痛いのか?


 「ひっく…えぐ…ふぇぇぇ…」


 泣いてばかりでは分らぬぞ?
 痛いのならば我がおまじないをしてやる。

 寂しいのならば我と共に来い……我の周りには優しく温かい者が沢山居るぞ?
 それに、余り泣いては可愛い顔が台無しだ…顔を上げて笑え。
 そちらの方がうぬには似合っておる…


 「う…ぐす…」

 「?」

 !!な、何だこの魔力は!!

 い、イカン吹き飛ばされ…



 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「!?」

 …真に夢であったか……なんと言う現実感よ。
 それにあの小娘…ずっと昔に会った事があるような……何処か懐かしい感じが…

 「よもや此れが見せたと言う事でもあるまい?」

 我が魔導書――紫天の書。
 長く忘れていた名だが、本当に突然思い出すということがあるものよ。


 …まぁ良い、解らぬ事を考えても不毛だ。
 時間は…6時か、ルナと美由希は鍛錬をしているころか。

 うむ、我も見学するとしよう。




 「あ、おはよう冥沙。」

 「王様おはよー!」

 「おはようございます。」


 おぉ?なんだ、今日は皆早いな、うむおはよう。

 「何時もよりも幾分早いのでな、ルナ達の鍛錬を見に行こうかと思うのだが…ぬし等は如何する?」

 「うん、私もそうしようと思って。雷華と星奈も其の心算。」


 考える事は同じようだな♪








 ――――――








 Side:なのは


 ――カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンッ!!


 「ねぇ、星奈…」

 「はい、何ですかナノハ。」


 如何してお姉ちゃんは普通にルナと互角の勝負が出来るのかな!?
 幾らルナが魔力無しでやってるって言っても、それでも相当だよ!?

 「大体如何して、木刀がぶつかる音はするのに木刀そのものは見えないのかなぁ!?」

 若しかしてお姉ちゃん、魔力無しでフェイトちゃん並のスピード出してる!?


 「まさか、そんな筈無いでしょう。」

 「だ、だよね。」

 「剣を振るスピードならミユキの方が遥かに上です。」

 「お姉ちゃん人間だよね!?」

 「でもミユキだからね〜〜♪」

 「と言うか集束砲一発で都市一つ破壊するお前が言う事か?」


 私そんな事しないからね!?



 ――カンカンカンッ……カッ!



 「破ぁ!」

 「……せい!」


 ――だぁぁぁん!!


 …一本、ルナの勝ちだね。
 木刀弾き飛ばされても、切り込んできたお姉ちゃんの勢いを利用しての投げ…お見事♪

 「負けちゃったけど、ルナの木刀弾き飛ばしたお姉ちゃんも凄かったの!」

 「いや〜〜…今のは誘われたわね。ルナは私の一撃誘う為に態と木刀弾かせたんだよ?
  で、其処に打ち込んだ私の勢いを利用して、カウンターの合気投げ……私の完敗かな〜。」


 ふぇ、そうなの!?
 勝つ為には態と……ふんふん、勉強になるの。


 「しかもルナってば、いっつも同時に3〜4個の事考えながら戦って此れだからね。
  戦いに集中されたら、多分一合も打ち合えないで負けてるんじゃないかな?」

 「如何だろうな?少なくとも美由希は魔力無しの私の8割と同じ位だと思う。
  それに並列思考の精度鍛錬もしてるといっても意識の8割は戦闘に向けているんだ、余り差は無いと思うがな。」


 へ、並列思考しながらアレなの!?
 私も並列思考は得意だけどあそこまでは無理だよぉ…

 「因みにルナは何を考えてたの?」

 「ん?戦闘以外は取り留めの無い事さ――今日の朝ごはんは何だろうとか、今日はどんなお客さんが来るのかなとか、
  今日は一体桃子にどんなコスプレをさせられるのかとかな?」


 …お母さんは何処に向かってるのかな?
 リニスさんの衣装も増えてきたし、この間からアルバイトで入ったシグナムさんのも用意してるよね?
 シグナムさんは必至の抵抗で『矢絣袴』と『執事服』の2択で済んだみたいだけど…


 「あと今日は夢のことだな、不思議な夢だったけどなんだったのかなって。」

 「夢?」

 「あぁ、知らない金髪の女の子が混沌とした空間で泣いていたんだが…」


 !!そ、其の夢は!!


 「な!ルナ、ぬしもその夢を見たと言うのか!?」

 「おや、冥沙もですか?」

 「え、星奈んもソレ見たの?」


 えぇ、冥沙達も見たの!?

 「私もその夢を見たの!不思議な空間で女の子が泣いてる夢!」

 「なんと、ナノハもか!?……5人の人間が同じ夢を見るとは偶然では済まぬぞ流石に…」


 だよねぇ?……何が起きたんだろう?


 「私達の関係のせいかもしれないな。」

 「「「「ルナ?」」」」


 どう言う事なの?


 「私が白夜の魔導書、なのはが其の主、冥沙達はその騎士だ、白夜を経由して夢と言う無意識の共有をする事もあるかもしれない。」

 「ほえ〜、そんな事があるんだ…」

 「私達が並行世界から呼ばれたものであると言う特異性故かもしれませんね。」


 う〜〜ん…その辺は分らないな〜。

 まぁ、良いか♪

 そろそろ朝ごはんなの。


 「そうだな……うん、この匂いは…今日のおかずは鯵の開きかな?」

 「あとはわかめと豆腐のお味噌汁だね〜。」


 …ルナとお姉ちゃんは如何して匂いだけで分るのかな?

 あれ?そう言えばお兄ちゃんは?一緒に練習はしないの?


 「恭也か?……この前模擬戦中についうっかり『牙突・零式』を喰らわせてしまって…それ以来私とは…」

 「ルナ何を使ってるの!?」

 その内『九頭龍閃』とか使わないよね!?

 ルナの器用さと戦闘力は底なしなの…………取り合えず朝ごはんだね。








 ――――――








 Side:ルナ


 「ありがとうございました〜♪」

 ふぅ、取り合えず一息だ。
 リニスと将もお疲れ様、将も大分ウェイトレス業に慣れてきたじゃないか。


 「そうだろうか?今一つ実感が湧かないが…」

 「いや、慣れてきたよ。注文を取る時とかの顔に硬さが無くなったからな。」

 「そうですよ。初めてのときなんてガチガチでしたからね。」


 リニスは流石だな。
 すっかり翠屋の看板娘じゃないか?


 「ルナさんには敵いませんよ。」

 「ふ、私だってそう簡単に翠屋のトップウェイトレスの座は渡さないさ。」

 「成程…ウェイトレスとは意外と奥が深いんだな……ソレは兎も角この服は何とかならないのか?」


 …将?
 執事服と矢絣袴だけでソレを言うのか?

 私なんてほかにセーラー服とか、メイド服とか巫女服に、他意を感じまくるアニメキャラの制服とかあるんだぞ!?
 おまけにこの前は何処から買ったのか『BMG』の衣装を持ってくるし!

 矢絣と執事服くらい文句を言わずに着ろぉぉぉ!!!!


 「……そ、そうしよう…」(汗)

 「はぁ、はぁ…すまない興奮しすぎた…」

 落ち着け……よし大丈夫だ。


 さて、昼時のラッシュまで時間が有る、少し休憩にしよう……ってどうかしたかなはと?


 「……」(耳ぴくぴく)

 「?」

 何かを感じてるのか?


 ――ウィン


 『ルナ、すまない仕事中だったか?』

 「クロノ執務官?いや、これから休憩だが…如何した?」

 何か起きたのか?こっちでもなはとが行き成り何かを察知したみたいなんだが…


 『なはとも感じ取ったのか……実は海鳴で魔法陣の展開を確認したんだ。
  術式は古代ベルカ……はやては知らないって言うから、君の方かと思ったんだが…』


 「いや、見ての通り今の今まで仕事中だが…」

 なのは達は学校だから魔法陣を展開する事なんかは無いと思うし…


 『確かにそうだな…だがそうなると…』

 「…此方で調べてみようか?丁度休憩中だしな。」

 『良いのか?…いや、そうしてもらうと此方としても助かる…スマナイ、現地での調査を頼む。』


 了解、任せておいてくれ。
 直ぐに向かう。

 「桃子、少し空ける。」

 「はいはい〜、気をつけてね。」


 あぁ分ってる。
 将とリニスは残ってもらって良いか?…お客さんが来た時にウェイトレス不在と言うのもアレだからな?


 「ふぅ…任せておけ。」

 「バッチリですから。ソレよりもルナさんが気をつけてくださいね?」

 「なに、誰が出てきてもおいそれと不覚はとらないさ。」

 己の鍛錬は欠かさないからな……じゃあ行くか!
 なはと!


 「(!!)」――しゅん…がし!


 よしよし、確り捕まっていろよ!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 成程、確かに古代ベルカの魔法陣から展開された結界だな。
 シャマルのソレと比べれば遥かに精度も強度も低いが……一体誰が?

 少なくとも私となのはと冥沙を除けば、古代ベルカの術式が使えるのは八神家だけ…
 だが、誰も目的不明の結界など作らないはずだが……


 「(クイクイ)」

 「如何したなはと………!!」

 なんだ、この魔力の高まりは!?
 一体……む…誰か来る!


 「…………うふふ…」

 「シャマル!?」

 いや、似てるが違う。
 少なくとも私が知る限り、シャマルはこんな笑い方はしなかった筈だ…


 「うふふ…闇の書を完成させるために、貴女の魔力を頂くわね?」

 「何だと!?…いや、闇の書など既に存在しない、魔力の蒐集など無意味だぞ!」

 闇の書だと…記憶が古い。
 ソレに此れは…はやて嬢と出会う前のシャマルか…!

 となると偽者か?


 「無意味?そんな事ないわ…私達は魔力を集める事で…」

 「そんな事はさせない!」

 だが、此れは此処で如何にかしないと!
 スマナイ…眠ってくれ!


 ――ズバァァ!!


 「!!」

 「月影を使った超高速居合いだ…終りだよ。」

 「…あぁ…」


 ――シュゥゥゥ…


 消えた…矢張り偽者だったのか…


 『ルナさん!管理局のエイミィです!』

 「エイミィか、如何した?」

 『はい、今ルナさんが戦っていた相手ですけど、如何やら砕かれた闇の書の残骸みたいです。
  闇の書に関わった人達の記憶を再生しているのかも…』



 記憶の再生…厄介だな。
 しかも闇の書の残骸と来れば今の偽シャマルだけでは無いな…

 「よし、私もこのまま調査を続けてみる。そちらでも何か分ったら教えてくれ。」

 『了解!』


 頼んだぞ。
 昼時のラッシュまで後30分……広域索敵を使えば出来るな。


 しかし、砕かれて尚残骸が動くとは驚きだな…
 闇の書の闇は深いと言う事か……


 まぁ、何が来ようとも返り討ちだけれどな。



 だがそれ以上に…何が起きているんだろうか…?








 ――――――








 Side:なのは


 「闇の欠片…この世界にも現れよったか…」

 「うん、そうとも言うべき存在だって。」

 学校は放課後で、私達はルナから教えてもらった事を話していたの。
 闇の書の残骸が、私達の記憶を使って偽者を出現させてるって。

 昼間に1度殲滅して、今は小康状態らしいけど、まだ現れる可能性は有るって。

 何にせよ警戒は怠らずだね。


 「そうですね。」

 「それでも邪魔する奴はやっつける!」

 「うん、頼りにしてるよ皆♪」

 取り合えず家に戻ったら状況の整理だね。
 何がどうなってるのか整理しとかないと如何しようもないもん。




 「…み〜〜つけた♪」

 「「「「!!!」」」」


 今の声!…何処、何処にいるの!?


 「あらん、此処に居るわよ?」


 そんな…一瞬で!!!
 貴女は誰ですか!?


 「さぁ?まぁ、誰でもいいじゃない?私の目的は1つだもの。」

 「目的?」

 そう言えばずっと冥沙を見ているような…何をする気!?


 「髪の色に見た目の年恰好…完璧に一致したわ。
  さて…少しお話しましょうか『黒天に座す闇総べる王』さん?」


 狙いは冥沙!!



 この人…冥沙が目的なの!?
 でも、どうしてこの人はこんな事をするんだろう?


 「聞いても答えぬであろうな……」

 「だよね。」

 何か企んでる事は間違い無さそうだけど…そうはさせないの!!


 「あらん?立塞がるの?……だったらちょ〜〜っと強引にいこうかしら?
  まぁ、目的のものさえ手に入れば問題ないわけだし……ゴメンね〜ちょっと痛い思いしてもらうから。」

 「そうは行きません!!」

 冥沙を貴女に渡したりしないから!











 謎のピンクのお姉さんとの邂逅。
 これが、後に『砕け得ぬ闇事件』と称される事になる事件の始まりだったの…













  To Be Continued…