Side:なのは


 「………?」
 …今のは……夢?

 誰かが何かと戦っている夢…
 あの、不思議な服の男の子は…?

 「ナノハ起きてる〜〜?ご飯できた〜〜!!」

 …今日は雷華が起こしに来てくれたんだ。

 気になるけど、今は起きなきゃ!
 「起きてるよ?すぐに着替えるね。」

 「分かった。早くね〜〜♪」

 朝から元気だなぁ…最近は雷華も朝早いから、お寝坊さんは私だけ。
 皆には感謝しなきゃ。


 そう言えばルナが起こしに来る時って必ずお兄ちゃんが黒焦げに……自業自得なの…









  魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福5
 『始まりを告げる夜』









 「ほう、其れは又、不可思議なものだな?」
 「ナノハの話を聞く限り、夢と言うよりも、他者の意識がナノハに流れ込んだと言うところですか。」

 只今、登校中のバスの中。
 今朝見た夢の事を話してみたら、星奈は誰かの意識が流れ込んだって。

 「他者の意識って…何よ、それも魔法とか?」

 「いえ、恐らくはナノハの潜在的に高い魔力に呼応したのではないかと…」
 「ナノハは潜在魔力量は、我を遥かに凌駕しているからな。今は使い方が分かっておらぬが。

 え?私って冥沙より魔力多いの?

 「今更何を言っておる。うぬは未だ目覚めておらぬだけだ。その力、使いこなせれば高層ビルなど一撃で木っ端微塵よ。」

 えぇ〜〜!?

 「凄いね、なのはちゃん♪」

 すずかちゃんまで!?

 「ふっつーに話してるけど、傍からしたら何の事やらさっぱりよねこの会話って…
  まぁ其れは良いけど、その変な夢?それって何かなのはに影響あるわけ?」

 そう言えば如何なんだろう?
 「う〜ん、特に身体はなんとも無いよ?」

 「特別影響があるとは思いませんが…」
 「大丈夫!もし何かあっても、ナノハは僕が護る!邪魔する奴はやっつける!!」

 にゃはは、頼もしいな〜雷華は。

 「何でかしらね、なのはに降りかかる物理的障害は、全部雷華が蹴散らす気がするわ…」
 「貴様の考えはあながち間違いとは言えぬな…こやつの出力はバグかと思う時があるぞ…」

 えっへん!!

 「「誉めておらぬわ!」無いわよ!!」

 最近、登下校が賑やかなの。

 「まぁ、此れもまた良いことでしょう。」

 だよね♪








 ――――――








 Side:リインフォース


 なのは達が学校に行ってしまったからといって私達が暇に成るかと言うと、其れは否。
 開店前までにする事は、実は結構多い。

 「ふぅ…カウンターとテーブルは此れでよし。」
 後は床のモップがけをして、カップや食器類を拭いて…
 中々に忙しいけれど、此れは此れで充実している。


 それにしても今朝方見たアレは……あの子は間違いなく『ユーノ・スクライア』だった。
 戦っていたのは恐らく『ジュエルシード』で間違いないだろう。

 しかし、如何したものか…
 如何に一度テスタロッサを取り込んだとは言っても記憶は断片的にしか写し取らなかったからな…
 「……その時々で対処するほか無いか。」


 「あら、ルナもう全部終わったの?」

 桃子か。
 「いや、未だ全部は…」

 「床もカウンターもテーブルも食器類も全部ピカピカだけど?」

 何時の間に?
 まさか、思考の海に埋没していながら無意識に行っていたのか……

 「あらあら…すっかり仕事内容が身体に染み付いちゃったのね…」

 その様だ……ところで桃子、その手に持っているよからん物体は何だ?

 「よからんだなんて…ルナの新しいウェイトレス服よ?」

 よし、全力で拒否する。
 どこから持ってきたんだメイド服(そんなもの)

 「え〜…似合うと思うけど…」

 似合うとか似合わないじゃない。
 この店をコスプレ喫茶にでもするつもりか?

 其れにそんな裾の広がったスカートだと昼間の混雑時には動きにくい。

 「それもそうね…じゃあ此れね♪」

 「何故執事服!?」
 一応聞くが、その他の選択肢は…

 「無し♪」

 矢張りか…うぅ…ならば動きやすい方が良い…
 「……執事服で…」

 「了解♪」

 何故嬉しそうなんだこの人は…
 はぁ…此れも仕事か…








 ――――――








 
――夕方




 Side:なのは


 今日の授業も全部終わって、今は皆で下校途中。
 星奈達が学校に通うようになってから、この6人で行動する事が普通になってるの。

 だけど…!



 ――た、助けて…



 そんな中で突然聞こえてきた声に、気が付けば走り出してた。

 「なのは!?」
 「なのはちゃん!?」


 アリサちゃんとすずかちゃんは驚いてるけど、

 「矢張りうぬにも聞こえたか。」

 冥沙達にも聞こえたみたいで、私と一緒に声のする方へ向かっている。
 でもどうして私達にだけ聞こえたの?

 「一定以上の魔力を持つものにのみ聞こえる念話でしょう。」
 「まったくも〜何だよ一体〜〜!!」

 何時も下校の時に通る公園を声に導かれるままに…あ、アリサちゃんとすずかちゃんも来た。
 そして辿り着いた場所には、紅い綺麗な宝石を持ったフェレットと、

 「ルナ!?」

 何故か執事服のルナの姿が…その格好は如何したの?

 「…桃子に…」

 お母さん何してるの!?

 「あ〜その服カッコイイ!!クロハネずるいぞ〜〜!!」
 「……桃子に頼んでみろ。きっと嬉々として買ってくれるはずだ…」

 ルナごめんね…じゃなくて!
 「この子、怪我してる!」

 そう、酷い怪我をしてるの。

 「知ってる動物病院があるから、其処行くわよ!」

 アリサちゃん、頼りになるの。



 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・



 「はい、此れで大丈夫。傷は酷かったけれど、命に別状は無いわ。」

 「よ、良かった〜〜。」
 ぶ、無事でよかったの…

 「それにしても珍しいわよねこのフェレット。新種かしら?」

 う〜ん、如何なんだろう?
 「星奈、分からない?」

 「分かりかねます。ですが、既存の種ではないものと思います。」

 星奈でも分からないか。
 そうだよねぇ…念話が使えるフェレットなんて聞いた事無いもん。

 「取り合えずこの子は今日のところは此処で預かるから、貴女達は家に帰りなさい。」

 「は〜い!へれっとの事はじゅーいさんに任せて僕達は取り合えず帰ろう?」
 「だな。この場で我等が出来る事は無いからな。」

 そうしよっか。


 「「「「「「「おねがいします。ありがとうございました。」」」」」」」


 それだけ言って病院を出て…


 「なのは、アレを引き取るつもりか?」

 ルナにこう聞かれた。
 やっぱりバレバレかなぁ…

 「なのはちゃんが飼うの?」
 「飲食店やってて、動物飼えるの?」

 う〜ん、如何だろう?
 「お父さんに聞いてみるけど…」

 「大丈夫だ。説得は手伝う。」

 ありがとうルナ♪








 ――――――








 
――




 Side:リインフォース



 家に戻った私達は、何とか士郎の説得に成功した。
 色々と難色を示してはいたが、そのフェレットが魔法と関係があるかもしれない事を話し、
 更に桃子が乗り気だった事もあって、最終的には円満に決まった。

 ついでに何故か、なのはと星奈のメイド服、冥沙と雷華の執事服を購入する事が決まっていた…どうしてだ?

 兎に角、明日引き取るという事を決め、夕食後を済ませた直後に其れはおきた。


 ――聞こえますか?僕の声が聞こえますか?


 突然聞こえてきた、あのフェレットからの念話。
 今朝の夢のことを考えると、やはりあのフェレットがユーノ・スクライアで間違いないな。

 私がこの声を聞いたという事は、なのはと星奈達も聞いただろう。
 なのはは間違いなく行動を起こすはずだ、恐らくは星奈達も。

 当然私だって無視は出来よう筈もない。
 だが出かける前には一応…

 「桃子、少し出かけてくる。なのは達と一緒に。」

 「あら、こんな時間に?気をつけてね。」

 信頼されているのか、それとも事情を察したのか桃子は何も言わずに了承してくれた。
 だが、これなら帰ってきてから色々言われる事は無い筈だ。

 「行って来ます。」

 玄関を飛び出すと既になのは達が居た。
 2階の窓から降りてきたのか…?

 「廊下にでも出てキョウヤに見つかりでもしたら面倒だからな。」
 「兎に角急ぎましょう。嫌な予感がします。」
 「あの病院から、凄い力を感じる。まぁ何が出ようとまっけないけどね〜〜!」

 「行こう。あの子を助けに!」

 なのはの合図で私は騎士甲冑を、星奈達も夫々の戦闘装備を展開し飛び立つ。
 なのはは、まぁ私が抱きかかえて飛んだが…

 目指すは『槙原動物病院』。








 ――――――








 Side:なのは


 皆で空を飛んで動物病院の前まできたら、突然不思議な音がして景色から色と音が消えちゃったの…
 これって…?


 「結界だ。恐らくはあのフェレットが張ったものだ。」

 此れが…



 ――ゴォォォォォォォ!!



 何この音……っ!!!
 「な、なんなのアレ!?」

 突然の轟音と共に現われた真っ黒な影。
 其れに追われる、あのフェレット。

 た、助けなきゃ!!

 「我に任せろ。」

 冥沙…うん、お願い!

 「穿て破壊の剣、『アロンダイト』!!」


 ――ガァァン!!


 す、凄い威力…ってあの子は大丈夫?

 「はっはっは〜〜!雷光散らして僕参上!ちゃんと助け出してるから大丈夫!!」

 雷華、凄いスピード…!
 此れを見越してたんだ…

 「き、来てくれたの…?」

 ほぇ?
 しゃ、喋った〜〜!?

 念話だけじゃなかったの〜〜!?

 「お、驚かせてごめん。」

 「うぅん、それよりもあれは何?」
 確かに驚いたけど、今は目の前の事が先決。
 だって、冥沙の凄いのが当たった筈なのに、再生してる…!

 「小癪な…堕ちろ『インフェルノ』!」
 「殲滅…『ブラストファイヤー』!」
 「砕け散れぇ!『電刃衝』!」

 冥沙、星奈、雷華の連続攻撃を受けてもその都度再生しちゃうなんて…

 「厄介なものだな…『天戒縛鎖』、吼えよ!」

 ルナ達が負けるとは思えないけど、このままじゃ被害が多きくなっちゃう…!

 「アレは、僕が探しているものが関係してあぁなってて。止めるには魔法の力が必要なんです。
  お願い、力を貸して下さい!さっきの子の攻撃を見る限り君達は魔法の事を知っている方たちですよね?」

 た、確かに知ってるけどルナ達と違って私は魔法なんて使えないよ〜!
 一応何か役に立つかと思って『白夜の魔導書』を持ってきたけど、考えてみると如何使えばいいのかわかんない〜(泣)

 「貴女にも魔法の素質があります。」

 冥沙もそう言ってたけど、具体的に如何すればいいの?

 「此れを持って。目を閉じて心を澄ませて。僕の言う通りに繰り返して。」

 そういって差し出された、あの紅い宝石。
 うん、分かった!
 私にアレを止める力があるなら!


 「我、使命を受けし者なり」
 「我、使命を受けし者なり」


 「契約のもと、その力を解き放て」
 「契約のもと、その力を解き放て」


 「風は空に、星は天に」
 「風は空に、星は天に」


 「そして不屈の心はこの胸に、この手に魔法を」
 「そして不屈の心はこの胸に、この手に魔法を」


 「レイジングハート、セット・アップ!」
 「レイジングハート、セット・アップ!」



 全てを唱え終えた瞬間、

 「stand by ready. set up.」

 宝石から声がして、光が私を包み込んだ。
 でも何でだろう、さっきまでとは違って此処からは如何すればいいのかが分かる。

 イメージするんだ、戦う為の服と魔法使いの杖を。

 服も杖も星奈のバージョン違いで。
 きっとそれが一番シックリ来るはずだから。


 光が弾けると、私はイメージした服を纏っていた。
 星奈のをそのまま白くした服と、金色に輝く杖。

 何より冥沙が言っていた『高層ビルも木っ端微塵に出来る』程の魔力も感じ取れる。
 うん、これならルナと、皆と一緒に戦える!

 高町なのは、行きます!!

 左手に『レイジングハート』を、右手に『白夜の魔導書』を持ち、私は初めての魔法の戦いに足を踏み入れた。





















  To Be Continued…