Side:ルナ


 闇の書の闇は砕け、夜天の魔導書を巡る一連の事件も一応の終わりを見せた。
 騎士達も所在地認識と魔力制限を受けるとは言え、保護観察だけで済んだ。

 第一級封印指定ロストロギアを行使し、魔導師の襲撃まで行ったことを考えると破格の待遇だろう。
 まったく、レティ提督には感謝しても仕切れないな。
 今度ブライトハートのメンテナンスに行く時に翠屋のケーキをお土産に持っていくことにしよう、そうしよう。

 「まぁ、其れは良いとして……どうしたものだろうな此れは…」

 事件が終って平穏無事なんだが、目下問題発生中。


 簡潔に言うと――起きたら、隣で見知らぬ銀髪の少女が寝ていました。


 …如何しろと?
 と言うか誰だこの子は?
 それ以前に何時私のベッドに入った!?
 もっと言うならどうやってこの家の中に入ってきたんだ!?
 誰か入ってきたら超人的感覚を持つ士郎が飛び起きて一騒ぎあるはずなんだが…


 「ん…ん〜〜…ふぁぁ…あ、おはようございます…」

 「あぁ、おはよう…」

 うん、目覚めたが如何しよう?
 全く知らない子だ…う〜む…取り合えずリビンg「にゃ〜〜〜〜どちら様なの〜〜!?」…なのは?


 「おぉ!?君だれ!?何時の間に僕の部屋に!?」


 雷華?


 「…失礼ですがどちら様でしょうか?」


 星奈も?
 …抑揚の無い壁抜けする声と言うのは如何なんだろう?星奈らしいけれど…

 う〜ん…どうやらなのは達のところにも見知らぬ誰かが居るようだな?
 害は無さそうだが……さて、何が起きたのやら…










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福55
 『ある日デバイスが…』










 と、言う訳で全員リビングに集合。
 なのは達のところにも矢張り見知らぬ人が居たんだな…

 なのはと一緒に居るのは金髪赤目の女性。
 星奈と一緒に居るのは、なのはと一緒に居る女性と瓜二つだが髪は赤紫で目は青。
 雷華と一緒に居るのは青髪の渋めの男性か……うん、全く持って誰だか分らない。


 「誰だこいつ等は…なのはの部屋に忍び込むなど万死に値する…寧ろ今すぐ成敗してくれるわぁぁ!!

 「落ち着けシスコン。」

 「取り合えず話し聞いてからね?」


 ――メキィィ!!



 「ぶべらっぱ!?」


 というか話が進まないから少しそのままで居てくれ。
 そして、良いタイミングだったぞ美由希。


 「そりゃあ毎日ルナと訓練してるからね。タイミング位は言われなくても…阿吽の呼吸てやつかな♪」

 「そうだな。よし、今度はコンビネーションを増やしてみよう♪」

 「賛成♪」


 事件後、なのは達の話もあって高町家の全員が私の事を『ルナ』と呼ぶようになった。
 美由希や桃子、冥沙達にそう呼ばれるのは新鮮だな。
 八神家の『リインフォース』と混同しなくていいだろう。


 其れは兎も角として、この人達は本気で誰なんだろうか?


 「だよねぇ…あの、貴女は一体誰なんですか?何で私の部屋に?」

 「…矢張り分りませんか?何時も一緒に居るのですが…?」

 「ほえ?」


 何時も一緒にだと?……ちょっと待て、まさか…
 いや、其れならば容姿のカラーリングも…だが、其れは幾らなんでも…


 「それとも、これなら分っていただけますか?…『Good morning Master.』

 「!!その声…若しかしてレイジングハート!?」

 「はい。レイジングハート…貴女と共に戦う魔導師の杖です♪」


 予感が当たってしまった…(汗)
 …と言う事は…?


 「貴女はルシフェリオンと言う事ですね?」

 「如何にも。」

 「ってことは君はバルニフィカス?」

 「その通りです、サー。」

 「お〜〜、バルニフィカスが人間になった〜〜♪」


 其れは喜ぶところか雷華!?
 だが、そうなるとこの少女は…

 「ブライトハート…」

 「はい♪この姿ではお初ですね、マスター。」


 うん、そうだな。初めてだな。
 ……ではなくて、何で人の姿になっているんだ?
 少なくとも変身魔法は使った覚えが無いぞ?
 それ以前にデバイス単体で行使できる魔法は早々多くない筈だが…


 「デバイスマイスターのマリエル・アテンザが、事件後のメンテナンスの時に『12月27日限定1回きり』の機能として付けてくれたんです。」


 は!?何をしているんだマリー!!
 いや、まぁ何か害が有る訳ではないからいいんだが…


 「1度だけなら人の気分を味わうのも良いかな〜って思って付けてもらったんです♪」

 「ふむ…我のディアーチェクロイツがそうならなかったのは無人格のアームドだからか?」

 「そう、なります。恐らくはフェイトのバルディッシュも今頃は…」


 …頑張れフェイト。
 まぁ、プレシアとリニスが居るから大丈夫だろう…多分。

 それでだ、1日だけとは言え人間に成れた訳なんだが、何かしたい事は有るか?
 私は店の方があるからあまり時間は取れないんだが…


 「あら、それならルナは今日はお休みでいいわよ♪折角ですもの、皆と楽しまなきゃ損よ?」

 「桃子…いや、しかしそうも行かないだろう?今日はアルバイトの子だって休みを取っているはずだろう?」

 その上私まで休んだら店が回らないんじゃないのか?
 と言うか、順応性あるな…流石だけれど。


 「レイジングハート達なら警戒は必要無いからね。
  うん、桃子さんの言う様にルナは今日はお休みで良いよ、代わりに恭也を手伝わせるから。」

 「ちょっと待ってくれ!!俺は今日は忍と!!」


 復活早いな恭也。
 まぁ、偶には店に入るのもいいんじゃないか?


 「だから俺には予定が!!」

 「もしもし、忍さんですか?朝からすみません、美由希です〜♪
  今日、恭ちゃんがそちらに行く事になってたと思うんですけど、すいません逆に翠屋に来て貰っても良いですか?
  恭ちゃんが『執事服姿』で待ってますから〜〜♪」

 「待て美由希!!」

 『デジカメとハンディカムを持って行くわね♪』

 「忍!?」


 スピーカー状態にしてたのか…うん、見事だ美由希。


 「と言う訳で、忍さんが執事恭ちゃんを楽しみにしてるから頑張ってね♪」

 「うおぉぉぉぉい!?」


 諦めろ…といっても無理だろうな?
 では、なのは頼むぞ?


 「は〜い。…お兄ちゃん。」

 「なのは?」

 「レイジングハート達が人になれるのは今日だけなの。だからルナも一緒に遊びたいの。
  今日だけで良いからルナの代わりにお店の方を任されて欲しいの…ダメ?」

 「う…」

 「なのはのお願い聞いて欲しいなぁ…」(上目使い)

 「うぐ!!し、仕方ない…なのはの頼みとあっては断る事も出来ない…分った今日一日だけな。」

 「わぁ♪ありがとうお兄ちゃん♪」(ニコッ)

 「グッハァァァ!!」(鼻から愛が噴出)


 流石はなのはだな…恭也には効果抜群だ。


 「うむ…実に見事なものよ。」

 「と言うか、キョウヤのアレは最早病気ですね手遅れの。」

 「手遅れ?じゃあ石田せんせーでも無理だね♪」


 本当に手遅れだな…シスコン成分さえなければ妹思いの良い兄だと思うんだがなぁ?
 まぁ、今更か――で、如何する此れは?


 「3分もあれば復活するよきっと。」

 「そうね。それじゃあそろそろ朝ごはんにしましょうか?レイジングハート達も一緒にね?」

 「「「「ご一緒させていただきます。」」」」


 そうだな、先ずは朝ごはんだ。
 取り合えず今日は非番になったし、朝ごはんを食べたら皆で出かけようか?


 「「「「「「「「賛成!」」」」」」」」


 マリーのトンでも機能付加には驚いたけど、楽しい一日になりそうだな。


 尤も、勝手に変な機能付けた事は確りとお説教だがな…








 ――――――








 Side:なのは


 「見慣れた景色も、人の姿だと新鮮なものですね。」

 「そう?それなら良かった♪」

 朝ごはん食べた後、一休みして皆で街に繰り出してるの。
 にゃはは、レイジングハート達も美人さんだから皆の視線がすごい…
 バルニフィカスには嫉妬・羨望の視線が向けられてるのは、唯一男の人だからだよね…


 「間違いないですよナノハ。所謂『リア充爆発しろ』と言うやつですよ。」

 「バルニフィカス爆発するの?」

 「しませんよ、サー。」


 皆、馴れてるなぁ。
 うん、普段から一緒だもんね。

 「それで、何しようか?」

 殆ど無計画で出て来たから何にも…只街をぶらつくのも味気ないし…


 「ウィンドウショッピングをしながら、途中でゲームセンターにでも入って遊んで、
  何処か適当なところでお昼を食べて、午後はボーリングかカラオケでも行こうか?今日は私が皆のお財布になるよ。」

 「うむ、其れが良かろう。…だが、財布は大丈夫か?」

 「特に使う事も無いから余っているんだ、こう言う時に使うのが良い。」

 「では、遠慮なく。」


 うん、ルナにお願いします♪



 で、さっきから思ってるんだけど…

 「どうしてレイジングハートはブライトハート抱っこしてるの?」

 人間モードのブライトハートは私達と同じ位でレイジングハートはルナくらい。
 何でそんなに抱っこして…


 「はぁ…本当ならば私が抱きかかえて貰うのが良いと思うのですが大きさ的に無理がありますので…」

 「ほえ?どゆこと?」

 「マスターは良くルナに抱きついているので私達も。」

 「朝もマスターがナノハを抱きかかえてリビングに下りる事がありますからねぇ…」

 「んな!?」


 わ、私とルナの真似なの!?
 そ、そう言えば学校から帰ってきたときとか結構ルナに抱きついてるかも…

 朝も寝起きが悪いときは、ルナが起こしに来てそのままお姫様抱っこで…うにゃ〜〜改めて考えるとコッ恥ずかしいの〜〜!!


 「「見ているほうは微笑ましいですけどね?」」

 「止めを刺すな貴様等…」


 うぅ、実際見せられるとなんとも…なの。



 ――ひょい



 「ふえ?ルナ?」

 「いや、ブライトハート達に真似されるだけと言うのも癪だからな…どうせなら本物を…」


 思考が色々飛んだ!?


 「嫌か?」

 
 嫌じゃないけどね!?
 寧ろルナに抱っこされるのは大好きだけど…えぇい、こうなったら開き直りなの!!

 「…落さないでね?」

 「勿論だ♪」


 まぁ、いっか♪


 「るなとなのは、レイハとブラハ…ばかっぷる?」

 「「「否定はしません。」」」

 「…当人同士が幸せそうだから何も言ってやるな…」


 冥沙、其れはある意味止めなの…



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 ふぅ、楽しい時間は本当に終るのが早いね。
 気が付けばもう夕暮れ。

 本当に楽しかったなぁ〜。
 ゲームセンターではレイジングハートとルシフェリオンがガンシューティングで最高ランク出した。
 バルニフィカスは雷華にせがまれてクレーンゲーム無双状態!器用なんだね〜。
 一番はブライトハート!
 私達と変わらない見た目の女の子がパンチゲームでカンストすれば誰だって驚くの(汗)

 お昼は…うん、イタリアンレストランでまたしてもレイジングハートとブライトハートが…
 ブライトハートがレイジングハートに『あ〜ん』ってやって食べさせて…私とルナは其れはしないよ!?
 いや、0じゃないけどね!?
 おまけにルシフェリオンまで其れに乗っかって星奈にやるし…うん、可愛かったけど。
 ナポリタンのケチャップで汚れた雷華の口を拭ってあげてたバルニフィカスは見事なの…


 で、午後は皆が『身体を動かしたい』ってことでボーリング。
 雷華がパーフェクト300点を叩き出したのは流石だね♪

 更に同じフロアの隅にあるビリヤードも初体験。
 意外と面白かったなぁ♪


 で、遊び倒して今は海鳴臨海公園。
 夕暮れはやっぱり此処だね。

 「どう、皆楽しめた?」

 「はい、それはもう。」
 「貴重な体験でしたよ♪」
 「マスター達の暮らしを生で体験できましたから。」
 「とても、充実した一日だったのは確かです。」


 なら良かったの♪


 「明日になれば我々は本来の姿に戻ります。今日は本当に楽しかったですよマスター。」

 「そっか…うん、私達も楽しかったよ♪」

 ルナ達も楽しかったよね?


 「聞くまでも無いだろう?楽しかったさ。」

 「えぇ、ルシフェリオンとこうして触れ合えるとは貴重でした。」

 「僕も楽しかったぞ〜〜♪」

 「うむ、我のデバイスは人にならなんだが…それでも楽しくはあったな。」


 つまり皆大満足♪
 それなら言う事無いの。

 明日からは又何時も通りだけど……これからも宜しくね?


 「「「「勿論です。」」」」


 ふふ、それじゃあ帰ろうか?
 きっとお母さん夕御飯気合入ってると思うから♪









 で、予想通りに夕御飯は豪華だったの。
 凄い量だったけど雷華が全部…流石は雷華♪

 その後は皆でお風呂入って、そのまま一緒に寝た。
 ちょっと吃驚したけど、凄く楽しい一日だったの♪








 ――――――








 Side:ルナ


 …朝か。
 隣には…居ないな女の子は。

 有るのは待機状態のブライトハート――元に戻ったと言う訳か。


 『Good morning Master.』

 「あぁ、おはよう。昨日は楽しめたか?」

 『Yes Very Good Day.』


 そうか。
 ふふ、これからも宜しくな?


 『All right.My Master.』


 頼もしいな。

 昨日の一件で、私達とデバイス達の絆はきっと更に深くなった。
 …マリーに勝手な機能を付けたことへの苦言はやめておくか…結果的にいい事だらけだったものな。




 さてと、何時もの朝の鍛錬を始めるか♪














  To Be Continued…