Side:ルナ


 此処は…いや、此れは夢か?
 そうか…私は騎士達に敗れたのだな…そうなると魔力は蒐集されてしまった訳か…


 「そうだな。だが、まだ最悪には至っていない。」


 将?…元の世界の…?此れは私の記憶か…


 「そうなのかもな。或いは書の完成の為に蒐集された私の残留思念か…何れにせよこうして話が出来る。」


 奇妙な話だが…悪くは無いな。
 正直に言うと将、お前とはもう少し一緒に居たかったな。


 「其れは私もだ。私の知る限り、私は将として管制人格であるお前とは最も長く時を過ごしていたのだからな。
  まぁ、其れは良い……まだ動けないか?」


 まさか、此れまでと比べれば余りにも長い時間活動していたから少し疲れただけのこと。
 だが、寝てばかりでも身体に悪い――そろそろ起きるとするさ。


 「其れが良い。この世界でのお前の主も、お前が目覚めるのを心待ちにしている様だぞ?」


 なのはが?…そうか、ならばなおの事起きなくてはな。


 「あぁ、そうだな。……リインフォース、この世界の私達の事を頼む。そして、この世界の『リインフォース』もな。」


 勿論だ。
 もう一度会えて、嬉しかったよ将。


 「其れは私もだ。さぁ、起きる時間だ。」


 あぁ、行ってくる。










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福42
 『蒼穹の果てから…』










 Side:なのは


 イキナリの緊急警報――無視はできないの。
 レイジングハート達は治ったばかりだけど、それでも捨て置けないよ。

 転送はレティ提督も『GOサイン』出してくれたから直ぐ出来る。
 リンディさんと連絡が取れないのも気になるし…

 「行こう皆!」

 「うん。」
 「無論だ。」
 「参りましょう。」
 「行っちゃうもんね〜〜!!」


 皆同じだね。
 それじゃあ行こう!


 ――待て、私を置いていくつもりか?


 !!
 今のは…ルナ?


 ――ピシ


 へ?


 ――ピキ、ピシ…


 ルナの入ってるポッドに皹が…!
 若しかして…


 ――ガシャァァン!!


 硝子が割れて…その中からルナが!
 ルナ、目を覚ましたんだ…!


 「あぁ、心配をかけたな。だが、もう大丈夫だ。すっかり身体は治ったよ――彼女のお陰でな。」

 「マリーさん…ありがとうございます!」

 そうだ、マリーさんが頑張ってくれたからルナは復活できた。
 どれだけ感謝しても足りないくらいなの。


 「あはは、私は私に出来る事をしただけだよ。ルナさんがこんなに早く目覚めるとは予想外だったけど。
  如何ルナさん、身体の方は?何か変な感じとかはしない?」

 「全く無い。寧ろ前よりも力が増している感じだ。」

 「ふぅん…ちょっと失礼。」


 そう言ってマリーさんはルナに何か機械を当てる。
 え〜〜と…確かデバイスの状態チェックをするものだっけ?


 「うん、リンカーコアは正常。組み込んだ次世代ユニゾンデバイスのフレームも問題なく馴染んでる。此れなら大丈夫。」

 「そうか…ありがとう。」


 うん、ルナ完全復活!
 でね、起きたばかりで悪いんだけど…


 「分っている……騎士達だな?」

 「確信は無いけど…多分。」

 「いや、間違いないだろう。今の地球で魔導的な『何か』が起こるとすれば十中八九騎士達を除いて他には無い。」

 「言われてみれば確かにそうなの。」

 …って!騎士さん達じゃ余計に拙いの!
 も、若しかしてリンディさんに連絡が取れないのって…騎士さん達に…!!


 「リンディ提督が?…いや、可能性は有るな。彼女も高ランクの魔導師――その魔力は騎士達には喉から手が出るほど欲しい筈だ。」

 「そんな…!」

 だったら尚の事急がないと…!
 マリーさん!


 「大丈夫!既に準備完了、非常時用の転送ポートは起動済み!後は送るだけ!」

 「お願いします!!」

 「了解!転送…開始!!」








 ――――――








 Side:シグナム


 大きな魔力反応を見つけて来たが…その持ち主は何処だ?
 反応のあった付近の半径数百メートルにシャマルが結界を張ったから逃げられはしない筈だが…


 「…貴女がリーダーよね?」

 「!!」

 何時の間に!?
 目の前のビルの屋上に立つ翠の髪の女性……強い魔力反応は彼女か。


 「少しお話、よろしいかしら?」


 手にしたカード…デバイスか?
 少なくとも魔導師である事は間違い無さそうだが…話だと?


 「闇の書の防衛騎士プログラム――ヴォルケンリッター。貴女達は一体何を目的に魔力の蒐集を行っているのかしら?」


 矢張りそう来るか…

 「我等には我等の目的があります、貴女に語る義理は無い。」

 言う必要も無い、言うだけ無駄なのだからな。


 「…私が11年前の闇の書の暴走で家族を失った者だとしても?」

 「!?」

 なに…?如何言う事だ?
 11年前の闇の書の暴走?

 いや、そもそも闇の書の暴走とは如何言う事だ?
 なんだ?何故こんなにも記憶に霞がかかったように…


 「うらぁぁぁ!!」

 「!!」


 ヴィータ!


 ――ドォォォン!!


 「何やってんだよシグナム!」

 「あぁ、スマン…」

 そうだ、我等の目的は闇の書の完成。
 ならば立ち塞がる者は散らすのみ!


 「語る気は無い…か。まぁ、貴女達が素直に言ってくれるとは思っては居なかったけれど…」


 何と…ヴィータの一撃を受けて略無傷とは…矢張り高位の魔導師か。
 其れに、あの槍のようなデバイス…凄まじい力だ。
 だが、


 「見つけたわ。」

 「んむ…」


 我等は4人。
 果たして1人で我等の相手が出来るか?


 「騎士達の勢揃い……此れは少し拙そうね。」

 「少し?貴女にとっては絶望的状況と思うが?」

 「少しよ。最強の援軍が来てくれたもの。私は彼女達が降り立つまで持てば良いの。」


 援軍?
 ………!!!此れは…!!


 「!!上空に転移反応!凄い魔力!!」


 略真上か!
 しかもこの魔力の大きさは…!!


 もう動けるのか『月の祝福』よ…!!








 ――――――








 Side:ルナ


 マッタク、何も海鳴の上空に転移させなくとも良いだろうに。
 まさか目的地に降り立つ前に、スカイダイビングをする事になろうとはな。

 だが、眼下の街に見える結界…間違い無い、シャマルのものだ。
 だとしたら管理局の魔導師では破る事は不可能と見て良い。
 まぁ、私達が頑張るだけだな。


 「ゴメンねレイジングハート、イキナリで。」

 『Don't worry Master.I 'm Condition All green.』


 レイジングハートも全快か。
 私も前よりもずっと調子が良い。
 マリエル・アテンザのおかげでブライトハートもその力を増した――今回は負けんぞ騎士達よ!


 『Call My New Name.』

 「うん!!!」


 起動は新たな名でか。
 では行こうかなのは!!


 「うん!レイジングハート・エクセリオン!」

 「バルディッシュ・アサルト!」

 「ルシフェリオン・シュバリエ!」

 「バルニフィカス・ブリッツ!」

 「ディアーチェクロイツ!」


 ふふ、皆良い名だ。
 私達も行こうか?


 『All right.My Master.L'ets GO.』

 「あぁ。ブライトハート・クァンタム!」


 行くぞ。


 「「「「「「セェェット、アーップ!!」」」」」」

 『『『Standby, ready.Set up.』』』


 星奈達3人のデバイスはインテリジェントじゃないから応えは無い。
 だが、それでも気持ちは一つだ!

 なのは達にはバリアジャケットが、私には騎士服が装着され、デバイスも展開。
 このまま一気に結界を抜けるぞ!!









 ――――――








 No Side


 結界の上空真上に現れた巨大な魔力反応。
 其れは一切の迷いなく結界内部に突入し、砂煙を上げて着地した――リンディの居るビルの屋上に。


 「無事か、リンディ提督?」

 「えぇ、何とか。」


 降り立ったのは言うまでもなくルナ達だ。
 リンディを中心に六角形の陣で降り立つ。

 リンディの正面にルナとなのは。
 その左右両翼を星奈とフェイトが固め、背後には冥沙と雷華が陣取っている。

 一切の隙を感じさせない完璧な布陣だ。


 「今の魔力の強さ…矢張りお前か。驚くべき回復の早さだな。」

 「なに、私は目覚めたばかりだよ。回復力と言うならなのは達の方が遥かに上さ。」

 挨拶代わりに軽く交わす。
 だが、互いに視線はそらさず相手を見据える。


 互いに退く気は毛頭無い。

 なのは、フェイト、星奈、冥沙、雷華にとってはリベンジ戦。
 ルナにとっては3度目の邂逅。


 結界の内部は一切の迷いの無い闘気と魔力に満ち満ちていた。



 その力は結界の外にまで漏れ出していたのだろう。


 結界の処理に当たっていた管理局の武装隊員は後にこう語った、


 『信じられませんでした。闇の書の守護騎士ならば兎も角、漏れ出した魔力はそれ以上に強かった。
  其れを発しているのが1人の女性と5人の年端も行かぬ少女だったとは……自信をなくしましたよ。』と…












  To Be Continued…