Side:ルナ


 ブライトハートのメンテナンスが終わって、戻ってきた矢先に此れか…
 シャマルの封鎖結界を見て嫌な予感がしたが、中に入ってみれば案の定か。
 なのはと星奈が居ると言うことは雷華と冥沙も居るはずだな。

 「私の忠告は無視されたわけだ…」

 ギリギリ、寸でのところでなのはと星奈の魔力蒐集は止める事が出来た。
 だが2人は気を失い、デバイスも砕けている……もう少し早く戻って来れていれば…!


 「今の魔力……矢張りお前か。」

 「将…」


 ――シュイン…


 『旅の鏡』を使っての転移…シャマルとザフィーラ…騎士達が勢揃いか。
 ヴィータが戦っていた2人は結界で保護したがお前達と戦っていた者は如何した?


 「私と戦っていた金と蒼の少女ならば、落とした。気絶させただけだがデバイスは砕いたし戦闘は不可能だぞ?」

 「金と蒼…フェイトと雷華か!」

 フェイトも来ていたのか…いや、有る意味で当然か。
 そうなるとアルフも居る筈だが…


 「おぉ、来て居ったか!」

 「ルナが居れば100人力だねこりゃ。」


 お前達は無事だったか…どうやら『最悪』だけは回避できたみたいだ。










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福39
 『月と白夜、落ちる…』










 と、そうなると自動的にシャマルとザフィーラの相手はお前達だった訳か。
 こう言うのもなんだが……お前達2人なら苦労しなかったんじゃないか?


 「まぁねぇ…けどあのデカブツやったら防御堅くて、冥沙の魔法でも決定打にならないのさ。」

 「オマケに緑騎士がバインドを飛ばしてきたりするから落とす事が出来なかったわ…忌々しい。」


 成程な。
 で、私の存在を感知してシャマル達は此処に来て、お前達も私に気付いて来たと言う訳だ。

 さて…如何する騎士達?
 数の上ではそちらが有利でも、戦力的には此方が上だ。
 ついでに言っておくと、転移魔法でフェイトと雷華もなのは達のいる結界内部に転移させた。
 隙を見て魔力を蒐集する事は不可能だぞ?


 「な!?フェイト!!お前等…!!」

 「落ち着けアルフ。気を失っているだけだ。騎士達を退けて、安全を確認してから治療をしたほうが良い。」

 「ルナ……そうだね。みすみすご主人様を危険にさらすわけには行かないね…」


 そうだ。
 さて騎士達よ、あの結界は私が解除するか或いは私を倒さない限り消える事は無いし、結界外部からの蒐集は出来ない。
 できれば此処は退いてくれないか?前にも言ったが無用な争いはしたくないんだ。


 「其れは出来んな。我等にとって闇の書の完成は譲れぬ目的なのだ。」

 「譲れぬ目的だと言うのは分るが…ならば何故こんな強盗紛いの真似をする?
  如何して蒐集の目的を話して『協力して欲しい』と言えない?如何して平和的な道を捨て、争う道を選ぶんだ…!」

 言葉で言わなければ相手には伝わらない。
 伝わらなければ、協力も何も出来ないじゃないか…!!


 「はぁ?馬鹿かテメー!何処の世界に『魔力下さい』つって大人しく自分の魔力差し出すお人好しが居るんだよ!!」

 「馬鹿は貴様だ赤騎士。

 「あんだとぉ!?つーか、テメェなんではやてと同じ姿してんだよ!!」

 「緑騎士と駄犬にも同じ事を聞かれたが、貴様等に答える義務も義理も無いし、そもそも答えるつもりも無い。
  まぁそれはさて置き、貴様が気絶させた白き魔導師…我等が盟主タカマチ・ナノハが正にその『お人好し』よ。
  そ奴は事情如何によっては、惜しげもなく自分の魔力を差し出すであろう……いや、間違いなく差し出すぞ?」


 冥沙の言うとおりだ。
 なのはは自分よりも他者を優先する。
 『蒐集の目的』が同意できる事なら、なのはは快く協力してくれる筈だ。


 「だが、断る可能性も有る。」

 「話さなければ是非のつけようも無いだろう…争う道はそれから選んでも良かった筈だ。」

 「是ならば兎も角、非であった場合はどの道戦う事になる。」


 だが、それでも言葉は無駄ではないだろう!
 それに、この前も言ったがお前達の主にも咎が残るんだぞ!!


 「…主の命ではなく、我等の独断である事を言えば少なくとも管理局の手が主に及ぶ事は無い。
  闇の書の所持者ゆえ監視程度は付くだろうが、それでも先の人生に於ける枷にはならない筈だ。」

 「つーか、いい加減ウルセェ。ごちゃごちゃ言ってねぇで、大人しくテメェ等の魔力、寄越しやがれぇぇ!!!」


 ヴィータ…仕方が無いか…
 冥沙、アルフ!


 「言われずとも分っておる。この下郎が…聞く耳を持たずか!
  だが、それ以上にナノハと我が友、そして我が臣下に害をなした事は万死に値すると知れ!」

 「フェイトをアンだけやってくれたんだ…なのは達の分も合わせて利子つけて返してやる!!」


 撃ち抜け…風神爪牙!!


 「うお!ノーモーションからこの誘導弾かよ…!」

 「く…矢張り凄まじい…」


 この前以上にやらなくては成らない様だからな。
 それに…なのはを、皆を傷付けられた事に、私も可也頭にキテいるんだ…!
 少々荒っぽく行かせて貰うぞ、騎士達よ!

 「冥沙、アルフ、将とヴィータは私が引き受ける。お前達はシャマルとザフィーラを!」

 「うむ、なれば我はあの緑騎士を抑えてやろう。」

 「てーとアタシはあのデカブツかい?同系の使い魔みたいだから、こりゃ負けらんないね。」


 頼むぞ。
 来い、将、ヴィータ!
 お前達2人の相手はこの私だ!


 「舐めんじゃねぇ!!何度もやられると思うなよ!!ぶっとべ!ラケーテンハンマー!!」

 「先日の屈辱…雪がせてもらうぞ月の祝福よ!紫電一閃!!」

 「遅い…絶て!」
 『Panzerschild.』


 2方向からの攻撃とて易々通しはしないさ。
 序でに、双方向からの攻撃も時には危険だぞ?

 「砕けろ…ディバインバスター!
 『Divine Buster.』


 「なっ!!」
 「障壁で防いだ直後の砲撃だと!?」


 地力の高さとは別に、矢張り日々の鍛錬は重要だな。
 特に美由希との鍛錬は『対剣士』の良い訓練になる……

 「縛鎖…吠えよ!!」


 「「うわぁぁぁぁ!!!」」


 …此れが私とお前達の差だ。
 それでもマダやるのか?


 「ったりめーだ!!ウラァ!!!」

 「分からず屋が…!蒼嵐滅掌!!」


 ――ガキィィィ!…ピキ、ピキ…


 「なっ!アイゼン!?」

 「ブライトハートは私が本気を出しても耐えられるように造ってある。強度では引けを取らない…覇ぁ!!」

 「うおわぁぁ!!!!」


 そして…見えているぞ将!


 「なにっ!?」

 「覇ぁ!!」

 振り向き様の魔力付加の蹴撃は幾ら将でも避けきれないだろう?
 だが、蹴りは1発じゃない…追撃の踵落しで落ちろ!


 「ぐあ…!!まさか…これ程までに差があるのか……!」


 私だけじゃない、冥沙もシャマルには負けない。
 アルフだってザフィーラとは互角以上に戦うはずだ。
 …この場でのお前達の勝利はない…なのは達への襲撃は今の攻防で相殺としよう…退いてはくれないか?


 「其れはできんな…それに…」


 ?…此れは!!
 シャマル…設置型の炸裂魔力弾!!
 拙い…ブライトハート!!


 『Protection.』



 ――カッ!!!



 !!!く…この光は!!

 ……!!!!!
 ま、まさか今のは…攻撃目的じゃなくて私の目を一時的に潰す為の閃光弾!
 拙い…完全に眩んでまるで視界が効かない…


 「小癪な…閃光弾だと!!」
 「ちぃ…やってくれるじゃないさ…!!」



 冥沙とアルフも喰らってしまったのか…。
 此れは…流石にきつい…!


 「がっ!!き、貴様ぁ…!!うわぁぁぁぁ!!!」
 「うおわぁぁ!!…く…くっそ…!!」


 冥沙!アルフ!!
 2人ともやられてしまったのか!?

 だとしたら最悪だ…幾らなんでも目が見えない状態で騎士達4人を相手にするのは厳しすぎる…!

 仕方ない。
 ならば視界も何も関係ない空間攻撃で…!

 「来たれ白き闇。万物を飲み込め、塵すら残らず全てを無に帰せ!滅ぼせ…」



 ――ズル…



 く…矢張り来たかシャマル!
 だが、此れならば…又引きずり出して終わり…



 ――ドスッ…



 「え…?」

 この感触は…シャマルの手じゃない…
 此れは…この金属質の感触は…

 「…将?」

 まさか…旅の鏡を使って、私のリンカーコアそのものを攻撃した…?
 視覚を奪ったのも、此れを確実に決める為に……


 「許せ…他に手はないのだ…!」


 ――ゴォォォォォォ!!


 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 だ、駄目だ…意識を失ったら。
 耐えろ…落ちたら……


 「終わりだぜ…じゃあな。」

 「!!」

 ヴィータ…!
 く…シールドを……駄目だ…魔力が…



 ――バキィィィィィ!!



 「あぁぁぁぁぁ…!!」

 なのは……皆……








 ――――――








 Side:シグナム


 「蒐集完了。やっぱトンでもねぇ魔力だな、可也埋まったぜ。」

 「そうか…」

 シャマルの閃光弾のおかげで如何にか倒し、魔力も蒐集できた。
 だが、逆に言うならあの閃光弾が防がれていたら地に伏していたのは私達だったか…

 そもそも、この月の祝福…リンカーコアを直接攻撃できなかったら倒す事さえ出来なかっただろうな。
 視界が効かなかったから勝った……余り気分の良いものではないな…。


 …いや、割り切れ。
 主はやての為ならば、我等は騎士の誇りすら捨てると決めた。
 ならば迷うな…!!

 だが…

 「お前の主を傷つけたことは詫びておこう…今更だがな。」

 閃光弾が炸裂するまでの攻防…コイツからは『主と仲間を傷つけられた怒り』を感じた。
 此方から一方的に襲撃をかけた末の負傷ならば、怒るも当然か…

 「シャマル、治療は?」

 「全員終わったわ。旅の鏡で近くのベンチに全員移動させておいたわ。」


 そうか…ならば長居は無用だな。
 戻るとしよう、我等の家に。


 「だな。魔力は貰ったし、もうあいつ等に用はねぇ。はやてが起きちまったら大変だしな。」

 「あぁ…行こう。」


 悪いな…我等は止まれぬのだ。
 あの、優しき主のためにもな……








 ――――――








 Side:リンディ


 大きな魔力反応があったのはこの辺の筈ね。
 街中であんなに大きな魔力反応があるなんて…
 真っ先に感じ取ったのはプレシアだったけれど、無理はさせられないから私が、ね。

 「!…なのはさん!皆も…!!」

 魔力反応のあった地点のすぐ近くになのはさん達が…!
 息は…有るわね、眠っているだけ…?

 いえ、魔力反応が弱いわ…取り合えずアースラの医務室に!


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 『なのは達が…』

 「えぇ、一応全員命に別状はないわ。」

 リニスさんにも手伝ってもらって皆をアースラの医務室に運び込んだ後でクロノに通信。
 レティが新たな事件の捜査を命じたって言うから、何か関係あるかもしれないし報告だけね。

 「けれど不審な点が3つ。
  全員、一度それなりの負傷をして、その後で治療された痕跡があること。
  それからリンカーコアの異常な収縮………そしてルナさんはそれに加えてリンカーコアへのダメージも有るわ。」

 『リンカーコアの収縮…!』


 どうやら、クロノが担当している事件と無関係では無さそうね。

 それにしてもルナさんが此処までやられるなんて相手は一体何者かしら?
 一体あの海鳴の街で何が起こっているというの…?


 此方でも少し調べて見る必要がありそうね…













  To Be Continued…