No Side


 夏祭り、夕涼み、花火大会…
 これらのイベントをこなしたとは言え、夏はお決まりの風物詩を含め色々ある。

 寧ろ夏にしかできない事を楽しまないほうが大損である。
 なのは達もご他聞に漏れず、夏休みは略毎日を遊び倒していた。
 此れも終業式の日に『自由研究』や『工作』を除いた宿題を終えたからこそだが。

 ともあれ語り尽くせぬほどの充実した彼女達の夏休みの様子を見ていく事にしよう!




 ……『キングクリムゾン』しないでちゃんとやれ?
 其れは流石に無理だ。

 では、ダイジェストスタート!!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福34
 『爆裂ラッシュの夏休み』










 ――キャンプしようぜ!


 夏と言えば『アウトドア』も定番の一つ。
 高町家でも2泊3日の予定で郊外の山林にキャンプで来ていた。

 空気が美味しく、小川もありキャンプには持って来いだ。

 テント張りはお決まりの如く男の仕事で士郎と恭也とクロノが行っている。
 桃子と美由希は食事の際に使う竈を川原の石で製作中。

 で、なのはとルナ達はと言うと…

 「む〜〜〜…全然食いついてこないぞ〜〜!」

 「釣りは忍耐ですよ雷華。」

 渓流釣りに勤しんでいた。
 此処は山女や岩魚、鮎なんかが取れる小川で、釣った魚はそのまま夜のご馳走だ。

 だが、早々連れる筈もないのはお約束。
 お約束なのだが…

 「来た…」

 「我もだ…」

 何でかルナと冥沙が魚釣り無双状態。
 クーラーボックスが既に満杯だ。

 「ルナ、冥沙…そろそろ充分だと思うの。」

 その凄さになのはが『もういいよ?』と言うが、2人の目的はとっくに別のことにシフトしていた。

 「何を言うんだなのは!」

 「我等はまだこの川の『主』を釣り上げてはおらぬ!主を釣り上げぬまま終わる事などできぬであろう!」

 「…そうなの?」

 「「そうだ!!」」

 2人とも俄釣り人として覚醒してしまったらしい。

 結局『主』級の魚を釣り上げるには至らず、大量の魚は桃子が様々に加工する事になったのだが。



 因みに火を点ける際は星奈が大活躍。
 炎熱系の魔法は応用が効くらしい。

 ついでに、テントの組み合わせにてなのはと一緒になったのは雷華と星奈だった。
 更に美由希と一緒になったのはクロノと冥沙。
 恭也が心底悔しがっていたのは想像に難くないだろう…








 ――――――








 
――イッツ肝試し!


 肝試しもまた夏の定番のイベントである。
 なのは、ルナ、星奈、雷華、冥沙、クロノ、そしてアリサとすずかは海鳴のとある廃墟に。

 アリサの提案で『肝試し大会』と相成ったのだ。

 形式としては2人1組でコースを回ると言うお決まりのもの。
 組み合わせはなのは&クロノ、アリサ&冥沙、すずか&雷華、ルナ&星奈。

 で、只今回っているのはなのは&クロノ組。
 懐中電灯だけの明かりと言うのは矢張り不気味なものだ。

 だが、この2人はまるで恐れていない様子。

 「…いや、危険が無くていいんだが誘導弾を停滞させながら広域サーチ使って進むのは如何なんだ?」

 「ほえ?此れなら何が出てきてもすぐに対処できるの。」

 理由はなのは。
 何か出てきたらぶっ放す気満々である。
 クロノ的には魑魅魍魎の類が出てくるよりも、なのはが何かしでかさないかの方が気が気じゃないだろう。


 ――ガタッ…


 が、起きて欲しくない事は起きるが世の常。
 僅かな物音に反応し…

 「そこ!」
 「Divine Shooter.」

 音速反応で誘導弾発射。

 「!!ちょっと待て、サーチをしているなら先に相手の正体を確認してから攻撃しろ!」

 ご尤もだ。
 白夜の魔導書でサーチを掛けていたにも関わらず、それで確認する前に攻撃とは恐ろしい。

 「あ…そ、そうだね。」(汗)

 「頼むからそうしてくれ…」

 しかしながらサーチ結果はある意味でみない方が良かったのかもしれない…
 何故か?


 サーチ結果を映し出してる白夜の魔導書のページには血みどろの女性の姿が…

 「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!出たの〜〜〜〜!!!!!」


 「な、なのは落ち着くんだ!!」

 「無理〜〜!本物は怖いの〜〜!!レイジングハート!!」
 「All right.My Master.」


 「迷わず…」
 「Divine」

 「成仏してなの〜〜!!」
 「Buster.」


 ――ドッゴォォォォン!!


 恐怖により放たれた一撃は現在居る3階から上を完全に吹っ飛ばしてしまった…恐るべし。

 「はぁはぁ…、怖かったの…」

 「ぼ、僕は君の砲撃魔砲の方が怖い…」

 事実だろう。
 だが、きっと一番怖かったのは攻撃された幽霊と思われる存在だっただろう。

 ついでに翌日の新聞には『海鳴郊外の廃墟崩壊』のニュースが乗る事になった。








 ――――――








 
――自由工作が一番時間かかる!!


 終業式の日にテキスト系の宿題は終わらせたが、流石に工作は無理。
 只今、なのは、星奈、冥沙、雷華は夏休みの自由工作中。

 紙粘土、木材、空き瓶、布きれ等等、色んなものを使っての工作だ。

 「よ〜っし、完成!」

 「うむ、我も完成だ!」

 真っ先に出来たのは雷華と冥沙。
 雷華は空き瓶と紙粘土で『西洋風のお城』を。
 冥沙は布切れと綿で自分達を模した小型のマスコット。
 どちらも中々の出来栄えだ。

 「凄いね2人とも。」

 「此れくらいはな。」

 「ナノハは何を作ってるの?」

 「私は定番だけど、紙粘土で貯金箱。」

 まだ完成はしてないがなのはが作ってるのは夏休み工作の定番の1つだった。
 そして残る1名だが…

 「星奈…」
 「星奈よ…」
 「おぉ…星奈ん凄い…!」


 ――ガガガガガガ


 ノミで木材を彫刻中。

 「星奈は何を作ってるの?」

 1/8スケールの私達の木像を…

 「「「すご!!」」」

 当然の反応である。
 間違いなく休み明けには工作部門1番だろう。








 ――――――








 
――虫だ!虫を採るんだ!!


 虫採りだって外せないと言えば外せない。
 幸い、海鳴は自然も豊かで少し市街地を離れれば虫採りに最適な林は結構あるのだ。

 「成程、この世界の虫と言うのはこんなに綺麗なものも居るんだな。」

 クロノも連れてこられた訳だが、初めて見る地球の虫に驚いている。
 まぁ、コガネムシやアゲハチョウ、タマムシなんかを見れば其れも頷ける。

 セミの鳴き声が煩いが、此れもまた夏の風物詩だ。

 「ね〜、ナノハ、なんかおっきいの採れた!」

 「雷華?カブトムシでも捕まえたの………って、ヘラクレス!?」

 …雷華はトンでもないカブトムシを捕まえてきました。
 ペットとして飼われていたのが逃げ出したのか、それとも飼い切れなくなって捨てたのか…

 兎に角如何に凄くとも、生態系的には放っておけない『ヘラクレスオオカブト』!

 「…そ、総員外来種を片っ端から捕獲するの〜〜!!」

 即時命令!

 「「了解。」」
 「りょ〜〜か〜い♪」

 然る後に実行。
 結局探せば採れるわ採れるわ外来種。

 …遺失物として海鳴署に届けたら流石に驚かれたのは当然だろう。








 ――――――








 
――番外編:デバイス作りましょう


 「私のデバイス?」

 「あぁ、ジュエルシード事件の際にルナの武曲は砕けてしまっただろ?
  其れを知ったマリー…僕の後輩で技術部の人間なんだが、彼女が君のデバイスを作らせて欲しいって。」

 何が発端かは不明だが、真夏のある日のこんな会話。
 ジュエルシード事件終結時に壊れてしまった武曲の代わりとなるデバイスを作ろうとの事。
 如何にも管理局技術部の人間が其れに名乗りを上げたらしい。

 尤も、ルナは自身がユニゾンデバイスである為にデバイスは必要としない。
 しかし、武曲を使ってみて自分用の武具の有用性も理解していた。

 「折角作ってくれると言うなら無碍に断るのも悪い。お願いしようか。」

 「分った。一応何か要望が有れば言ってくれると助かるんだが…」

 「そうだな…」

 要望と言われ、自分の戦闘スタイルを思いながら考える。
 どうせなら尤も自分にあったものが良いのは当然だろう。

 「形は杖や刀剣の類ではなく格闘戦が出来る物が良い。解放した私の力にも耐えられる強度も必要だな。」

 「籠手や具足の類だな。他には?」

 「…究極のスピードと最強のパワーを所望する。」

 「了解だ。」

 果たしてどんなデバイスが出来上がることだろうか…





 此れは兎も角として、夏休みは怒涛のように過ぎていった。
 充実と言うなら、これ以上充実した40日間も無かっただろう。








 ――――――








 
――8月31日早朝・海鳴臨海公園


 Side:ルナ



 怒涛のような40日が過ぎ、気がつけば夏休みの最終日。
 クロノ執務官も今日でミッドに帰ることになっている。
 今はその見送りだ。


 「40日間も世話になった。こんなに楽しかったのは久しぶりだ、感謝する。」

 「ううん、私達も楽しかったから。また何時でも来てね。」


 開店準備で桃子達は見送りには来ていない。
 お土産に翠屋のシュークリームを用意していたのは流石だけれどな。
 さて、そろそろか。

 「クロノ執務官、また来てくれ。桃子達も喜ぶ。」

 「何時でもこいよくろの〜!」

 「まぁ、遠慮せずぬ来るがいい。」

 「お待ちしています。」

 「また遊びに来てね、クロノ君!」

 「あぁ、仕事の合間でも見て来させて貰うさ。……それじゃあ。」


 あぁ、それじゃあな。………行ったか。


 「うん…行っちゃった。」

 「まぁ、何時でも会える。さ、戻ろう。」

 「うん!」


 夏休みの最終日だからきっと人が多いだろうな今日は。
 まぁ、真夏最後の営業日だ、頑張るとしよう。

 だが、それ以上に…

 「一度騎士達に会っておくべきか…?」

 いや、此方から会うのは意味が無いか…?
 何れにしても間違いなく私とは会う事になるだろうが……下手に動くよりも騎士達の方から来てくれるまで待つ方が良さそうだな。


 「お〜い、クロハネ、何してるんだよ〜?おいてちゃうぞ?」

 「あぁ、スマナイ。」

 今は考えても仕方が無いか。
 そのときそのときで対処…だな。








 ――――――








 No Side


 こうして怒涛のような夏休みは終わりを告げた。
 そして其れは祝福の風が望んだ平和と平穏がしばし途切れる事を意味する。


 近く幕は上がる。
 月の名を冠した祝福の風にとっての真なる戦いが始まる。


 いや、既に其れは始まっていたのだろう。
 6月のあの日に。

 そう…『闇の書』が起動したその日に、『A's』へと至る扉は、きっと開かれてたのだ…















  To Be Continued…