Side:ルナ
「「「「「夕涼み?」」」」」
その日、なのはから聞いたのは聞きなれない言葉だった。
聞いた感じだと避暑の何かだと思うんだが…
「避暑…まぁ、間違ってないかな?夕暮れから来る自然の涼しさを利用した夏のイベントの一つなの。」
「自然の涼しさ…其れはよさそうだな。」
何度も言うがクーラーは好きじゃない。
自然に涼が取れるなら其れは最高だ。
此処でやるのか?
「ううん、アリサちゃんのところで。」
「そう言えばそんなことを言っておったの…夕涼みの事であったのか…」
事前連絡はあったのか。
さてさて、夏祭りと海に続いて初めての体験だがどんなものなんだろう?…楽しみだ♪
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福32
『夕涼みと月の暴走?』
「さて、此れでおかしくないかな?」
「シンプルだけど良く似合ってるよリイン♪」
夕涼みの話を聞いてから時は経って、今はもう夕方だ。
なのはが言うにはアリサの所から迎えが来るらしい。
で、外出用に着替えた訳だ。
流石に浴衣とは行かないからストレッチタイプのジーパンとTシャツの組み合わせ。
美由希にチェックしてもらったんだが問題は無さそうだな。
「リインはシンプルな装いも良く似合うよね。寧ろ変に飾らない方がいいかな?元が良いから。」
「…その辺はお前やなのはに聞いて判断するしかない。」
服装に気を使う機会なんて今まで無かったからな。
其れを踏まえると、こんな事でも悩めるというのもまた平穏の証か。
ん?そういえば美由希のシャツは…
「あ、気付いた?そうだよ、同じデザインでリインと色違い。」
「前に服を買った時にか。若しかしてなのはも?」
「勿論。てか、なのはだけじゃなくて星奈達もね。」
皆でお揃いか、其れも悪くないな。
さて、そろそろ迎えが来るころだが……
――ブロロロロロロ…
エンジン音か、来たみたいだな?
「迎えが来たようだ、行くとしようか?」
「だね。」
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「お迎えに上がりました高町様。」
「にゃはは、宜しくお願いします鮫島さん♪」
「はい。アリサお嬢様より安全にお連れせよと申し付かっております。」
迎えに来たのは鮫島執事か。
何度か会った事があるが中々如何して確りした人だ。
『主に使える姿勢』には学ぶところも多い。
この人が迎えなら何も問題は無いんだが…
「この異常に長い車は一体…」
問題は迎えの車だ。
車高は普通の乗用車と大差無いんだが、車体の全長はバスくらいあるんじゃないか?
「送迎用のリムジンでございます。高町様は人数も多いので此方の方が到着までゆるりとできるかと…」
「お〜、これがリフジンか〜〜!初めて見たぞ〜〜!」
「理不尽ではなく『リムジン』ですよ雷華。」
…確かに似ているな。
しかし此れがリムジンか、聞いた事はあるがこれ程とは…。
此れなら確かに全員で乗っても大丈夫そうだ。
「リムジンは米国において大統領の移動にも使われております故、安全性と強度も折り紙つきでございます。」
「それなら安心できるな。」
クロノ執務官もそう思うか。
うん、私も楽しみになってきた。
では頼む。
「お願いしますね鮫島さん。」
「お任せください。」
さて、夕涼みとはどんなものなのだろうな?
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・・・
「成程、此れは確かに夏の涼を取るには最高かもしれないな。」
「でしょ?しかもアリサちゃんのお家は広いからこういう事も簡単に出来るの♪」
広い庭と、其処に飾られた様々な風鈴…音色が涼を誘う、風情があるな。
夕暮れの一時から始める『涼』の取り方か、いい物だな。
「まぁ、夕涼みの名を借りた立食パーティなんだけどね。」
「その分、気は楽だよね。」
すずかの意見には諸手を挙げて賛成だ。
気兼ねなく楽しめるのは良いものだ。
しかし月村家も御呼ばれしていたのか……そういえば家族ぐるみの付き合いなのだから当然か。
加えて忍が来てくれてるおかげで静かだ――恭也が。」
「口に出てるぞ、ルナ。」
「失礼…じゃないだろう、事実なのだから。」
「…確かに。」
まぁ、余程でなければ恭也が絡んでくることは無い筈だ。
さてと、お前達も楽しんでるか?
「えぇ、勿論。祭や海の喧騒も悪くありませんが、このような穏やかなものも良いものです。」
「風鈴の音も風情があるしの。」
其れは良かった。
雷華は如何だ?
「も?」
「…幾らなんでも口の中に詰め込みすぎじゃないのか?ハムスターみたいになってるぞ?」(汗)
まぁ、楽しんでるみたいだが…美味いか?
「(コクコク)」
「そうか、良かったな。」
きっと雷華は此れでいいんだな、そうに違いない。
「まぁ、子供の元気な姿と言うのは見ていて心が癒されるものがございます。」
「鮫島執事――確かにそうだな。」
「そうでございましょう?時にルナ様、お飲み物はいかがでしょう?」
「あぁスマナイ。丁度何か貰おうと思っていたところだ。」
お盆に載った色とりどりの飲み物…そうだな、オレンジにしよう。
「どうぞ。では、以降もごゆるりとお楽しみくださいませ。」
ありがとう、そうさせてもらう。
うん、甘くて美味しいな。
――――――
Side:なのは
「え〜と…ルナ?」
「何だ、なのは♪」(ニコニコ)
只今絶賛ルナの膝の上で抱きかかえられてます。
って何で!?
行き成りルナが来たと思ったら突然抱きかかえられて今の状況に?
ど、如何したのルナ!?何でそんなにニコニコ顔なの!?
「ん〜〜?どうもしないぞ?お前が心底可愛いだけだ♪」(すりすり)
「にゃ!?」
ほ、頬ずりしないで〜〜!
てかお酒くさ!若しかして酔っ払ってる!?
「あはは、なのはは愛されてるなぁ。」
「リインたら積極的ね♪」
お父さんとお母さんも何言ってるの!?
「む〜〜〜…ずるいぞクロハネ!僕もナノハをぎゅ〜ってしたい!!」
「雷華は何を言ってるの!?」
「なんだ、だったらお前も抱きつけば良いじゃないか♪」
「ルナは更に何を言ってるの!?」
ダメなの、ルナは完全に酔ってるの!
「鮫島…ルナは何飲んだわけ?」
「はぁ、カクテルを勧めさせていただきましたが、どうにも『スクリュードライバー』がお気に召したご様子で…7杯ほど。」
「はぁ!?そりゃ酔うわよ!スクリュードライバーってオレンジ+ウォッカじゃない!!」
そんなに強いの7杯も飲んじゃったの!?
「よく冷えたジュースも美味しいな。」
「しかもお約束!?」
「まぁ、良くあるネタではあるが…」
「ベーシックなオチですね。」
冥沙と星奈も感心しないで〜〜!!
「此れは無理かなぁ…梃子でもなのはは剥がせそうに無いよ?」
「しかも相手がルナだと戦力的にも難しいな…」
お姉ちゃんとクロノ君まで…でもルナが相手じゃ納得かなぁ…
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
で、何なのこの地鳴りは?
ううん、予想はつくけど…
「リインフォース…!」
「やっぱりお兄ちゃん…」
来るんじゃないかな〜とは思ってたけど。
あの〜…忍さん?
「無理。なのはちゃんや美由希が絡んだときの恭也は止めらんない。」
「ですよね。」
流石は良く分ってるの…
「貴様、なのはから離れろ〜〜!!!」
って来た〜〜!
で、でもルナならいなして如何にかするはず…
――ゴツン!
「あう。」
え?喰らった!?
も、もしかしてお酒のせいで反応が鈍くなってる?
「なん…だと?」
お兄ちゃんも驚いてるの!
…反撃される事前提だったんだ。
其れよりも大丈夫?
「う…」
「う?」
「う…ひっく……ふえぇぇぇぇぇぇ…」
な、泣いた〜〜〜!?
「ひぐ…恭也がいぢめた〜〜〜…」
しかも子供っぽくなってる!?
「なのはが可愛いから、心の底から力の限り愛でてただけなのに恭也が殴った…」
こ、此れもお酒のせいなのかな?
完全に幼児退行してるの…
「間違いありませんね。」
「何と言うか意外だのう…」
私もなの。
って、雷華?
「ほら〜、大丈夫かクロハネ〜。痛いの痛いのとんでけ〜〜!」
「雷華…お前は何て優しいんだ…」
雷華も何してるの?ルナも何言ってるの!?
完全な酔っ払いさんなの。
う〜ん…でもこのルナは何て言うか…庇護欲をそそられるな〜〜…。
普段のクールで格好良いルナもいいけど、これはこれで…
まぁ、取り合えず…
「お兄ちゃん。」
「な、何だなのは?」
「ちょっと頭冷やしやがれなの。」
「Divine Buster.」
「へ?」
――ズドォォォォン!
「うおわぁぁ!!」
ルナを泣かせた罪は重いの。
非殺傷設定だから峰打ち……問題ないの。
「お見事なのは♪流石私の妹、恭ちゃんの扱い方を完璧に覚えたね?」
対処法はバッチリなの。
…それにしても、この状況でも私を抱きかかえたままのルナって…
「まぁ、こやつが眠るまでは引き剥がしは不可能だな。」
「特に実害は無いのですから良いのでは?」
「其れもそうだね。」
無理に出ようとしたら、力いっぱい抱きしめられそうな予感がするし。
「♪」
ルナが嬉しそうだから、たまになら此れもいいかな?
うん、暫くこのままで居るの。
ルナ、落さないでね?
「大丈夫だ、お前を落したりしないさ。任せてくれMeister Nanoha.」
「うん、お願い。」
――ちりんちり〜ん…
風鈴の音が綺麗だな〜〜♪
「まぁ、実害無さそうだから放置でいいわね…」
「ルナさん嬉しそう。」
アリサちゃんとすずかちゃんまで〜。
けど、うん、此れは今日は帰るまでこのままかもしれないの。
「可愛いなお前は…♪」
にゃはは…まぁ、良いけどね。
――――――
――翌日
Side:ルナ
気がついたら自分のベッドの上だった。
はて、昨日はアリサのところで夕涼みだったはずだが…?
取り合えず起きて――
――ズキン
「!!!」
な、何だこの頭痛は!?
如何したというんだ?
み、妙に視界が揺れるし…と言うか今は何時なんだ?
「朝の9時なの。おはようルナ♪」
「あ、あぁ、おはようなのは。」
というか9時?
完全に寝過ごしたじゃないか!急がないと…
――ミシッ
「〜〜〜!!!」
「無理しちゃダメ。ほら、ベッドに横になって。」
「いや、だが…」
「お母さんの読みどおりなの。今日はルナは動けないはずって。」
桃子が?
いや、其れよりも私は何で…?
「二日酔いなの。」
「二日酔い!?」
え、何でだ?
私は昨日酒など………鮫島執事が持ってきたアレか!?
「正解。口当たりが良いからって飲みすぎちゃったみたいなの。」
「其れは…スマナイ、迷惑をかけたようだな。」
「大丈夫、被害は何もなかったから。…///」
いや待て、ならば何故顔を紅くして背ける?
酔った私がなにかしたのか?
「た、大した事じゃないの!その、私を終始だきかかえてたd「スマナイ私が悪かった!」
いや、酔っ払って何をしてるんだ私は?
そ、それだけか?抱きかかえただけなのか?
「ほ、他には頬ずりしたり、おでこやほっぺにチュー…」
本気で何してるんだ酔っ払いの私は!?
いや、なんと言うか色々とスマナイ…
「にゃはは…いいよ、嫌じゃなかったし。其れにお酒飲んだことないなら仕方ないの。」
「はぁ…以降は気をつけないといけないな。」
『酒は飲んでも飲まれるな』…全くそのとおりだ。
「お母さんが今日は1日休んでてって。」
「そうさせてもらう。」
あの頭痛が動くたびに来るとなったら、とてもウェイトレスは出来そうにない。
ふぅ、此れは明日は桃子のコスプレ要望に答えるしかないな…
「にゃはは…頑張って。」
「はは…まぁ自業自得だから仕方ない。」
「まぁ、お母さんも本気でルナが嫌がるのは着せないはずだから。」
確かにな。
「ねぇ、ルナ?」
「ん?何だ?」
――ちゅっ♪
「え…あ、なのは!?///」
「えへへ〜、昨日のお返しなの♪」
成程、確かに此れはやられると照れるな。
だが、確かに嫌じゃないな。
其れに『頬へのキスは親愛の証』だからな。
まぁ、親が子にするようなものか。
「そう言えばもっと小さい頃にお母さんにされた…かな?」
「されてるかもしれないな。」
それも親の愛の証だからな。
――ミシリ
「あぐ…!こ、此れは相当に酷いな…」
「大人しくしてたほうが良いの。今日は1日私がついてるから。」
「はぁ…重ね重ねスマナイな…」
やれやれ、この分だと二度と酒は飲まないほうがよさそうだ。
で、翌日には復活した訳だが…美由希の動画データは完全削除させてもらった。
「あ〜ん…可愛いリインが〜〜」
後生だからな。
黒歴史は抹消だ!!
To Be Continued… 