Side:ルナ
暗い…まるで闇そのもの――まるで闇の書の中に居る様だ。
此処は一体何処なんだ?
「…?…!!アレは!!」
なのはにフェイト…それにはやてに騎士達…!
何だ?一体何が起きている?
――ズズ…
「!!!」
ナハトヴァール…!
待て、一体何をする気だ!
「ヤミノショカンセイノカテ…オマエガウゴクタメノチカラノシュウシュウ…」
力の蒐集?…まさか!
止めろ!!止めるんだ!!私はそんな事など望んでいない!!
「!!身体が…動かない!?」
「メヲソラスナ。コレガオマエノゴウ。ノガレラレナイツミ…オマエハソンザイソノモノガ『悪』…」
止せ…止めろ…!
止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福26
『闇に射し込む光』
「っ!!!!」
ゆ、夢?…なんて夢――最悪の悪夢だ…
時間は…5:30か、朝の鍛錬を考えると起きるには丁度良い時間だな。
最悪の夢のせいで汗まみれだが…まぁ鍛錬後にシャワーを浴びれば良いだろう。
それにしても…
「私は存在そのものが『悪』か…」
其れは恐らくは全くの間違いとは言えないだろう。
だが、私は其れから逃げる気は無い。
其れを背負ってこの世界でなのはの騎士として生きると決めた。
大丈夫…私は大丈夫だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「リイン何か有った?」
「?」
美由希?行き成り如何した?
「ん〜〜〜…何て言うか拳に何時もの『キレ』が無いから、何か有ったのかなって。」
「…分るか。」
大したものだな。
何、少しばかり夢見が悪かっただけだ。
体調に問題は無い。
「あ〜…夢見が悪いっていうなら納得。モロにメンタル直撃するからね…」
「全くだ。動きが悪かろうが鍛錬で身体を動かさないと如何にもな…」
「うん、其れも分るな〜。」
ふぅ、美由希が付き合ってくれて助かる。
「さて、そろそろ朝食の時間だ、シャワーを浴びて桃子を手伝わないと。」
「だね。」
今日も1日を始めよう。
――――――
Side:なのは
「矢張りナノハも気がついていましたか…」
「うん。何か何時もとルナの感じが違うなって。」
まるでとても怖いものを見て、でも其れを無理やり押し込めてるような感じがしたの。
ルナは『夢見が悪かっただけ』って言ってたけど――気になるなぁ…
「なら聞いてみなさいよ?」
「言ってくれるかな?」
其れに無理に聞くのも気が引けるの…
「難しいよね。ルナさんてあんまり悩みとか相談するタイプに見えないし。」
「う〜…僕達って頼りないのかな?」
「違うわ虚け。我等に要らぬ心配をさせぬようにと言うあ奴の不器用な心遣いよ。それくらい察しろ。」
「お〜〜…流石は王様あったま良い〜〜!!」
「流石だね冥沙ちゃん♪」
「ふっ、王として此れくらいは当然よ。」
にゃはは…冥沙は相変わらずなの。
でもそうだね、それとなく聞いてみようかな?
話してくれるかもしれないし、
「ルナが何時もの調子じゃないのは何か嫌だもん。」
「それが良いでしょう。」
「ま、やってみなさいよ。…所で星奈、アンタ暑くないの?」
アリサちゃん、其れは言うだけ無駄と言うか…
「はい?全く平気ですが?」
ほらね?
「何でよ…」
「何故でしょうか?」
「「「「「「「「「「にゃお〜ん?」」」」」」」」」」
学校にネコ連れてきても良いのかなぁ…?
登校中に野良ネコが1匹、又1匹…何時の間にかネコだらけ…
「アンタ身体からネコの好きな匂いでも出してる訳!?」
「如何でしょうか?」
なんだかなぁ…
――――――
Side:ルナ
「ありがとうございました。」
ふぅ…やっと一息。
何時もながら平日でも人の多い事だ、それだけ人気が有るということだが。
…そのうちの何割かが私のコスプレ目当てで来ている様な…
桃子、今日の此れは一体なんだ?
比較的まともな物だから別分抵抗は無いが…
「『遊戯王GX』ってアニメに出てくる学校の女子用制服♪やっぱりよく似合うわ〜。」
「いずれにしてもコスプレか。まぁ此れならば別に嫌ではないから標準衣装に加えても良いかな。」
何故か陰謀と他意をこの上なく感じるが、気にしてはダメなのだろうなきっと。
「お疲れ様、リイン。次は夕方だからゆっくりしていてくれ。」
「士郎、お前もお疲れ様だ。…ありがたく休ませて貰う。」
慣れて来たとは言え、矢張り昼時の混雑は些か疲れる。
――今朝の夢の事が頭にこびり付いているから尚更か…
しっかりしろ、私は大丈夫だ、そう言ったじゃないか。
アレは…たかだか夢だ。
「ふぅ…」
ソファーで仮眠でも取るか…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「くっ…!」
又此処か…今朝の続きとでも言うのか?
「オマエハノガレラレナイ。コノセカイニキテワスレテイタヨウダガアノオオキナチカラニメザメテキガツイタノダロウ?
ジブンガタダタダキョウダイナチカラヲフルウダケノ『破壊者』ダト。」
ナハト…!
違う!私は力に溺れ等しない!
そうならない為に、アノ力も制御しようと鍛錬を続けているんだ!
「ダガセイギョノコンポンテキナホウホウハワカッテイナイ。ホントウハコワイノダロウ?マタコワスノデハナイカト。」
「…其れは…」
確かにアレが制御不能になったらとんでもないことになるが…だからこそ私は!
「ムリダオマエニハナニモデキナイ。ミズカラノセキカラニゲダシタヤツニハナ。」
逃げ出した…だと?
「オマエハアラタナボウエイプログラムコウチクノキケンセイヲリユウニジブンヲケシタ。
ダガソレハ、イイカタヲカエレバソレマデノツミヲスベテキシタチニナスリツケヒトリニゲタコトニナルナ。」
「!!!」
「スベテヲタシャニナスリツケナガラコノセカイデノウノウトイキ、ソシテソノミノチカラヲフルウ。
ヒキョウナハカイシャデアルオマエガシュクフクノナヲカンスルナドオワライモイイトコロダ。」
ち、違う!私は!!
「メヲソラスナヤミノショノイシ。コレガオマエノホントウノスガタダ…」
――ズズ…
!!!
「其れは…!」
主を取り込み暴走した私…?
それが私の本質だと言うのか!
「ホカニナニガアル?キシタチノアツメタマリョクトアルジノイノチヲカテニチカラツキルマデハカイヲオコナウ。
オマエノテハヤミノショノレキダイノアルジノチデヨゴレキッテイル。
ソノオマエガシュクフクノナヲカンシ、ダレカヲダキシメルコトナドデキルハズガナイ。」
――ズルリ…
「!!!」
この闇は…!
よせ、放せ…!
「オマエハソンザイヲユルサレナイ。ヤミノナカデウゴメキシトハカイヲマキチラスウンメイ。
ミトメロ、ソシテソノヤミニミヲユダネロ……オマエニスクイナドハアリハシナイ…」
あ、あぁぁぁ…!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「しっかりしてルナ!!」
!!なのは!!
…はぁ、はぁ…帰ってきてたのか…
「物凄くうなされてたよ?…大丈夫?」
「なのは…スマナイ、大丈夫とは言いがたいな…」
今朝だけでなく又…今更になって何故…
「ルナ…」
――ギュ…
「え?」
な、なのは!?
「怖い夢を見たんだよね?うん、内容は聞かないよ、きっとそれだけでも怖いと思うから。
でも、大丈夫。私は生きてる限りルナと一緒だよ。星奈も雷華も冥沙も一緒。
怖くて1人じゃどうしようもなくても、皆がいるから…きっと大丈夫だから。」
「なのは…」
この子は…一体何処まで強くて優しいのだろう。
「…だが、私は…自分の責から逃げたのかもしれないんだ…其れなのに。」
「違うよ。ルナは護っただけ。大切な人を自分を犠牲に護ろうとしただけ。逃げてなんかいないよ、大丈夫。」
本当にお前は…
――ギュ…
「ルナ?」
「スマナイ…少しだけこうさせていてくれ。もう少しだけ…」
「…うん。」
本当に不思議だ。
アレほどまでに私の心は悪夢の闇に侵されてたというのに、なのはに抱きしめられただけでこんなにも…
今朝と今の悪夢…アレは私の中にある無意識の罪の意識と弱さ…
そして、アノ力を制御し切れていない事への不安の表れが見せたのか…?
「ルナは弱くない。強くて優しいよ。私は其れを知ってるから。
もし間違っちゃったと思うなら、今度は間違えなければ良いんだよ。」
「そう、だな。その通りだな。」
過去は取り戻せない。
大切なのは同じ過ちを繰り返さぬ事か…ならばこの世界では間違わぬようにしよう。
大事な人を護って見せよう。
例え私1人では無理でも、なのはが、皆がいればきっと…!
今度こそ大丈夫だ。
かつてはやてが私に光を与えてくれたように、この世界ではなのはが私を照らしてくれる。
どんな闇の中であってもこの光を失わない限りは大丈夫だ。
「ありがとう、なのは…」
ならば私は月の光でお前を導こう。
お前がその歩みを続けられるよう祝福の追い風になろう。
改めて其れをこの場で誓おう…なのは、我が主よ。
「ルナ…うん。受け取ったよ、その誓い。」
「これからも…な。」
「うん。」
一切の不安も怖さも、もう無い。
私は…もう、闇には呑まれない。
もう、大丈夫だ。
――――――
Side:星奈
「やれやれ…犯人は此れですか?」
「何此れ?のーみそ?」
「『インキュバス』と呼ばれておる魔導生物の一種よ。まったく、ジュエルシードにでも引っ付いて居ったのか?
それともあのフェレットもどきに引っ付いて此処まで来たのか…いずれにしても迷惑なものよ。」
まったくですね。
しかも此れは変異体のようですね……人のトラウマを抉り出して悪夢を見せるとは悪趣味な。
何時の間にリインフォースに取り付いたかは不明ですが、心の闇が晴れたせいで弾き出されたと言う所ですか…。
まぁ、結果的にナノハとリインフォースの絆はより深くなったようですが…
「何れにしても捨て置く事はできませんね。」
「だな。放置しては今度は誰に害悪を撒き散らすか分らん。」
「それ以前にクロハネに酷い事したんだから許せる訳ないじゃん!」
ですよね。
では、バインドで拘束しているうちに…
「うむ。闇に滅せよ!破壊の剣、アロンダイト!」
「光翼連斬、だぶるすら〜っしゅ!!」
「殲滅…ディザスターヒート!」
――ズガァァン!!
殲滅完了、所詮は低級生物ですか…他には、居ませんね。
さて、戻りますか。
ナノハとリインフォースのいい雰囲気を壊さないように…「リインフォースーーー!!」…出ましたねキョウヤ…
「お前…なんでなのはと抱き合ってる〜〜!!不純同姓交友は許さんぞ!!今すぐ其処に直れ!!」
「ちょ、お兄ちゃん、違うの!ルナが怖い夢を見たから其れ落ち着かせるのに…」
「なのはぁぁぁ!!!此れだけは俺は退けないんだ!!」
「お前、人の話を聞け!それ以前に血涙が流れてるぞ!?其処までか!?」
「オノレ兄である俺ですらそんな事はした事ないのに!しかもみょ〜に甘い雰囲気出しやがって〜〜!!」
「お兄ちゃんキャラ変わってる!?」
「目にハイライトが無いぞ!大丈夫かお前!?」
「なのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「恭ちゃん五月蝿い!!!」
――ドガシャァァァ!!
…どうやら美由希が沈めたようですね。
全くキョウヤも懲りない事ですね。
今回の決め技は……後で聞くとしますか。
ともあれ、良かったですねリインフォース。
この世界では、あなた自身に祝福の風がふく事を祈っていますよ…
To Be Continued… 