Side:星奈


 何時もながら、夕方の商店街と言うのは心地よい喧騒に包まれていますね。
 皆、夕食の材料の買出しなどに来ているのでしょう。

 かく言う私もナノハと共に買出しに来ているわけですが。


 「らっしゃい!おぉ、翠屋の双子ちゃんか!今日は何用だ?」

 「こんにちわ。え〜と…にんじんと玉ネギを4個と、」
 「ジャガイモを5つ頂けますか?今日はカレーなので。」

 「毎度!」


 夕食の買出しは大抵、私とナノハで出る事が多いのですっかり『翠屋の双子』として認知されています。
 まぁ、実際ナノハは私の姉のようなものですからね。

 「さて、此れで買うものは全てですね?」

 「うん。えっと星奈…其れは…」

 「?どうかしましたか?」

 「後ろ見てみて?」


 後ろ?はて一体何が…


 「「「「「「「「「「「にゃ〜〜〜ん」」」」」」」」」」」」


 …さて如何したものでしょうか?










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福24
 『翠屋の天使コンビ』










 又あなた方ですか?
 何度も申し上げていますが、家は喫茶店を経営しているので動物は飼えないのです。
 一時、フェレットもどきが寄生していましたが、アレは正体は人間でしたので。


 「「「「「「「「「「にゃお〜〜〜ん?」」」」」」」」」」

 「いえ、『にゃお〜ん?』では無くてですね?」

 ナノハ、一体如何したものでしょうか?


 「1匹2匹なら兎も角、こんなに一杯は流石にお母さんとお父さんでも了承はしてくれないと思うの。
  う〜ん…………あ、そうだ!飼えなくても翠屋の裏に来れば良いんだよ!
  あそこなら人通りも少ないし、裏でならご飯をあげても問題ないの。」

 「成程、其れは良いアイディアですね。店内に入らないようにさえすれば良いのですから。」

 もし、其れで宜しければついて来ますか?


 「「「「「「「「「「にゃ〜ん♪」」」」」」」」」」


 そうですか。
 では、参りましょう。


 「にゃはは…ホント、星奈ってネコに好かれるよね?」

 「全くです。まぁ、ネコは嫌いではありませんが。」

 何故に此れだけ懐かれるのかは一切謎ですね。
 …あの、動きにくいので出来れば離れていただけないでしょうか?


 「にゃ?


 …言うだけ無駄ですね。



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 結果だけで言うなら翠屋の裏でネコ達の世話をする事は可能となりました。
 シロウが直ぐに大きなネコ小屋を作ってくれましたし。

 まぁ、そちらの管理は全面的に私に任された訳ですが。

 しかし、このネコ達、排泄はどこか別の場所でして来る上、常に毛繕いをしているので衛生面での問題はまるで有りません。
 翠屋の中には入ってはいけないと言うのも直ぐに理解したようですし……利発な猫ですね。


 朝起きるとネコまみれになっているのは、まぁご愛嬌と言うところでしょう。




 さて、本日は土曜日。
 学校は休みなので、ナノハと一緒に翠屋のお手伝いです。

 冥沙は図書館に、雷華はプレシアの所に行ったようですね。

 「今日は矢絣袴ですか。」

 「最近は騎士服や、上着無しの戦闘装備にエプロンばかりだったからな。
  此れは意外と動きやすいし、デザインもシンプルで、実は結構気に入っているんだ。」


 成程、良くお似合いですよ。


 「ありがとう。で、お前達は其れにエプロンで良いのか?」

 「えへへ、如何かな?」

 「意外に合うものでしょう?」


 私は殲滅服のアナザーver、ナノハはバリアジャケットで夫々エプロンを着用。
 デバイスを待機状態にして首から下げれば、ワンポイントのアクセサリーになりますからね。
 変ですか?


 「いや、良く似合っている。可愛いと思うぞ。」

 「えっへん。お褒め頂き、光栄です。」

 「にゃはは、良かった〜。」


 店内の清掃及び食器類の整頓も終わっていますからね。
 後は開店を待つのみと言うところですか。



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 「いらっしゃいませ〜!3名様ですね?此方へどうぞ。」

 「チーズケーキ1つとアイスカフェオレ1つ。ご注文は以上で……かしこまりました。」

 「此方、和風ロールと抹茶ラテになります。ごゆっくりどうぞ。」


 流石は土曜日、午前中から凄い人の数ですね。
 それでも私達はホールだけなので其れほどでは有りませんが、レジも兼務しているリインフォースは流石ですね。


 「星奈、大丈夫?」

 「はい、此れくらいは如何と言う事ありません。」

 其れに、もうじき昼休みですから。


 「そうだね。もう一頑張りしなくちゃ!」


 そう致しましょう………おや?


 「ん?何だこの気配は…?」


 リインフォースも気がつきましたか。
 非常に『嫌』な感じがしますね。


 「Caution.Emergency.」

 「如何したの、レイジングハート?」

 「It approaches comes.」


 レイジングハートも察知しましたか。



 ――バァァン!



 「動くんじゃねえ!一歩でも動いたらぶち殺すぞ!」


 何とまぁ、強盗さんでしたか。
 ふむ、今朝のニュースで強盗事件のニュースは聞いていないので、今しがた何処ぞで強盗を働いたのしょうか?


 ――ファンファンファンファンファン!


 パトカーが来てる所を見ると如何やら其れで間違いないようですね。
 強盗を働いたものの、その店の店員に警察を呼ばれて已む無く逃走し、この店に転がり込んだと言うところでしょう。


 「「「「「!!!」」」」」

 「動くなよ!テメェ等は人質だ!精々交渉のカードにさせてもらうぜ!」


 成程、私達やお客様を人質に取ると。


 普通の喫茶店なら此処で全員が大人しくなっていたでしょうが…転がり込む店間違えましたね?


 「おら!さっさと床にh縛鎖!グヘ!な、何だ!?動けねぇ!!」


 この店はマスターとパティシエールが最強ですが、ウェイトレスは正に無双!
 貴方如きが敵う相手ではありません。


 ロック!
 「Restrict Lock.」


 ルベライト。

 三重バインドでは、一般人では動く事は無理でしょう?
 さて、如何様にしますか?


 「あまり煩くされると、他のお客様に迷惑だなぁ。」
 「丁重にお帰り頂いて♪」

 「うん!ルナ、星奈!」


 了解です。
 『全力全壊』でお帰り頂くとしましょう。


 「一時の息抜きを邪魔するな。」

 「当店では、貴方のような客はお断りしておりますので。」

 「皆の邪魔はしないで欲しいの!!」
 「Divine」



 レイジングハートも発射準備完了ですね。

 では行きますか、三位一体の合体攻撃。


 「「「ディバインバスター!」」」
 「Buster.」


 ――ドォォン!!


 厳密に言うならば、私のは『ブラストファイヤー』なのですが、まぁ合わせると言う事で良いでしょう。


 如何に強盗と言えど、我等3人の魔導を受けられるはずはありません。
 非殺傷なので命に別状は無いと思いますが…まぁ、精々外で待ち構えている警察に逮捕されて己が悔いを改めて下さい。


 「お騒がせしました。引き続き、当店でしばしの癒しを得てください。」


 お見事です。
 解決後は、店内に残るお客様のフォローをしなくてはなりませんからね。
 リインフォースは、その辺も素晴らしいですね。



 ――パチパチパチ!!



 「良いぞ〜銀髪のお姉ちゃん!」
 「ちっちゃな天使ちゃんも凄かったわ〜!」


 おやおや、拍手と大歓声ですか。
 しかし、天使ですか……闇に生きていた私がその様に呼ばれるとは分らないものですね。

 尤も、ナノハもまた『天使』な訳ですが。


 「にゃはは、凄いねルナ。」

 「此れくらい言えば混乱も無い。何より、桃子が考えに考えて作り出したこの空間を壊したくないからな。」

 「仰る通りですね。」

 人への気配りも出来るのですね。
 矢張り、貴女はウェイトレスとして尊敬に値する人物ですね。


 「其れは、光栄だな。」


 何れは私もその高みに…!
 なれば、今日の手伝い、全力で挑ませていただきます!!


 「私も全開で行くよ!」
 「I think so.」


 「では、参りましょう。」

 もっと高みを目指しましょう!



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 ――翌日


 今日も今日とて、ナノハと買出しに来ている訳ですが…


 「おう、翠屋の天使ちゃんか!らっしゃい、今日も新鮮なの入ってるよ!」


 昨日の一件以来、私とナノハは『翠屋の天使』として認知されているようです。

 まぁ、今朝の新聞にでかでかと『お手柄、翠屋の天使と戦乙女!』の見出しが出れば仕方ないと思いますが。
 リインフォースが戦乙女……非常に似合いますね。

 と、今は買い物が先決ですね。


 「鯖の灰干し8個と、乾燥わかめ下さい。」

 「それから、鰹節と鯖節を2本ずつ頂けますか?」

 「はいよ!毎度どうも!!」


 鰹節と鯖節はネコ達の大好物ですからね。
 良い買い物が出来ました。

 「では帰りましょう。」

 「うん。…でも、星奈後ろ…」


 又ですか?
 幾ら店の裏であっても限界があるのですが………あの、此れはネコなのですか?


 グオォォオォォォ!!


 如何見ても、私には此れが『虎』にしか見えないのですが…


 「実際『虎』だと思うの。何処かの動物園から逃げ出したんだと思うの。」

 「でしょうね。虎は一般人が飼える動物ではありませんから。」

 しかし、私の前に現れたということは『そう言う事』なのでしょうか?
 確かに虎はネコ科ですが…

 「ナノハ、如何したものでしょう?」

 「虎は流石に、絶対無理だと思うの。」


 ですよね。
 では、消防と警察に連絡を入れるとしましょう。
 此処は私達の出る幕ではなさそうですので。


 「そうだね。それにしてもあの虎さんは如何して?若しかして星奈に惹かれてきたのかな?」

 「まさか。流石に其れは無いでしょう。」

 とは言っても、一切否定できませんね今の猫の数を見ると。
 さて、戻るとしましょう。


 「うん!無事に終わると良いね。」


 全くですね。

 さて、夜の部も『翠屋の天使』を目当てに来る人は居るはずです。
 其れに備えましょう。






 心踊るほどの穏やかな日々。
 此れは何物にも変えがたいものですね。



 この平穏、何時までも続く事を切に願います。












  To Be Continued…