Side:冥沙


 よい天気だのう……心が落ち着く。
 こういう日は洗濯物も気持ち良く乾くであろうな。

 「ありがと冥沙、助かるなぁ。」

 「何、此れくらい造作も無いぞミユキ。大体ナノハ達が手伝っておると言うのに、我だけサボる事など出来ぬであろう?」

 リインフォースの奴も翠屋で頑張っているしの。


 「リインは翠屋の看板ウェイトレスで定着してるからね♪」

 「らしいのう。あ奴も中々この生活をt「桃子ーーー!そのよからん物体は一体なんだーー!?」…又か?」

 毎度毎度飽きん事だ。
 今度は一体何を持ってきたと言うのだモモコは?










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福23
 『王様の高貴な日?』










 リインフォースの声にリビングに来てみれば……おい、逆融合状態になっているぞ!
 其れほどまでの物なのか!?


 「よからんだなんて、似合うと思うんだけど…」

 「嫌だ!断る!却下不可!其れを着る位なら、私はナハトの呪いの方を受け入れる!!」


 其処までか!!
 本気で何を持ってきたのだモモコよ?


 「此れ♪」

 「金の小娘のバリアジャケット(マント&腰装備無し)!?しかも白色だと!?」

 待て待て〜〜い!一体何処から持ってきた!?
 それ以前にサイズが…って、リインフォース用か!?


 「正解〜♪レイジングハートに記録映像見せてもらって、作っちゃった♪」


 いや、そんなに可愛く言われてものう?
 う〜む…モモコよ流石にそれは問題あると思うぞ?


 「え〜〜〜?」

 「『え〜〜〜?』ではない。リインフォースのプロポーションを見よ!
  こんな物を着て店に出たら、男共が鼻血を大量噴出して店内が血の海になってしまうであろうが!」

 「其れに流石に此れは際ど過ぎだよ。リインが着たらパッツンパッツンで刺激強すぎ。」

 「普段着てるのだって割りと身体にフィットしていると思うけど?」

 「此れは張り付いていると言うのだと思うぞ私は!こんな物を着た姿を携帯で撮られたら…何故平気なんだフェイト…

 「そう、なら仕方ないわ。残念♪」


 全然残念そうには見えぬ……楽しんでおるなモモコよ。
 まぁ、リインフォースが断る事前提でこの手の服は持ってきているのだがな…
 本気で着せる気などは無かろう、あくまで反応を楽しんでいる節があるからのう…

 だから少し落ち着けリインフォース。
 それと、金色の小娘のバリアジャケットのデザインについては何も言ってやるな。
 親を気取っていた下郎の服が『アレ』では仕方あるまいて。


 「あぁ、ふぅ…大丈夫だ。言われてみれば確かにそうだな。

 「そうであろう?元に戻ったな。まぁ、今のでは変身してしまう気持ちも分からなくは無いがの…」

 我だったら『エクスカリバー』かましてたかもしれぬしな。
 で、結局如何するのだ今日の服装は?


 「騎士服で良いだろう?結局のところ此れが一番動きやすい。…何気に客の人気も高い。

 「其れが良かろうな。人気高いのか其れは…さて、我は少し出かける事にするか。」

 良い天気だし、散歩するには良い気候だ。
 夕方の開店時間には戻る。


 「あら、それじゃあお昼は如何するの?」

 「うむ、ミユキがおにぎりを作ってくれたから問題無い。」

 今日は一日街の散策に出たいと言ったら、即刻『おにぎり弁当』を用意してくれた。
 うむ、心から感謝する!ミユキの腕前ならば味にも期待が持てるというものだ。


 「あ、後此れも忘れないで?」

 「水筒?いや、飲み物くらいは自分で買うが…」

 「違うよ、此れはお味噌汁。冥沙、お味噌汁好きでしょ?」

 「大好物だ!」

 寧ろ味噌汁が嫌いな奴など日本人とは認めん!否、我は本来日本人ではないがな?
 よもや、水筒にこんな使い方があったとは盲点だ!
 その心遣いに心底感謝する。


 「どういたしまして。それじゃ、気をつけて行ってらっしゃい。」

 「うむ。行ってくる!」

 ミユキのお陰で最高の気分で出かけられるな此れは。



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 「いい陽気だ。雲一つ無い、晴天であるな。」

 少々暑いが、其れもまた心地良い。
 夏が近づいておるのだろうな。


 それにしても不思議なものだ。
 元の世界では『闇統べる王』と名乗り、闇の書の復活を目論み、世界を闇で覆い尽くそうとしていた我が、今ではナノハの臣下か。

 笑ってしまうような現実だが、不思議と其れが心地良い。
 或いは、我等マテリアルはこのような安息を求めて居たのやもしれぬ。

 理と力も、『星奈』『雷華』の名を貰い、今を生きておる。
 我もナノハより授かった『冥沙』の名を大切にして生きてゆかねばな。


 「ふむ、この辺で一息入れるか。」

 それにしても、いざ散策するとなるとこの海鳴は意外に広い。
 全て回る事は不可能であるな。

 まぁ、散策に出る時間などこれからもある。
 焦らずにじっくりやるのも悪くなかろう。

 其れに、偶然見つけたこの公園も、中々に風情がある。
 春先には桜が綺麗であろうな……ふむ、此処で昼食も悪くないか…ん?



 ――トテトテトテ……ドシャ。



 「!!」

 さっきから視界に入っていた小娘のうちの1人……随分と派手に転んだが大丈夫か!?
 と言うか顔面から突っ込まなかったか今!?


 「う、う……びぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 や、矢張り泣くか…!
 仕方あるまい、今のは見ている方だって痛いからの…

 「だ、大丈夫か?ほれ、泣くでない。大丈夫だ、何処も怪我はしておらぬ。」

 「う、グス…」

 「い、痛いの痛いの飛んでいけ〜〜!と、ほら、もう痛くないであろう?」

 「ぐす……うん。」


 な、泣き止んだか。
 ふぅ、う〜む如何したものか?
 このまま只放置するのも気が引ける…とは言っても周りに大人は居らぬし…

 ふむ…試してみるか?

 「ほら、此れでも食べて元気を出せ。何時までもベソ掻いていては友達も心配するぞ?」

 ミユキが作ってくれたおにぎりで!!
 どうだ、美味いであろう?


 「美味しい…」
 「おいしー!」


 不公平なのでもう1人の小娘にもな。
 此れで残り1個だが、まぁ味噌汁もあるし大丈夫だ。

 「そうであろう?何せ我の姉上が作ったものだ、不味いなど先ずありえぬ!」

 「うん!ありがとうお姉ちゃん!」


 泣き止んだか。
 うむ、貴様は笑っていた方が良い。
 今後はもっと足元に注意せよ。


 「は〜い!」


 良い返事だ。
 では又な。


 「「ばいば〜い!」」

 「うむ、さらばだ。」

 さて、次は何処に行くか…



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 ふむ、此処が図書館か。
 成程中々の大きさだ、此れならば面白い本もありそうだな。
 早速中で…「アカン!あ〜、もう何で来ないな事になるん?ついてないなぁ…」…この気が抜ける独特の喋り方は…!


 「何で車輪が側溝に落ちんねん…ん〜〜〜!!!アカン、どうやっても抜けへん…」


 矢張り貴様か小鴉ーーー!
 ええい、何をしておる!!
 全く面倒な事を…!

 如何したものだ?我が介入するか?
 う〜む………





 助けてやるか。
 見て見ぬ振り、見過ごすなど出来ぬからな――これもナノハの影響か?

 「ほれ、大丈夫か?周囲には常に気を掛けておかんといかぬぞ?」

 「おおきに。えろうスンません助けていただい……はい?」


 ぬ、如何した?


 「( ゚д゚) …

  (つд⊂)ゴシゴシ

  (;゚д゚) …

  (つд⊂)ゴシゴシゴシ
  _, ._
  (;゚ Д゚)シツレイデスガドチラサマデショウカ?ドウシテワタシトオナジカオシテルン?」

 「初めて日本語を話した外国人のようになって居るぞ?他人の空似であろう、気にするな。」

 「気になるわ!他人の空似にしても似すぎとちゃう!?」


 気にしたら負けだぞ小鴉。
 世の中には自分に似た人間が3人は居ると言うではないか?


 「其れで済ましてええの!?其れとその喋り方は一体なに〜〜?」

 「細かい事を気にしては長生きできぬからのう?其れとこの喋り方は生まれつきよ、気にするな。」

 見た目以上に達観しとる〜〜!!?


 実年齢不明だしの。口には出さぬが。
 で、貴様は今から館内に入るのか?そうであるならば車椅子を押してやるが?


 「あ、今から入館しよおもてたんや。其れなのに側溝にはまるやなんて不運やわぁ…ホンマに助けてくれてアリガトな。」

 「気にするな。見過ごしては気分が悪かっただけよ。」

 モモコも『困っている人がいたら助けてあげなさい』と言っていたからの。
 其れに、人助けというのも意外と悪い気はせぬからな。


 「そっか……ほな、お言葉に甘えて図書館内まで押してもろてえぇかなぁ?」

 「うむ、任せておけ。」

 若しかしたら、あの世界でもこうして小鴉と心穏やかに話せていたやも知れぬか…
 まぁ、なればこの世界でそう言う関係になればよいか。


 しかし…

 「闇の書…」

 矢張りこやつが所持者か。
 鎖が巻かれているところを見ると、まだ起動はして居らぬようだな。


 「えっと、何か?」

 「いや、随分と面妖な本を持っているなと思ってな?鎖で封印とはよほど重要な何かが書かれているのか?」

 「あ〜…これなぁ?物心付いた時には既にあったんよ。せやけどこの鎖がどうやっても外れへんねん。
  中身読めんのやったら本としてはどうかと思うけど、無理やり外せるモンでも無さそうやしなぁ?」

 「何処にも鎖の継ぎ目が見えぬし、止めている錠前も見当たらぬしなぁ?実は超古代文明の遺産なのやも知れぬ。」

 「やったら、凄いなぁ♪」


 実際にそうなのだがな。
 まぁ、此れくらいならば雑談中の冗談で済ませられる。

 「実はの、我も似たような本を持って居るのだ。色彩は違うがの。と、ほれ。」

 「…ちょい待って、その本何処から出したん?」

 「手品だ。マダ練習中だが中々であろう?」

 「ほへ〜、器用なんやね〜。ん、ホンマにそっくりや…見てもえぇの?」

 「館内に入ったら好きにせい。」

 読んでも理解は出来ぬであろうからな多分。
 我は別の本を探すしの。


 取り敢えずは席を確保しておくか。



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 うむ、流石は海鳴で最も大きい図書館だけはある、本の種類が豊富だ。
 休日は此処を訪れるのを日課にするも良いかもしれんな。


 と、もうこんな時間か。
 そろそろ帰らぬと夕方の開店時間に間に合わぬ。


 「あれ、もう帰るん?」

 「うむ、そろそろ帰らねば夕方の開店には間に合わぬからな。帰ったらウェイトレス業よ。」

 「翠屋、有名な喫茶店やモンね。未だ行った事無いけど、近々行ってみようかな?」

 「何時でも来店するが良い。」

 で、如何だ?その本は読めたか?


 「何となく。ホンマモンの魔法の本みたいやね。あ、見せてくれてありがとう。」

 「まぁ、どこぞの道楽者が戯れに記した物であろうが、暇つぶしにはなろう。」

 さて、我は帰るがうぬは如何する?
 帰るのであれば送るぞ?


 「私はもう少し此処で。」

 「大丈夫なのか?」

 「あはは…うん、もうあんなへまはせぇへんて。」

 「まぁ、気をつけて帰れよ?」

 大丈夫と言うならばそうなのだろう。
 過ぎた気遣いと心配は逆に礼を失するからの。


 「は〜い。王様も気をつけてな〜。」

 「うむ。では又何れな、小鴉。」

 話の流れの中で、自然と我を『王様』と呼ぶようになりおったわ。
 まぁ、我もついつい『小鴉』と呼んでしまったがな。
 お互いに名は名乗らなかったゆえ、しばしは此れでよいやも知れぬ。


 それにしても…

 「監視の目の一つくらいは有るものと思っていたが…全く無しか。」

 闇の書の所持者を管理局が放っておくとは思えぬが…まぁ、良かろう。
 問題が起きたら、その時その時で対処すればよい。

 この平穏は、あの闇の中以上に心落ち着く。
 何も無ければ満喫させてもらうとするか。

 さて、少し急がねばな。





 …時にモモコは、我用に妙な衣装は用意等していないよな?
 うむ、少々不安だ…








 ――――――








 Side:車椅子の少女


 今日は楽しかったな〜。
 私とそっくりな、でも全然性格の違う女の子。

 こない事があるんやね。

 あんまし偉そうに喋るからつい『王様』て呼んでもうた。
 あの子も私の事『小鴉』言うとったけど。

 何で『小鴉』なんやろ?
 今度会ったら聞いてみよ。

 「あ……聞くと言えば名前聞くの忘れとったし、そもそも私名乗ってない。」

 あっちゃ〜、やってもうた。
 礼儀知らずやん。

 いや、向こうも名乗らんかったからお相子かな?

 ま、其れも次会った時や。


 喫茶翠屋、近い内に行ってみよかなぁ?












  To Be Continued…