時は少し遡る


 Side:リインフォース


 矢張り発動したかジュエルシード、テスタロッサが来ていたと言うから有るとは思っていたが。

 「アレか…」
 反応が2つ…近くで発動し、互いに共鳴したという所だな。
 尤も其のせいで発動体と言うか暴走体は逆に力が弱い、テスタロッサ達が来る前に封印しておくか。

 「刃以て、虚空を裂け!穿て風神爪牙!」
 この程度なら武曲の展開は必要ない。

 …よし封印完了!…と来たか。
 「…意外と時間が掛かったな。夜は苦手なのか?」

 さて、始めようかテスタロッサ?










  魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福12
 『月と雷の舞踏曲(ロンド)










 「探し物は此れかな?」
 今しがた手に入れた2つのジュエルシードを取り出して見せてやる…って怖いぞテスタロッサ、主に目が!
 飢えた肉食動物かお前は…?

 「ふぅ…少し落ち着け。…ん?お前はこの前の…」
 ネコの使い魔じゃないか。
 テスタロッサの使い魔だったのか…この世界のテスタロッサには2体の使い魔が居るんだな。

 「この間はどうも。まさかこんな形でお会いするとは思っていませんでした…」

 「其れは私もだ。出来れば又客として来た時に会いたかったが…其れは言っても仕方の無い事だ。
  さて、その金髪の子を見ていれば大体分かるが目的はこのジュエルシードか?」
 まぁ、聞くまでも無いだろうが…だから目が怖いぞテスタロッサ…


 「其れを渡して…」

 「行き成りだな?…悪いが答えは『No』だ。なのはだって首を縦には振らなかった筈だ。」

 「…あの白い子の知り合いなの?」

 「知り合いどころじゃない。なのはは我が主。そして私はなのはに仕える白夜の守護騎士『ヴァイスリッター』の1人だ。
  故に我が主なのはの目的の邪魔はさせない。其れが例え何者であろうとな…!」

 「!!!」

 殺気混じりの魔力を叩き付けると、流石に怯むか。
 アルフも多少気圧されているな…平気なのはネコの使い魔だけか…

 「私達の目的は全てのジュエルシードの封印。此れを欲するなら力で奪ってみるが良い。」

 さぁ、如何する?








 ――――――








 Side:フェイト


 強い…!
 この人から発せられた魔力と其れに混じっていた殺気……私1人じゃとても敵わない。

 この人の魔力は母さんと同等、或いはそれ以上かもしれない。
 でも、退く事は出来ない……其のジュエルシードは何としても手に入れなきゃ!

 「アルフ、リニス。」

 「任せなフェイト。3人でかかれば何とかなるさ。」
 「ですが彼女はどんなに低く見積もってもオーバーSの実力者です。油断しないで行きましょう。」

 分かってる。
 行くよ、バルディッシュ!

 「Yes sir.」

 貴女に恨みは無いけど、此処はやらせてもらう!


 「この殺気を受けても臆さずに向かってくるか。ならば応えよう…刃以て、虚空を裂け!穿て『風神爪牙』!」

 誘導弾!だったら、
 「フォトンランサー!」
 「Photon Lancer.」

 相殺するだけ。
 それに…

 「後ろががら空きだ!ブゥゥレイクゥゥゥ!!」

 アルフがやってくれる!
 このタイミング…入った!


 ――ガッ


 え…?

 「悪くない連携だが甘いな。誘導弾を制御中は動けないと思ったか?」

 「ぐっ…コイツ…」

 アルフの攻撃がカウンターされた?
 まさか、誘導弾を制御しながらアルフの動きを読んでたの?

 「呆けている暇は無いぞ?厄災に裁きを。集え破壊の力、全てを払え。穿て光よ!ディバイン…バスター!

 「ジェットスマッシャー!」


 ――ガァァン!


 リニス!

 「凄まじい威力です。矢張り並みの使い手ではありませんね…」

 うん、それに今の技はあの白い子と同じ…

 「今のを相殺するとは中々だな。」

 「威力では及びませんがぶつける『点』を見極めれば攻撃を分散相殺させる事は難しくありませんよ?」

 「成程な…だが、休む暇は無いぞ?」

 ?……!!!さっきの誘導弾!まだ残ってたの?

 「フォトンランサー!フェイトはやらせないよ!」

 「アルフ!」
 大丈夫?

 「良いカウンターだったからね…流石に効いたよ。大体アレだけの誘導弾を展開しておきながら背後からの奇襲に対応出来るなんて…!」

 「うん、並大抵の相手じゃないよ。でも、負けられない!」
 バルディッシュを握り締め相手を見据える。
 今の間も攻撃してこなかった…其れだけ余裕が有るんだ…なら、


 ――リニス、補助お願いしてもいいかな?

 ――任せて下さいフェイト。貴女とアルフが全開でやれるように立ち回りますから。


 ありがとうリニス。
 今度こそ!








 ――――――








 Side:リインフォース


 正直に言おう……思ったより楽じゃない。
 いや、テスタロッサとアルフだけなら充分対処できるどころか全然余裕なんだが…


 「セイバースラッシュ!」


 あのネコの使い魔――テスタロッサたちの会話からするとリニスと言う名なのだろうが、彼女が厄介だ。

 直接的な戦闘力ならば其処まで高くないだろうが彼女は何と言うか『巧い』。

 さっきのディバインバスターを相殺した時だってそうだ。
 此方の砲撃に対して複数の射撃と砲撃の融合魔法で対処するとは思わなかった。

 砲撃に内包された射撃で点をずらしながら減衰するとは、正に『分散相殺』だ。


 現に今もテスタロッサとアルフが攻撃しやすいように私を誘導している。
 おまけに私の攻撃の出掛かりを潰すように誘導弾やら直射砲撃をしてくるのだからやりにくい事この上ないな…


 だが此れで分かった事だが彼女はテスタロッサの使い魔ではないな。
 契約者は他の誰かで、テスタロッサとアルフに戦いを教えたのが彼女なのだろう。

 だが、如何に彼女が巧くても決定打を与えるには至らないだろうが逆に私も手詰まり…埒が開かない。
 仕方ない、テスタロッサ達にはもう少しあとで披露するつもりだったが…使うとするか!

 「来い、武曲よ!」
 呼びかけに呼応するように四肢に篭手と具足が展開される。
 悪いが少々本気を出させてもらうぞ?


 「デバイス!?まさか今までデバイス無しで戦ってたって言うの?」

 「残念だが不正解だ。此れはデバイスじゃない…永き時を生き、そして私に力を貸してくれる仲間だ。」
 先ずはリニスをどうにかするのが先決だな…よし!

 「刃以て、虚空を裂け!穿て、風神爪牙!…舞い踊れ、貧狼月牙!

 「な、2種類の誘導弾の同時制御だって!?」


 武曲の力を信じていなければとても出来ないが、お前達を暫く行動不能にするには充分過ぎる。
 これでリニスに対処できる!
 「廉貞黒曜。」


 「!!転移魔法!流石はベルカの騎士、隙無しですね…!」

 「この武曲が有ればこそだがな。…先ずはお前を無効化させてもらうぞ!」

 「そう簡単にはやられませんよ?…ハァ!!!」

 デバイスを使っての近距離攻撃、意外に鋭いな。
 だが、今の私に隙は無い!
 「禄存轟斬!」

 「く…防御陣ですか…」

 「ご名答。だが只の防御陣ではないぞ?」

 「え?」

 一撃で随分溜まったな、それだけ今の攻撃が強かったと言うことか?だが、其れが逆に命取りだ!
 巨門空刃!

 「え?きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 「「リニス!!」」


 縁存轟斬は只の防御陣にあらず、其の防御陣は武曲に力を溜め巨門空刃の威力を底上げするモノだ。
 無論無限に無効に出来る訳ではないがそれでも充分な効果を発揮してくれる……悪いが此処は沈めリニス!

 「終わりだ。破軍……絶龍!!

 体勢を崩したリニスを掴み、そのまま純粋魔力攻撃を叩き込む。

 「あ……。」

 「…流石に耐えられなかったか。」
 耐えられたら逆に危なかったかもしれないが、此れで如何にかなる。


 「リニス!」
 「よくもリニスを!!」


 「ふぅ…何を言っている。此れは戦いだ。戦いである以上傷付くは当然だろう。それとも自分達は無傷で済むと思ったか!?
  だとしたら甘すぎる。もしそうなら此れから先、お前はなのはには絶対に勝てない。あいつは傷付く覚悟も、傷付ける覚悟もしているのだからな。」

 私も驚いたがなのはは強い、技もそうだが何よりも心が。
 力を持つ者が負うべき責任と覚悟ちゃんと持っている。

 「勝手なこと言わないで!其れくらいの覚悟は私にだって有る!でもそれ以上に負けられないんだ…絶対に!!」

 「ならば仲間が落とされた位でうろたえるな!」
 そもそも気絶させただけだから命に別状は無いしな。


 「黙れこんニャロォォォォォ!!」

 「そんな単調な攻撃当たると思うのか?文曲絢爛。

 「なっ、うわぁぁぁぁ!!」
 「アルフ!」



 さぁ、此れで終わりだ。
 「轟け雷鳴!」

 「!?そんな…どうして貴女が其の技を…!」


 驚いたか?…当然か、此れは元々お前の技(・・・・・・・・・)だったのだから。
 「滅せよ……幻槍雷破!

 「くっ…サンダースマッシャー!
 「Thunder smasher.」


 諦める事はしないか…うん、此れならば大丈夫そうだ。
 もし諦められていたら見限る所だったがな。



 ――ゴガァァアァァァァァン!!



 無数の雷の槍が降り注いで発生した砂埃。
 其れが晴れると…テスタロッサとアルフ、それから先に落としたリニスが一緒に伸びていた。

 テスタロッサは意識があるみたいだから…まぁ、大丈夫だろう。
 とは言え少し手加減の仕方を覚える必要があるな此れは…








 ――――――








 Side:フェイト


 く……まさか私の『フォトンランサー・ファランクスシフト』と同等の技まで使えるなんて…。

 段違いなんてものじゃない、格が違いすぎる…!


 ――…スタッ


 降りてきた…ダメ、このままじゃやられる!
 動かなきゃいけないのに、体が言う事をきかない…母さん…


 「まさかアレに耐えるとは思わなかった。…持っていけ、敢闘賞だ。」

 「え…?」
 此れはジュエルシード?其れも2つ…、どうして。

 「言っただろう敢闘賞、其の頑張りに対する私からのプレゼントだ。
  其れに、此れから先ジュエルシードが発動した場所で出会ったときに自分のチップ無しでなのはに挑むのは格好がつかないだろ?」

 「そんな…其れで良いの?」

 「良いさ。なのはは如何にもお前と…いや、此れは本人から聞いた方が良いな。
  兎に角なのははお前を気にかけている。ならば私はあいつの騎士として最善の一手を取るだけだ。
  数の差は有っても、ジュエルシードを互いに有している以上遠からず必ずなのはとお前は会うことになるからな。」

 最善の一手…あの子にとっての、でもこの人は私のことも考えてくれてる?

 「30分もあれば動けるようになる筈だ。」

 それだけ言って行こうとする…
 「ま、待って!!」

 「?まだ何か?」

 「私はフェイト、フェイト・テスタロッサ。貴女の名前を教えて。」
 何でだろう、聞いておかないといけない気がした。
 あぁ、あの白い子――なのはもこんな気持ちだったのかな…


 「…ルナだ。リインフォース・ルナ、其れが私の名だ。」

 「ルナ…。」

 「近いうちに又会うだろう…それじゃあな。」


 …行っちゃった。
 手元には2つのジュエルシードが……一応は手に入れたけど…なんか悔しいな。

 でも、あの人に戦い方を教わってるとしたらなのはは何処まで強くなるんだろう?
 負けたくない…今度会ったときは勝ってジュエルシードを手に入れたい…!


 其の為には強くならなきゃ…!








 ――――――








 Side:リインフォース


 「おかえりなさい。」

 「ただいま。待っていたのか、寝ていて良かったんだぞ?」

 旅館に戻ると、なのはが外で待っていた…全く湯冷めしたら如何する。

 「大丈夫。それにちゃんとルナに『おかえりなさい』って言いたかったから待ってたの。」

 「そうか…ありがとうな。」
 さぁ、中に入ろう。風邪を引いたら大変だ。

 「うん…ねぇ上手く行った?」

 「あぁ、大丈夫だ。あの子とはきっと又会うことになる。」

 「そっか…負けないよ私。でもそれ以上に、きっとフェイトちゃんの心を開いてみせるよ。」

 「そうしてやってくれ。」


 あの子の悲しみを取り除いて、其の心を開くのは私ではなく、なのは…お前なんだからな。












  To Be Continued…