No Side


 温泉旅行の翌日、高町家は平和である。
 なのは、星奈、冥沙、雷華、そして美由希は学校に。
 恭也は大学の講義が休みとかでこれまた何処かへ出かけている。

 家に残っているリインと高町夫妻は翠屋の開店準備中。
 相変わらずのリインの素晴らしい働きっぷりで店内は埃一つ無く輝いている。

 「今日はドレにしよう?定番の執事服か、密かな人気の矢絣袴か…動き易さ重視で騎士服にエプロンでも良いな…」

 「悩んでるならこのメイド服はどうかしら?」

 だが断る!

 「え〜〜〜?」

 …実に平和であった。










  魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福13
 『ライバル対決第2戦』










 Side:なのは


 「なのは、アンタ何か有ったの?」

 ほぇ?アリサちゃん?
 「ん〜…有ると言えば有るし、無いと言えば無い…のかな?」

 「悩み事?つってもジュエルシードの事じゃなさそうね。…温泉で出てきたあの金髪の子の事でしょ?」

 「…正解。」
 鋭いなぁ、アリサちゃん。
 フェイトちゃんの心を開きたい、友達になりたい…でも如何すればいいんだろう?

 「らしくないわねぇ、悩む位なら思ったままガツンと行っちゃいなさいよ?
  話が出来そうならそれで良いし、其れが無理ならアタシの時みたいに一発かませば良いじゃない?」

 ふぇ!?ちょっと待ってアリサちゃんの時って確か…

 「そっちの方がなのはちゃんらしいかもね♪」

 すずかちゃんも!?

 「お三方の出会いですか?興味が有りますね。」
 「僕も聞きたい〜〜!」
 「よければ話してみよ。」

 星奈、雷華、冥沙〜〜〜!?
 それに聞かせて貰う側なのにどうして冥沙は偉そうなの!?

 「相変わらず偉そうねアンタは…まぁ良いわ。アタシとなのは、すずかは1年生の時から同じクラスだったんだけど最初から仲良かった訳じゃないのよ。
  其の頃のアタシは、まぁ所謂『いじめっ子』ってやつで、おとなしそうだったすずかの事ターゲットにしてたのよね。」

 「あの日もアリサちゃんにお気に入りのヘアバンド…今つけてる此れを取り上げられちゃって、でも何も言えなくて…
  其の時割って入ってくれたのがなのはちゃんだったの。」

 あの時は…考えるより身体が動いたの。
 だってアリサちゃんやりすぎだと思ったんだもん。

 「今思うと調子乗りすぎだったわねアタシも。でも、行き成りビンタされるとは思わなかったわよ!?」

 「うぅ、でも口で言っても止めなかったんじゃないかと思うの!」

 「…何だ、うぬのO・HA・NA・SHIは昔からか?」
 「おぉ、凄いぞナノハ!」

 其れは言わないで!あと、雷華感心するとこおかしいの!

 「で、結局どうなったのですか?」

 「うん、なのはちゃんが『痛い?でも、大切なものをとられちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ?』って言った辺りで今度はアリサちゃんが掴みかかって…」

 「其の後は取っ組み合いの大バトルよ!結局は親が呼び出される事態にまで発展したわね。」

 「其れは又…」
 「凄まじいな貴様等…」

 にゃはは…でも思えばあの後すぐだったよね、私達が友達になったのって。
 ん?若しかしてそう言う事なの?

 「そう言うことよ。言って分かるんなら其れにこした事は無いけど、そうじゃなかったらガツンと一発かましてやればいいのよ。
  そうすれば嫌でもなのはの想いは伝わる筈。アタシはそう信じてる。何より経験者のアタシが言うんだから間違いないわ!」
 「ちょっと違うけど『当たって砕けろ』かな?頑張ってなのはちゃん!」

 そっか…うん、そうだよね!
 「ありがとアリサちゃん、すずかちゃん!」

 「気にしないの。アタシ達は親友でしょ?なら此れくらい当然。でも…絶対負けんじゃないわよなのは!」

 大丈夫!
 「負けないよ。絶対に!」

 それに私は1人じゃなくて皆が居るから!








 ――――――








 Side:フェイト


 「サンダー…スマッシャー!」
 「Thunder smasher.」


 「ジェット!」


 ――バガァァン!!


 …互角!うぅん、今のはホンの少しだけ私が押してた。

 「見事ですよフェイト。砲撃魔法も可也威力が上がってきました。」

 「リニスとアルフのお蔭。」
 でも、この威力でもあの子の『ディバインバスター』の足元にも及ばない。
 悔しいけど砲撃に関してはあの子の方が私よりも数段上。
 其れに加えてクロスレンジでは魔法を使わない近接戦闘にも長けてる…此れで魔法運用の技術が向上したらきっと敵わない。

 でも…それでもあの子には負けたくない。
 私達をコテンパンに負かしたあの人が言うにはあの子は私を気にしてくれてる。

 其れを知りたい。
 如何して私を気に掛けるのか、何でジュエルシードを集めてるのか…

 でもきっと君と会ったら私は言葉で伝える事は出来ないと思う。
 多分、今は戦う事でしか、色々と伝えることは出来ないから…



 だから次に有ったら先ずは君を倒す。


 「やる気だねフェイト?する事があれば遠慮なく言ってよ?アタシはフェイトの使い魔なんだからさ?」

 「うん。ありがとうアルフ。頼りにしてるよ。勿論リニスもね。」

 「任せなよフェイト!今度は負けないから!」
 「頑張りましょう。私達なら出来るでしょう。」


 うん、出来ると思う。
 今度会った時は勝たせてもらうよ……なのは!








 ――――――








 Side:リインフォース


 「ん?なのは達は如何した?」

 「ジュエルシードが発動してな、其れを回収に行った。」
 学校から帰ってきて一息ついたばかりだというのに慌しいな。

 「なっ!?大丈夫なのか?と言うかなんでお前は出動して無いんだ!?」

 「なのはから直々に待機を言い渡された。」
 この前の温泉では私が1人で出たからと言っていたが、まぁ逆に好都合だ。
 今のジュエルシードの発動の直前にテスタロッサの魔力を感じたし……強制的に発動させて場所の特定とは無茶をするものだ…

 テスタロッサ達の方はこの前と同様のメンバーか…まぁ星奈達が一緒なら戦力は互角だな。

 「其れにな恭也、ジュエルシードを集めているのは私達だけじゃない。他にもアレを集めている者が居るんだ。
  なのはと同い年の女の子…言うならばライバルだが、なのははその子と『友達になりたい』と言っていた。
  だが…その子は自分の身内以外には心を閉ざしていてな……なのははその心を開く心算で居るんだ。」

 「そうなのか…?」

 「あぁ…少なくともなのははその心算だ。だからこそ自らな…言葉以上の事を伝えるにはぶつかり合うのが一番手っ取り早い。
  兄ならばあの子を信じてやれ恭也。きっと大丈夫だ…あの子は強い。」
 お前だって分かっているだろう?


 「そうだな。ならば俺は兄としてなのはが安心して帰ってくる場所を護ってやるべきだな。」

 その通りだ。
 危険そうなら何時でも私は出ることが出来るしな。


 思い切りやって来い。
 頑張れなのは。




 しかし、温泉旅行中に筋肉痛が完治とは治癒能力が些かチート気味だななのはは…








 ――――――








 Side:なのは


 「ジュエルシード封印!!」
 「receipt.」

 ジュエルシードの発動を感知してきてみたらとんでもないことになってた。
 フェイトちゃん達がジュエルシードを強制発動させてた。

 ユーノ君が言うには『場所の詳細が分からないから強制発動させて特定しようとしたんだろう』って事らしいの。
 でも同時に『そんな事をしたら次元震を起こしかねない』とも言ってた。
 ギリギリで封印できたから良かったけどあと少し遅かったら……考えたくもないの!


 「…やっぱり来たね?」

 「如何してこんな事をしたの!?一歩間違えば街が消えてたんだよ!それどころかフェイトちゃんだって只じゃ済まないの!!」
 無茶にも程があるの!!


 「…こうすれば君が来ると思ったから。」

 「え…?」

 「もう1度君と会いたかった。ちゃんと勝ってジュエルシードを手に入れたかったから。」


 フェイトちゃん…でも『勝って』って事は…
 「どうしても戦うの?」

 「言葉だけじゃ何も変らない。何時だって、どんな時だってきっとそうなんだ。」

 「そうかもしれないけど…言葉にしなきゃ伝わらない事だって有るよ!」

 「無理だよ『今』は。私達と君達の目的にはきっと大きな隔たりがあるんだから。…お喋りはお終い。アルフ、リニス。」

 「はいよ。ただやばくなったら突入するからね?」
 「頑張って下さいね?」


 …一緒に居た2人を下がらせた?
 若しかして『一騎打ち』?
 なら…
 「皆、下がって。でも何時でも動けるようにだけはしておいて。」

 私も皆を下がらせなきゃ。

 「了解ですよナノハ。御武運を…」
 「う〜〜〜僕も戦いたかったのに…でもしょうがないか!やっちゃえナノハ!」
 「見せ付けてやるが良いお前の強さをな。むこうが妙な真似をしたら、その瞬間滅してくれるわ!」

 うん、頼んだよ!


 さて…行くよフェイトちゃん!!








 ――――――








 No Side


 「ディバインシューター、シュート!!」
 「Divine Shooter.」


 「フォトンランサー!」
 「Photon Lancer.」


 夫々の誘導弾を皮切りに始まった2人の魔法少女の戦い。

 一発辺りの速度ではフェイトが上回るが、最大展開数と誘導性能はなのはが上回る。
 其れを示すかのように相殺されなかった分の誘導弾がフェイトに向かう。


 ――この短期間に誘導弾を?物凄い成長速度…
 「バルディッシュ!」
 「Yes sir.」

 なのはの成長速度に驚きつつも、その誘導弾をバルディッシュで切り落とし、お得意の高速移動でなのはに接近する。
 勿論なのはもその展開は織り込み済み。

 「エクストラバスター!」

 白夜の魔導書にチャージしていた砲撃魔法で迎撃に移る。
 更に、

 「ディバイン…バスター!!」
 「Divine Buster.」

 二段構えの連続砲撃。
 しかし其れは2発ともかわされ接近を許してしまう。

 そのまま近接戦闘かと思いきや…

 「サンダースマッシャー!」
 「Thunder smasher.」

 略ゼロ距離でフェイトの砲撃が炸裂。
 近接攻撃をカウンターしようと考えていたなのははまさかの攻撃にクリーンヒット…と思いきや、

 「Protection.」

 レイジングハートがとっさに防御を展開し無傷。
 この辺は速度を犠牲に防御力を高めたレイジングハートのバリアジャケット構築能力を誉めるべきだろう。

 「凄い防御だね…やったと思ったのに。」

 「レイジングハートがプロテクション使ってくれなかったらやばかったの…レイジングハート!」
 「All right.Divine Shooter.」

 やられても只ではすまない。
 即座にフェイトの足元、直ぐ真下から誘導弾を展開。

 「く…」

 如何にフェイトが回避能力に優れると言ってもそれにだって限界はある。
 真下からの攻撃全てを回避できるはずは無いのだ。

 「サンダースマッシャー!」

 故に砲撃魔法で数を減らし残りを回避する。

 正に一進一退、実力は殆ど互角だ。


 「言葉だけじゃ伝わらない。でもやっぱり言葉にしなきゃ伝わらないものも有るよ!
  私達はジュエルシードが危険な力を秘めているから、其れを封印して集めてるの。
  放っておいたら世界が大変な事になるから。貴女は如何して此れを集めているの?」

 そんな中でなのはは問う。

 「私は……うぅんきっと言っても分からないよ…」

 其れに一瞬答えかけるフェイトだが、首を振って其れを否定する。
 言っても分からない……其れが何よりの答えだった。

 これになのはは言葉では無理と悟り、再び交戦を開始するが…




 ――ドクン




 突如魔力の流れが起きた。


 その発生源は先程封印した筈のジュエルシード。
 急いで封印を施したせいだろう、封印しきれていなかったのだ。


 それがなのはとフェイトの戦闘に呼応して再び発動しようとしている。
 こうなればもう戦闘どころではない。


 なのはもフェイトも、そして戦いを見守っていた夫々の騎士と使い魔もジュエルシードへと向かう。


 誰もが早いが、矢張り一番はなのはとフェイトだ。
 動いていた事もあり身体が温まっていた分、その力は発揮しやすい。

 略同時にジュエルシードに到着し、これまた同時にレイジングハートとバルディッシュがジュエルシードを捕える。


 発動しかけのジュエルシードの魔力と、其れを封印しようとするなのはとフェイトの魔力。
 3つの魔力は夫々が途轍もなく強い。


 だが、それだけの大きな力が一箇所に集中したらどうなるだろうか?
 力の中心点は考えられないほどのエネルギーが満ちている事になる。



 ――ピキッ…



 答えは簡単。
 其れの干渉を受けているものは只では済まない。


 「レイジングハート!?」
 「バルディッシュ!!」



 夫々のデバイスに亀裂が入り、次いで…



 ――カッ!




 眩い光と衝撃が結界内部に満ちていった…















  To Be Continued…