Side:ルナ
桃子と士郎との再会も果たして、その後海鳴で1週間ほど過ごして再びミッドチルダに戻って来た――そろそろこっちは春になる頃だな。
しかしなのは、私達が機動六課の解散式に出ると言うのは如何なのだろうか?
確かに最高評議会を叩き潰すのに手を貸したし、ゆりかごの撃墜もなしえたが――私達は正規の管理局員ではないし、悪く言えばテロリストだろ?
そんな私達が、此れからの管理局を担う者達の出発の場となる解散式に出て良いモノだろうか?
「其れは確かに私も思ったんだけど、はやてちゃんが如何しても出てほしいって言うし、冥沙達にも誘われたら断れないよ。
もっと言うなら、今回の事で私達の事も公になっちゃったし、今更素性を隠す必要はないしね。」
「成程な……そもそも、ゆりかごとの決戦に手を出した時点で、私達もまた六課と合同作戦を行った身内と言う訳か。
……だが、其れは其れで悪い気分ではないな……出て良いモノかとは思ったが、誘われたと言うのは本音を言うならば嬉しい事だからな。」
「ならば行くか。
幸いあいつなら、長たらしいあいさつで場を白けさせる事もないだろう?……解散式とやらを精々楽しませてもらうさ。」
サイファー……ふふ、確かにそうだな。
折角お呼ばれされたんだ、ならば式の雰囲気を楽しまねば損と言うモノだね――
『え〜〜〜……本日はようこそお集まりいただきました!
管理局とミッドの復興はまだ道半ばですが、其れでも着実に進んどる事は間違いない筈やと思います。
そんな状態やから、講堂も使えず青空集会になってもうたけど――なんにせよ、此れより『機動六課解散式』を執り行います〜〜〜。』
始まったか……自分で設立した部隊を解散すると言うはやて嬢は、一体どんな気持ちなのだろうな?
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福Final
『白夜と月の祝福』
尤もそれを考えても分かる筈はない……予想は出来ても、其れはあくまで予想に過ぎないからね。
だが、壇上のはやて嬢の顔を見る限り『六課でやりたかったことは全て出来た』と言う、満足した感じを受ける――満足した故の一時解散か……
あくまでも予想だが、恐らくはそれ程外れても居ないだろうと思うが、お前は如何思う将よ?
「色々あったが、結果的には当初の目的を果たす事は出来たのだ。反省点はあるだろうが、主はやては満足されていると思う。
だが、それ以上に六課の解散は目的を果たしたが故の事だ。
元々六課は最高評議会を解体し、管理局の体制を変えて行くための礎として設立された部隊で、その目的は今回の事件で達成されただろう?
体制を変えて行くのに六課の力はもう必要ない……いや、寧ろその存在は『枷』になるだろう――大きな力は新たな火種になりかねんからな。」
「確かにその通りだな……。
はやて嬢に守護騎士、ヴァイスリッターに美由希にその他六課フォワード陣……此れだけでも一部隊としては過剰戦力と言えるものだしね。
しかも其処にレジアス・ゲイズの配下と、バックスまで含めたら其れはもう一部隊で納まるモノではないか……」
「そう言う事だ。」
だからこそ一旦解散して戦力を分散し、新たな管理局の体制を作ろうと言う訳か――成程、理由は考えてみると単純なモノか。
まぁ、其れならば私達ははやて嬢やお前達が管理局をどう変えて行くのかを見させてもらうさ。
「あ?んだよ、お前等は局員にならねぇのか?」
「私もルナも管理局に入る気はないよヴィータちゃん。
私達が局入りしたら、管理局が持つ力は凄く大きなものになっちゃうし――何よりも法に縛られない自由な戦力は有って然るべきなんだよ?」
「あの脳味噌や馬鹿のような考えを持った、もっと狡猾な知能犯が現れないとも限らんだろう?
貴様等公僕では対処しきれん凶悪事件が起きない保証もない……そんな時には必要なのさ、私達のような『裏』の戦力と言うモノはな。」
「あぁ、成程!其れで冥沙達が管理局を退局するって言ってたんだ。」
は?ちょ、ちょっと待て美由希!なんでそうなる?
何故私達が管理局員にならないからと言って、冥沙達が管理局を退局するって言う話になるんだ!?
「だって冥沙達が管理局に入ったそもそもの理由って、なのはとルナを探し出す事だからねぇ?管理局に居た方が探しやすいって事で。
その一番の理由であり目的が達成された今、局員で居る理由はないのよ……まして、あの子達は『白夜の騎士』なんだから――でしょ?」
「えぇ、その理由が一番大きいですね。
なのはとルナが行方不明となったあの日より、私達は主を失った騎士として生きてきました……此れからは貴女達と共に居ても良いでしょう?」
断る理由は……ないな。
魔導書の騎士が、魔導書の主と共に居ないと言うのは格好がつかないのも事実だ――ならば8年ぶりに『白夜』はその真の姿を現すか。
「そうだね……私は白夜の主で、ルナは其の管制融合騎、そして冥沙と星奈と雷華とゆうりは騎士……皆一緒にだね♪」
「わーーーい!やっとこなのはとルナと一緒だぞ〜〜〜!!僕達ずっと待ってたんだから、一杯遊ぼうね〜〜〜〜♪」
……雷華よ、嬉しいのは良く分かったが少しばかり場を弁えた方が良いんじゃないか?
こう言う場所ではせめて小声で話すのが最低限のマナーなのだが……いや、お前に其れをやれと言うのは無理だと言う事は重々承知なんだが…
『戯け其処のアホの水色〜〜〜!
貴様は六課としては最後となる総司令の挨拶位は静かに聞いていられんのか〜〜〜!?』
『ちょ、王様〜〜!!気持ちは分かるけど、司会用のマイクぶんどって雷華ちゃんを個人的に注意せんといて〜〜〜〜!?』
『えぇい、やかましいわ小鴉!あの戯けは此れ位言ってやらんと分からんだろうが!!!』
「あはは〜〜!王様と小鴉ちんは仲良いな〜〜〜♪でもマイク入りっぱなしだよ〜〜〜?」
『『誰のせいだと思ってる!?』んねん!?』
ヤレヤレ……マッタク、如何あっても何事もなく平穏にとは終わらないか。だが、ある意味でこっちの方が私達らしいとも言える
――この際だ、冥沙、はやて嬢、この解散式には『隠し玉』があるんだろう?其れも此処で発表して良いんじゃないか?
雷華のおかげで、マニュアル通りの式を執り行うと言う雰囲気でもなくなった……なら、最強部隊に相応しい派手な催し物と行こうじゃないか!
『其れも悪ないなぁ?…ドナイする王様?』
『良いではないか、どうせ元の式に戻す事など不可能よ…ならば、今此処で六課の最後を飾る大バトルを展開しても問題あるまい!!』
『せやなぁ……そやったら、ヴォルケンリッターは全員私の元に集合!ヴァイスリッターはなのはちゃんの元に!
でもってそれ以外の六課フォワード陣はフェイトちゃんの元に集合や〜〜〜!!ほら、さっさと集まれ〜〜〜〜♪』
なんと、隠し玉は模擬戦か?
しかも構図的に、白夜vs夜天vs六課とは………やってくれるじゃないか――私達を呼んだのも此方を執り行う事が本命と言う訳か。
良いだろう、だが模擬戦とは言えやる以上は負ける心算は毛頭ない……勝たせてもらうぞ!!
模擬戦を行うメンバー以外が外野状態になり、解散式会場は一気にバトルフィールドに様変わり……全く準備の良い事だ。
白夜の指揮官はなのは、夜天の指揮官ははやて嬢、そして六課の指揮官はフェイト……此れは同期の魔導師の戦いでもある訳か。
「まさかこんなサプライズがあるとはね……だけどやる以上は勝たせてもらうよフェイトちゃん、はやてちゃん!!」
「ほっほう?…なのはちゃんとルナさんがガチンコ強いのは知っとるけど、そう簡単に勝てる思たら間違いやで?」
「ふふ、2人とも六課のフォワードを甘く見ちゃダメだよ?
確かに地力も経験も白夜と夜天には及ばないけど、其れを補って有り余る『若さ』と『勢い』が六課フォワードにはあるんだからね?」
3人ともやる気だな……まぁ、私も人の事は言えないけれどね。
「将、こうしてお前と戦うのは10年ぶりだな?」
「あぁ……あの時はまるで敵わなかったが、この10年で私もあの時より強くなった――前の様にはいかんぞ?」
「その様だ……だが、お前が強くなった事を認めつつ敢えて言おう――私に勝てると思ってか?」
「勝つさ……私1人なら兎も角として、アギトとユニゾンすればお前とも互角に戦う事は出来るのでな!!」
そうか……なら模擬戦設定以外の加減は必要ないな?
さぁ、始めようか?機動六課の最後を飾るに相応しい、激しくてダイナミックな最高の戦いと言うものをな!!!
――――――
No Side
こうして、八神はやてが設立した機動六課はその役目を終え、その活動に終わりを告げた。
その後、六課の面々やルナ達はどうなったのかと言うと……
・八神はやて
六課解散後、はやては多くの局員から『新管理局の局長に!!』と言う要望が上がったが、はやては此れをキッパリと断った。
自分では幾ら何でも若すぎると言う理由で、『同じ若い力ならクロノ君の方が適任や。』とクロノを新局長として推薦し、自分は裏方に徹する事に。
だが、六課時代に社会の『裏』を多く経験したはやては、年齢に似合わない『老獪さ』を身に付け、ミッドの裏事情に対処していく事になる。
管理局の表では対処しきれない事柄に裏から手を回し、公にはならないが多くの事件解決に係わっていく事に。
多忙ではあるが、秘書官のアインスとツヴァイの手助けもありそれなりに充実した日々を送っているようだ。
・フェイト・テスタロッサ
六課解散後も執務官として多種多様な事件に係わり、その活躍から自然と『黒き雷光』の二つ名で呼ばれるようになる。
エリオとキャロとの関係も良好で、血の繋がりを超えた『家族』として慌ただしい日々を送っている。
・機動六課フォワード陣
ナカジマ姉妹は、ティアナと共に独立機動部隊『N2R』を立ち上げ、主に災害現場に於いてその力を発揮している。
またこの間にティアナは執務官試験に合格し、念願の執務官と言う立場を確保。
そのティアナを指揮官として、N2Rは管理局内でもなくてはならない一個小隊としてその名を轟かせる事になる。
エリオとキャロは自然保護官となり、辺境の地で密猟等を取り締まる仕事に従事。
まだまだ若いが、その歳からは考えられないような活躍に『紅の雷槍』と『白龍駆る召喚士』と呼ばれ、若手のホープとして期待されている。
・高町美由希
治療とリハビリの甲斐あって、順調に回復はしたが、矢張り無理があったのか、足の機能は元の8割程度の回復にとどまっている。
其れでも剣を振るうに不便はなく、教導官として新人の教育にいそしんでいる。
正式に養子縁組したヴィヴィオとも良好な親子関係を築いているようだ。
・ナンバーズ保護組
チンク、セイン、オットー、ディード共に更生施設に入所し、更生プログラムを受ける事に。
プログラム終了後はチンクははやてに、オットーとディードは聖王教会が引き取る事が決定している。
セインだけは身元引受人が決まっていないが、本人の要望が通ればルナが引き取る事になっている。
だが、流石に管理局に属さない者が身元引受人になるのは些か問題があるので、最終的にはオットー、ディードと共に聖王教会入りするのだろう。
・レジアス・ゲイズ
事件後に一線を退き、陸の後継者に娘のオーリスを立て隠居生活を送る事に。
とは言え『陸の英雄』の名は健在であり、隠居して尚陸の彼是には彼の鶴の一声が効果抜群であるのは否めない。
そして、その気質は確りとオーリスにも受け継がれ、数年の後オーリス・ゲイズもまた『陸の英雄』と呼ばれる事となる。
そして――――――
――――――
――新暦80年・とある管理外世界
Side:ルナ
「目標を視認……特徴から件の密輸船だと思うが、其方での照合を頼む。」
『了解………艦船シリアル19831102――違法魔道具の密売船と一致しました。』
矢張りか……まぁ、特徴から大体そうではないかと思ったけれどね。
はやて嬢からの依頼で『違法密売組織』の密輸船を探していたが、見事にジェイルの予想が的中した――本当に見事なモノだ。
さて、アレは表沙汰には出来ない船だったよな?
はやて嬢からの依頼は『密輸船を止めてほしい』との事だったが――別に撃沈しても構わんのだろう?
『構いませんわお姉さま!寧ろ弩派手にやっちゃってください!盛大に『汚い花火』を!!
お姉様達の美しい戦闘姿を是非に……あぁ〜〜〜……想像しただけで辛抱堪りませんわ〜〜〜〜〜!!!!』
……うん、毎度の事だがクアットロはもう無視だな、コイツはもう戻ってこれない所まで行ってしまっている。
だがまぁ、違法な取引で私腹を肥やし、平和に暮らす人々に害を与える輩に掛けてやる情けは砂粒ほどもない……全力で叩き潰そうか?
「勿論その心算だよ?……管理局では対処できない裏に対処する為に、私達は居るんだからね♪」
「精々奴等に己の愚かさを教えてやれば良い……平穏に暮らす者達に害を与えるような事をしたら、一体どうなるのかと言う事をな!!」
「あ〜っはっは〜〜!あんな密輸船なんて、僕達の前にはおもちゃもどーぜん!一撃でまっぷたつだ〜〜〜〜!!」
「雷華……だけど、確かに沈めないとですね!」
「焼滅の力……その身で味わっていただくとしましょう。」
「ふん、所詮は小悪党に過ぎん……愚か者相手には相応のやり方があるからな?」
「さてと……行きましょうか?」
あぁ、行こうか――白夜の反逆者『ホワイトナイツリベリオン』のお仕事開始だな。
「うん!レイジングハート・エクセリオン!」
『Yes Master.』
「ルシフェリオンシュバリエ。」
『All right.』
「バルニフィカスブリッツ〜〜!」
『Yes sir.』
「ディアーチェクロイツ!」
「ライオンハート!」
「ピアッシングネイル……」
ふぅ……さて始めようか?ブライトハート・クァンタム!
『All right My Master……Standby ready.』
「「「「「「「セーーーーット……アーップ!!!」」」」」」」
〜Fin〜
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