Side:ルナ


敵の残存勢力は0で黒幕は死亡、ゆりかごも海上で瓦解し敵ガジェットも全て機能を停止した。
対して此方は怪我人は居るが死者はゼロで、市民の死者も居ない――流石に市街地の建物その他まで被害なしとは行かないがな。

だが其れでも、アレだけの戦力をそろえて来たテロリストを相手にして死者ゼロと言うのは喜ばしい事だ……流石に仲間には重傷の者も居るが。
と言うか美由希が特に酷いな――足に大ダメージを受けた上で限界突破の奥義を放ったとなれば当然かもしれないが――

「まさか車椅子とはな……」

「あんまりにもダメージが凄すぎて、治癒魔法でも治しきれないって事みたい…
 其れでもリハビリを入れて全治10カ月は短い方だって――あはは……予想通りシャマル先生に滅茶苦茶怒られたわ…まぁ、仕方ないわよね……」


仕方ない…だろうな。
寧ろ神経系統に異常がない事が奇跡的じゃないのか?……一歩間違えば神経の断裂だって有り得たろうに…

だが、シャマルだってお前が無茶をしたのはヴィヴィオを助け出すためだと分かっていた筈だ――怒られてもキツクはなかっただろう事は想像が付くよ。



一番の重傷である美由希がある意味でこのレベルで済んで居るのだから、他はどんなに酷い怪我でも全治半年以下だろうな。
最終的な結果だけを見れば、最高評議会+テロリストと私達の戦いは、私達の完全勝利と言うところだが、其れだけで全てが終わった訳でもない。


「取り敢えず、市街地の復興が最優先課題やなぁ?
 管理局も大ダメージ受けとるさかい、動ける人はそんなに多くないけど、それでも街が復興せんと何も出来へんからなぁ?」

「だよね……でも安心してはやてちゃん、私達リベリオンズも復興のお手伝いはするから。
 其れに私達だけじゃなく、ジェイルさん製のガジェットや、サーク達にも手伝って貰えば効率は良いし、何より人手不足も解消できるでしょ?」

「其れもそうやなぁ?……確かにサークにスカさんのガジェットが居れば、復興作業の人員不足は解消できるわ。」


だろう?
事件の事後処理等もあるだろうから、復興の方は私達が全面的に支援させて貰うさ――さてと、戦いは終わったがすべき事は山積みだ…頑張るか!











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福115
『新たな未来へ向かう世界』










「…実際に見てみると建物や道路の被害は凄まじいな……この光景だけを見たら死者ゼロ人と言うのは信じられないだろうね…」

「殆どゴーストタウン状態だな……文字通り『手当たり次第』破壊したんだろう……腐りきった外道が下しそうな胸糞の悪い命令だ、マッタク……!!」

「きっと平和に暮らす人たちの事なんて如何でも良かったんだよね、最高評議会もキスティも…
 どうせ自分達が支配する世界――自分達が支配する世界なのだから、市民なんかは所詮自分達の道具に過ぎない…そう、思っていたんだね…」


間違いなくそうだろうな……そうでなければ、人の多い場所に無差別攻撃など出来んさ。
無論私達だって極論を言えば、やって来た事はテロリストと大差ないが、其れでも平和に暮らす無関係な者達に危害を加えた事はない。

己の果てなき欲を満たすために、他者の命を道具にするなど以ての外――まして戦う力を持たない者を攻撃するなど論外だ。
それにそもそも管理局はそう言った者達を護るべき立場にあると言うのに、其れに属する最高評議会がアレでは性質の悪い冗談にもならないさ。

まぁ、その最悪の『膿』は駆除できたんだ、此れからははやて嬢達が中心となって管理局も本来のあるべき姿になって行くはずだ。


「是非ともそうなってほしいモノだな。
 ……時になのは、ルナ、壊れた建物の中に明らかにガジェットの攻撃で壊れたのじゃないのがあるんだが、此れは一体如何言う事だ?」

「え〜と……其れはアレだよ、多分ガジェットとの戦いの流れ弾とか余波とかそう言う物で破損した『不可抗力』の……」

「此れは明らかに流れ弾の範囲を超えているよな?ビルの2階から上が見事なまでに吹っ飛んでいるぞ……


……明らかに見境なくガジェットを攻撃していた奴が居るみたいだな――大体誰かは想像が付くんだが……少し自重しろ若本ボイス…
まぁ、アレだサイファー『気にしたら負け』と言う事で納得しよう、其れが一番だ。

「と言うかこの際、ミッド市街の建物や道路その他の物理的破損&壊滅は全部最高評議会のせいにしてしまうのが上策だろう?」

「いや、其れはある意味で妥当かもしれんが、其れで良いのか!?」

「『勝てば官軍』『死人に口なし』と言う言葉もある、市街地での戦いの真相は実際に其処に居た人間しか分からないだろう?
 其れに、周りを気に掛けずに攻撃した奴が居たとしても、そもそもアイツ等が市街地を攻撃等しなければそんな事も起きなかった……違うか?」

「確かに、言われてみればそうだな……普通に考えればトンでもない選択肢だが、相手が情けを掛けるに値しない外道ならば妥当か…」


結果論ではあるがな。

まぁ、極論を言うならすべては結果論だろう?
8年前のあの日に最高評議会が馬鹿な事をしなければ、私達はジェイル達と会う事もなかったし、そうなれば…サイファー、お前と会う事もなかった。

そしてお前が居た研究所を襲撃しなければ、私となのはがエクリプスドライバーとなる事もなかった…。
『あの時ああしていれば』と言う事が一切なかったとは言わないが、過去は取り戻せないんだ…ならば結果として残った世界を生きるだけだろう?

「其れにだ……最高評議会は曲がりなりにも管理局の一派閥だろう?
 其れがこんな事をしたとなれば市民が管理局に不信感を持つのは火を見るよりも明らかだ……全ての罪を被る存在と言うのは必要になるのさ。」

「そう言うのはあんまり好きじゃないけど、確かに不信感を持たれたんじゃ、幾らはやてちゃん達が頑張って管理局を作り変えても意味は薄いからね。」


そう言う事だ。
この場合、その人柱に最も適しているのはキスティだろうな……重犯罪者だが、既に死して遺体もない…全てを被って貰うには好都合だろう?


「前々から思っていた事だが……お前は本当に敵には容赦がないなルナ…」

「ある筈がないだろう?
 其れともサイファーは、自分を殺しに来た奴に茶を出して持て成してやる程の、度を越したお人好しか?」

「まさか……敵対者には容赦するな――其れを教えてくれたのはお前となのはだろう?」

「なはは……確かにそうだねぇ…
 8年前のあの時に、敵対する者に情けを掛けるべからずって言う事を文字通り身をもって知ったからね…其れを他の人にも分かって欲しかったんだ。」


要するに、酌量の余地のない極悪人には容赦は不要と言う事だ――特に信念なき悪逆非道にはな。

恐らくは、はやて嬢も其方の方向で検討して居る筈だと思う……まぁ、彼女なら巧くやるだろうから心配は無用だろう。


政治的な彼是は彼女達に任せて、私達は街の被害状況を把握する事に務めようじゃないか?
此れだけの被害が出たとなると、一度解体してから再建しなければならない建物もあるだろうから――――



――ゴゴゴゴゴ……ズゥゥン!!




「「「!!!??」」」


此れは……ビルの破片か!?
辛うじて倒壊は免れたが、ギリギリのバランスで保ってたモノが、此処に来て限界を迎えたのか!?……危険極まりないな。

多分、この手の状態にあるビルやら何やらは少なくない筈だ……落下物で死傷者が出る前に、危険なモノは此方で壊した方が良いかもしれないね…


「だね……復興作業中にこんな物が落ちてきたら危険どころの騒ぎじゃないから。」

「やばそうなのは、見つけ次第此方で砕いた方が良いだろうな…」


矢張りそうだよなぁ……ふぅ、如何やら復興作業も一筋縄では行かないようだな。








――――――








Side:はやて


ふぅ……上がってきた報告書を見ても、トンでもない被害やな此れは……復興には管理局の予算全部を注ぎ込んでも足りるかどうかや。
此れはいっそのこと、最高評議会の連中の資産を接収して復興財源に当てる事も検討せなアカンやろね。

「其れは其れとして……レジアス中将、今回の事はミッドの市民にどう説明したモンやと思います?
 ありのままの真実を公開したら管理局への不信感が募って、なんぼ局を新たに作り変えても意味なくなってまいますよねぇ?」

「うむ……其れなのだが八神総司令、いっその事『最高評議会の新リーダー』を名乗っていた彼女に全てを被って貰うのが良いのではないか?
 高町リインフォース・ルナの報告によれば、彼女は跡形もなく消滅したとの事――市民の怒りの矛先になって貰うには最高だと思うが……」


やっぱそれしか方法はないんやろうなぁ……なんや『人柱』立てるみたいであんまし好きな方法やないけど、綺麗事だけじゃ何も出来へんからね。

ほなそっちはそうするとして……なのはちゃん達は如何したモンかなぁ?
確かになのはちゃん達が潰したんは違法研究の施設やったし、殺した連中も戸籍上は『存在しない』人達やけど――


「お咎め無しで構わぬだろう?
 そもそも、研究所破壊を行っていた『星光の殲滅者』と『高町なのは』は似ても似つかん外見故に幾らでも誤魔化しは効くであろう?
 其れに殺人と言うならば、我等とて評議会からのヒットマンを返り討ちにしているから目糞鼻糞だ……なのは達もまたやらねばやられたのだからな。」

「王様……せやなぁ……私達かて血で汚れとるからなぁ……なのはちゃん達だけに人殺しの罪を問うのはお門違いやね…
 まぁ、リベリオンズの皆さんには復興を全面的に手伝う言う処分で手打ちにして貰うのがベターやな。」

それに、私等には想像も出来ん苛烈な8年間を過ごしたなのはちゃんとルナさんに司法の下した罪を背負わせるんはあんまりやからね。



それでやレジアス中将……フレディ・ルガールさんが破壊したモノに付いては、本人に再建の為の金額請求してえぇですよね!?
アンだけ街を壊すな言うたのに、ガジェットと一緒に相当数の建物を半壊以上の状態にしてるんやから……


「うむ…構わんよ……奴には少しばかり灸を据えようかと思っていたからな……被害ゼロで終わらす事が出来ないのかアイツは…


中将閣下、若本ボイスな人に常識やら良識は求めたらアカンと思います!!
てか、ホンマにルガールさんは何しとんねん……何処の世界に街中で『太陽系破壊かめはめ波』かます奴がおんねん!!
ぶっちゃけ、建物の被害だけに限定したら、3割はルガールさんが破壊したもんやからね!?……はぁ、この人の事も考えなアカンね。


『失礼しますはやて、ルナの方から『倒壊の危険のある建物は此方で瓦礫に変えても構わないか?』との連絡が有ったのですが如何致します?
 彼女が言うには『崩れていないだけの建物もある』との事で、復興作業を行う場合に危険が伴うモノらしいのですが…』



アインス……そうやなぁ、確かに倒れてないだけの物は危険なんは確かや。
復興作業の為の重機を入れたら、其れの起動振動で崩れかねんし、そうなれば復興に当たる人にも危険があるからなぁ?

うん、その案は許可や。
せやけど、ルナさん達が怪我せんように注意してって伝えてや……まぁ、多少の傷やったら全く問題ないやろうけどね。


『了解しました…その様に伝えておきますね。』

「そうしてや――アインスもご苦労さんやな。」

まぁ、この状況でご苦労やない人はおらんけどね。

しっかしこの書類の山は如何したモンやろか……私の分とレジアス中将の分合わせたら1000個は下らんやろ報告書の数が……
……しゃーないなぁ、此れも部隊を纏めるモンの宿命や……お互いに頑張りますかレジアス中将?


「うむ……だが、此れからも書類の数は増えるだろうから、最低でも3連徹は覚悟しておくべきだろう……上に立つ人間は辛いな。」

「ホンマですねぇ…」

此れも自分で選んだ道やから文句は言わんけどね。
って、王様何処に行くんや?


「貴様等の為に売店からありったけのリポ○タンDとユ○ケルを持って来てやるから、其れでも飲んで頑張るが良い。」


……王様の心遣いが染み渡るでこれ〜〜〜!!うん、其処までして貰うんやから頑張るで私はぁ!!
其れにミッドが復興せな何も始まらんからな……最年少総司令の意地見せたるわこら〜〜〜〜〜〜!!!!!


「…うむ、矢張り此れからは若い力が管理局を引っ張って行かねばな……」


無論その心算や……バッチリ見とってな中将閣下♪








――――――








Side:なのは


それから半月が経って、予想以上に復興作業はスムーズに進んでた。
私達が倒壊の危険性のある物を事前に瓦礫に変えたのも大きいかもしれないけど、兎に角ミッドの復興は類を見ない程にハイペースだった。

きっと、復興作業に当たってる工事業者さんも『何が何でもミッドを復興しなければならない』って言う思いがあるから効率も上がるんだね。


既に壊れた街の6割が略復興して、日常生活が出来るレベルになってるんだもん――此れは流石に驚きだよ。
この分ならあと1ヶ月……長くても2ケ月もあれば市街地の完全復興は出来るかもしれないの。……人の持つ力って凄いって思うな。


「確かにな……壊すのも人なら、其れを直し、そして物を創造するのもまた人か……正しく心の持ちようで如何とでもなるんだな人は…」

「だからこそ人には無限の可能性があるのさ……目の前の此れはその一端に過ぎんよ。」


だよね♪





時にジェイルさん、私とルナはもう地球に戻ったりしても大丈夫……ですよね?


「あぁ、問題ないよ?
 君達の命を狙っていた連中が居なくなった今、地球に居るご両親なんかを監視しているモノも居なくなっただろうからね。」

「其れを聞いて安心しました……全てが終わったら一度地球に戻る心算で居ましたから。」

アレから8年だからね……お姉ちゃんにも言われたけど、一度地球に戻って私とルナは生きてるって事をお母さん達に伝えておかなきゃダメだもんね。
其れに、今までは我慢して来たけど最高評議会を潰した今、私の中に有った『お母さん達に会いたい』気持ちが大きくなって止められそうにないの。


「ふむ……ならば早い方が良いのではないかな?
 八神はやてに申請すれば次元移動の許可も取れるだろう……まぁ、君達が地球に行く際には私達も同行させてもらうけれどね?」

「へ?ジェイルさんも来るんですか!?」

「君達が8年間の間に何をしていたか説明する者が必要だろうし、何よりも君達の仲間としてご両親に挨拶はしておきたいからねぇ?」

「私も行きますわなのはお姉さま〜〜〜♪なのはお姉さまのご両親にご挨拶はしておかねばなりませんもの〜〜。」

「……それ以外の事を絶対考えてるわよねアンタは……あ、私も行くからね?」

「私も行きますよ……」

「そうなると当然私もだな?……なのはの両親がどんな人か、実に楽しみだな……」


なはは…要するにリベリオンズ全員でだね――まぁお母さんもお父さんも何事にも動じないから、多分皆で一緒に行っても大丈夫だと思うよ?



でも、其れでも今の私とルナの状態を知ったらお母さん達は如何思うんだろう?
其れを考えると、会うのは少し怖いんだけど――だけど何時までもこのままで居る訳には行かないからね。


「大丈夫だなのは、桃子も士郎も今の私達の事もきっと受け入れてくれるさ。
 エクリプスドライバーになったとは言え、私は私でなのははなのはだ……お前が聖王に覚醒した時だって誰も何も言わなかっただろう?
 無論『人殺し』の事も言わねばならぬだろうが、其れでもそれら全てをひっくるめて受け入れてくれるさ……きっとな。」

「ルナ……」

そう、だよね……お父さん辺りは私が何を言わなくても『人を殺した』って言う事には気付くかもしれないけどね。





だけど、やっと――8年ぶりに会う事が出来るんだねお母さんとお父さんに。

不安、嬉しさ、期待、恐れ………思うところは色々有るけど――だけど、きっと其れ等を全てひっくるめて私の『会いたい』って言う思いなだと思うの。




取り敢えず、会ったら先ずは心配かけ続けた事を謝らないとだね…













 To Be Continued…