Side:ルナ


散々ッぱら人を利用した挙げ句に、エクリプスに喰われて異形の怪物になり果てるとは笑い話を通り越して滑稽だ――そして哀れだよキスティ。
もしも10年前、私に敗れ去った時に心を入れ替えていれば、最高評議会の誘いに乗らなければこんな事にはならなかっただろうに……


「ふん……形振りなど最早如何でもいいのよ……私には分かるわ!この力はこの世の全ての物を凌駕する神の如き力だと言う事が!!
 この力で、私に刃向うモノを……無能な馬鹿共を、役立たずの魔導師をあらゆる次元世界から一掃し、私は全ての世界の神となる!!
 その為の生贄として、先ずはお前を磨り潰してやるわリインフォース・ルナ!!!」

「ふぅ……最早人として最低限の理性すら持ち合わせては居ないか……情けなくなって来るよ。
 理性を失い、仄暗い欲望がエクリプスの暴走と同調した結果が其れか――マッタク、人の『欲望』と言う名の業は何処までも深いようだな。」

尤もお前ほどの醜悪な欲を持った者は早々居ないとは思うが。


だが、逆に安心したよキスティ……お前が真に人を辞めたと言うのなら、お前を滅する事を躊躇わないで済む。
同時に、お前が道具として斬り捨てて来た者達の無念と怒りをお前に叩き込んでやる事も出来る――精々覚悟すると良い、此処が貴様の死に場所だ!


「その言葉、そっくりそのまま返してやるわ!
 ひれ伏せ、下賤な魔導師が……神たる私に盾突く愚かさを、骨の髄まで分からせてあげる……その上で嬲り殺しにしてやるわ!!!」


無理だな……お前に私を倒す事なんて出来んよ……天地がひっくり返ったって無理な事だ。
エクリプスの特性の真実と、人の持つ心の力を理解していないお前では絶対にな!!ブライト、一気に行くぞ!!


『All right Master.“Tran−S・A・M”Drive ignition.(お任せ下さいマスター。トランザムを起動します。)』


――ギュイィィィィィン…!!




此れが正真正銘、私の最強モードだ!
さぁ、準備は良いかキスティ……もうお前が私に攻撃を当てる事はない――此処からはずっと私の絶対支配空間(ターン)だ!!!











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福114
『完全決着、ルナ無双伝説!』










「Tran−S・A・M!?……何よ其れは……10年前にはそんなモノはなかった筈よ!!」

「其れはそうだろう?ブライトハートを手に入れたのはお前を叩きのめした後の事なんだからな。
 そもそも10年もあれば、新たな技やデバイスを手に入れていると考える方が普通じゃないか?10年前と変わらないのは私の容姿くらいの物だろう。」

星奈達はすっかり大人になったようだがな――マテリアル達に成長機能が有ったとは驚きだがね。


まぁ、其れは良い……時にキスティ、お前何か違和感を感じないか?主に左腕に。


「左腕?………!!
 な、無い!!私の左腕がない!!!な、何故?さっきまでは有った筈なのに!!……お前、一体何をした!!!」

「おやおや……余りにも速過ぎて切り落とされた事にすら気付かなかったのか?
 話してる最中に、月影の高速居合いでお前の左腕を斬り落とさせて貰っただけだ――如何やらその様子では見る事も叶わなかったようだな?」

元より、祝福の月光+Tran−S・A・Mの私の居合いは光速を超えているから目視すること自体が不可能ではあるんだがね。
だが、其れでも真に一流の相手ならば僅かな動きの変化と、抜刀時の風切音で気付く事が出来た筈だ――お前の様な三流未満には無理な事だがな。


「そんな事が!!
 だが、この程度の事で私がくたばると……思うなぁ!!!!」


思っていないさ……紛い物とは言え、お前もエクリプスドライバーなんだ、腕を斬り落とされてもそんなモノは直ぐに再生してしまうだろう?
尤も、その再生能力を心底『無敵』だと勘違いしているようだが……

「セイン、下がっていろ……此処からは私の攻撃の余波でお前にも被害が及びかねない状況だ。」

「攻撃の余波で被害が出るってマジで!?アンタ本気で何者なんだよ…
 てか今のアンタはさっきよりも強くなってる訳で、其れを考えると確かに攻撃の余波でも――ディープダイバー使って大人しくしとります。」


うん、聞き分けの良い子は好きだぞ♪
お前の事は管理局で保護して貰う必要があるから、無事に此処から連れ出さねばならないのでね。


………よし、潜ったか――此れで心置きなくやれるな。

「其れにしても意外だな、お前の事だからてっきりセインを狙ってくるものだと思っていたんだけれどな?」

「あんな小娘は何時でも捻り潰せるわ……其れよりも先ずは、お前を血祭りに上げろって私の本能が騒いでいるのよォォォ!!!!」


――ドン!


成程……私への私怨を力へと変えたか。
確かにその攻撃は中々のレベルかも知れないが――無駄だ!!!


「な!今のエネルギー弾を弾き飛ばしたですって!?」

「幾ら強い攻撃でも、お前の技には今も昔も中身がない――只強いだけなんだ。
 何の意思も込められていない破壊力だけの攻撃など、私にとっては対処するのは朝飯前だ……故にお前の攻撃は私に届かん!」

其れに言ったはずだ『此処からはずっと私のターン』だとな!

冥土の土産に良い事を教えてやろう。
私はなキスティ……自分の技に加えて、妹達――星奈達の技も何個かを完璧に使いこなす事が出来る。この意味が分かるか?


「!!……まさかお前は……!!」

「切れる札は、この世界のどんな魔導師よりも多いと言う事さ。
 序に、只使えるだけじゃなく、其れを己の中で昇華し、自分専用にアレンジした上で使っているんだ――器用貧乏にはなり得ないのさ!!」


――バキィ!!!


「がふぉ!!ま、また見えなかった!!!
 音速ですら見切る事が出来ると言うのに……お前はそれ以上の速さで動いていると言うの?……そんな、そんな事有り得ないわ!!」


だが、現実に私はお前の知覚能力を超えて動いている……現実を認められないとは所詮は紛い物の低脳か。
少しは頭が良くなるように、電気治療でもしてみるか?

「撃ち貫け蒼雷!雷刃封殺爆滅剣!!!


――バリィィィ!!!


其れともツボ刺激の方が効果があるだろうか?
とは言っても、治療用の中国針なんて上等なモノはないから此れで代用するしかなさそうだ……まぁ、その辺は容赦してくれ。

「穿て紫天の槍!エンシェント……マトリクス!!!

「ぐ……そんなモノ!!打ち崩してやるわ!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


――ドォォォン!!


悪いが、紫天の盟主様の最強の攻撃がお前の砲撃如きで相殺されると思っているのか?
紫天の槍は、お前の砲撃などは簡単に貫いて目標に突き刺さる!!穿ち抜け!!


――ザクゥゥ!!


「ぐおわぁぁ……この程度ぉぉォォォ!!!」

「おっと、もう再生はさせないぞ?不浄を焼き尽くせ……ディザスターヒート!!



――ドン!ドン!ゴォォォォォォォ!!!



「ぐ…連射式の炎熱砲――でもこの程度の炎で焼き殺せると思うな!!直ぐに再生して――――え?
 ば、馬鹿な!!如何して再生しない!?さっき貫かれた場所が…如何して再生しないんだ!?エクリプスの再生能力は無敵の筈だ!!」


さて、何故だろうな?
その最終的な答えを此れで教えてやる!!

「地獄より来たれ災いの塔 滅びの剣となりて撃ち滅ぼせ!腐食の剣、フェイルケイン!!!

「ぐ……こんな物全て叩き落として!!」


あぁ、言い忘れてたが其れは触れるだけでやばい代物だぞ?って、もう遅いか。


――ジュゥゥ……


「ななな、こ、此れは!!!!」

「言っただろう『腐食の剣』と。
 その魔力剣は触れた物を腐敗させる力を持っている、其れも物凄い勢いでな――そして腐敗した場所は当然、腐り落ちる事になる。」

「こんな物が……クソ!クソォ!!何故?如何して再生しないの!?
 そもそも何故奴の魔導が私に効く?エクリプスドライバーは魔導殺しではなかったの!?其れなのに何故!?」


お前が自分で言ってただろう『エクリプスドライバー同士ならダメージを与えられる』と。
其れは何も肉弾戦に限った事ではない。エクリプスドライバー同士ならば普通に魔法でもダメージを与える事は可能になるんだ。

其れと、お前の傷やら何やらが再生しない理由だがな――幾らエクリプスとは言え死滅した細胞では再生出来る筈がないだろう。


「死滅した細胞……?」

「エンシェントマトリクスで撃ち抜いた場所が再生しないのは、其処の組織をディザスターヒートで焼き潰したからだ。
 普通の人間ならば、皮膚移植をしなければ死に至るほどの火傷を負ったと思えばいい――此処まで言えば幾ら何でも分かるんじゃないのか?」

「!!!」


皮膚移植が必要なのは、其処が焼け爛れて再生能力を失ってしまったから行うんだ。
そしてエクリプスの再生能力も、基本的には細胞の異常活性化による自然治癒力の異常強化に他ならない……おまけに分裂限界は無いときた。
だが、其れならば再生能力を失った細胞では再生出来ないのは道理だろ?
フェイルケインの効果を受けた場所に付いては……最早説明は不要だな。


「そんな馬鹿な……ふざけるな……これしきの……事でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


――ギュルルルルルルルルルルルルルル!!!


なんとまぁ、再生不能な部分を自ら削ぎ落としてそこから触手を再構築するとは――遂に全てに於いて人間を辞めたか。
私1人を倒すために其れをしたと言うのならば、その執念にはある意味で尊敬の念を抱かないでもないが……其れもまた無駄な事だ。

「高々触手を再構築した程度で私を抑えられると思っているのか?
 もしそうだとしたら、お前は10年前以上に全てに於いて劣化しているな……生憎と、纏めて倒すのは私の十八番でな!!」

『Pray for help savior.(精々神に祈りなさい。)』

「瞬刃閃斬……精々最後位は派手に華と散れ…!!一瞬千撃……絶刀!!

『You shall die.(貴女に死を送りましょう。)』


――キン………バババババババババババババババ!!!


「そんな……高々居合い切り一発でこんな……こんな事がぁぁぁ!!」


絶刀は居合いで空間そのものを斬る所謂『次元斬撃』だ……お前の触手を全て斬り捨てる事など造作もない事さ。

さて、そろそろ終わりにしよう……お前も無に帰る時だ!!


『Restrict Lock.』


――バキィィン!!


「な、バインド!?」


なのは直伝のバインドだ、お前如きに外す事は絶対に出来ん……フェイトですら此れを外す事は出来なかったんだからな。
さぁ……終焉の幕を下ろそう!!

「咎人達に滅びの光を…」


――キィィィン…


「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ!」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「貫け閃光!!」

『Starlight Breaker.』

「全力全壊……全てを吹き飛ばせ!スターライトォォォォ……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


――ギュイィィィィン……ドゴバガァァァァァァァッァァァァァァァァァァァァァ!!――ドドドドドォォォォォォォォォン!!!!!!!


「あぐ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


――バガァァァァァァァン!!!!…シュゥゥゥ……



吹き飛んだか……10年前の拭き残しも、此れで綺麗さっぱりと言う訳か。


「スッゲェ………跡形もなく吹き飛んじまったじゃん……」

「我が主の最強の集束砲を非殺傷を解除して放てばこうもなるさ……奴は完全に消し去る必要があったからね…」

なんにせよ、此処はこれでお終いだ。
なのはの方はどうなったかな?

《なのは、聞こえるか?》

《ルナ!!うん、聞こえるよ♪》

《こちらは片付いたが……そっちは如何だ……その『彼』は……》

《うん……はやてちゃんと一緒に還す事が出来たよ……》


はやて嬢と一緒に……そうか……還してやれたのならば良かったな。
リオン・アークヒール……どうか今度こそ、安らかな永久の眠りを………

《そうか……今何処に居る?》

《今は玉座…聖王の間――お姉ちゃんもヴィヴィオちゃんを何とか抑える事が出来たみたいだから。》

《聖王の間か……分かった、直ぐに其方に向かう。》

《了解、待ってるね。》


と言う訳だセイン、お前のディープダイバーで聖王の間まで連れて行ってくれないか?


「そんくらいはお安い御用だけどさ……今度こそ水要らない?
 アンタが戦ってる間に、ゆりかご内に有ったありったけのミネラルウォーター持って来たからさ、今度こそ返り血洗い流していこうよ〜〜!」

「……うん、貰うとする……流石になのはと会うのに血塗れと言うのは気が引けるからな。」








――――――








Side:なのは


――ヴォン……


「なのは!!」

「ルナ!!……アレ、そちらの方は?」

「セインだ……ゆりかごに配備されていた戦闘機人だが、彼女のおかげで楽に最深部まで辿り着く事が出来た…セインは味方だ。」


そうなんだ?
ふふ、宜しくねセインちゃん♪


「うい〜〜っす!……アンタがルナの……極悪な集束砲ぶっ放す人にゃ見えねぇ……」


極悪な集束砲って…ルナ、一体私の事をどう説明したの?


「いや…ありのままに事実を……」

「へ〜〜…其れは如何言う事かな?」

「うん……話を聞いてもらうためならば、相手の四肢を拘束した上で手加減無用の集束砲を放つ事も厭わないちょっぴり悪魔のような魔導師と!!」


悪魔じゃないの〜〜〜!!何でそう誤解を招くような事言うかなぁ!?


「だが、事実だろう?否定できるか?出来るモノならしてみろ!!フェイトもヴィータも諸手を上げて私の言い分に賛成するぞ!!」


否定……で、出来ません!!
うぅ……いいもん、全力全壊が私の生きる道だもん!!


「まぁ、悪ふざけは此処までにしてだ……なのは、此れから如何する心算だ?」

「強引に話題を変えたね………うん、どうもこうもゆりかごを止めるよ。
 お姉ちゃんがヴィヴィオちゃんを元に戻してくれたおかげで、ゆりかごの制御権はヴィヴィオちゃんから聖王状態の私に移ったからね。」

聖王の権限を使って、ゆりかごの自己崩壊プログラムを起動させる。
で、突入した場所まで戻ってから聖王化を解けば、ゆりかごは聖王を失ったと認識して自己崩壊を始めるって算段だよ。


「すでにシャマルにはこの事を伝えてあるから、自己崩壊が始まると同時にゆりかごはミッド市街から数10キロ離れた海上に飛ばされる。
 其処なら、ゆりかごがバラバラに分解されても、残骸は海の藻屑になるだけで何処にも被害が出る事はあらへんよ。」

「成程、考えたな……となると、セインもう一度頼めるか?」

「あいよ!動力炉までの最短距離をディープダイバーででしょ?此処まで来たら最後まで付き合わせてもらうって♪」


ありがとうセインちゃん。
既にプログラムは起動してるから、後は脱出するだけ……行こう!!



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・・・



「ヴィータちゃん、クイントさん!!」

「ケリを付けて来た……脱出するぞ!!」

「はやて、なのは、ルナ!!ったくおっせーんだよ!動力炉破壊し終わっちまったぜ?」

「まぁまぁ……動力炉だって今し方破壊したに過ぎないでしょう?」

「ぐ…そう言う事は黙っとけよ〜〜〜〜〜〜!!」


なはは…ヴィータちゃんは相変わらずだね。

そんな事よりも、ゆりかごの自己崩壊プログラムを作動したの。
私が聖王化を解けば、その瞬間にゆりかごは瓦解し始めるから今直ぐ脱出を!!


「そうですね……では!!」

「もう此処に用はねぇし…ずらかるか!!」


うん、皆外に出たね……じゃあ聖王化を解いてと…


『Heiliger Kaiser...keine Reaktion. Funktionsverlust des Systems.(聖王陛下…反応ロスト。システムダウン。)』


じゃあね…ゆりかご。
只の兵器に過ぎない貴方に罪はないけど、今も昔もこんな大量破壊兵器は必要ないんだ……だからもう、お休みだよ……


『Wir wurden beschadigt. Niemand hat die Kontrollposition.(駆動路破損。管制者不在。)
 …Fur die Regeneration des Kronschiffs.(…全ての魔力リンクをキャンセルします。)』


ばいばい……



――キュイィィィン…シュゥゥゥン


私とルナが外に出ると同時に、ゆりかごは遥か遠くの海上に転移された。
きっと、海上に出た瞬間にばらばらと瓦解していくはず………これで、全部終わったんだね……


「多分……一応はな……」


一応でも、今は其れで充分だよルナ……8年前のあの日から始まった戦いが、漸く一区切りついたんだからね。
確かに未だ色々問題は残ってるけど、今は取り敢えずでも戦いが終わった事を喜びたい――心からそう思うんだけど…ダメかな?


「まさか……ダメな訳ないだろう?今は暫し訪れるであろう平穏を楽しむ事を考えたいよ……私もな♪」

「だよね♪」

色々キツイ事も有ったけど、結果はこの通り……私達の完全勝利だよ♪








――――――








No Side


ゆりかごが瓦解する少し前……

「おのれ……おのれぇぇ!!
 一度と言わず、二度までもこの私に屈辱を……許さない…絶対に許さないわよ、リインフォース・ルナァァァァァァァァァ!!!」

驚くべき事に、ルナのスターライトブレイカーを喰らって尚、キスティはまだ生きていた。
悪運に恵まれたのか、辛うじて残った頭部から身体を少しずつ再生し、胸部と右腕まで再生が完了している状態。

そしてその目に映っているのは仄暗い恨みの炎のみ……逆恨みも此処まで来ると国宝級と言っても過言ではあるまい。


「おやおや……此れはまたこっぴどくやられたモノだねぇキスティ女史……まぁ、出来損ないのドライバーとしては優秀な働きだったかな?」

「お前は!!!」

其処に現れたのはスーツを纏った謎の男……最高評議会に加担し、何度かキスティと会っていた男だ。

「君のおかげで良いデータが取れた事には感謝するよ……ディバイダーの改良点も見つかったしね。
 まぁ、此れだけの事が有った後だ、直ぐに行動しては足が付くだろうから数年は大人しくしている必要はあるだろうけど……此れで計画は進んだね。」

「お前何を……と言うか出来損ないだと!?
 お前……まさか私を、このキスティ・テルミット・アルマシーをモルモットにしていたと言うのか!?……貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そして男の物言いから、キスティは此処で初めて全てはこの男の掌で踊らされていたと言う事を知った。

当然人一倍プライドだけは高いキスティにとって、此れは許せるものではない。
不格好ながら強制的に身体を再構築し、男に向かうが――

「こんな物言いは好きじゃないんだがね……この私を前にして頭が高いよ君は…」


――ドォォォォン!!!


何処から取り出したのか、男が大口径のガバメントと思しき武器の引き金を引いた瞬間、キスティの身体は霧散し――そして消えた。

「下賤な負け犬に過ぎない君が私の計画の役に立てたのだから、誇りに思って逝くと良い……実験動物の誇りとしてね。
 ……ふふふ、仕掛けるとしたら6年後か……その時、君達はどんな活躍を見せてくれるのかな?
 楽しみにしているよ、聖王陛下、隻眼の剣士……そして、最強の存在である月の祝福よ……ふっふっふっふ…ハッハッハッハッハ!!!」

闇に溶け込むように男は姿を消し――直後ゆりかごは完全に瓦解し、海の藻屑となったのだった…











 To Be Continued…