Side:ルナ
さて、始めようかキスティ?
一つだけ言っておくが、お前には敗北と死以外の未来は有り得ない――だからせめて選ばせてやろうじゃないか。
「斬り殺されるのと撃ち殺されるのと殴り殺されるのだったらドレが良い?お前の望み通りに止めを刺してやる。」
最も最終的には、その身を塵も残さずにこの世から消し去る心算だが、精々死に様くらいは選ばせてやる……此れが生涯最後の選択になるんだからな。
だからじっくりと決めると良い……お前の望む終焉をくれてやる。
「舐められたものね……悪いけど何れの選択肢も拒否するわ――そもそも受ける必要が無いモノ。
私の死に様を飾る?……面白い冗談だわリインフォース・ルナ……今の私は10年前とは違う……あの時とは比べ物にならない力を手に入れたのよ!!
この力を持ってすれば、他の誰にだって負けはしない……10年前の拭き残しとか言っていたけれど、10年前の復讐は我にありだわ!!
クックック……細胞レベルで焼き尽くしてやるわ!!覚悟しなさい…リインフォース・ルナ!!!」
予想通りエクリプスドライバーか……此れは相当に脳まで浸食されている――本来の自我は消えかけているだろうな。
まぁいい……お前が10年前と比べてどれほど強くなったかなどは一切興味がないし聞く気もない。
だが、この私の前に立つと言う事は=戦いにおける命の覚悟が出来ていると言う証だ……私の命を奪うだけでなくお前の命を差し出す覚悟はあると取るぞ?
「好きに解釈しなさい……私はこの力で世界の全てをこの手に収めるのよ!!!」
「うっわ〜〜〜…あの婆完全にイカレテるじゃん……アイツの手下にならなくて良かったよ……つーかマジ勘弁。」
「最早救いがたい……奴には永遠の眠りに就いてもらうより他ないだろうな――まぁ、送り返してやるさ……月の祝福の名に誓って必ずな!!!」
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福113
『Dead End Symphony』
「私を冥界に送り返す?……此れはまた面白い冗談だわ……本気で出来ると思ってるの?
このエクリプスドライバーである、限りなく不死身に近いこの私を!!……其れは滑稽だわ……死のない相手を永遠に相手する事になるんですものね!!」
確かにそうかも知れない。
エクリプスの解明は未だ持って進んでいるとは言い難いし、何故適合者が限りなく不死に近い体になるのかも謎だ。
何れにせよ、お前が本当にエクリプスドライバーになったと言うのならば、何ともやりにくく厄介な相手だろうな――相手が並の魔導師であったのならば。
「なに?」
「御大層な自慢をしていたが故に気が引けるんだが――私もまたエクリプスドライバーだ……其れもお前よりもずっと前に感染している。」
エクリプスドライバーの強さは、感染歴が大きく影響しているのは知っているだろう?
同じエクリプスドライバーならより長くエクリプスに感染している方が、身体が馴染んでいるからな。
見たところ、お前は感染して精々1〜2年と言った所か………言っておくが、私が感染したのは7年前だぞ?
元々地力に大きな差が有るが、更にエクリプスの感染歴にも此れだけの差がある――其れでもまだ私に勝つ心算でいるのか?だとしたら笑えない冗談だ。
「7年……!!其れは確かに長いわね……でもだから何?
確かに感染歴の長さはエクリプスドライバーの強さに直結するのは間違いではないわ……だけどエクリプスの真髄は其れだけじゃあない。
エクリプスドライバーの真の能力は、専用の武器『ディバイダー』を使う事で完全に解放されるのよ!!!!」
――ザクゥゥゥ!!
!?取り出した短剣で自分の掌を刺し貫いただと!?……その程度の傷は一般人の掠り傷程度だろうが――コイツ、一体何を考えているんだ?
「うげ……幾ら死なないからって、普通自分で自分を刺すか!?
あ……この婆は普通じゃなくてとっくの昔にぶっ壊れてたんだっけ?こんな奴が新しいトップとか、最高評議会は終わったね〜〜…こうなると思ったけどさ。」
「と言うか多分終わってるんじゃないのか?
恐らく市街地の方は星奈や冥沙が頑張ってるだろうし、アインスや将が人造魔導師やガジェット如きに後れを取る事など先ず有り得ん。
本部に乗り込んだ雷華とサイファーとフェイトだって負ける事は無い……と言うか多分アイツのコピーとやらはフェイトの文字通り『細切れ』にされてるだろう。
私と共に此れに乗り込んだヴィータとナカジマだって一般的な魔導師よりも数段強い奴だから、ゆりかごの防衛部隊が来たって大丈夫だ。
そして、我が主高町なのはとその姉の高町美由希は其れこそ最強クラスの魔導師だ――聖王や『彼』が相手であっても負ける事は無いさ。」
其れになのはの方にははやて嬢も来たようだしな。
正直、なのはとはやて嬢がタッグを組んで本気を出したら私でも祝福の月光状態にならないと勝つ事は出来ないだろうな。
「うへえ……アンタがそう言うって、そのなのはとはやてって奴はすっごいんだね〜〜。
てか、こっちの用意した戦力が殆どやられるって、アンタの仲間は強過ぎねぇ?アタシもそんくらい強くなれんのかな〜〜〜?」
「なれるさ……お前が思い、そしてそのための研鑽を怠らなければ。」
「……随分と余裕じゃない……てっきりディバイダーの展開を邪魔して来ると思ったのに……」
「必要ないからな………ふむ、少しの間にずいぶん大きくなったモンだ。」
四肢に展開されてるのは巨大な鎧みたいだな?
右腕には巨大なブレードを装備し、左腕には――性能は分からないが、形状からして恐らくは銃器の類が装備されている。
そして両脚は脛の部分にブレードが……蹴って斬る為の装備か――随分と重装備だな?それでは装備が重すぎて動きが鈍くなるのではないか?
「如何かしらね?其れは自分の目で確かめると良いわ!!
感染歴が私よりも長くたって、ディバイダーを持たないお前はエクリプスドライバーとしては半端者に過ぎないのだから!!
……其れからセイン、裏切って盾突くとは愚かの極みね……貴女もコイツと一緒に始末してあげるわ!!」
「そりゃ勘弁……つーかアタシは元々アンタの部下になった覚えは無いっつ〜の。
自分の力を使える場が有ったからアンタに従ってただけで、ぶっちゃけアンタ等最高評議会の目的とかど〜でも良いし…陛下が泣いてたのも面白くない。」
「機械人形風情が情に流されたとはお笑いだわ!……良いわ、纏めて死になさい!!!」
――シュン!
!?
な、消えただと!?あの重装備で?
――バキィィィ!!!
「ガハ……!!」
「うふふ……エクリプスドライバー同士なら相手に決定的なダメージを与える事は可能なのよ?
くふふふふ……10年前のお礼に、たっぷりと嬲ってあげるわ!お前が命乞いをしたくなるほどにねぇ!!!」
私の背後を取るとは……成程、只の自信過剰って訳でもないらしい――今の一撃も結構効いたしな。
だが、今の一撃は拳で殴るのではなく右腕か足のブレードで私を斬り捨てるべきだった……如何に死に辛いとは言え、身体を両断されたら流石にな…
「其れじゃあ面白くないでしょう?たっぷりと時間をかけて恐怖を与えながら殺すのが堪らなく楽しいんじゃない…」
「クズが、相手の命を奪うと言うならば、せめて苦しまぬように葬ってやるのが奪う側としての最低の礼儀だと言う事も知らないのか?
必要な情報を得る為の拷問でもないのに相手を痛めつけるなどは愚の骨頂だ……生きて罪を償わせるための因果応報と言うならばまた話は違うがな!」
「つーか、ドSの婆なんて何処にも需要は無いって!」
確かに……クアットロでも拒否しそうなネタだ。
「礼儀?知らないわね……強者には弱者を蹂躙する権利がある!力こそすべてよ!!
くふふふふ…その腕切り落としてやるわ!!!魔導殺しの一撃をお前のデバイスで止める事など不可能よ!!」
今度は右腕のブレードでか……まったく、美由希の剣と比べればお粗末な事この上ない太刀筋だな。
確かに破壊力は凄まじいだろうが、そんなにバカでかい獲物でのバレバレの攻撃が通ると思っているのか?其れにお前は一つ勘違いしている。
――ガキィィィン!!
「なに!?」
「この月影は我が友より託された一振りを、あのジェイル・スカリエッティが改修と改造を施した特別製だ。
私がエクリプスドライバーとなった際に、他のエクリプスドライバーとの戦闘が出来るように性能も調整してあってね……お前とこうして打ち合う事が出来る。」
「小癪な……だけど此れは避けられないでしょう!!!」
――ドドドドドドドドドドドドド!!!
ぐ………左腕の装備はアサルトライフルか!
幾ら死なないとは言え、この近距離で何発も腹を撃ち抜かれると流石に効くな……だが、近距離での射撃を避ける事が出来ないのはお前も――
「どっせい!!!」
――ブスゥ!!!!
「みぎゃぁぁ!?」
え?セイン?……あ、ディープダイバーとやらを使ったのか?まさかキスティの真下から奇襲を掛けて来るとは予想外だったぞ?
いや、だがしかしその攻撃は……
「せ、セイン……お前、よくもこんな下品な攻撃をしてくれたわね!!」
「いや、だってアンタ腕も足も堅そうだし、背中や腹刺されたって平気なんでしょ?
其れを考えたら、ダメージ与えられそうな場所って『そこ』しか思い浮かばなかったんだもん――てか以外に効果抜群?」
抜群のようだなぁ………其処は鍛えても鍛えようのない場所だしな。
だが、世界中どころかありとあらゆる次元世界でもお前くらいじゃないか?……実戦の場で相手に『浣○』を喰らわせた奴なんて言うのは……
うん、今の一撃で如何やら完全に『プッツン』と行ったみたいだな……気を付けろセイn――
「この機械人形風情が!!!死ね!!!」
――バキィ!!!
「どわぁぁぁぁ!?」
「セイン!!」
「お前もだ……!死ね!死ね!!死んでしまえぇぇぇえ!!!!!!」
――バキィ!!!ゴス!ゴス!!ゴス!!!
ぐ……がは………再生しきってない傷跡を攻撃されるのは流石にキツイ……
と言うか、散々アサルトライフルで撃ち抜いた腹を爪先で蹴りつけるとは………全くとんでもないサディストだな?SMクラブにでも就職したらどうだ?
「減らず口は消えないようね……なら此れも喰らいなさい!!!」
――ザクゥ!!!
「ぐ……隠しナイフまで有ったのか……其れを致命傷にならない場所に刺してか……サディストを通り越した鬼畜か……お前にはお似合いだがな。」
「ほざきなさい……此れで終わりよ!!」
――メキィ!!………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
――ドォォォォォォォォォォォォォン!!!!
「んな!!おい、ルナ!!ルナ!!!!」
「あははははは!!呼んでも無駄よ!今の一撃を耐える事なんて幾ら何でも不可能よ!!…次はお前ね!!」
………ほう?一体何が不可能なんだキスティ……相手の生死を確かめずに勝ち誇るなど三流のする事だぞ?
「!!ルナ!!!」
「な…馬鹿な!!アレを受けて無事だなんて…」
「まぁ、流石に少しだけ危なかった……或は通常状態だったら耐えられなかったかもしれん……だがお前、私のこの姿を忘れた訳じゃないだろう?」
10年前にお前を完封した、私のこの姿を!!
「!!其れは……その忌々しい薄茶の髪と瞳はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「祝福の月光……我が主より名付けて頂いた私の本気モードだ。
冷たい怒りの感情に支配されていたあの時とは違い、今は感情の昂ぶりがなくても自分の意思で変身する事が出来る……この意味は流石に分かるな?」
「舐めるな!!
あの時とは違う!!あの時とは違うのよ!!その姿であってもぉ!!!」
――バガァァン!!!
遅い!!
至近距離での射撃ならば避けるのは困難だろうが、十分に間合いが開いている状態ならばお前の射撃など見切るのに難は無いぞ?
目線と銃口の角度から、何処に撃って来るかなどバレバレだ!!華と散れ!!
――ズバァァ!!!
「ぐあぁあ…右腕を……だがこの程度!!!」
再生するだろうな……そして再生しながら、左腕の銃で攻撃か?
ならばもう一つ妙技と言うモノを見せてやろう、此処で手に入れたこの『エボニティアーズ』でな!
――ガガガガガガガガガ!
――ガガガガガガガガガガガガ!!
――ドガァァァァァァァン!!!
「ぐあぁぁっぁ!!な、何故左腕が暴発!!……貴様何をした!?」
「簡単な事だ――お前が撃った弾を相殺する為に、弾道を完全に合わせて此方も引き金を引いただけだ……ただし、お前よりも3発ほど多めにな。」
お前の弾を相殺しなかった分の弾が、銃口から中に入ってそのアサルトライフルを内部から破壊したと言う訳さ。
尤も、お前の様に馬鹿正直な射撃をする奴が相手でなくては出来ない芸当だけれどな?
「ば、化け物が…!!」
「お前が其れを言うか?私もお前もエクリプスドライバー……化け物はお互い様だろうに。
尤も私はお前と違って人の心までは失っていないがな………時に、私だけに集中するのは些か危険じゃないか?」
――ズバァァァァァァ!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!……セイン、貴様ぁぁぁ!!!」
「な〜〜る……確かに此れならこの婆にも効果はある訳だ。」
そう言う事だ……切り落とした腕のブレードを態々残しておいた意味に気付いてくれて嬉しいぞセイン。
さて、如何する?
最早お前の攻撃は私には通じないし、セインもお前を殺す事が出来る武器を手に入れた……何より私がこの姿である以上、お前の勝ちは億に一つもない。
「其れが如何したぁぁ!!!
この身は不死!!ドレだけ四肢を斬り飛ばされようとも、そんなモノは瞬時に再生する!!お前を殺して、そして私はぁぁぁ!!!!」
「ヤレヤレ……此れは10年前よりも酷いな?
あの時はまだ、力の差を感じ取って私には勝てないと言う事を理解できたようだが――エクリプスの力を得て其れすら出来なくなったか…
最早此処までだなコイツは……止めを刺すぞブライト!!」
『All right.Load cartridge…Deadlyrave!!(了解。カートリッジ装填…デッドリーレイブ!!)』
此れで決める……デッドリーレェェイブ!!!
――ドドドドドドドドド!!
9撃全て的確に入ったが、バスターはまだ撃たない……!遊びは終わりだ!泣け!叫べ!!そして…逝けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
――ドガァァァァァァァン!!
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
「未だだ!!吹き飛べ……裏参百弐拾参式・彩花!!」
――ドン!ドドド……ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
此れで終わりだ……全力全壊!!!
『Divine Buster.』
「ディバイィィィィン………バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
――キィィィン………ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
「どわっ……なんつ〜砲撃だよ……マジで半端ねぇ…」
「ふ……我が主が最初に編み出した必殺技故に、シンプルだが威力も高くて派手だろう?砲撃魔法の中では一番気に入っているんだ♪」
とは言え、此れだけの攻撃を――デッドリーレイブ、八稚女、彩花、ディバインバスターの連続技を喰らっても未だ生きているか……しぶといな。
だが、如何に死ななくともダメージは受けるし、ダメージを受ければ肉体的な疲労も蓄積する……もう立っているのが限界だろう?
「くくく……うふふふふ…あはははあははははあははははっははははははは!!!!!!!!!!」
「「!?」」
なんだ?行き成りどうしたと言うんだ!?
「もう形振りなんて構わない!!この身体……くれてやるわ!!!!」
――ギュル……メキョ…ジュルリ……グニュゥゥゥ……
傷を再生――違う、此れはエクリプスがキスティの身体を造り変えているのか!
まさかコイツは……キスティは私やなのはやサイファーとは違って完全な『エクリプス適合者』じゃないのか?只無理矢理馴染ませただけの偽物……
「うふ…うふふふふふふふふふ…あ〜はははははは!!
どう、この姿は!!此れこそ新たな世界の支配者に相応しい、禍々しくも美しい姿でしょう?…私は今この時から神となったのよ!!!」
ふぅ……まるでナハトヴァールの暴走体だな此れは……醜悪な事この上ない。
そんなモノが神だと?……心の底から願い下げだ――まぁ、お前にはお似合いだよ……『人を辞めた邪神』その物の姿はな。
期せずして第2ラウンドか………まぁ、此れを最終ラウンドにしてやるさ!!
To Be Continued… 
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