Side:なのは


「うぐ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!………ターゲット確認、抹殺する…」


……如何やらお父さんの自我は完全に消えたみたいだね……寧ろそっちの方がやりやすいかもしれないけど。
此処からは多分今まで以上に攻撃は激しくなってくると思うけど、はやてちゃん大丈夫?付いてこれる?


「舐めんなやなのはちゃん。
 そら、なのはちゃんには敵わへんけど、私かて夜天の主で冥王イクスヴァリアの力を継いだモンや……此処で退くとか有り得へんやろ普通に。」

「其れを聞いて安心したよはやてちゃん……なら、此れを渡しておくね?」

「なんやこれ?何かに入った弾丸みたいやけど……まさか『魔力カートリッジ』か!?
 こら有り難い代物やけど、私のシュベルトクロイツにはカートリッジシステムは搭載されてないから此れを使う事は出来へんで?」


大丈夫だよ、その入れ物そのものがジェイルさん製の『外付けカートリッジユニット』だから。
シュベルトクロイツの柄の部分に其れを装着するだけで、カートリッジユニットとして機能するの……此れならはやてちゃんもカートリッジが使えるでしょ?


「何ちゅうモンを作っとるねんスカさんは……ホンマ、管理局の技術部に技術提供してほしいもんやで。
 せやけど、これはホンマにありがたいプレゼントやで!行くで、カートリッジ装填!!!」

「レイジングハート!」

『All right.Load Cartridge.(了解。カートリッジを装填します。)』


さぁ、最終章を始めようかお父さん………ううん、リオン・アークヒールの亡骸を弄ぶ外道よ。
我等が父の亡骸をこれ以上弄ばれるのは我慢が出来ない……白夜の聖王と夜天の冥王が、その身体を此れから完全に無に帰すからね。











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福112
『双天の王は屍者を還す…』










「ターゲット補足……………抹殺!抹殺!!抹殺!!!」


――ドゴォォォン!!!


「ちょ、生身の拳で床抉るとかドンだけやねん!!あんなの喰らったら、なんぼ不死身言うても大ダメージ確定やで!?
 てか、ぶっちゃけ死体を動かしとる筈なのに、なんで今の一撃ぶっ放して身体が無事なんや?生者の身体でもあんな事したら拳が粉々になるやろ?」


多分、遺体に特殊な処理を施して肉体強度を有り得ない程に引き上げてるんだよ。
勿論そんな事しても一時的なモノで長続きはしないだろうけど、使い捨ての駒として使うなら話は別……此れなら簡単に戦力が増やせるし素材もね…


「ホンマに胸糞の悪くなる話やな……アイツ等には人の心が無いんかい!
 そら私等だって、人の命を奪っとる……せやけど、奪った命と咎を背負う覚悟はしとる……だけど最高評議会の連中は何やねん!!
 自分の欲望のままに人体実験やって失敗したら殺して、自分達の脅威になるからってなのはちゃんとルナさん殺そうとして…挙げ句にはお父さんも…
 一体アイツ等は何様の心算なんや!!神様にでもなった心算なんか!?こんなの、酷すぎるやんか……」


はやてちゃん……本当だよ、本当に酷い。
罪の無い人を犠牲にするなんて絶対に間違ってるし、眠りについた死者を無理矢理なんて言語道断だよ!!

アクセル……シューーーート!!!!

『Accel Shooter.』

「刺し貫け…バルムンク!!!


だからもう終わらせなきゃいけないんだ……私達が終わらせるの!!レイジングハート、アクセルシューターを追加で3セット!!


『All right…Break down.(了解…此れで砕けなさい。)』

「排除、排除、デリート……デリートォォォォォ!!!」



――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!



私とはやてちゃんの合計50発近い誘導弾を避けるなんて……だけど予想通り――お父さんの自我が消えた事で動きが落ちてる。
此れならさらにシューターを展開すればクリーンヒットも狙えるだろうけど、問題はあの身体がドレだけの耐久力を持っているか……だね?


「せやなぁ……けど、さっきの壁抉りの一発を見る限り、全身装甲状態と見た方が良いんとちゃう?
 私等の射撃は、あくまで『牽制』が目的やから、クリーンヒットしても大してダメージは与えられへんのやなかろうか?」

「うん……だけど直射砲を当てるのは容易じゃない。」

まして、クロスレンジも出来る私達と、クロスレンジがメインの屍兵とじゃ差がありすぎる……そうだ!!
はやてちゃん、アレが私に対してクロスレンジを仕掛けるように誘導する事は出来る?秘策があるんだ。


「秘策?なのはちゃんの秘策とか、ちょおオッカナイ気がするけど……誘導するくらいなら朝飯前や。
 せやけどその秘策、成功するんやろうな?」

「巧くクロスレンジに入ってくれれば100%の成功を約束するよ?」

「って事は私の誘導が秘策成功の鍵言う事か?うわ〜〜滅茶苦茶責任重大やん!」


って言う割には、なかなかに『良い笑顔』してるんじゃないかな、はやてちゃん?


「そらそうや……互いに決め手を欠いてるこの拮抗状態が終わるんかも知れへん――あの身体を本来あるべき魂の許に還す事が出来るんやからね。
 それにや…なのはちゃんも『秘策』を使えば何とかなる思たから提案してくれたんやろ?なのはちゃんかて『良い顔』しとるよ。」


かもしれないね……うぅん、きっとそうだよ。
魂が還っただけじゃまだ半分、身体と魂の両方を還して初めてお父さんは解放されるんだもん……頼むよはやてちゃん!


「よっしゃ、任せとき!!
 ほな行くで……ブリューナク&バルムンク……乱れ撃ちや!避けられるもんなら避けてみろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


――ドドドドドドドドドドドドドド!!!



はやてちゃんは持って生まれた魔力が私よりも大きいせいで、闇の書事件の後からずっと魔力の制御をメインに訓練して来たから魔法の制御が巧い。
一般的な魔力弾と、短剣型の魔力弾の複合波状攻撃なんて私でも……若しかしたらルナでも難しいかもしれないね。

しかも、此れだけの魔力弾と魔力剣を操りながらたった一か所……私に突撃する事が出来る『穴』を残してる。
お父さんの自我が残ってる状態だったら見抜く事が出来るだろうけど、魂の去った骸じゃこの仕掛けに気付く事は無いよね……


「……突破口算出……エネミー抹殺…」


乗って来た!……プロテクションで防いでのカウンターは多分避けられる。
だったら絶対に躱せないカウンターを喰らわせるだけなの!!


――ザクゥゥゥ!!


「ぐ……結構痛いね……だけど此れで逃げる事は出来ないよ!」

「!?」


私の左肩に深々と刺さった剣……簡単には抜けないよ?刺された場所に力を入れて筋肉を締めてるからね。
だからこの攻撃は避けられない!!一撃必殺…ゼロ距離クロススマッシャー!!!!


――ドォォォォン!!!!


肉を切らせて骨を断つ!今のは其れなりにダメージが入ったと思うんだけど……


「うぐぅぅぅ……」


「倒すには至らんかったみたいやね……せやけど今ので確定や、私等の必殺砲撃なら完全に消す事が出来る!」

「うん、間違いなくね。」

問題はどうやってブレイカーとラグナロクを放てる状況に持って行くか。
多重バインドを仕掛けるのは必須だけど、誘導射撃で動きを制御した状態でもアレだけ動かれたんじゃ拘束は難しい……動きを鈍らせる事が出来れば…


「ん?…なぁ、なのはちゃんなんかオカシクあらへん?」

「へ?オカシイって何が?」

「あのお父さんの身体、なのはちゃんのスマッシャー喰らったのにダメージ受け取るのは右半身だけやん。
 とっさに身体を捻ってダメージを右半身に留めたんやろけど……普通、それやるんやったら利き腕の方を生かすんやないかなぁ?」


確かに言われてみればそうかも……利き腕側を犠牲にしても左半身にダメージを受けたくない理由でもあったのかな?
だけど、そんな理由は――――


「「!!!!!」」


はやてちゃんも気付いた!
まさか……左半身を庇った理由は!!

「前に私が貫いた…」

「前になのはちゃんが貫いた…」

「「左胸の傷は治されてない!?」」


有り得るかもしれない……生命活動を停止した身体じゃどうやっても生前に負った傷を再生する事なんて出来ない。
あの時――お父さんを殺した時に私が刺し貫いた左胸にはそのまま穴が残ってるとしたら、其処は紛れもない屍兵の弱点――!!


「なのはちゃん……」

「うん、攻略法が見えたよ!!」

狙うは左胸!
其処に決定的な一発を喰らわせれば、間違いなく動きは止まる……そうすれば!!!

レイジングハート、ドラグーンを最大展開!アクセルシューターも展開出来る限界まで展開して!!


『All right.Fulldrive.(了解。全力で対処します。)』


いっけぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇ!!!!!!


「彼方より来たれヤドリギの枝、銀月の槍となりて撃ち貫け…石化の槍、ミストルティン!!!



――ドドドドドドドドドドドドドドドッド!!!



「!?全力回避……!!」

「させないよ!フルバーストバスター!!

『Dragoon Full Burst!(ドラグーンバースト発射。)』


合計11発の直射砲の雨に動きが止まった――はやてちゃん!!


「任せとき!!喰らえや、A,C,Sドライブ!!!


――グサァァァ!!!


「がぁぁあぁぁぁ!?」


やっぱりそこが弱点だったね!アクセルシューター一点集中射撃!!


――ガガアガガガガッガガッガッガガガガガッガガアガガガガガガ!!


「ぐおぉぉぉぉ……た、たーげっと…抹殺……」


一気に動く事が出来なくなったね……もう終わり、貴方もお父さんの魂と共にもう還って良いの――これ以上、死後の眠りで悪夢を見る必要はないよ。
レイジングハート!!


『Yes…Restrict Lock Standby.(分かりました…レストリクトロックを使用します。』

「もう、此れで終わりにしよ?縛れ、鋼の軛!!



――ガキィィィン!!バキィィィィン!!!



捕らえた!!……此れで終わりにするよ!!



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


『Starlight Breaker.』


「全力全壊!スターライトォォォォォォォォォォ………!



――キィィィィィィィィィィィィン………



「響け終焉の笛……ラグナロク!!



――ギュゥウゥゥィィィィィィィィィィン!!


「「ブレイカァァァァァァァーーーーーー!!」」


――ドバガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァン!!!!!!



―――――!!!!!」

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」」



――ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!……シュゥゥゥゥゥゥ……



はぁ、はぁ……消えたね、跡形もなく……


「そやな……でも、此れで漸くお父さんは解放されたんやろ?」

「多分ね………」



――なのは、はやて……ありがとうよ、此れで漸く俺は………



「「!!……お父さん……」」


うん、私達のすべき事はやり遂げたよ……だから、今度こそ本当にお休みなさい……私達はお父さんの分までちゃんと生きるから。
だから、心配しないでゆっくりと眠ってね……


「漸くやな……せやけど此れからドナイするん?ゆりかごは未だ止まってへん。」

「玉座に行こう……多分お姉ちゃんならヴィヴィオちゃんを無力化する事に成功してると思うから。
 だけど、其れは同時にヴィヴィオちゃんが聖王の力を失ってる事だと思うからゆりかごの制御は出来ない……だったら行くしかないでしょ?」

「せやな……聖王を継いだなのはちゃんやったら、ゆりかごを制御する資格を持っとるからね。」


そう言う事だよ♪
まぁ、私が聖王の権限を行使できるようになるには恐らくルナが進んだルートの最後に待ち構えてる相手を倒す必要があるんだろうけどね……



だけど、プレシアさんの偽物は評議会の本拠地に居る筈――ルナが進んだ先には一体何が待ち受けてるって言うんだろう?








――――――








Side:ルナ


「なぁ、ルナ……本気で水要らない?せめて髪と顔に付いた返り血位洗い流そうよ〜〜!アンタぶっちゃけ滅茶苦茶怖いよ〜〜〜!」

「とは言っても、ペットボトル1本程度の水じゃ乾いた血を洗い流す事は難しいだろ?
 それに下手に水をかぶったら、戦闘装備に付着した血痕が中途半端に滲んで余計に凄まじい見た目になるだけだ。」

「だけどさ〜〜!せめて髪位洗わないと、折角の綺麗な銀髪が傷んじゃうって!」


そうは言われても、このレベルだとちゃんとシャワーを浴びるなどしないと到底落とす事は出来ないだろう?
大体、洗い流したところでキスティと戦えば元の木阿弥だ……なら、全てが終わった後でゆっくりと風呂に入らせてもらうさ。


「……アンタに喧嘩売らなくてマジでよかった。
 もし売ってたら、アタシもアンタに付着する血痕になってかも知んないし……ったく、アンタに喧嘩売るなんて何考えてんのあの婆は!?脳湧いてる!?」

「湧いてるなぁ……いや、ある意味湧いてないのか?余りにも腐り過ぎて蛆が湧く事も出来ないのかも知れない。
 本よりアイツは脳味噌どころか神経が腐って、思考が腐って、脳髄も腐って止めに心は腐りきっている……文字通りアレは『歩く生ごみ』だな。」

まぁ、その生ごみは今度こそ処理してやるが。



………で、此処が最深部か。


「そ、この先にあの婆が居るって訳。
 なんだけど、此処って特殊なロックが掛かってて専用の電子キーじゃないと開かないんだよ〜〜…アタシのディープダイバーでも抜けれない障壁があるし。」


何とも厄介な代物だな……だが、態々正当な手順を踏む必要は全く無いだろ?
行く手を阻む邪魔な扉は、殴って砕いて進むだけだ!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……真・昇龍拳!!!


『Eat this!Riging Dragon!(喰らえ!昇龍拳!)』


――ガッ!ゴッ!!バキィィィィィ!!!!



「うわっ、スッゲー力技………ルナって意外と力押し?」

「我が主・高町なのはの影響だ。」

「アンタの主は何者よ!?」

「話を聞いてもらうためなら、相手の四肢を拘束した上で全力全壊の集束砲を喰らわせる事も厭わない、ちょっぴり悪魔のような魔導師だ。」

「其れちょっとじゃねぇぇぇ!?思いっきり悪魔じゃないかよぉォォォ!?」


勝負に情けは不要と言う事だセイン。

特に此れから戦う外道畜生の極みのような奴にはな――――なぁ、そうだろうキスティ?


「確かに戦いに情けは不要だわ………一切の慈悲を捨てて相手を嬲って蹂躙し……最大級の屈辱を与えて殺すのが楽しいのだもの。」

「……どうやら10年前よりも壊れているようだな――訂正しよう、お前は外道畜生にも劣るクズだとな。」

だが、そのお蔭でお前を滅する事に一切の躊躇はなくなった………10年前に拭き残した汚れを、今こそキレイにしなくてはな!












 To Be Continued…