Side:クイント
私とヴィータ一尉の攻撃をこれだけ受けても停止しないなんて、思った以上に動力炉は堅く出来ているみたいだわ……大丈夫、ヴィータ一尉。
「ハッ、さっきも言っただろ?100発殴ってダメなら1000発ぶん殴ってぶっ壊すだけだってな!
それに、大丈夫も何もねぇ……アタシ等がコイツをぶっ壊さなかったら、ミッドはお終いなんだ……だったら腕が棒になろうともブッ飛ばすだけだ!」
「……その通りね……ちょっと諦めるところだったわ。」
なら、引き続き殴りまくるだけね!
――ヴィン……
だけど、時折ガジェットや人造魔導師が出て来るから、動力炉だけに集中できないのもまた事実……本当によく現れるモノだわ。
ヴィータ一尉、新手は私が引き受けるから、動力炉の破壊の方をお願い。
「おうよ!……やられんなよクイント!」
「ふふ、ガジェットや人造魔導師如きにやられるほど間抜けじゃないわ……纏めて返り討ちにしてあげるわよ。」
さぁ、倒されたいのは誰かしら?――って、此れは一体何の冗談?
現れた人造魔導師は5人……その5人全員が私の娘と同じ姿って、あからさまな事をしてくれるじゃない……腹立たしいわね。
現れた以上は倒さなくちゃならないけど、態々ギンガ達の姿を模して来るなんて明らかに私に対する挑発と陽動じゃない……ある意味感心するわ。
だけど…
「随分と見事な変装ね?だけど、私の娘達を真似るには、少しばかり可愛さが足りないわよ?
ギンガとウェンディはもっとクールに、スバルとウェンディは明るく、ノーヴェは常に強気の顔じゃないとね……そんな無表情は不気味なだけよ。」
私はこの程度じゃ揺るがない……姿形が同じだけの別物を殴り倒すのに、一切の躊躇はないわ。
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福111
『クイント無双列伝・強者の行進』
其れに、この狭い空間にスタイルの異なる5人を配置するなんて悪手も良い所だわ。
此れならまだ量産型のガジェットを送り込んできた方が効果はあったかもしれない……アレは基本的な性能に差が無いからね。
「ターゲット確認……抹殺する。」
「其れは無理ね。」
まずディエチの偽物……この狭い空間での其の大型砲撃武器は『どうぞ攻撃してください』って言っているようなモノよ?
大型の砲撃武装は、アウトレンジから相手を狙ってこそその真価を発揮する……本物のディエチは其れを考えて近接武器も有る程度使うわ。
だけど、そんな事も分からない貴女が、ディエチの真似事をしようなんて100年早いわ!今此処で沈みなさい!!
――バキィィィ!!!!
続いてはウェンディの偽物……やっぱりこの狭い空間では、トリッキーな動きが特徴のライディングボードは1割も能力を発揮できない。
此処では精々砲台か盾として使うのが関の山――曲者的な動きが出来ないなんて間抜けも良い所よ?
本物のウェンディだったら、この狭い空間でもアクロバティックな動きを完璧にこなすでしょうけどね……まぁ所詮猿真似以下には不可能な芸当よ。
「模倣だけで勝てる程、戦いは甘いモノじゃない……貴女達の製作者はそんな事も分からかったのかしら?」
――ゴス!メキィィ!!!
「抹殺…!」
「抹消…!」
「デリートする…!」
「ふぅ……娘と同じ顔をした物が機械的な話し方をすると言うのも不気味極まりないモノがあるわよね……」
今度は3人掛かりで?
クロスレンジ格闘の波状攻撃は悪くないけど、そんなお粗末な技じゃ掠りもしないわ!インターミドル優勝の肩書は伊達じゃないのよ?
この程度の使い手じゃあ、ノービスクラスでも1回戦負けでおしまいね――丁度良いわ、貴女達にシューティングアーツの真髄を教えてあげる。
「ふっ!」
「「「???」」」
シューティングアーツの最大の特徴はスピードよ?緩急自在の動きで相手の間合いを外しながら自分の間合いに持ち込むのが基本。
同時に戦い方も臨機応変の変幻自在……複数の相手にはリーチの長い蹴りを主体にして戦う!
――バキ、バキ、バキ!!
更に異なる種類の蹴り技を使う事で、密集した相手を分断し――その上で今度は拳打をメインに各個撃破を狙う!
「防御態勢……」
その反応は見事だけど、これ見よがしな左フックに引っかかりすぎ……頭隠して腹隠さず、ボディががら空きよ!
――ゴスゥ!!
そして、各個撃破をする際にボディで1人沈黙させるのも勿論意味がある……其れはボディを撃たれた相手は身体が『くの字』に曲がるから。
そうなれば此方で動きを制御しやすくなって、他の相手の攻撃から身を護る盾になり、同時に攻撃する為の武器ともなる!
――ガッ!ドゴォン!!
乱戦の時ならば、必要に応じて相手をも盾や棍とする……これがシューティングアーツの本来の姿『戦場格闘技』と言うモノよ?
貴女達のデータに在る『競技格闘』としてのシューティングアーツとはまるで違うでしょう?
「余りにも危険だから、ギンガ達には『もしも』の時の為の『裏技』として、数個を教えるにとどめているんだけどねぇ。」
それでも、此れを喰らってもまだ動けるんだから頑丈さだけは大したモノだわ。
「だが、戦場ではたった1人に集中すると、痛い目を見るぜぇ?」
『Schwalbefliegen.』
――ドォォン!!!
「クイントはアタシに動力炉の破壊を一任して、アタシも其れを了承したが、戦いに一切手を出さないとは言ってねぇ。」
「つまりそう言う事♪」
あのやり取りだけで察してくれるとは流石はヴィータ一尉、『鉄槌の騎士』の二つ名は伊達じゃないわ。
って言うか今の攻撃で化けの皮が完全に剥がれたみたいね?
人工皮膚を纏ってディエチ達に成りすましてた正体は人型のガジェット……主人の故郷の映画にこんなのが出て来るのが有ったような気がするわ。
だけど、此れなら本当に情け容赦は必要ないわ。
精々、くず鉄回収屋さんに拾われる事を願うといいわ……其れと同時に後悔しなさい、私の娘達の姿を真似た事をね!
「クイント・ナカジマ流シューティングアーツ究極奥義!」
――キィィィィィン……
「ビッグバン・イレイザー!!!」
――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッァン!!!!
とっておきの超必殺技の極大直射砲――流石に効いたでしょう?
狭い場所じゃ使う事は出来ないけど、貴女達を外に押し出す形で使う分には一切問題が無いわ……小規模で使えれば動力炉も一撃破壊よ。
「すげ〜〜なクイント……一撃で全部吹っ飛んじまったぜ?
てか、見た目が自分の娘でも容赦ねぇよなアンタって……まぁ、アタシだってシグナムの偽物が出て来ても容赦しねえけどさ…」
「見た目に動揺して本来の力が出せなくなるなんて言うのは二流のやる事よ?
まぁ、相手が操られてる本人の場合はその限りじゃないけど、明らかな偽物相手に動揺する必要もないでしょう?…只潰すだけよ。」
「だな……そっちの方が分かり易いぜ!」
でしょう?
さぁ、此処からが正念場よヴィータ一尉!
八神総司令に美由希三佐やなのはさん、ルナさんが負ける事は無いと思うけれど、動力炉を破壊しない限り、ゆりかごの武装機能は止まらから!
「おうよ!跡形も残らず木端微塵にぶっ壊してやるぜ!!アイゼン!!」
『Jawohl.Nachladen!』
「ぶち抜けぇぇぇえぇ!!!!」
『Raketenhammer!』
覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!リボルバーシュート!!!
――ドゴガァァァァァァァァアン!!!!
此れでも壊れないか…だけど手応えはあった!
動力炉は必ず私達で破壊する……だから其方は任せますよ八神司令、美由希三佐、なのはさん、ルナさん!!
――――――
Side:ゼスト
………何か言いたそうだなメガーヌよ。
「はい……最大限遠慮無く言わせてもらいますが、私達必要ですか隊長!?」
「うむ、そう思うお前の気持ちも分からんではない…」
俺とて、この戦場に己の存在が必要かどうか疑問に思っているのだ……ルガールのせいでな。
「むあぁっはっは!!その程度どぅえ、わぁたしに挑もうなどとはぁ、かぁた腹痛いわゴミ屑ぐわぁ!
きぃ様等如きは、未来永劫宇宙の果てで塵芥として過ごすのぐあぁおぉにあいどぅぁ!…地に帰るが良い!ファイナルサイコクラッシャァァァ!」
――ギュイィィィン…ドバゴガァァァァアァッァアァァァァァァァァァン!!
「所詮ゴミどぅあな……死をぉぉ、くれてやるぃ!!」
「隊長、悪役はどっちですかね?」
間違いなくルガールの方だな……と言うかガジェット以上に街を壊すな――誤魔化すにも限界はあるのだからな?
「わぁかっているぃ!だぁがしかし、この雑魚どもを見逃して良い理由は無かろう!
まぁとめて撃滅完全粉砕してくれるわぁ!何よりも8年前に、たぁか町なのはを殺し掛けたコイツ等を、わぁたしが許す筈がないだろう!!」
……うむ、高町なのはファンクラブ会員ナンバー001の名は伊達ではないか。
まぁ、極力街を壊さないようにしろ、それ以外は好きなようにやって構わん――いっそ全てのガジェットを撃滅しても問題はない!
「りょぉぉかいどぅあぁゼェストォ!ぬおぉぉぉぉぉぉん……行くぞぉぉぉ!!!!」
「隊長……」
「何も言うなメガーヌよ……恐らくはアイツのノリと勢いに任せてしまった方が色々と早く片付く筈だ。」
あくまでミッド市街はだがな。
真の事件解決にはゆりかごの沈黙が必須か―――頼むぞ、八神総司令!そして、ナカジマをはじめとしたゆりかごに突入した勇士よ!
――――――
Side:なのは
「ディバイィィィィン…バスタァァァァーーーーーー!!!!」
「クラウソラスーーーーーー!!!!」
――ドガァァァァァァアッァアァァッァァァァァァァァン!!!
「……………………!!」
此れも避ける……く、レイジングハート!!
『All right.Protection.』
「なのはちゃん狙いか?
確かに強い方を先に潰すのは定石かもしれんけど、私等のタッグ相手に其れは悪手やでお父さん!!…バルムンク!!!」
――ギュイィィン…ドシュゥゥゥ!!
私への攻撃の隙をついて、はやてちゃんが的確に射撃魔法を放ってくれたけど、多分今のは決定打にはならない…!!
「……………………」
「此れすら避けるか!?……今のは結構気合入れてブチかましたんやけど、それすら紙一重で躱すとか無しやろ?
てか、娘としては成長の証をお父さんに受けてほしい所なんやけどなぁ……?」
「言って通じるなら苦労はしないよはやてちゃん…」
「其れは分かっとるけど如何してもな……せやけど如何したモンやなのはちゃん?
私等、あんましクロスレンジは得意やないから、どうしてもロングレンジかアウトレンジからの攻撃が主になる……それじゃあお父さんには通じへんよ?」
そうなんだよねぇ……嘗てはクロスレンジ最強とまで謳われたお父さん相手に、クロスレンジは分が悪いし、ロングレンジの砲撃も見切られるからねぇ?
如何したモノかなぁ?
「あ……ぐ……」
「「!?」」
へ、リオンさん…お父さん!如何したの!?
「なのは…はやて……迷うな……俺を殺せ……これ以上……死者として恥を曝すのは、もう…沢山だ。
身体の自由が効かないから……難しいかもしれないが……頼む、俺を跡形もなく消してくれ……最後はせめてお前達の手で…送ってくれ………」
!!お父さん!!……最後の最後で……自我を取り戻すなんて……そんなの悲しすぎるよ……
だけど…覚悟は決めてるんだよね?………だったら応えるよ!はやてちゃん!!!!
「みなまで言うななのはちゃん!
死して尚、お父さんが腐れ外道に良い様に使われるのは我慢ならへん!!……やから、私等で送ってあげよ?」
「うん!」
だったら、もうリミッターを解除しても良いよね?今こそ私は、私の中の聖王の力を完全に開放する!!
「せやな……ほな、私も私の中の冥王の力、初の完全開放と行こうやないの!」
――グン!!
「「覇あぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
暴れろ、我が内に眠りし聖王よ……全ての枷を取り払い、哀しき死者を送る為の力を私に!!
――轟!!
「白夜の聖王、高町なのは…」
「夜天の冥王、八神はやて…」
「「此処に推参!!」」
「来たか……其れなら俺を………やれるかもな……迷うなよ2人とも……」
迷わないよお父さん……私とはやてちゃんはもう迷わない!
お父さんを倒す事で、お父さんが解放されるなら……その為に倒す!……例え2度目の父親殺しをする事になったって、必ず送り返すよ…役目だもん。
「コイツは…頼もしい…事だな…………だが、さっきも言ったように、この身体は俺の意思では動かせない……
それに……俺の自我も……これ以上は持ちそうにない……もう、手加減も……出来そうにない…悪いな…」
「其れがどないしたん?
戦場に立つ以上、やる覚悟とやられる覚悟は決めて当たり前の事や!!自分がやられる覚悟もなしに戦場に立てるかい!!」
はやてちゃんの言う通りだよお父さん……奪う覚悟と奪われる覚悟なくして戦場には立てない。
その覚悟があるから、私とはやてちゃんはお父さんの前に立つの―――だけど、これ以上の御託は要らないでしょ?
あとは戦うだけ……!
行くよお父さん……その魂を私とはやてちゃんで、有るべき世界に送り返すから……!!!
To Be Continued… 
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