Side:シグナム
「今直ぐ、貴様がユニゾンさせている融合騎を解放しろ、そうすれば命だけは助けてやるぞ?」
願わくば此れで解放してほしいモノだが、恐らくはそうは行かないのだろうな……目の前のコイツは力に固執しているように見える。
力を求め、その果てに融合騎に辿り着いて無理矢理従わせ、遂には人の心を失ったか――マッタク持って笑えないモノだ。
だが、それならば此方とて手加減の必要はなさそうだな?
「………………」
「黙して語らずか……ならば抵抗の意志ありとみなす――覚悟は出来ているな?」
我が同胞たるベルカの小さき騎士……其れを無理矢理従わせるなど絶対に許さん……許してはならない事だ――コイツは此処で始末しなくてはな。
夜天の魔導書が守護騎士、烈火の将シグナム、同胞を救うために我が剣を振るおう!
――轟!!
「!!!!」
「驚いたか?此れが正真正銘の私の本気だ……ランク保有制限回避の為に施されたリミッターをリリースしたこの姿こそが私の真の力だ!」
――バガァァァァァァッァァン!!
炎熱砲一閃……だが、此れで終わったとは思えんな……奴の魔力パターンはまだ消えて居ないのだからな。
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福107
『瞬刃烈火、炎熱紅蓮は惑わず』
「…………殺す…」
「矢張り無事だったか……だが、私を殺すだと?お前に出来るとは思わんな。」
それ以前にそんなセリフを言う暇がある位ならば打ってこい!立ち止まってからの攻撃程、読みやすく対処しやすい攻撃もない。
そら、ボディががら空きだ!!
――メイキッィィィ!!!
「……………な、何故………」
「私に負けるのが理解出来んか?……所詮は人の皮を被ったゴミ屑風情では分からんだろうな!!」
紫電一閃!!!
――バシュゥゥゥゥ!!!
「……馬鹿な…」
「瞬刃烈火、迷いはない……貴様の様な外道悪党に情けをかけてやるほど、私はお人好しではないのでな。」
融合者が死ねば、融合騎は強制的に融合状態が解除されるからな。
さて、融合騎を保護せねば……
「あ〜〜〜あ、やられちゃってまぁ……ったくこのクソチビの力使って負けてんじゃ話にならなくね?
だからこいつはアタイに使わせろって言ったのによぉ〜〜……使いこなせなくて熱暴走起こしかけた上に敵に斬り殺されてりゃ世話ねぇだろ…なぁ?」
「新手か……と言うか何時の間に現れた?」
それに、何故今し方保護しようとした融合騎を貴様が持っている?答えて貰おうか?
「あ?まぁ良いや冥土の土産に教えてやるよ。
アタイってさぁ、所謂一つの『瞬間移動』が使える訳よ、目視できる範囲限定だけどさぁ。
其れを連続使用して、このクソチビをアンタよりも先に回収して、でもって改めてアンタの目の前に瞬間移動したって訳よ、お分かり?」
「あぁ、良く分かった。
貴様が救いようの無いほどに反吐が出る外道悪党と言う事も、貴様を始末せねばその小さき融合騎を救う事は出来んと言う事はな。」
「アタイに勝つ心算?無理無理無理〜〜〜!
今からアタイはコイツと融合する!瞬間移動を繰り返せば、アンタにそれは防げねーだろぉ?
何処から来るか分からない攻撃に怯えながらアンタは死ぬんだぜ〜〜〜!おら、ユニゾンだクソチビ!」
「……やだ…」
「あん?」
ほう?拒絶を示すとは……矢張りお前の本意ではなかったようだな。
「やだ…アタシはもうお前等とは一緒に居たくねぇ!!
アタシは道具じゃない!したくもない戦いをさえられるのはもう沢山だ!!融合率の低いお前等なんてこっちから願い下げなんだよ!」
「あ〜〜?粋がってんじゃねぇぞクソチビ……テメェは所詮アタイ等の道具に過ぎねぇんだよドカスが!
まぁ、テメェが拒否っても、こっちにゃテメェの自由を奪って融合する方法があるからなぁ?……行くぜおら、強制ユニゾン!!!」
「やめろ!!やめろーーーーー!!!!」
――ドシュゥゥゥン!!
「クックック……ユニゾン完了……」
!!強制融合だと!?……貴様、融合騎と言う存在をなんだと思っている!
融合騎とは、適合したロードと融合して初めてその力の全てを発揮できるのだ、貴様の強制融合ではその力は存分には発揮されん!
それ以前に、融合騎の意思を無視しての強制融合など断じて許さん――我が姉とも言える存在が嘗て融合騎であった故に尚更な!!
「ハッ、ユニゾンデバイスなんて所詮は道具だろぉ?道具をどう使おうがアタイの勝手じゃないか!」
「そうか………如何やら相当に地獄に落ちたいらしいな貴様は……良いだろう、望み通りにしてやる!」
楽に死ねると思うなよ?貴様には『もう殺してくれ』と思う程の苦痛を味わわせてやる!
「出来ると思ってんの?この瞬間移動がある限り…」
――シュン…
「アタイに攻撃は当たらないし、アタイの攻撃は避けられない!!」
「そう思うか?」
――バキィィィ!!!
「ぶべら!?…な、なんで!!……く、まぐれだ!今のは適当に振るった拳が偶々アタシの出現場所に!」
――シュン!
………今度は――上だな!!
――ゴスゥゥゥゥ!!!
「げぴぃ!!……な、なんでアタイの攻撃が読まれる!!瞬間移動はお前には捉えきれない筈だ!!」
あぁ、確かにお前の瞬間移動そのものを捉える事は出来んが、攻撃を仕掛ける際の僅かな殺気と闘気なら話は別だ。
どんなに鍛えても、攻撃の際に殺気と闘気の両方を完全に消し去る事は出来ない――両方ともゼロにしたら、攻撃の威力がガタ落ちするからな。
故に、私はお前が消えても焦る事はない。
私は動かずに、お前の攻撃にだけ集中すれば何処から仕掛けて来るかなどは丸分かりだからな……歴戦の騎士を舐めるなよ小娘。
瞬間移動と言うモノには驚いたが、貴様程度の実力の者は古代のベルカに於いては掃いて捨てるほどいた雑兵に過ぎん、相手を見誤ったな。
「いや、そもそも戦いを拒否する者を力で従わせて無理矢理戦場に出させている時点で、貴様は三流以下の塵芥に過ぎん。」
「舐めんなよテメェ!おいクソチビ!!……おい!!!」
ん?何か様子がおかしいな?
強制的に従わせると言うのならば、奴の言う事には無条件で従うようにされているはずだが…
《うるせぇ…》
「あん?」
《うるせぇって言ってんだよ!!もうこれ以上、お前等なんかに……従ってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!》
――バァァァァン!!
!!!……これは、融合状態が反転した!?
まさか、強制服従をぶち破って、今の仮初の融合主を喰らったと言うのか……何て奴だ…
「もう嫌だ……アタシは何のために生まれて来たんだよ……こんな、こんな世界……アタシは望んでねぇ!!!」
!!拙い!!意識が暴走しているのか!?
全てを焼き尽くす気なのか!!……おい、待て!もうそんな事はしなくて良い!私はお前を助けに来たのだ!
「うるせぇぇ!!もう沢山なんだよ!利用されるのも!何もかも全部!!だから…全部燃えちまえーーーーーー!!!」
「止めろ!!!」
――ギュウ……ジュゥゥゥゥ……
く……流石に熱いし、身体が焼けるが……絶対に離さん!
もう止めろ、こんな事をしても意味は無いだろう?……もう大丈夫だ、怖がらなくて良い……私はお前の味方だ。
例え、このままお前が私を焼き殺そうとも、私はお前の味方であり続ける……天地神明に誓って約束しよう……私は敵ではない。
「え?あ……敵じゃない?アタシに酷い事はしない?無理矢理戦わせたりしない…?」
「酷い事はしないし、戦闘を強要する事もない……お前の力は、お前が心から力を貸したいと思った者にのみ使うべきだ。
力で屈服させ、お前の意思を無視して強制的に使わせるものではないだろう?」
だから安心しろ、もう怖がることは無い……
「あ……あ…う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!
本当に?本当にもうコイツ等に従う事はないんだな?アタシはアタシの思うように生きて良いんだな?」
「あぁ、本当だ……まぁ、少しばかりは管理局で保護される事になるだろうがな…」
「其れでも良い……無理矢理従わされる事がなくなるならなんだって……」
そうか……取り敢えず、お前の名を教えてはくれまいか?
こんな状況に於かれて尚、己の誇りを捨てる事がなかった、誇り高きベルカの融合騎士の名を……
「……アギト…」
「アギトか……良い名だな。
私はシグナム。夜天の魔導書の守護騎士が将、烈火の将・シグナムだ。」
「シグナム……」
さぁ、取り敢えずはお前を安全な場所まで移さねばならん、付いて来てくれ。
――――――
Side:アギト
シグナム……古代ベルカの騎士……コイツは若しかしたら!!
「シグナム!!」
「?なんだアギト?」
「シグナム……お願いがある……アタシのロードになってくれ!!
アンタなら、アタシとの融合率は多分物凄く高い筈だ――アンタも魔導は炎熱系だろ?」
「あ、あぁ…確かに私も行使する魔導は炎熱系だが……だがなぜ?」
さっき言っただろ?アタシの力はアタシが力を貸したいと思った者にのみ使うべきだって。
シグナム……アタシにとって其れはアンタなんだ、幾星霜待ち続けたアタシの力を最大限に発揮できるロードはアンタ以外には多分存在しないよ。
其れにアンタはアタシを『道具』じゃなくて『アタシ』として見てくれた……嬉しかったんだ凄く。
アンタはアタシを助けてくれた、自分が傷つく事も恐れずにアタシを救ってくれた……だからアタシはアンタの力になりたい。
やっと出会えた最高のロードと共に居たい……ダメか、シグナム?
「……いや、其れがお前の意思ならば拒否する理由は無い。
それ以上にお前ほどの奴が共に居ると言うのなら、心強いが――だが、私と共に居るとまた戦う事になるぞ?」
「アタシが嫌だったのは、したくもない戦いを無理矢理させられる事だ。
自分で選んだロードと一緒に戦えるなら、其れは嫌な事じゃない。寧ろずっと待ってたんだ、真のロードと一緒に戦える日を。」
「そうか……ならば拒否する理由は無い!
誇り高い炎熱の融合騎アギトよ、私は此れよりお前のロードとなる!如何なる時でもお前と共にある事を我が剣と誇りに誓おう!」
「融合騎アギトは此れより烈火の将・シグナム専用の融合騎となる。
我が力は、いつ何時でも我がロードの為に……そして、マイロードと共に正しき道を歩む事を我が魂に誓う。」
――キィィィン…バキィィン!!!
《融合完了、融合適合率99.98%!》
「此れは……確かに力湧いて来る……お前の思い、確かに受け取ったぞアギト!!」
あぁ……アンタの思いもアタシに伝わったよシグナム……本気でアタシの事を考えてくれてたんだな。
うし…なら早速一仕事だ!
あのクソッたれどもの作った機械兵器が未だうようよして居やがる……一気に吹き飛ばそうぜシグナム!
「異論はない……早速その力を貸してもらうぞ!」
《おうよ!!》
行くぜぇ、覚悟しやがれ!!!
「《火竜一閃!!!!》」
――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
一撃焼滅……はは、コイツはスゲェ……やっぱりシグナムこそが、アタシの真のロードだったんだな…
うし、このまま行こうぜシグナム!ガジェットなんざ1機残さずに焼きつぶしてやる!!
「全く威勢の良いモノだな……だが其れが良い!行くぞ、アギト!!」
《おうよ!!》
先ずはアタシを好き勝手使ってくれた奴等に、バッチリ礼をしてやる!!覚悟しとけよクソ野郎ども!!!!
――――――
Side:サイファー
此処が管理局の地下最深部――最高評議会の根城か?……ジメジメしてかび臭い……掃き溜めのゴミが住むには丁度良い環境だな。
さて、どうやって進む?灯りは無いが…
「ん?そんなモノは勘で。」
「雷華!?其れは色々問題あると思うよ!?」
「よし、其れで行こう。」
「サイファーも!?」
悪いがチマチマ考えるのは得意じゃなくてな、己の勘に従うほうが万倍効率が良いと思うからな。
其れはお前にも経験があると思うが?
「其れを言われたら何にも言えないけど……ん〜〜〜…確かに詳細不明の敵の本拠地では勘での判断は大事だよね。」
だろう?所詮はどんなデータも研ぎ澄まされた勘が導き出した答えには敵わないモノだ。
己の勘を信じて進み、辿り着いた先でキングの駒をチェックメイト――其れで全てが終わりになるさ……多分な。
まぁ、精々泣き叫べよクソ共……お前等の断末魔こそが、お前等に殺された者への鎮魂歌になるのだから――
To Be Continued… 
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