Side:スバル
「ターミネーターモード…!!」
倒した筈のギン姉が立ち上がって、そんな事を言った瞬間――ギン姉の身体の損傷は全部回復した…振動拳で破壊した腕すらも…嘘だよね?
しかもそれだけじゃない、私でも分かる位に魔力値が上昇してる……此れは推定AAAはあるんじゃないかな?少しきついかも…
『オイ、スバル…』
「ノーヴェ…若しかしてそっちも?…ディー姉とウェンディは!?」
『やっぱりみんなの方も…!』
『ターミネーターモードってのが起動したみたいっすね〜……此れはちっとだけキツイかもしれねッスな。
だけど、ちっとだけっす!こんな奴等に、アタシ等ナカジマ姉妹が負ける筈ないッス!スバルだって操られたギンガには負けねッスよね!?』
ウェンディ……うん、そうだね!
少なくとも一度は倒したんだから、もう一度倒せば良いだけ!
其れに、ターミネーターモードって事は、此れは文字通り『最終手段』だろうから、この状態のギン姉達を倒せば今度こそ終わりだよ!
「もう1度だけ、限界まで力出してみようか?……出来るよ、アタシ達なら!!」
『だな……もういっちょ覚悟決めっか!!』
『皆生きて再会……約束だよ…』
『約束っす!じゃあまぁ…第2ラウンド兼ファイナルラウンド……開始ッスね!!』
うん!マッハキャリバー!!
『All right.Load Cartridge.』
「フルドライブ!!」
もう一度……今度は止めるだけじゃなく、ギン姉を操ってる何か――其れがある筈だから、其れを壊してギン姉を取り戻す!!
魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福106
『姉妹の絆は鉄より堅く…』
Side:ウェンディ
さてと……スバル達にあぁ言った手前、アタシが負ける事は絶対に許されないっすけど、正直如何したモンすかね〜〜?
多分復活したコイツには、ステルスフローターマインはもう通じないだろうし、若本神拳究極奥義は破壊力が凄すぎて使えねぇっすからね〜?
……………チマチマした事を考えるのはアタシらしくねっすな。
当たって砕けろってのがアタシにはピッタリだし、考えるよりも勘に任せて動く方が性に合ってるッス!
「……って、アンタなんか見た目が変わってねぇすか?」
「…………………固体名ウェンディ・ナカジマを敵性と判断……危険度A……能力フルモードで排除します。」
感情の起伏が少ないとは思ってたけど、此れじゃあ完全に機械っす!
しかも、眼の色反転して髪の毛白くなって逆立ってって、アンタはダグナーと超サ○ヤ人の複合体っスか!?もう訳わかんねぇッス!!
取り敢えずステルスフローターはダメでも、フローターマインの『弾幕』なら如何っすか?
避けようがない位フローターマインをばら撒けば、取り敢えずは……
――ドドドドドドドドドドドド!!!!
多少のダメージにはなると思うんすけど……
「……損傷軽微、戦闘行為に問題なし…」
「ほとんどノーダメージっスか……さっきと比べたら耐久力が馬鹿みたいに上がってるっすね……此れは長期戦覚悟した方が良さそうっすな。」
しかも、元々無表情だったのがさらに無表情になってるから、何をしてくるか一切読めねぇのが厄介っすね。
……絶えず弾幕展開して、死角からストライクアーツと若本神拳で削るのが上策ってやつっす!!
寧ろ弾幕上等!弾幕至上主義!!『安全地帯?何それ美味しいの?』っす!!!そうと決まればフローターマイン設置…150個っす!!!
「?」
って、姿が見えねっすな?……まさか逃げたとかじゃないっすよねぇ?
――ザクゥゥゥ!!!!
「!!!!!!!」
う、後ろから……何時の間に背後に移動したッスか…?全然見えなかったっす……!
てか、今の一撃、アタシが戦闘機人じゃなかったら間違いなく戒名ついてたっスよ……自分が戦闘機人だった事に感謝っすね……痛いけど。
「敵性対象……スピードレベルB−……殲滅可能範囲……」
「……これは、ちとやばいかも知れないすな…」
悔しいけど、確かにアタシはそれ程スピードが速い訳じゃないから、高速で動き回られたら正直ついていけねっすよ…
自分の周囲にフローターマインを大量設置しても、其れすら抜けられたら…どうやらターミネーターは伊達じゃないみたいっすね…皆は無事っすかね…
――――――
No Side
ウェンディの心配は、現実のものとなっていた。
ノーヴェと交戦中のチンク、ディエチと戦闘中のディード、そしてスバルと戦闘中のギンガもオットーと同様の状態となっていた。
眼の色は反転して白く染まった髪が逆立ち、そして一切の人間的感情を排除した機械的な話し方へと変わっていた。
そして、それと同時に基本能力も恐ろしいほどに高められているようだ。
「!!ナイフの投擲量が……5倍じゃ済まねえだろ此れ……!!幾ら何でも回避しきれねぇぞ…!!」
「……殲滅する…」
――バババアバババッババアバッババババババ!!
「のやろぉぉぉ!!!」
ノーヴェは無数に撃ち出されるランブルデトネイターを得意のストライクアーツとガンナックルの魔力弾で撃ち落とすが、物量に差がありすぎる。
撃ち漏らしたのはギリギリで回避するとは言っても限界がある。
なによりも、ノーヴェはさっきの攻防で右足を大きく負傷しているのだ――フットワークが落ちた状態で全弾回避が出来る筈もない。
――ドスッ!!
「!!!」
遂に1本が左足に突き刺さり、思わず動きを止めてしまう……そして、其れは最大の悪手だ。
動きが止まれば無数のナイフは容赦なくノーヴェを射殺さんと向かってくる。
「クソッたれ……!!」
其れでも動く両の腕で殴り飛ばすが、此れはもう悪足掻きだろう……
――ドドドドドドドドドド……
「ガハ……チクショウ……」
腕や胸、腹に合計10本のナイフを喰らって、遂にノーヴェはダウンしてしまった。
ディエチの方は更に状況が悪い。
元々相性的には最悪の相手が、ターミネーターモードでリミッター解除したとなれば、状況不利どころではない――如何考えても詰み状態だ。
「く………」
其れでもディエチが即刻落とされていないのは、最低限のストライクアーツを身に付けていたからだ。
もしも、一切のクロスレンジ戦闘方法を持たない砲撃手だったら、ターミネーターモードが起動して居た時点で叩きのめされていただろう。
だが、それも一撃で終わらなかっただけの話……自分の得意間合いでないディエチの劣勢は誰の目にも明らかだ――もう何度も斬られているのだ。
「………降参推奨………」
「……其れはお断りかな……それに、切り札は取っておくものだよ!!」
其れでもディエチは諦めず、戦闘中に放り出したイノーメスカノンを遠隔操作して砲撃を放つ!
だが……
「浅はか……」
「そ、そんな………」
其れすら避けられ、ディードの凶刃がディエチを貫いた……
そしてスバルは一番悲惨な状況となっていた。
フルドライブまで発動してギンガに向かったにも拘らず、乾坤一擲の一撃はあっさりと避けられ、逆に強烈なカウンターをお見舞いされてしまったのだ。
しかもそれだけでは済まず、ギンガはスバルの髪の毛を掴んで無理矢理立たせると、そのまま拷問の如きボディブローの連射!
死なないように、気絶しないように威力が調整された最悪の攻撃を連続で使ってきたのだ。
「ガハ……ぎ…ギン…ね…――ゴスゥゥゥ!!!……ゲホォ!……ガハ…はぁ…はぁ…」
――ドサリ…
一体何発殴られたのだろうか?髪を掴む手を離すと、スバルは糸が切れた人形の様にダウン。
其れを見るギンガは一切の無表情――倒れる少女が自分の妹などとは微塵にも思っていないようだ…
ターミネーターモードの発動で、状況は一気に逆転し最悪状態となってしまった。
ウェンディもまた、フローターマインを逆利用されて戦闘不能寸前状態にまで追い込まれてしまったのだ。
これでスバル、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディは何れも無視できない大ダメージを負ってしまった状態……このままでは各個撃破は時間の問題だ。
だが……
――ガァン!ガァン!!ガァン!!!ガァァン!!!!
4人に止めを刺そうとしていた暴走戦闘機人に、何処からともなく魔力弾が降り注いでその行く手を阻んだ。
「「「「え…?」」」」
突然の事態に何が起きたのか理解できない……しかし、スバル達を助けたのは忘れてはいけない六課の狙撃手だった。
『ギリギリ間に合ったか!おい、大丈夫か嬢ちゃん達!』
「この声は……」
「ヴァイス曹長…!!」
狙撃手の正体はヴァイス。
今の今までデバイスの調整が続いていたせいで出撃が遅れていた頼れる兄貴分が、遂に市街地戦闘にその姿を現したのだ。
『ワリィな、遅れちまったがその分はキッチリ働くぜ?
…つーか、スカリエッティの旦那はマジで天才だな?ストームレーダーを複数同時狙撃が出来るように改造してくれたんだからよ!』
更に愛機がスカリエッティの魔改造を受けての御登場!
ギンガ達を撃った狙撃は、マルチロックオンから放ったモノなのだろう。
『とは言え、随分ボロボロだな……まぁ、そいつの対策もしてある……頼みますよ、シャマル先生?』
『えぇ……風よ、癒しの恵みを運んで………!』
『そぉらよっと!!!』
更にヴァイスの傍らに居たシャマルが『癒しの風』を発動し、それと同時にヴァイスがストームレーダーのトリガーを引き絞る。
そして放たれた緑色の魔力弾が、今度はスバル達に降り注いだ。
だが、決してこれは誤射ではない――誤射どころか最大の援護射撃だ。
「!!此れは…!!」
「き、傷が治ってダメージが回復したッス…!!」
「まさか…癒しの風を撃ち出した?」
「マジかよ……」
其れを受けたスバル達は、被ダメージが嘘の様に回復し、更には魔力と体力まで回復した全力全快状態に!
そう、マルチロックオンだけでなく、ストームレーダーには新たに『他者の補助魔法を撃ち出す』機能が追加されてたのだ…正義のマッド恐るべし。
兎に角これで状況は好転はせずとも五分にはなった。
疲労もダメージも回復したスバル達ならば、今度はターミネーターモードが起動したギンガ達に一方的な展開に持って行かれる事はないだろう。
いや、それどころか……
「ギン姉から、人の感情を奪って戦闘マシーンに……」
「ったく、誰がどうなろうと最終的に勝てりゃ満足か?……ザケンなよコラ…」
「黒幕は打ち首獄門っすね…」
「先ずは、此処を終わらせる…!!」
明らかに回復前よりも、其の力が増大していた。
癒しの風の効果だけではない……彼女達の中にある『人の心』が、余りにもふざけた事をしてくれた『黒幕』への怒りで満ち、爆発したのだ。
そして、申し合せた訳ではないが其れが合図!
「「「「ハッ!!!」」」」
「「「「!?……索敵不能……!?」」」」
ターミネーターモードのギンガ達ですら捕らえられないほどの速度で距離と詰めるとそのまま殴り飛ばす!
そしてその攻撃は止まらない!
スバルも、ノーヴェも、ディエチも、ウェンディも有る一か所を目指して夫々の相手を誘導し、殴り飛ばしていく。
「凄い!皆ピッタリだ!!」
「アタシ等は姉妹だろ?お互いの考える事は、結構わかるんじゃねぇか?」
「其れは言えてるかも……」
「兎に角これで、全員集合っすね!!」
4人全員がお互いを目視できる距離にまで集まったのは、ミッド中心街から少し外れた上空。
姉妹の絆は、言葉を交わさなくとも確りとお互いの考えが分かっていたらしい。
そして、4人揃ったならもう迷う事はない。
――バキィィィ!!!!
渾身の一撃で夫々の相手をブッ飛ばして1か所に纏め、その周囲を取り囲むようにして陣を組み、そして魔力を高めていく。
「今度こそ此れで終いだ眼帯チビ……大人しく眠れよ!!」
「もう、終わりにしよう……意思なき戦いに、意味は無いから…」
「取り敢えず、目が覚めたらアンタの性別教えてくれっス!」
「此れで目を覚まして、ギン姉!!」
「エネルギー充填率…計測不能…」
「回避不能…!!」
高まる限界を超えた魔力!完全に囲まれたギンガ達に回避する術はない。
例え防御しても、計測不能と判定された魔力に果たして耐えられるかどうかは定かではない――いや、間違いなく不可能だ。
「じゃあな!喰らいやがれ…ブラストファイヤー!!」
「出力最大…ファイナルキャノン!!」
「パワー全開っす!!必殺、エリアルキャノン!手加減なしっす!!」
「一撃必殺!アロン…ダイトォォォォォォォォォォォォォ!!!」
――キィィン…ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
そして放たれた4本の直射砲。
黄色、橙色、桜色、空色の4色の魔力砲撃が手加減なしでギンガ達に炸裂!
防御壁を張るも、そんなモノはまるで無意味だ……この砲撃にはスバル達の思いが詰まっているのだから――意志なき者に止められはしない。
虹色の如く混ざった4つの砲撃は、防壁をも貫通してターミネーターを打ち据え、そして沈黙させた。
チンク、ディード、オットーの3人は完全に機能を停止し、後は捕縛を待つだけだ。
だが、ギンガだけは、ギリギリ意識を保ってた。
「スバル…ディエチ…ノーヴェ…ウェンディ…」
「ギン姉!」
「ギンガ!!」
「姉さん!!」
「ギンガ姉!!」
「…様ないわね…敵にやられて、良い様に操られて……長女失格だわ…」
「そんな事ないよギン姉……戻ってくれてよかった。」
自嘲気味に言うギンガを、スバルは優しく抱きしめてやる…いや、スバルだけでなくノーヴェにディエチにウェンディもだ。
奇しくも最大級の一撃の共演が、ギンガを操る為に埋め込まれていたレリックを破壊し、ギンガに正気を取り戻させたようだ…
「ゆっくり休んでくれよギンガ……後はアタシ等でなんとかしてみるよ。」
「星奈さんと冥沙さんも居るから、きっと大丈夫……」
「うん……悪いけど、皆に任せるね…」
其れだけ言ってギンガは意識を手放した………だが、市街地戦闘の戦闘機人がらみの物は、六課の勝利である事は間違いないだろう。
――――――
Side:シグナム
今の魔力…ナカジマ達か?――如何やらあいつ等も己の成すべき事をちゃんとなしているようだな。
ならばライトニング副隊長である私が後れを取る事は出来んな?……まぁ、人造魔導師如きは私の相手ではないがな!レヴァンティン!
『Jawohl.Schlangebeissen.』
「舞え…陣風!!」
――ズバァァアァァァァァァァァァァァァ!
ふぅ……レヴァンティンの錆にもならんな……この程度ならば大した事はない相手だが…
――轟!!
!!…炎熱砲だと!?………新たな人造魔導師…お前か…
「………」
黙して語らずか……だが、今の炎熱砲はお前の力のみで使えるモノではない……お前、『融合』しているな?
一体何処で手に入れた、貴様と無理矢理ユニゾンさせられているその『融合デバイス』は…!事と次第によっては貴様を斬り捨てる!
「…………」
「あくまで語らないか……ならば相応の対応を取らせてもらう!」
そして、無理矢理ユニゾンさせられている融合騎を救い出す!…そいつからは私達の同胞である匂い――ベルカの魔力パターンを感じるからな…!
To Be Continued… 
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