衛星砲が放たれるより少し前に時間を巻き戻そう


Side:ノーヴェ


へ…やっぱりこいつ等は大した事はねぇな。
ロン毛とショートは、アタシとスバルの振動破砕付加の格闘に手も足も出ない状態だし、眼帯もディエチとウェンディ相手じゃ分が悪いみてぇだな。

「オラオラオラ!如何したロン毛!反撃してみろよコラ!!」

「幾ら防御固めても無駄だよ?どんなに強固な防御でも、アタシとノーヴェの振動破砕の前には一切…」

「意味はねぇ!!!!」


――バッキィィィィ!!


「何と言うすさまじい威力…ですが、此れで確信しました――次の攻撃で終わりですね。」


あ?終わりだと?……あぁ、終わりだ――終わらせてやるよ!
ギンガを…姉貴をあんなにした事は絶対許さねぇ!!テメェ等纏めてスクラップになって、ギンガに詫び入れろクソッたれが!!!!


――ドガァァアァァ!!!


「……防いだか…だけどなぁ!!」

「いえ、此れで終わりです…」

「なに?…………な、何だよ此れ!!」

アタシの足が…ぶっ壊れて内部フレームが剥き出しに!!…スバルの腕も同じ状態になってるじゃねぇか!!…如何して…


「己の力を過信し過ぎたな貴様等は………あらゆるものを破壊する振動破砕を使い続ければ、使用者にも負担は跳ね返り、身体を蝕む。
 私と戦っていた赤毛と栗毛も同様だ――強力な力を使い続ければ限界は直ぐに訪れるのだからな…」


!!…にゃろう…って事は何か?端っからテメェ等は、アタシ等の自滅を待っていたってそういう事かよ!?……ざっけんなよ、この野郎!!


「ふざけてなどいない…此れにて任務完了だ…お前達が『生きていた』ならば、また見える事も有るだろうがな…」


待て!!待てよ!!ギンガを返せ!!返せよぉぉぉ!!!!




結局アタシの、アタシ達の叫びは届かず、ギンガはアイツ等に攫われちまった。
そして、アタシ等が地上本部と六課の壊滅を知ったのは、母さんに助け出された後の事だった…











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福101
『されど絶望は蝕まない』










Side:ルナ


まさか衛星砲とは流石に予想できなかったな…なのは、大丈夫か?


「流石に少しダメージが大きいよ…まぁ、私とルナはエクリプスドライバーだから、このレベルの負傷でもまるで問題にはならないけど…」

「あぁ…一般の武装隊員は略全滅と見ても良いだろうな…」

少なくとも戦闘が行える状態じゃないのは確かだろう――この状況に於いても、六課本部の死者はゼロであると言う事はある意味で奇跡とも言えるだろう。
加えて、美由希達とサーク達が軽傷と軽破損で済んだのは不幸中の幸いとしか言いようが無い。

だが、六課本部の建物は略全壊状態…恐らくは地上本部も似たような状態だろうな…

「美由希、状況は如何だ?」

「取り敢えず、死者がゼロって言うのが不幸中の幸い……シャマルが無事で、辛うじて六課の医療機能が停止しなかったのも御の字ね。
 まぁ、此れで済んだのはなのはとルナが捨身のプロテクションを使ってくれたおかげなんだけど――それでも状況は良くはないわ…」


だろうな……詳細な被害状況と今後どうするかは、地上本部の方に居る面子が集まってからと言うところか…
まぁ、済んだ事をうだうだ言っても仕方ないな。大事なのは、此処からどうやて状況を打開して連中を倒すかだろう?


「うむ…その通りであるな…」

「まぁ、其れしかないしね………だけどその前に、なのは、ルナ…」

「お姉ちゃん…」

「美由希…」

矢張りこれは避けられないか……精々思い切りやってくれ、此れは私となのはが甘んじて受けねばならぬ罰だからな…


――パン!パァン!!!


「「…!!」」

「2人とも、何で殴られたかは分かるわよね…?」


あぁ…分かるさ…嫌と言う程な。
仕方がなかったとは言え8年は長すぎた……お前達には、心配を掛け続けだった…


「そうよ…私達がどれだけ心配したと思ってるの!?お母さんなんて食事が喉を通らない時だってあったんだよ?
 本当に…本当に心配したんだから……星奈達が存在している限りは生きてるって分かっても、其れでも心配はする…其れ位は分かるでしょう?」

「そう…だね……ごめんなさい…ずっと連絡を入れなくて…」

「本当よ…お母さん達にも、ちゃんと謝りなさい……だけど、生きていてくれてよかった……本当によかったよ…おかえり、なのは…ルナ。」


――ぎゅ…


「!!……ただいま…ただいま、お姉ちゃん…!!」


なのは……8年間も頑張っていたからな――敬愛する姉と再会して感極まるのも無理はないか。


「ル〜〜〜ナ〜〜〜〜!!」

「へ?」


――ドガスゥゥ!!!


ぐは!!…ら、雷華……全力で突撃するのは止めてくれないか?幾ら私でも、お前の全力を受け止めるのは楽じゃないんだ。
パラメータが攻撃力振りきりなのを理解しような?…一般人にはやってはダメだぞ、お前の突撃の衝撃で良くてムチ打ちは免れないからな?


「気を付ける!だけど、此れはしょうがないじゃん!僕だってルナとなのはの事は物凄く心配してたんだから!
 僕だけじゃない、星奈んも王様もゆーりも2人の事は心配してたんだぞ?僕達が生きてる限りは2人は無事だって言っても、心配はするんだ!」

「そう、か……お前達にも多大な心配をかけてしまったな……すまなかった――そして、ただいま皆。」

「えぇ…おかえりなさい。何時の日か必ず戻ってきてくれると信じていましたよ。」


そうか……


『〜〜〜♪』

「なぁ〜〜〜〜ご〜〜〜。」


!!なはととナゴも!…お前達も私達を待ってくれていたのか――8年ぶりだな、ただいま2人とも。
と言うか、お前達も無事だったのか。


『〜〜〜♪』


咄嗟に防御魔法を使ったから瓦礫の下敷きにならずに済んだ?……小さいながらも相変わらずのハイスペックだなお前は。
何にしても、先ずは怪我人の――重症患者を優先的に治療する事が先決か………ん?


「ママ〜〜〜♪」

「ヴィヴィオ!良かった…無事だったんだ。」


あの子は、確か六課に保護されたオリヴィエの――ヴィヴィオと言う名前だったのか。
と言うか『ママ』とは?あの子を引き取る心算なのか美由希は?………だとしたら、実家に紹介する際に一悶着あるだろうな、恭也のせいで。


「否定できぬ……碌に話も聞かずに『相手は何処のどいつだーーー!』と絶叫する様が目に浮かぶわ。」


確かにな。
それにしても本当にあの子は美由希の事が好きで、美由希もあの子を大切に思っているんだろうな――――



――ガシィ!!



「ふにゃ!?」

「「「「「「「!!」」」」」」」


「は〜〜い、ごっくろうさま〜〜!態々此処に潜んでた甲斐はあったね。」


地面の中から!…お前、最高評議会の戦闘機人か或は…人造魔導師!


「ご明察!最高評議会の戦闘機人、ナンバー6のセイン、以後宜しく!!取り敢えずこの子は貰ってくよ〜〜!」

「…ふざけないで。そんな事をみすみすさせると思うの?
 ヴィヴィオを傷付けずに貴女を居合いで『貫く』位は造作もない……その汚い手を私の娘から離しなさい。」

「娘?あはははは!!本気で言ってんの?此れは傑作だね〜〜。
 この子はさぁ、所詮ゆりかご起動の為の鍵に過ぎない――言うなら道具だって分かってんの?其れを娘だなんて…物好きここに極まれりだね〜〜!」

「…黙れ。」


美由希の言う通りだな……お前の言う事は聞くに堪えん――そのまま消え去れ!!

閻魔刀(やまと)

『Slash down.』

神龍断!!!


私の逆手居合いと美由希の神速居合いの連携はおいそれと躱せるものではない…ヴィヴィオは返してもらおうか!


――瞬


「「!?」」


消えた!?…馬鹿な…一瞬で離脱したとでも言うのか!?
!!!…まさか…地面に潜って逃げたのか!?……現れる時も地面から生えるようにして現れたが――アレがアイツの戦闘機人の能力と言う事か…!!

くそ…地面の中を移動されたんじゃ追いかけようがないじゃないか…!!


「ヴィヴィオ…そんな……ヴィヴィオーーーーーーーーーーー!!!」


最悪だな…あの子が最高評議会の手に落ちたとなると、間違いなく『ゆりかご』は起動するだろう。
1つ目の予言が現実になってしまったか……だが!!

「未だだ…まだ終わりじゃない。
 死者はゼロで、シャマルが無事なら戦力は武装隊員の治療も出来る――其れに2つ目の予言はまだ現実になって居ない…!!」

「ルナ…?」


星と月は地獄の使者となる……私となのはは、まだ最高評議会に対して地獄の使者にはなりきってはいない…!!
ならなってやろうじゃないか、最高評議会に終焉を齎すための『地獄の使者』に!!

だが、予言には1つだけ訂正だな。
地獄の使者と化すのは星と月だけじゃない…星と月に加え、理と力と闇と紫天、そして剣聖と夜天と群雲と雷光とその他諸々も追加だ。

何より、私となのははリベリオンズ――反逆者集団の構成員だ。
その名の通りに反逆してやるさ…お前達がなさんとする其の愚行にな!!その上でヴィヴィオも救い出す!!

だから安心しろ美由希、あの子は絶対大丈夫だ……月の祝福の名に誓ってな。


「ルナ…そうだよね……攫われたんなら取り返せば良いだけだもんね。
 だけど、ヴィヴィオは私が救い出すよ……娘を助けるのは母親の役目でしょ?」

「それもそうだな。」

なら、ヴィヴィオの救出はお前に任せる。
私達は、何処までもふざけた事をしてくれる最高評議会を、文字通り塵すら残さずに完全撃滅してやる…!!








――――――








Side:はやて


ふぅ…死者はゼロやけど、六課本部と地上部隊は壊滅してヴィヴィオとレリックは最高評議会に奪取されてもうた。
嫌な予感程よう当たるて言うけど、ホンマにそうやな……カリムの1つ目の予言は現実になってもうた訳やからな。

加えて、ギンガが相手に攫われてノーヴェとスバルが重傷って、被害が可成り大きいのは否めん事態やね。

せやけど、此処で諦める事は出来へん。
不幸中の幸いで、死者ゼロでシャマルが健在なら戦力は十分確保が出来るし、何よりなのはちゃん達『リベリオンズ』が居てくれるのはありがたいわ。

「と、言う訳で状況は最悪極まりないけど、此れで終わりやない。
 ヴィヴィオが敵の手に落ちた以上、ゆりかごの起動は止められへんが、逆に其れが私達にとっての好機でもある。
 今は動きようがないけど、ゆりかごが起動すれば、ほぼ確実に最高評議会は、其れに便乗する形で最大戦力を送り込んでくることは目に見えとる。
 せやから私等は、ゆりかごの起動を待って、起動し次第此方から打って出る!!キツイ戦いになるやろけど…皆の命、私に預けてもらうで!」

返事はないけど、全員が強い光を宿した瞳で私を見とる――うん、受け取ったで皆の覚悟は!!

「やけど、私に命預けた言うても死んだらアカン!全員必ず生きて帰還するんや!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」


良い返事や。
さて、そうなると問題は戦力配分や…ゆりかご突入組と市街地防衛組を決めなあかん。
突入組美由希さんは確定として、最低でもあと3人は欲しい所やけど…


「私が行こう。」

「私も行くよ。」

「アタシも行くぜ…クソッたれどもはぶっ潰してやらぁ!!」


ルナさんになのはちゃんにヴィータ…!……確かに此れならバランスは良いなぁ?
…うん、分かった、ゆりかごはなのはちゃん達に任せるわ!


そうなると、残るメンバーの戦力配分やけど…



――ヴン…



!!…強制通信!?…なんや一体…!


『あはははは!聞こえるかしら愚か者たち!!私は最高評議会の新たなリーダーたるキスティよ。
 ゆりかごを起動するための鍵は、私達の手中にあるわ!…調整が済むまであと1時間……そしてその1時間後がお前達の終焉の時よ!あははは!!』



コイツは!!……言うてくれるやないか…1時間が過ぎたらゆりかごが起動してミッドは崩壊か?
やれるもんならやってみ!最高評議会に組されたエリート擬きのなれの果てにやられるほど私等は脆くないからな?

寧ろ上等や…今の宣戦布告で、この夜天の冥王には完全に火が点いたで?……なのはちゃんも良い感じにプッツン行ってるみたいやしなぁ?



予言はちぃっとばかし改編やな?
最高評議会に断罪の鎌を振り下ろすのは夜天の冥王と白夜の聖王や……そして、2人の王の従者達と仲間達が滅びを切り裂くんや!



なんや、1つ目の予言が現実になってもあんまし脅威やなかったやん。
機動六課と地上部隊、そしてリベリオンズ――此れだけの力が集えば、最高評議会の謀略なんて『屁』みたいなもんやろ?

纏めて叩きのめしたるから覚悟しとけや!!








――――――








Side:なのは


「お姉ちゃん、大丈夫?」

「うん、まあ一応は…」


六課と地上部隊、そして私達リベリオンズを含めての会議やら何やらは滞りなく終わって、今はすっかり夜。
辛うじて無事だった六課の宿舎の屋上で、今はお姉ちゃんと2人きり……こうして2人で一緒に居るのも8年ぶりだね。


「そうね……ねぇ、なのは――あの子は、ヴィヴィオは無事かな?」

「……酷な事を言うようだけど無事って保証はないと思う。」

相手は人の命を道具程度にしか思ってない最高評議会だから………最悪の場合、ヴィヴィオちゃんを洗脳するなりして手駒にしようとする可能性は…
其れにあの子はオリヴィエのクローンだから、ゆりかご起動の鍵でもある。

其れを考えると、全く無事とはいう事は出来ないよ――ゴメン。


「なのはのせいじゃないでしょ……っていう事は何が何でも私が救ってあげないとダメだね。
 うん……私は何があっても必ずヴィヴィオの事を救い出す。…だから、他の事は貴女達に任せても良いかな?」

「良いよ。寧ろ任せて。」

ゆりかごの中の色んな何かは、私とルナとヴィータちゃんで撃滅するから――お姉ちゃんは、必ずヴィヴィオちゃんを助け出してね?


「勿論よ。……ふふ、8年間会わなかった間に、随分頼もしくなったわねなのは。…お姉ちゃんは嬉しいよ。」

「8年の間色々ありましたから。」

その色々な経験のおかげで、私は誰にも負けないって言う自信を持つ事が出来るんだけどね。

何にしても、最終決戦は最速で明日――必ず勝とうねお姉ちゃん!


「えぇ…勿論よ!我が剣、暮桜に誓って、この決戦を制してヴィヴィオを救い出す!」

「白夜の聖王の名に誓い、狂った欲望をなさんとする者に死の鉄槌を下さんとする……!」

精々勝った気になっておくが良いの、最高評議会!
貴方達が最終的な勝利を得る事だけは絶対にないって断言してやるから―――最終決戦を制するのは、私達だからね!!








――――――








Side:???


ゆりかごの起動キーを奪取して、宣戦布告か……うむ、演出的には悪くないね。
まぁ、好きにやってくれたまえ…あの役立たずの脳味噌は私が破壊したから、君の成す事に異を唱えるモノは最早存在しないからねぇ?


「礼を言うわ…此れで私は世界の王となる!!
 あとはゆりかごの起動がなれば、其れこそすべてを終わらせられる!終わりの始まりよ!あはははははははは!!」


やれやれ…醜いモノだねマッタク。
まぁ、精々君も頑張ってくれたまえ……そう、エクリプスの有用性を世に知らしめるためにも、ね。















 To Be Continued…