Side:洸


クソ、次から次へとうざったいな闇の欠片は?……俺の見知った顔と戦うって言うだけでも嫌なのに、其れが次々と現れるなんて、精神によろ
しくない事この上ないぜ。

だからと言ってへこたれる気はねぇけどな。



「そう来なくっちゃ!
 乗り掛かった舟どころか、完全に両足突っ込んでるんだから、此処でやめるとか有り得ないし、こんな所でへこたれる事だって出来ないわ!
 洸君だって、そう思ってるんでしょ?」

「まぁな。」

中途半端ってのは何より好かねぇし、中途半端で終わらせたら、志雄先輩の鉄拳が飛んできそうで怖いからな……ぶっちゃけ、志雄先輩の拳
は、じっちゃんでも捌き切れるかどうかってモンだからな。



「洸君のお爺さんは超達人だけど、其れが捌き切れない一撃を放つ志雄先輩って、本気で何者!?こう言ったら物凄く失礼な事を承知で言う
 けど、志雄先輩バグってんじゃないの!?」

「まぁ、その意見には同意するわ……彼の力は、3S級のグリードをも超えていたから。」



ですよね~~……って、オイ、何か1人多くねぇか?



「い、言われて見れば……まさか!!」

「久しぶりね2人とも――また会えて嬉しいわ。」



その増えた人員は、フェイトちゃんの母親にして、あの時に果てた筈の大魔導師プレシア・テスタロッサ!!――まさか、此処までの大物が闇
の欠片として再生されるとは思わなかったぜ。
だが、此のプレシアさんが只の闇の欠片じゃないのは分かる。――だって、俺達の事を覚えてたし、何よりも此れまで倒して来た闇の欠片と違
って嫌な感じがしないからな?
だとすると、誰かの記憶から再生された訳じゃないって事か?……取り敢えず、話してみる必要がありそうだぜ。













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE99
『A's portable~大魔導師の復活~』










そんでプレシアさん、アンタは何だってこんな所に現れたんすか?
闇の欠片――って言うには、ちょっと異質だけど、全く全然無関係って訳でもねぇと思うんすよね?何て言うか、こっちに現れる時に前兆と言う
か、そんな物とか無かったんすか?



「其れが、全く全然何もなかったわ。
 言うならば熟睡していた所を、行き成り起こされたような感じかしら?ほんと、何の前触れもなくこうしてこの世界に現れてしまったわ。」

「熟睡してた所を起こされたって……其れは其れで災難としか言いようが無いような気がするんだけど……」

「分かってくれるかしら璃音さん?
 ホントに起こされて吃驚よ。と言うか、私の場合は起きちゃダメなパターンよね?だって、もう死んでるんだし。」



いやぁ、そんな事言ったら身も蓋も無いんじゃないっすかね?
きっと、プレシアさんが只の闇の欠片じゃなくて、限りなく生前に近い状態で再生されたのには、絶対に訳があると思うんすよ――例えばほら、
フェイトちゃんと会ってちゃんと話してみるとか、リンディさんに会ってみるとか。



「フェイトとリンディに?……そうね、其れもアリね。
 フェイトの事はリンディに任せてしまったけれど、その後どうなったかは聞いておきたいし、フェイトにも何一つ母親らしい事をしてあげる事が出
 来なかったから、少し甘えさせてあげるのも良いかも知れないわ。」

「そう言う事なら、フェイトちゃんに連絡入れて合流しちゃいましょう!
 闇の欠片って、不安定な存在みたいだから、プレシアさんが何時まで此処にいられるかは分からない――ッ!!」

「ん?如何した璃音?」

「洸君、プレシアさん……来るよ闇の欠片が。其れも飛び切り強い力を持ったのが!!」



んな、マジかよ!?
熾天使の力を宿してるせいか、璃音はグリードとか魔力の波動に滅茶苦茶鋭いから、その璃音が来るって言うなら間違いねぇ……其れも、飛
び切り強い欠片って何が来やがるんだ?
……もしも、暴走状態だったころのリインフォースさんとか出て来たらマジで洒落にならねぇぞオイ……!



「ふん、塵芥共が群れているようだが……中々に良い力を持って居るようだ。
 我が悲願達成の為に、其の力をもらうぞ!!」

「中々良き力を持っていますね?……砕け得ぬ闇を手にする為にも、其の力は貰い受けます。」

「君達に恨みはないけど、私達の悲願を果たす為に……此処で君達を倒させて貰う。」



って、マテリアルだと!?
まさか、もう復活した――んじゃなくて、コイツ等はマテリアルの闇の欠片か!!……流石は、なのはちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんをベ
ースにしたマテリアルだけあって、闇の欠片であっても可成りの強さだぜ。
如何少なく見積もってもヴィータちゃんと同格レベルなのは間違いねぇ……それが3体もってのは、連戦の後じゃ流石にきついぜ……!!



「こう言う場面で疲れた時には、片手でお手軽に食べられる、祐騎君特製の『お手軽コロッケパン』だよ洸君!!!」

「ちょっと待て璃音ーーー!お前いったい今それを何処から出したぁ!!」

「アイテムボックスは四次元空間!通常アイテムは99個、欠片と魔石と霊石は999個ずつ所持できるから、此れを持って来れても不思議はな
 いんだよ!!」

「色々突っ込み所が有りすぎんだろ其れは!?」

今更ながらに、サイフォンの『アイテムアプリ』ってどうなってんだろうな?
所持アイテムがデータ化されて登録されて、使うアイテムを選択すりゃそれが実体化するってどんな技術だよ?しかも、異界限定じゃないし。
美月先輩や明日香に聞いても多分分からねぇだろうしなぁ……だが、コイツは有り難く貰っとくか。
……ただのコロッケパンかと思ったら、バターにマスタード混ぜたり、ソースにケチャップ混ぜたりとか、意外に祐騎の奴も凝ってるじゃねぇか。

だが、お蔭さんで体力満タンになったぜ!!
来いよ、相手になってやる!!



「……アリシア――ではないわね。
 容姿はよく似ているけど、あの子はあんな冷たい目をしていなかった……アレは何?マテリアルとか言っていたようだけど……」

「闇の書の構成素体であるマテリアル――を、模した闇の欠片っすよプレシアさん。
 んで、マテリアルってのは、闇の書の闇をぶっ壊した、なのはちゃんと、フェイトちゃんと、夜天の魔導書の主であるはやてちゃんの3人の姿
 を模してるんすよ。」

「闇の書ですって?……成程、其れだけのロストロギアが係わっている事件であるのなら、私みたいなイレギュラーが発生してもオカシク無い
 でしょうね。
 でも、フェイト達の容姿を真似ているマテリアルの闇の欠片と言うのは、見ていて気分の良いモノじゃないわ……何よりも、フェイトを模したで
 あろう存在は、アリシアに瓜二つなだけに許し難いわ。」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

――バチィ!!




「んな、プレシアさん!?
 何て魔力……この魔力、軽く私やなのはちゃんを上回ってる!?――ううん、それどころか暴走状態だったリインフォースさんにすら匹敵する
 レベルだよ此れ!!」

「マジか!?」

稀代の大魔導師とは聞いてたが、まさかそれ程とは思わなかったぜ!……もしも、生きていたら、現代最強の魔法使いだったのは間違いねぇ
だろうな――其れこそ、なのはちゃんだって敵わないかもだぜ。



「消えなさい……サンダァァァレェェェェェェェェェェェジ!!!



――ズガァァァァァァァァァァァァァン!!



「な……馬鹿な!王たる我が、塵芥の一撃で……認めん、認めぬぞこんな結果は!!」

「まさか、これ程の力を秘めているとは……予想外でした……」

「何も出来ないなんて……此れじゃあ、私達の悲願を果たす事は……そんなのは、流石にないよ……」



でもって、一撃でマテリアルを倒しただとぉ!?
なのはちゃんですら一番最初の時には志雄先輩と力を合わせてシュテルを撃退して、はやてちゃんに至ってはリバースユニゾンを使った上で
のギリギリ勝ちで、復活したマテリアル達はその時よりも強いってのに、闇の欠片とは言え、其れを一撃で葬り去るとはプレシアさんマジでハン
パねぇっすよ!!

こう言っちゃなんだが、リインフォースさんとプレシアさんが揃ってりゃ、砕け得ぬ闇――U-Dも何とかなるんじゃないかと思うんだが、璃音はそ
の辺如何思う?



「間違いなく如何にかなると思うよ洸君。
 ぶっちゃけ、イレギュラーとは言え闇の欠片であるプレシアさんで此のレベルでしょ!?ぶっちゃけ、本物のプレシアさんにドレだけの魔力量
 が有ったかなんて想像出来ないじゃない!!
 此のプレシアさんが居れば、間違いなくU-Dを如何にか出来ると思うよ!!って言うか、プレシアさんには大魔導師でも足りないんじゃない?
 プレシアさんは、魔導師じゃなくて正真正銘の『魔女』だよ!!魔法使いや魔導師よりも更に格上の存在である魔女!!」



魔女か……確かに、プレシアさんは魔法使いや魔導師よりも、魔女ってのがあってるかもしれないな。――何でそうなったのか分からねぇが、
黒のロングローブと、金色の杖は、正に魔女そのものだしな。

だが、プレシアさんが一緒なら頼りになる戦力だが……だからと言って頼り切る事は出来ねぇよな。闇の欠片である以上、何時消えるとも分か
らねぇ訳だしな。



「そうね……私は所詮、再生された幻に過ぎないから、何時消えるとも言えないわ。――だから、私が存在している間にフェイトに会いたい。
 何とか会う事は出来るかしら?」



其れは大丈夫っすよプレシアさん。
フェイトちゃんに連絡を入れてみますし、フェイトちゃんならプレシアさんと会えるとなったら、二つ返事でOKしてくれると思うっすから。



「そう、其れは嬉しいわね。」

「だけどプレシアさん、フェイトちゃんと会う時には気をつけた方が良いよ?
 フェイトちゃんてば、再会の際に思いっきり突進してくるからね……なのはちゃんと再会した時には、その突進でなのはちゃんを撃沈した上、
 志雄先輩にも大ダメージを喰らわせたからね~~。」

「……其れは、注意した方が良さそうね。」



フェイトちゃんは、ある意味で究極の肉体派かつ感覚派だからな……考えるより先に身体が動いちまうんだろうな――志雄先輩にダメージを
与えたのにはマジで驚いたぜ。

そんじゃあ、一緒に来てくれるっすかプレシアさん?
璃音がフェイトちゃんと連絡取れたみたいなんで、早速行くとしましょう。



「そうね、行きましょうか……時間は有限と言うしね。
 だけど、只移動するだけって言うのはつまらないから、道中で、あの事件の後のフェイトの事を貴方達が知っているレベルで良いから教えて
 貰えるかしら?
 其れを知っていれば、再会した時にフェイトとの会話も弾むかもしれないからね。」



そう言う事なら喜んでさせて貰うっすよプレシアさん。
何より、プレシアさんもフェイトちゃんも、想像も出来ないような辛い目に遭って来たんだ……なら、一時の事とは言え、2人が本当の家族として
過ごす時間が有ったっていい筈だからな。

此のプレシアさんは、必ずフェイトちゃんの所に連れて行かないとだぜ。








――――――








Side:志雄


闇の欠片にマテリアル、砕け得ぬ闇に謎の渡航者と、問題は山積みな訳だが……その山の一角を攻略できる場面に出くわしたなコイツは?
俺の事を『パパ』と呼ぶハニーブロンドのオッドアイに、なのはの事を『ヴィヴィオさんのお母様』とか言ったって言うエメラルドグリーンの髪に蒼
と紫のオッドアイ、そんでもって、さっき取り逃がした良く分からねぇ黒騎士みたいな奴。

マッタク持って都合が良いぜ……お前等の事は、こっちで確保しなきゃならねぇと思ってたからよ。――悪いが、一緒に来て貰うぜ?

未来から来たであろう、謎の渡航者さんよ!!











 To Be Continued…