Side:はやて


さてと、何が何でも、砕け得ぬ闇とやらを手にする……その意思は変わらへんのやな王様?――例えそれが、破滅も導くモノであったとしても
絶対に退かへんのやな?



「今更何を言うか小鴉。
 砕け得ぬ闇こそが我が望み!破滅を齎す力だとしても、王たる我ならばその力を制御する事も出来よう!故に、砕け得ぬ闇が目覚めようと
 も、其の力は我が使いこなしてくれるわ!!」

「……王様、其れ死亡フラグやで?」

途轍もなく強大な力をその手に収めようとした者は、大抵碌でもない最後を遂げとるからなぁ?――何よりも、今の王様のセリフは、色々とアレ
やったからなぁ……悪いけど、合掌させて貰うわ。



「貴様、我に喧嘩を売っているのか?」

「喧嘩は売ってへんよ?おちょくっとるだけや♪」

「なお悪いわ!!そこに直れ!我が直々に裁きを下してくれるわ!!」



うわ~~、王様が怒った~~♪
せやけど、此れで王様は手玉やから……問題は、砕け得ぬ闇とやらを如何するかや……名前からして物騒な此れが解放されたらトンデモな
い事になるのは火を見るよりも明らかや。

何とかして、砕け得ぬ闇の復活を阻止せんとな!













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE97
『A's portable~起動:砕けぬ闇~』










Side:リインフォース


さてと、此処で私達に会ったのが運の尽きだな王よ。
お前は確かに強いが、騎士達の能力を全て使う事が出来る様になった私の前には、塵芥とは言わないが、それ程脅威となる存在ではない。
王よ、今ならまだ間に合う。あのピンクを止めるんだ。
闇の書其の物であった私には分かる――否、思い出した。砕け得ぬ闇『System・U-D』は、元々は夜天の魔導書のプログラムの1つだった物
だが、ナハトヴァールに浸食されて相当なバグを抱えている危険な物だ。

危険性で言えば、『闇の書の意思』だった私以上かもしれない。其れこそ、目覚めさせてしまったら冗談ではなく世界が滅びるぞ!闇で包み込
む以前にな!



「ククククク……もう遅いぞ。
 あのピンク、中々仕事は素早くてな?既に砕け得ぬ闇を目覚めさせる準備は整っておる!復活は時間の問題よ!!」

「と言うセリフを吐いた悪役は、大抵の場合その目的を達する前にやっつけられるんや♪」

「一々煩いわ小鴉!其の口縫い付けるぞ貴様!!」

「口を縫い付けるなんて、恐ろしい事言わんといてや姉やん♪」

「誰が姉か!貴様の姉など願い下げぞ!!」

「ほな、私がお姉ちゃんやね♪『はやてお姉ちゃん』て言うてみ?」

「だ・れ・が、言うかぁぁぁぁぁ!!!!」



……我が主、取り敢えず私は真面目な話をしていたのですから、王の事をからかうのは程々にしておいてください。何と言うか、偉そうな態度
をしてる癖に、関西弁でからかわれて遊ばれている姿を見ると同情してしまいますので

しかしだ、準備が出来ていると言うのならば、尚の事見過ごす事は出来んな?
お前も、其処のピンクも纏めて叩きのめして、強制的にSystem:U-Dの復活を止めるより他に方法はない様だ……覚悟は出来ているな?マテ
リアルは、言うなれば私の残滓……闇の書の落とし物だ。
ならば、私がこの手で始末をつけるのが道理と言う物だからね。



――轟!!!



「んな、リインフォース!?」

「融合騎……貴様、この魔力は一体!?それに、その身体の紋様は……!!」

「私は一度消滅し、そして復活した。
 その際にナハトヴァールの影響は完全になくなったが、闇の書が取り込んでしまった異界の因子だけは、完全に消えては居なかった――ま
 ぁ、其れが何か悪さをすると言う事もなかったのだがね。
 だが、此の異界の因子はとても強い力を秘めていてな?もしも此れを使いこなせるようになれば、私は全盛期の力を取り戻す事も可能では
 ないかと思い、密かに訓練をしていたんだ。」

その甲斐あって、ご覧の通りだ。
この力を解放すると、闇の書の意思であった頃の赤い紋様が浮かび上がってしまうのが難点だが、今の私は5S級グリムグリードに匹敵する
力を持っている。
その強さゆえに、この姿は5分しか持続できないが、5分も有ればお前とピンクの双方を沈黙させる事位は訳無い事だ。



「その力をもってすればそうかも知れないけど、そんな事したらどうなるか分からないわよ~?
 其れだけの力で戦闘を行ったら、その余波で砕け得ぬ闇に不必要な影響が出て、暴走起こしてトンでもない事になっちゃうかも知れないわ
 よ~~?」

「!!」

そう来たかピンク……確かにその可能性は否定できないな。
元々安定した物ではなかったが、ナハトヴァールの浸食を受けたアレは、僅かな刺激であっても大爆発を起こしかねない核弾頭の様な物だか
ら、私の力の余波だけで暴走しかねないか……ならば、目覚めた所を倒すしかなさそうだな。



「此処で脅しとか、姑息やな、金色ピンクは。
 まぁ、確かにこないな所で弩派手にドンパチかましたら何が起こるか分からへんから、目覚めた所を倒すのが上策やろな。
 そんで王様、砕け得ぬ闇て一体何なん?何だって、王様達は其れに固執するんや?」

「答えてやる義理も無いが、砕け得ぬ闇の復活を前に、我は気分が良いので特別に教えてやろう。
 砕け得ぬ闇とは、言うなれば我等の存在を確定するのに必要な物よ。我等マテリアルは、貴様等の姿を模してはいるが、その存在は酷く不
 安定で、存在が固定されてはおらぬ。
 以前に現れた時に、屈辱の敗北を味わう事になったのも、その不安定さが原因だ。――逆融合した貴様等は、認めたくはないが恐ろしく強
 かったがな。
 そして其れは、本来の力を取り戻して復活した今回も同じ事。力は強くなったが、我等の存在は依然不安定なまま……其れを固定する為に
 も、砕け得ぬ闇は必要不可欠なのだ。理解したか小鴉?」



己の存在を確かにする為に必要な物だと?
……ダメだ、System:U-Dの事は思い出したが、其れとマテリアルの関係性については思い出せない……仮に、王の言う通りの物だとしたら
其処まで危険ではないのに、私はアレの危険性を知っている。
マテリアルが己の存在を固定するのに必要であるにも拘らず、世界を滅ぼす危険性があるとは、System:U-Dは一体どんな存在だったんだ?



「言い伝えによれば、その名は『漆黒の魄翼』……名前からすると、其れは戦艦か、或いは体外強化装備か……」

「こんな所かしらね?」



漆黒の魄翼……尚のこと嫌な予感しかしないが、ピンクが光学映像で映し出したそのイメージは如何なんだ?
典型的なロボットに黒い羽根をくっつけただけの其れは?此れはアレか『紫天ロボ』とでも言えば良いのか?ピンクのセンスは如何なって居る
のか疑うな。



「おぉ!中々カッコイイではないか!!」


「これ、カッコイイかなぁ?」

「私には良く分かりません。子供は喜ぶかもしれませんか……」

しかし、魔力が凄まじく高くなっているのもまた事実……此れは、魔力の大きさだけならば闇の書の闇すら凌駕しているかもしれない――それ
こそ10S級XXXグリードと言っても良い位だ。

来るか……!!



「ユニット起動…無限連環機構、動作開始。システム『Un Breakble Dark』正常起動。」

「「「「え?」」」」


魔力が形を作り出し、その姿が顕わになったのだが、此れはウェーブのかかったブロンドの髪の少女だと?
主に教えて貰った、この国の袴の様な装束に身を包んでいるが、此れが砕けぬ闇だと言うのか?……記憶を探ってみても、こんな少女は知
らないが、なぜこうなったのか……



「ひ、人型とな?何故?いやいやいや、其れを言ったら我等も元は人型ではなかったわけで…」

「ちょ、ちょっと王様?システムU-Dが人型してるなんて聞いてないんですけど!?」



此れは、王とピンクにとっても予想外だったようだな?……否、私にとっても予想外だったがね。
だが、コイツの力はトンデモないな?異界の力を解放しても、5分間の制限時間があるのでは倒しきるのは難しいかも知れないな……何より
も、王とピンクが全力で妨害して来るだろうからね。



「あ、目覚めたのですね?」

「君が砕け得ぬ闇?起きてくれてよかったよ。」



更に、嫌がらせとしか思えないタイミングでシュテルとレヴィが合流してくれたか。……此れは、状況的には最悪極まりないぞ?如何に私と言
えどもマテリアル3体と、ピンク、そしてSystem:U-Dの5人を相手にするのはキツイ物が有るからね。
王を我が主に任せるとしても、其の力が未知数なU-Dが居るからね。

だが、何かU-Dの様子がおかしいような?



「状況不安定…駆体の安全確保のため、周囲の危険分子を……排除します。」



!!……な、何だこの魔力は!?凄まじい力を感じる……それにも拘らず、此れはU-Dの力の一端に過ぎない筈だ……此れが完全開放され
た事なんて、想像したくないぞ。



「起動不安定…白兵戦モード、出力6%……!」

「あ、あら~~…想定外?これはちょっち制御難しいかも~~…あははは…」



笑いごとで済むか、このバカ!!
自分が手を出そうとしている力がどれ程の力であるのか位は調べ上げて、そして認識しておけ!……此れは、トンデモなく事になるぞ絶対!



「その姿には驚いたが…良くぞ目覚めたU-D!さぁ、我にその力を譲渡せい!」

「ディアーチェ?ディアーチェですか?そうですか……目覚めてしまったんですね私は…」

「うむ!さぁ、我等と共に来い!お前は我等の物よ!」

「…出来ません。」



王は、早速U-Dを勧誘し、其の力を己の物としているようだが、如何言う訳かU-Dが其れを拒んでいる?……何故だ?マテリアルにとって、U
-Dは必要不可欠な物。
普通に考えれば、マテリアル達に力を貸すものだと思うが……



――ドスゥゥゥゥ!!



「んな、貴様……!!」

「な、何故……」

「砕けぬ闇……如何して?」



そんな馬鹿な……U-Dがマテリアルズを貫いただと!?一体如何言う事だ!?……まさか、U-Dは、私が思っている以上にナハトヴァールと
異界の浸食を受けて壊れてしまってると言うのか!!



――シュゥゥゥゥ……



「王様達が消えた!?」

「いえ、駆体維持ができなくなって魔素の状態に戻ったのです……マテリアルを一撃でそうさせてしまうだけの攻撃だったのです今のは…!」

僅か6%の力で此れとは、力が完全開放されたら如何程なのだU-Dは……下手をしたら私よりも上なのかも知れないぞ?……尤も、そうであ
った場合でも、金髪の重剣士が本気を出せば何とかなる気がしてしまうのだがね。



「何故私を目覚めさせたんですか…?私が目覚めたら、あとには破壊の爪痕しか残らないのに……う…く…頭が……うわぁぁぁぁぁぁ!!」



U-D!?……消えたか。
そして、其れに乗じてピンクも消え去ったようだな……U-Dを追ったのか、それとも逃げ出したのかは分からないが……どうにも厄介な事にな
ってしまいましたね、我が主。



「マッタクやな……此れは、一度皆と合流した方がえぇかも知れへんね。」

「其れが上策でしょう。――事は複雑化していますから、一度みなと話し合う事も必要ではないかと思いますよ我が主。」

「せやな。ほな早速――」



――行くぜクリアマイ~ンド!



……着信ですよ、我が主。と言うか、何故その着信音なのです?



「ん~~~……何となく、此れにしとかなアカン気がしたんや。本当に何となくな。
 もしもし、此方八神はやてです~~♪」

『あ、はやてちゃん?』

「なのはちゃん?ドナイした?」



通信の相手は、あの小さき勇者か。
此方から連絡を入れようと思っていた所だから良いタイミングだ――こう言うのをタイムリーと言うのだろうなきっと。



『うん。今クロノ君から連絡が有って一度アースラに集まって欲しいって。』

「良いタイミングだな小さき勇者よ。私達も一度集まった方が良いんじゃないかと思っていたんだ。」

『ホントに?うん、それじゃあ直ぐにアースラに来てもらえる?』

「了解や!ほなアースラで。」

『うん♪』



期せずして、アースラに全員集合か。
まぁ、悪い事ではない――寧ろこのタイミングでの集合は最高とも言えるよ。各々が持っている情報をすり合わせる事が出来る訳だし、其処か
ら今回の事件の解決の糸口が掴めるかも知れないからね。



「せやけど、集まるとなると闇の欠片はドナイしよか?アレはアレで放置できるモンやないやろ?」

「其れについては心配ご無用ですよ我が主。」

未だ活動を続けている『闇の欠片』は確かに無視できない存在ではありますし、我等がアースラに集まってしまっては、其れに対処する者が減
るのは間違いありませんが、私達には頼りになる騎士達が居るでしょう、我が主?



「そう言えばそうやったな……此処は、守護騎士様の出番やね♪」

「そう言う事です。」

将達ならば、闇の欠片如きに後れを取る事はないだろうからね――しばし、この世界を頼んだぞ、将達守護騎士よ。私は、我が主と共に、これ
からの事を考えて来るからね。








――――――








No Side


はやて達がアースラに向かった数分後、海鳴の上空に4つの影があった。


「闇の欠片が、まだ活動を続けているらしいな。」

桜色の髪をした、騎士然とした女性が言う。


「今は活動を停止したらしいけど、マテリアルの子達も現れたって。」


翠の騎士服に身を包んだ金髪の女性が其れに答える。


「何れにせよ、無視はできまい…」


褐色肌の屈強な男性も無視できないと言う。通信で、U-Dの危険性を聞かされたのならば当然の事であり、警戒をするのは当たり前だろう。


「なんだって良いじゃねーか。厄介事起こす連中はアタシ等でぶっ潰すだけだ。」


だが、赤毛の気の強そうな少女が自信たっぷりに言い放つ。
其れは決して強がりではなく、自分達ならば其れが出来ると言う、確固たる実力に裏打ちされた実力が有ればこその一言だと言えるだろう。


現れたのは『最後の夜天の主』に仕える群雲の騎士『ヴォルケンリッター』の構成員である、シグナム、シャマル、ザフィーラ、ヴィータの4人。
はやての命を受け、闇の欠片殲滅の為に出動してきたのだ。


「我等が主達は、事態打開の為にアースラで作戦会議だ。闇の欠片は我等で叩く!」

「行きましょう。夜天の守護騎士の名にかけて!」

シグナムとシャマルの号令を合図に、4人は夫々分散して闇の欠片制圧に乗り出していったのだった。








――――――








Side:???


っとぉ……何処だ此処?急に強い光に包まれたと思ったら、見覚えのない場所だ……リリィは、大丈夫?



「私は大丈夫だけど……何だろう、嫌な予感がする。――若しかしなくても、大きな戦いに巻き込まれたのかも知れないよトーマ……」

「マジかよ……」

フッケバインとの彼是も終わってないってのに、更なる厄介事ってか?
エクリプスに感染して、フッケバインにつかまって、高町教導官と死闘繰り広げて、特務六課の見習いになって日々鍛えられてボロボロになっ
て……俺って結構な不幸体質じゃね?

だけど、其れを嘆いてる暇はなさそうだ――此処でも間違いなく、戦いが待ってるだろうからね。
リリィ!



「うん!――リアクト・オン!!」

「モード『黒騎士』!!」

取り敢えず、何時でも戦えるようにしておいた方が良いだろうな――見知らぬ場所で、どんな敵と出会うか分かったモンじゃないからな。

にしても、此処は一体何処なんだ?……マジで、スゥちゃんに助けを求めたい所だぜ――












 To Be Continued…