Side:志雄


取り敢えず、今後の方針も決まったから、それに沿って動く心算だったんだが。如何やら俺はトコトン厄介事に巻き込まれる性質があるらしい。
海鳴の上空を飛び回ってる闇の欠片は放置出来る相手じゃねぇからな……

「ったく次から次へと……倒した端から現れるなんざ、まるで駆除し終わった途端に現れるドブネズミだな?
 加えて……俺の欠片がやたらと多いのは、何かの嫌がらせか?自分自身とは言え、同じ顔が此れだけ並ぶと流石に不気味と言うか、少し気
 持ち悪いぜ……」

BLAZE時代の俺、一匹狼気取ってた頃の俺、その他諸々の俺……ドンだけ俺に関する記憶ってのは再生しやすいのか、少し闇の欠片を作り
出してる奴に聞いてみたいもんだな。
まぁ、俺自身とは言え記憶の残滓に負けてやる心算は毛頭ねぇし、過去の自分に負ける程柔じゃねぇ。

テメェ自身をぶっ倒すってのは良い気分じゃねぇが、テメェ等闇の欠片は放置する事も出来ねぇんでな?――悪いがぶっ倒させて貰うぜ!!














リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE94
『A's portable~謎の渡航者~』










「おぉぉらぁぁ!!イグニス……ブレイク!!!


――バガァァァァァァァァァァァァァァン!!


「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」



は、所詮は劣化コピーか。準備運動にもなりゃしねぇなコイツは――出直して来やがれってんだ。過去の俺にしたって、余りにも力の差が有り
過ぎたからな。
……尤も、欠片が限りなく本物に近い力を持ってるとしたら、其れは其れで大問題ではあるけどよ。

元凶を何とかしない限り、欠片は次々と現れる訳だから、もう一踏ん張りと行くか――って、あれは……グレアム爺さん所の猫姉妹じゃねぇか。
グレアム爺さんも、リンディ提督やクロノから連絡貰って協力してくれてるって事か?何にせよ、アイツ等はクロノの師匠だったってんだから実
力的には問題ねぇな。
寧ろ問題どころか、戦力としては大歓迎だぜ。

「よう、お前等も事件の解決を手伝ってくれんのか、猫姉妹……もとい、アリアにロッテ。」

「アンタは……高幡志雄……?」

「みたいだけど……コイツ、若しかしてまた闇の欠片なんじゃないか?さっきの高町みたいに!」

「其れは、有りうるわね……悪いけれど、覚悟して貰うわよ!!」



オイオイ、若しかして俺の事を闇の欠片と勘違いしてやがるのか?妙にイラついてるみてぇだし……
否、さっきはなのはの欠片と戦ったって言ってたから、其れがイラつきの原因か?大方欠片のくせにめちゃめちゃ強くて、バカスカ砲撃撃たれ
まくったんだろうなぁ多分。
しかも其れが、いい加減闇の欠片をぶっ倒した後だったとしたら余計にイラつくってか――となると、此処で俺が本物だって主張した所で、其れ
が通る可能性は低いな。

しょうがねぇ……一発ブチかまして劣化コピーの闇の欠片じゃねぇって事を分かってもらうとすっか!

「オォラァァァァァ!!」

「どりゃぁぁぁぁぁぁ!」

「スティンガー!!」



此れは、ロッテがクロスレンジでの格闘戦をやって、アリアがミドルレンジ以上の距離から魔法で攻撃する典型的な前衛後衛のフォーメーション
か!
互いの息がドレだけあってるかが肝心になるコンビネーション攻撃を、双子の姉妹が行うってんなら、これ程強力な攻撃もねぇな……ドンなコ
ンビよりも、息はバッチリ合ってる訳だからな。

実際に、コイツ等の攻撃は互いの攻撃の隙を補うように行われてるから、相手をする側からすると結構面倒な相手だぜ――ロッテの格闘の隙
を突こうとすればアリアの魔法が飛んできて、アリアの魔法の隙を狙おうとすれば、其れはロッテの格闘で止められるからな。
おまけに2人とも動きが早いから、大抵の相手は何も出来ずにやられるだろうが……嘗て、エルダーグリードとステゴロかました俺を舐めんじゃ
ねぇ!!


――ガシィ!!!



「んな、アタシの蹴りを正面から受け止めたぁ!?」

「素早さは大したモンだが、お前みたいにウェートの軽い奴の打撃は、俺みたいな頑丈な奴には効きづらいんだよ!
 だから、被弾覚悟でこう言う事も出来るって訳だ!そんでもって……ドォォラァァァァァァァァァァ!!!!」

「!?ロッテを投げ飛ばして来たぁ!?」



複数の敵を相手にする場合、敵其の物を凶器として別の敵にぶつけるのは基本中の基本だぜ?(あくまでもプロレスのハンディキャップマッチ
の話だけどな。)
だから、この攻撃は理に適ってる訳だ。
更に、テメェのパートナーを投げつけられるって事をされた相手は、如何したって驚いて動きが一瞬止まっちまって、そのせいで回避行動を採る
事が出来ず、反射的にガードするしかない。

が、人間が直接ぶつかって来たら、ドレだけうまく防御しても体勢が崩れるのまでは防ぎようがねぇ――だから、その隙を突く!!

ブラストエッジ!!

「「しまった!!」」


――バガァァン!!!


そして、此れで終いだ!!イグニス……ブレイク!!!


――ドガァァァァァァァァァァァァン!!!



「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

「は、俺のBLAZEの熱さ、身に染みたか?」

此れにて俺の勝ちだが、行き成り2人でかかって来るってのはいくらなんでも酷いんじゃねぇか?俺だったから良かったモノの、他の奴等だっ
たらトンでもねぇ事になってたぞ?
……なのはとフェイトに限っては、何とかしそうだがな。



「その2人がかりを何とかしちゃうお前の方が、もっと酷いわ!」

「このパワー……圧倒的な戦闘力……彼の力は闇の欠片とは違う――若しかして本物?」



確認するまでもなく本物だ。
口で言っても良かったんだが、さっきまでのお前等には聞き入れて貰えねぇと思ったんで少し強硬手段に出させて貰ったぜ――んで、お前等
は、グレアム爺さんの命令でか?



「本物だったんだ……何か、色々ゴメン。」

「ま、こんな状況じゃしゃーね―だろ?俺も思い切りやっちまったから、其れで分けって事にしとこうぜ。」

「……そうね、そう言う事にしておきましょう。
 其れと高幡、貴方の言う通り、私とロッテはお父様の命を受けて此処に来てる。私達にとって因縁の相手である闇の書が関係してる事件をみ
 すみす放置する事は出来ないモノ。」



だろうな。
だが、お前等の参戦は俺等にとっちゃ嬉しい事だぜ。正体不明の赤毛とピンクに、復活したマテリアルに加えて、倒しても倒しても現れる闇の
欠片……正直言って戦力が足りてなかったからな。
お前らほどの実力者が仲間ってのは頼もしいぜ。此処からは、一緒に戦う仲間なんだから、息を合わせて行こうぜ?――それと、色々と思う所
はあるだろうが、守護騎士の連中とも巧くやってやってくれ。
アイツ等はアイツ等で辛い目に遭って来たんだからよ。



「……分かってるよ。アイツ等はそうするしか選択肢が無かったからな……」

「貴方達には全面的に協力するから、其処は安心してくれていいわ。
 でも、其れとは別に気になる事もあるわ――貴方とエンカウントする数分前に、マテリアルや謎の渡航者とは異なる魔力反応を感じたのよ。
 ――若しかしたら、また別の誰かがこの場に現れたのかも知れない。
 其れが何なのかは分からないけど、魔力の質からして決して弱い相手じゃない――だから、気をつけておいて。」



新たな魔力反応だと?……其れは確かに、気をつけておいた方が良さそうだぜ。
ま、お互い気をつけながら行こうぜ!!――そんじゃあ、また後でな!!



「またね!」

「欠片になんかやられるなよ!!」

「応!」

記憶の残滓にやられる程間抜けじゃねぇからな!!
さてと、引き続き闇の欠片をぶっ倒そうとすっか――







「パパ?」

「あん?」

そう思ってた所に不意に聞こえた声。
なんだと思って振り返ってみりゃ、其処にはハニーブロンドの髪をサイドテールに纏めた、紅と翠のオッドアイの女が居た――コイツ、一体何者
だ?それに『パパ』ってのは如何言うこった?

如何やら今回の事件は、謎の赤毛とピンク+マテリアルの彼是だけで終わる事じゃなさそうだぜ。








――――――








Side:なのは


マテリアルの子達を探して最中、此れまで感じた事のない魔力を感じたから、其処に向かって行ったら、到着した場所には、綺麗なエメラルドグ
リーンの髪をツインテールに纏めた、蒼と紫のオッドアイの瞳を持つ女の子が居た。――可成り強そうだね。



「ヴィヴィオさんのお母様?」

「へ?」

他に誰かここに居るの?……辺りを見回しても誰も居ない?……其れは良いとして、貴女は一体どちら様ですか?私は、高町なのはです♪



「覇王流、アインハルト・ストラトスです――って、つい名乗ってしまいました!!
 す、すみませんが、此処は一時撤退させていただきます!!」

「あ、待ってくださーい!!ちょっとお話を聞かせて下さいーーーー!!」

何としてでも、此の子は確保しなきゃ!
ちょっと手荒くなるけど許してね?――ディバイィィィィン……バスターァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!



『Go down.(くたばれ。)』


「此れがヴィヴィオさんのお母様の必殺技!――ですが喰らう訳には行きません!旋衝破!!」


――バガァァァァァァァァァン!!



えぇぇぇ!?私のバスターを受け止めた上で、バスターの一端を逆に打ち返して、バスター其の物を相殺するなんて……思い付いた所で普通
は、実行できる物じゃない。
だけど、此の子は、アインハルトさんは其れをやってのけた――つまり、其れが出来るだけのトレーニングを積んで来たって事だから、此れは、
簡単に勝てる相手じゃないね。

現実に、この攻防の合間に、見事に逃げられちゃったからね。



『なのは、少しいいか?』



と、此処で志雄さんから――はい、良いですよ。



『今し方、闇の欠片とは違う奴と会ったんだが、お前の方にはそう言ったモンは現れてねぇか?
 俺の方に現れたのは、適当に相手してやったら、煙幕張って逃げちまったんだが、謎の赤毛とピンクとマテリアルとも違う相手――流石に警
 戒しといた方が良いだろうからな。』


「志雄さんの所にも現れていたんですか――」

『その言い方だと、お前の方にも現れたのか?』



はい、見事に逃げられちゃいましたけど、闇の欠片やマテリアルの子達とは全然違う子が現れましたから。
其れを考えると、今回の事件は、闇の欠片事件の時よりも、もっと複雑で面倒な事態になってるのかも知れません――でも、だからこそこの事
件は、絶対に解決しないとです!!
全力全壊で頑張りましょう志雄さん!!



『全力全壊か……言われるまでもねぇ!とことんやってやんぜ!!』



ですよね♪
其れじゃあ行きましょう!私達のBLAZE魂で、今回の事件を解決に導きましょう!!――って言うか、絶対に解決して見せるの!マテリアルの
子達や闇の欠片がこの世界を覆い尽くしたら、世界は終わってしまうだろうからね。

だから、そのバッドエンドを回避する為に私は戦うの!!

謎の渡航者も、マテリアルの子達も覚悟しておいてね?
私が本気になった以上、手加減なんて言う事は出来ないから!!――だから、敵には容赦しないよ!!
マテリアルも、闇の欠片も、全部纏めてぶっ倒してやるの!!

この事件、此のままでは終わりそうにないね――










 To Be Continued…