Side:なのは


ユーノ君のジュエルシード集めに協力する事になってから数日、本日私こと高町なのはは、真夜中の学校に来ています。
此処でジュエルシードの反応を感じたって言う事だから来たんだけど、真夜中の学校って言うのは、何て言うか、言いようのない不気味さに包まれてる気がするの。
其れこそ、学校の七不思議は、実は現実の事だったんじゃないかって思う位に。



「そそそ、そんな事は無いと思うね。
 大体にして、幽霊なんて非科学的な物はナンセンス極まりないでしょ?……学校の七不思議なんてのも、所詮はちょっとした噂に尾ひれ背ひれが付いたモノ!!
 だから何もないって!!幽霊なんてあり得ないからね絶対!!」

「そんなに力一杯否定しなくても、良いんじゃないかな祐騎君?」

「殴って倒せない相手って言うのは、思ってるよりも厄介だからね郁島!?」



アレから、誰が私と組むかが設定されて、今日は空さんと祐騎さんが一緒なの。
だけど、祐騎さんが、この雰囲気に大分飲まれてる感じだね?――大丈夫ですよ、所詮相手は骨格標本か人体模型ですから、この戦力なら負ける事はありません!

仮に幽霊が出て来たとしても、其れが話の通じない相手だったら、砲撃魔法一撃で叩きのめしてやるから大丈夫です!!



「ドンだけ度胸があるの、君って?……仲間で居るうちは、頼もしい事この上ないけどさぁ?」

「此れが志緒先輩も認めた、なのはちゃんの不屈の心なんだよ祐騎君。
 でも、そのなのはちゃんの闘気が有ればこそ、ゴールに辿り着けたみたいだよ?……恐らくはアレが、元凶だと思いますから!!」



空さんの指さした先には、魚とも動物とも形容できない異形が佇んでいたけど、その異様な姿から、ジュエルシードの暴走体だって言う事は理解できた。
だったら、封印以外の選択肢は存在しないの……行くよ、レイジングハート!!



『All right Master.(了解しました、マスター)』












リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE9
『Strayed Into Passage!』











「喰らいなよ、グラムインパクト!

「はぁぁぁぁぁ……轟雷撃!!


――ドゴォォォォォォォォォォン!



今回のジュエルシード暴走体は、如何やら学校に積もり積もった色んな思念が媒体になったみたいだね?
其れこそ、羨望や嫉妬、妄念に執念、雑念に果ては『もっと成績を良くしたい』って言うプラスの欲までも取り込んだって所かな?そのせいで、動物病院の時に現れた
思念体よりも、もっとドロドロしててグロテスクさがハンパじゃないの!

もしも私1人だったら、外見のグロさに引きまくって何も出来なかったかも知れないけど、生憎と私には頼りになる仲間が居るからね?

今も、祐騎さんと空さんが、絶妙のコンビネーションで、思念体に大きなダメージを入れてくれたからね……って言うか、怖くないんですか祐騎さん?



「如何やら殴って倒せる相手みたいだからね?
 物理的に叩いて如何にかなる相手なら、見た目が多少グロテスクでも恐れるには値しないってね――其れより、僕と郁島の攻撃が決まった今は、チャンスだよ?」

「一気にやっちゃってなのはちゃん!」



了解です、祐騎さん、空さん!!


封印すべきは忌まわしき器………ジュエルシード、封印!!



――カッ!!!!



『Seal completion.It was a good movement Master.(封印完了。中々良い動きでしたよマスター。)』

「そうかな?自分では、一生懸命やっただけだから自覚は無いんだけど、そう言って貰えると嬉しいよレイジングハート♪」

ともあれ、此れでジュエルシードは4つ。
残りは17個だから、何としてでも見つけ出して封印しないとだよね?……其れを成し遂げる為にも、私はもっともっと強く成る必要が、あるのかも知れない……だから、
明日から、もっと魔法の事を教えて欲しいの。全てのジュエルシードを集める為にも!!!



『All right Master.If that's what you desire I respond to that.(了解ですマスター。貴女が其れを望むのならば、私は其れに応えましょう。)』



「その意気だよなのはちゃん!常に上を目指してこそ、成長できるんだから!」

「暑苦しぃなあ?そんなの適当にやればいいじゃん?
 見た所なのはは天才タイプだから、特訓なんかしなくたって適当にトレーニングしてれば充分なんじゃないの?スポ恨は、良く分からないから何とも言えないけど。」

「それって、身も蓋もないよね祐騎君?」

「それは、捉え方次第でしょ?
 てか、間違いなくなのはは、一を聞いて十を知るじゃないけど、ちょっとしたヒントさえあれば、案外どんな事でも出来ちゃうんじゃない?初陣が、良い例でしょ。」

「あの時は、色々と一杯一杯でしたけど、其れでもレイジングハートのアドバイスのお蔭で、巧くやれたみたいで……」

『But the one which will be managed immediately is excellent though it touched magic for the first time.It's when I have the aptitude for a master.
 (ですが、初めて魔法に触れたにも拘らず、即座に使い熟したのは見事です。マスターの才能が有ったからこそでしょう。)』




そうなの、かなぁ?自分では、そんなに凄い感じはしないんだよねぇ?
何て言うか、レイジングハートのアドバイスを貰った後は、何となく何をどうすれば良いのかが分かったって感じで、驚くほどすんなりと魔法を使う事が出来たの。



「……祐騎君の言う通り、なのはちゃんて天才かもしれない。」

「だから言ったでしょ?となると、このチームは差し詰め『天才チーム』って所かな?
 郁島は『天才空手少女』って呼ばれてるし、僕は学園一の天才だし、なのはは『天才魔法少女』だから、ピッタリのネーミングだと思わない?」



なはは……自分で自分の事を天才って言うとは、志緒さんの言ってた通り、祐騎さんは物凄い自信家なんだねぇ……でも、実際に頭は物凄く良いからね。

でも、今回も無事にジュエルシードを封印できてよかったの♪これで、4個目だからね♪


因みに、アリサちゃんとすずかちゃんにも、ユーノ君と魔法の事、そしてジュエルシードの事は話してある。
2人とも、ユーノ君と魔法の事には驚いてたけど、志緒さん達『平行世界人』の前例が有ったから、突飛な内容でも受け入れてくれた。
でも、それでもジュエルシードの回収については、流石に心配されちゃったのは当然だけど、其れが逆に嬉しかったかな?私の事を、本気で心配してくれた訳だしね。

一応志緒さん達がサポートについてくれるって言う事を言ったら、2人とも『其れなら大丈夫ね』って納得してくれた……まぁ、2人とも志緒さんの強さを知ってるから。

だえど、アリサちゃんとすずかちゃんと『絶対に無事で居る事』って約束をしたから、其れは守らないとだね。



さて、ジュエルシードも無事に回収しましたから、帰りましょうか?夜の学校に長居は無用ですから。



「賛成。加えて、警備会社の巡回とか来たら面倒な事になりかねないし。」

「そうだね。直ぐに戻ろうか。」

「それじゃあ、帰りましょう。」

『お疲れさん、気を付けて帰れよ~~~。』



………はい?だ、誰なの今の声!?
私達3人とユーノ君以外には、誰も此の音楽室には居ない筈なのに……何処から声が――ま、まさか!!



――ギン!



「肖像画のベートーヴェンの目が……」

「ひ、光ったーーーーー!?」

「如何考えてもやばいでしょ此れ!!戦略的撤退ーーーーー!!!」




まさか、学校の七不思議の定番に出くわすとは思わなかったのーーーー!!まさか、ジュエルシードを無事に封印した後で、こんな事が起こるだなんて予想外なの!

結局、私達は其のまま全力で家まで逃げて……家に着いたその時は完全に息が上がってて、お兄ちゃんや志緒さんに『大丈夫か?』って心配されたのは、また別の
話しなの。

何て言うか、二度と夜の学校でジュエルシードが発動してほしくないと思ったの……多分、空さんと祐騎さんも同じ様に思ったはずだよ――








――――――








Side:志緒


さてと、今日も今日とて翠屋は大繁盛だな。
ランチタイムとは言え、平日でも行列が出来るとは、其れだけ翠屋が相当な人気店だって言う事が分かるぜ。幾ら名店とは言っても、オヤッさんの蕎麦屋は此処まで
じゃあなかったからな。

だが、其れだけに店は大忙しだ。
尤も、時坂達も巧く動いてるから、停滞はしないで客を捌く事は出来てるってとこだ――が、忙しい時に限って、面倒事ってのは起きるもんなんだろうな……



「オイオイオイ、何だよこの温い珈琲はよぉ?客舐めてんのか?」



あからさまにガラの悪い客が、根も葉もねぇいちゃもんを付けて来やがったからな。
その珈琲は淹れたてだから、温いなんて事はあり得ねぇ……恐らくは、店にいちゃもん付けて代金を負けさせる心算の三下チンピラって所だろうが…残念だったな?

「何か、問題が有ったか?」

「あぁ?有るに決まってんだろ?こんな温い珈琲を出しやがっ……」

「何か?」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



「ひぃ!?」



珈琲が温いとか言ってたみたいだが、アレを温く感じるんだとしたら、お前の感覚がオカシイとしか言いようがないぜ?
士郎さんは、常に最適の温度で珈琲を淹れてる。其れこそ使う豆によって、湯の温度を変える位だからな?

つまり、士郎さんの入れる珈琲は、常にその豆の持つ味を引き出した状態で『熱々』を飲む事が出来るんだぜ?……其れを知らずに、いちゃもんを付けるとはな……
他に何か文句がアンのか?有るなら聞いてやるぜ?

「と言うか、テメェみたいな客は、他の客の迷惑になるんでな……悪いが、強制的に退店して貰うぜ?」

「ちょ、ちょっと待て!!」



待たねぇよ。
こう言っちゃんだが、入る店間違えたなお前?――精々、それを後悔しろや!!



――バキィ!!!



「いってれぼぁ!?」


「此れはまた、派手に吹き飛んだわね?」

「志緒先輩、流石っす!」



こんなチンピラなんざ敵じゃあねぇがな。

さて、騒がせちまったな?下らねぇチンピラは退治したから、安心して翠屋でのランチを楽しんでくれや。あぁ言う輩は、俺が纏めて排除してやるからな。



「助かるよ志緒君。
 あの手の輩は意外と多くて、悩みの種だったんだけど、志緒君が居れば如何にかなりそうだ――此れからも、頼りにしているよ。」

「ウッス。だったら、其れには応えねぇとな。」

そして、世話になってる以上、その恩と義理は返さねぇとだからな?俺に出来る事だったら、どんな事だって受け入れて熟して見せるぜ……其れが、俺だからな。



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そんなこんなで、あっという間に午後4時になっちまったか――なのは達は、そろそろ下校の時間だろうな。
このまま、穏やかに一日が終われたら最高なんだが、ジュエルシードって言う不確定要素が存在してる以上は、中々にそうも行かねぇのはある意味で、御約束だぜ。



――キィィィィン……!



そう思った瞬間に、デカい力が弾けるのを感じたからな。
其れにこの感覚は、此れまでジュエルシードが発動した時に感じてた感覚だから、どこかでジュエルシードが発動したのは間違いねぇ……そうだろ、ユーノ?



「はい、間違いなくジュエルシードが発動しました!場所は、此処から南西におよそ1kmです!」

「その方向に1kmって言う事は、場所は『海鳴神社』か!」

まさか、そんな場所でジュエルシードが発動するとはな……だが、発動しちまったのが運の尽きだ!
発動したジュエルシードは、なのはの手で回収されると決まってるからな――行くぜ時坂!ユーノ!!



「おう!勿論だぜ、志緒先輩!!」

「はい!」

「良い返事だぜ時坂、ユーノ。
 そんな訳で、少しばかり留守にするぜ桃子さん?」


「はいはい、大分お客さんも減って来たから大丈夫よ?だけど、絶対に無事で戻って来てね?
 なのはは当然だけど、貴方たちだって、私達の大切な家族なんですから――くれぐれも、怪我をしないようにね?」



……了解っす。
流石に事が事だけに、無傷って訳には行かないだろうが、必ず無事で戻って来る事は約束するぜ桃子さん。――誰か一人でも欠けるなんて事は、在り得ねぇからな。

「さて、一丁派手に暴れるとしようぜ時坂!!」

「応!全力でやろうぜ、志緒先輩!」




だからこそ、ジュエルシードの封印は必要なんだろうぜ。
アレだけの力が暴れまくったら、其れこそ取り返しの付かない事になりそうだからな……そうなる前に、叩きのめす!!精々覚悟を決めておきな!!



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さて、そんな訳で海鳴神社にやって来た訳だが、これは大当たりだたかも知れねぇな?――俺達の目の前には、暴れまくるジュエルシードの暴走体が居たからな。
だが、此れまでの暴走体とは雰囲気が番うが……此れは如何言うことだ?明らかに、今までの暴走体とは雲泥の差があるぜ?



「此れは、現地生物を取り込んでる!!
 明確な憑代が有るだけに、今までの暴走体とは比べ物にならない程、強力な相手です!――くれぐれも油断だけはしないで下さい!!」



ハッ!誰が油断なんぞするかよ!
其れに、ジュエルシードが発動したって言うなら、そろそろ真打が登場するだろうからな!!



「志緒さん、洸さん!!」

「なのはちゃん!」

「来たかなのは。」

そして、タイミングよく現れてくれたぜなのはが。
まぁ、詳しい話は、コイツを打っ倒してからにしようじゃねぇか?――如何やらコイツは、今までのジュエルシードの暴走体とは、一線を画す力があるみてぇだからな。

だからこそ、気合を入れろや!

相手が何であろうと、其れを叩きのめして、ジュエルシードを封印する――それが、俺達の為すべき事だからな?行くぜ、なのは、時坂!!



「はい!!」

「行くぜ!!」



何を取り込んだかは知らねぇが、精々思い切りやらせて貰おうじゃねぇか?
……さぁ、行くぜ!!!吠えろ、ヴォーパルウェポン!!……全力でやってやるぜ!!!俺の焔を、精々腹一杯喰らわせてやるから、楽しみにしておきな!!








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Side:???


どうやら、中々に優秀な力を持った魔導師と、それに準ずる者達が居るみたいね、この海鳴と言う場所には。
此れならば、アイツの手元に全てのジュエルシードを集結させる事は防ぐ事が出来るかも知れないわね………尤も、現段階ではその可能性がある程度の事だけど。

まぁ、良いわ、アレの下に全てのジュエルシードが集まる事を阻止できればそれでいい。――アリシアの幻想に憑りつかれているアレの野望を阻止できるならね。


ともあれ、此れで真に賽は投げられたのだから、後はどんな目が出るかを待つのみだわ……だけど、少なくても最悪の目だけは出ない筈だわ。其れだけは絶対よ。


さて、見せて貰おうかしら?レイジングハートに選ばれた少女と、重剣を振る青年がどのような闘いをするのかをね……!













 To Be Continued…