Side:洸


気が付けば3月か……こっちに来て、そろそろ1年が経つんだよな――元の世界に戻ったら、1年経ってるのにリョウタ達と同学年になるんだか
ら不思議な感覚だぜ。
ま、其れが悪いとは思わないけどな。

何よりもこっちでの生活も濃密だったから悪いとは思わねぇ。
つっても2月は色々有り過ぎたがな……節分の日には、志雄先輩がショットガンの如き威力の豆撒きをして、鬼役だった士郎さんをKOして(炒
り豆で大の大人KOってどういうこった?)、バレンタインデーには璃音から義理じゃないチョコ貰っちまったからな。

そんでもって、璃音からマジなバレンタインチョコを貰ったからこそ、今日と言う日は、俺にとって今までより大事な日なのは間違いねぇ!!

本日は3月14日――バレンタインのお返しの日である、ホワイトデーだからな。

取り敢えず祐騎、お前は空にちゃんとお礼しとけよ?――もしも面倒くさがって空を疎かにした場合には、エクステンドギアかますからなマジで。



「そんな事する訳ないじゃん?
 此れが見ず知らずの女子から貰った物に礼を返せって言われたら無視するけど、空から貰ったのに礼を返さないとか有り得ないでしょ絶対。
 こう見えても、僕は空の事を大切に思ってるんだよ先輩。だから、余計な心配はいらないよ。」

「そっか……お前はお前で、空の事大切にしてんだな。」

それを聞いて安心したぜ祐騎。
だけど、そうなるとマジで俺はどうしたモンか……マジで悩むぜ此れは。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE89
『野郎の答え~The Whiteday~』










Side:志雄


さて1カ月前ほどじゃねぇが、海鳴の街は良い具合に『ホワイトデー』の熱に浮かされてるみてぇだな?
世間ではバレンタインデーのお返しって事になってるみたいだが、場合によっては男の方からの逆告白になる事もあるって北都が言ってやが
ったな?……まぁ、俺にはあんまり関係……なくもねぇか?バレンタインになのはに告白(?)されたからな。
まぁ、アレは良くある『子供が年上の相手に対して抱いた好意を恋と勘違いしてる』って奴なんだろうが……10年経って云々て言ったのをなの
はが10年後に覚えてた時にはちゃんと答えねぇとな。

とは言え、貰った手前、お返しをしねぇってのは不義理ってモンだから、ホワイトデーのプレゼントは用意しないとな。――取り敢えず、厨房と材
料の使用許可は桃子さんから貰ったから、早速作るとすっか。



「つっても何作るんすか志雄先輩?
 先輩に言われて自炊は挑戦してたとは言え、菓子類なんて作れないっすよ俺?甘いモンなんて精々『濃厚カフェフラッペ』位なんすから。」

「僕なんて、真面に料理した事すらないからね~~……如何しよう、志雄先輩。」

「……時坂は兎も角、四宮は正に後悔先に立たずだなオイ。
 俺が教えてやったあと、ちゃんと自分で、偶にでも良いからやっときゃ、こんな事にはならなかっただろう……ま、お前の脳味噌なら、一度手
 本見せてやりゃ、何とかなんだろ?だからよく見とけ。」

さて、何を作るかって事だが、世の中を見る限り、お返しの品ってのはクッキーや飴玉が多いらしいから、手作りのお返しはクッキーで行くぜ。
此れなら作るのにもそんなに時間かからねぇからな。



「先輩、クッキーなんて作れるの?
 蕎麦屋で働いてるせいか、先輩ってお菓子も『和菓子』のイメージが有って、『洋菓子』は苦手そうなんだけど……」

「はっ、甘いぜ四宮。
 翠屋で働かせて貰うようになってから、俺は桃子さんに洋菓子のイロハを教えて貰って、最近じゃランチや軽食メニューだけじゃなく、デザート
 なんかの調理もやらせて貰ってるんだぜ?
 自慢じゃねぇが、この間、『そろそろシュークリームを教えて良いかも』って言われたくらいだからな。」

「桃子さんがシュークリームを教えて良いって言うって、相当っすね志雄先輩!?
 てか、必ず教えて貰って下さい!杜宮に戻っても、あの味が食べられるように!!」



いっそ、オヤッさんの店の新しい一品として出せるように、抹茶風味のシュークリームの作り方も教えてもらうとすっか。
ま、其れは今は置いといてだ。
まずクッキーの材料だが、用意するのは薄力粉と卵と砂糖とバターだ。他にも色々入れる場合があるらしいが、基本は此れなんだそうだ。

んでだ、作り方は、室温に戻したバターに砂糖を加えて混ぜ、其処に篩いにかけた薄力粉を入れて更に混ぜる。この時に、ココアパウダーやチ
ョコチップを混ぜる事で、異なる味のクッキー生地が出来るって訳だ。
今回は普通のと、チョコチップ、其れから刻んだオレンジピール入りの3種の生地を作るぜ。



「意外とちゃんと混ざらないもんだなぁ?何て言うか、中々粉っぽさがなくならないって言うか……」

「てか、材料だけ見ると可成り怖いお菓子だよねクッキーって……」



クッキーに限らず、洋菓子の焼き菓子は全般、基本の材料が此れだからな。
洋菓子に比べると和菓子がヘルシーって言われるのは、材料にバターをはじめとした油分を使わないからだしな――まぁ、良い。巧く混ざらねぇ
時は、ヘラを使ってボールのヘリに付いた粉を中に落としながら切るように混ぜると巧く行くからやってみろ。

そうだ、結構巧いじゃねぇか2人とも。
次にある程度混ざったら手で纏めて、ビニールやラップで包んで1~2時間ほど、冷蔵庫で生地を寝かせる。物によっちゃ1番寝かせる場合もあ
るらしいが、桃子さん曰く長くても2時か寝かせれば充分らしい。



「じゃあ、此れから2時間は休み時間てこと?」

「んな訳ねぇだろ。
 生地を寝かせてる間に、詰める箱やらラッピングの準備と、トッピングの準備をするに決まってんだろうが。」

ただ生地を型で抜いて焼くだけってのは、流石に味気ねぇからな。
そのトッピングだが、基本のスライスアーモンドの他に、クラッシュカシューナッツ、乾煎りしたマカダミアナッツとピーナッツ、レーズンにキャラメル
とバタークリームを用意してみたから、好きなのを使うと良い。



「色々用意したみたいっすけど、キャラメルとバタークリームなんてトッピングして焼いたら拙くないっすかね?バタークリームはドロドロに溶けち
 ゃうし、キャラメルは焦げちゃうんじゃないっすか?」

「ん?あぁ、其れはトッピングでも乗せて焼くんじゃなくて、焼き上がったのに使うんだ。
 キャラメルは焼き立てにかけてやれば良い感じに溶けてクッキー全体をコーティングしてくれるし、バタークリームは薄焼きにして焼いた生地で
 レーズンと一緒に挟んでやりゃ、レーズンサンドクッキーになるからな。」

だから、焼く前に生地を成型する時にはよく考えてやれよ?
キャラメルコーティングは兎も角、バタークリームをサンドにする場合は、あんまし複雑な形に成形すっと薄焼きにするのが難しいからな。



「「了解!」」








――なんて事をやりながら、2時間が経過だ。








で、2時間寝かせた所で、いよいよ成形だ。
どんな形でもいいんだが、普通は型抜きするのが楽だな。特にバタークリームをサンドする場合は、2枚同じものが作れるからな。型抜きで余っ
た生地は、再成形して使う事が出来るしな。

そんな訳で、時坂と四宮は型抜き、俺は麺棒で伸ばしてヘラで成形してる訳だ。
おし、自画自賛する訳じゃねぇが、中々の出来だなコイツは。



「先輩其れって……」

「モリマルとミッシーだ。」

「型抜きじゃなくて、ヘラ成形で此れって普通に職人レベルじゃないの!?
 しかも、形がきちっと揃ってるし!!幾ら何でも、此れは有り得ないでしょ絶対に!!」



ま、此れ位出来ないと桃子さんのシュークリームを会得する事は出来ねぇし、何れオヤッさんに蕎麦打ち習ったら、蕎麦を同じ太さで切れる様に
ならなきゃならねぇんだ……此れ位出来る様にしといて損はねぇ。

さてと、成形が出来たら生地を天板に並べて、牛乳と卵黄を混ぜた塗り卵を表面に塗って180度のオーブンで12~15分くらい焼く。







――15分経過

――上手に焼けました~~(オーブンのタイマーが切れた音声)








焼き上がったらキャラメルコーティングするの以外は良く冷ましてからラッピングだ。
バタークリームを挟むのはよりちゃんと冷ましとけよ?ちゃんと冷ましとかねぇと、バタークリームが溶けてトンでもねぇ事になっちまうからな。



「バタークリームが溶けて油ギッシュになったクッキー……最悪だね。」

「それでもノブオなら食いそうだけどな……」



確か時坂と同学年の大食漢だったか?其れなら確かに食うかもしれないが、女子には不評なのは間違いねぇから、失敗はしねぇようにな。






てな事をやってる間に冷めたし、キャラメルコーティングもキャラメルが良い感じに固まってくれたな。
後はバタークリームとレーズンをサンドした、レーズンサンドクッキーを作って完成だぜ――残るラッピングだが、此れは迷う事はねぇな。
なのは達魔導師には魔力光のリボンを掛けてやりゃ良いし、X.R.Cのメンバーには夫々のメイン属性の色のリボンでラッピングすりゃ良いだろ。



「よし、出来たよ志雄先輩。」

「何とか出来たぜ、志雄先輩!」



おし、上出来だぜ2人とも。
後は、渡すだけだな。――気合い入れろよお前等!!特に時坂は、玖我山からアタック貰ってんだからな!!



「ウッス!!」



良い返事だぜ時坂。一丁、漢を見せてみろや!!








――――――








No Side


さてその頃の八神家では……


「ちょっと!なんで私は又こんな目に遭ってるの!?」

「お前がキッチンに入り込まないために決まってるだろう!!」(本日の決め技はアルゼンチンバックブリーカー)

「今日はお返しの日だから、私は関係ないでしょう!?」

「お前がザフィーラに要らん手伝いをして、アルフが被害を被る可能性がゼロじゃない……だから私は、こうしてお前を拘束する!!」


バレンタインに続いて、ホワイトデーでもシャマルがリインフォースによって拘束されていた。
長身でスタイル抜群の美女が、アルゼンチンバックブリーカーと言う豪快な力技を使っているのは中々絵になる。(やられた方は堪らないが。)


「な、なんでクッキー生地にカレーパウダーを混ぜるって事や、トッピングにスライスニンニクをする事を教えようとしたのがばれたの!?」

「やっぱり地獄のクッキングをやる心算だったんだなお前は!!」

「え?あ、ちょっと待て!それ以上やったら……!!」

「フン!!」


――ボキィィィィィィィィ!!!


「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「……ほな、管理者権限発動やな。」


何にしても、バレンタインデーに引き続き、ホワイトデーも八神家は大体平和であった。








――――――








Side:璃音


さてと、ホワイトデーなんだけど、お返しは期待して居なかったから、貰えたっていうのは嬉しいかな?
明日香と美月先輩も満足そうだし、ユウ君からお返し貰った空ちゃんは、嬉しさのあまりユウ君に抱き付いてほっぺにチューまでしちゃってたか
らね~~……てか、空ちゃんの反応が微妙に可愛かったわ。

其れで洸君、何ならアタシも空ちゃんみたいにほっぺにチューしてあげようか?



「璃音、俺は未だ死にたくないぜ?万が一其れが学園の男子に知れ渡ったら、俺は明日の朝日を拝めねぇ……」

「じゃあ止めとこっか。」

「そうしてくれ。
 でも、俺はちゃんと言わなきゃならねぇ――バレンタインの時にも言ったが、俺は俺の気持ちが分かってねぇ……と言うよりも、お前の気持ち
 は素直に嬉しいんだが、俺は栞との関係に決着を付けないと次に進めない。
 杜宮に戻ったら俺は栞との関係にちゃんとケリを付ける――その上で俺はお前に答えを出したいんだ。栞との関係に決着が付けば、俺の本
 当の気持ちも見えてくるだろうからな。」



……分かってた事だけど、洸君の中で栞はやっぱり大きな存在なんだね。
だけど洸君自身が、栞に対する思いが『幼馴染に向ける親愛』なのか、『好きな相手に向ける愛情』なのかが分かってない感じだから、其処を
如何にかしない限り、アタシの思いに答える事は出来ないか。
でも、どんな答えでも必ずくれるんでしょ洸君?



「其れは、約束する。」

「じゃあ、気長に待たないとね♪」

其れは其れとして、ホワイトデーのプレゼントありがとう洸君。
特に、私の為に作ってくれたであろう『SPiKA』のロゴを象ったクッキーは嬉しかったからね♪








――――――









Side:なのは


ホワイトデーのプレゼント、ありがとうございます志雄さん!とっても嬉しいです♪



「ま、貰いっぱなしってのは良くねぇからな?――月並みなモンだが、貰っといてくれや。」

「はい!勿論です♪」

お母さんがシュークリームを教えても良いって言った志雄さんの手作りのクッキーなら期待できますし、お返しをくれたって言う事は、少なくとも
バレンタインのプレゼントは効果があったって事だからね♪

バレンタインの時に10年経っても私が志雄さんの事を好きだったら考えるって言ってましたけど、私の此の思いは10年経っても絶対に変わら
ないって断言します!

だから覚悟しておいてくださいね志雄さん?
10年後に、ちゃんと答えて貰いますから♪



「……ヤレヤレだぜ。」



何にしても、今年のホワイトデーは、此れまでで最高のホワイトデーだったよ♪












 To Be Continued…