Side:なのは


時は流れて2月14日……ついにこの日が来ましたね璃音さん。恋する乙女にとって絶対に外す事が出来ない1年の最大イベントと言う物が!
急いては事を仕損じると言いますから慎重にですけれど、せめて、私達の秘めた恋心の1割程度でも届けられるように頑張りましょう璃音さん!



「異論無しだよなのはちゃん!
 お御籤の結果を信じるなら、搦め手はNGだから、此処はドストレートに攻めて行かないとだからね!」

「ですよね♪」

バレンタインデーは、恋する乙女の一大イベントだから絶対に外せないの!
流石にプレゼントのチョコレートはお菓子用のスウィートチョコを湯煎して使う事になるんだけど、其れでも私の思いを志雄さんに全力でぶつけて
みせるよ!!
子供だからって、志雄さんは思うかもしれないけど、思いっきりぶつければきっと伝わる筈だからね!!



「その意気や良しだよなのはちゃん!
 アタシも、洸君に届かせる心算だからね!!」

「私も、祐騎君に喜んでもらえるように頑張ります!!」


「気合入ってるわね……私と美月さんは、義理だけになるから楽だけど、本命が居るって言うのは、中々大変みたいね。」

「ふふ、その大変も、恋する乙女にとっては大した物じゃないんですよ明日香さん♪」



美月さんの言う通りです!大した問題じゃないんです!!
大事なのは、自分の思いをドレだけ相手に伝える事が出来たかなんですから!!――頑張って、行きまっしょい!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE88
『乙女の行事~Saint Valentineday~』










そんな訳で始まった手作りチョコレート作りなんだけど……お姉ちゃんは一体何をしようとしてるのかな?砕いたチョコレートをボールに入れたの
は間違いじゃないけど、手に持ったグラグラ煮え立ったヤカンは何?



「え?チョコレートを湯煎する為に沸かしたんだけど……」

「大体予想はしてたけど本当にそう来るとは思ってなかったの!
 あのねぇ、お姉ちゃん、湯煎て言うのは対象に直接熱湯を注ぐんじゃなくて、別の器に熱湯を流し込んで、その熱を利用して素材を溶かす事な
 んだよ?って言うか、チョコレートに熱湯注いだら、とても食べられない代物になっちゃうから!!」

「あ、そうなの?」



そうなんです!!
って言うか、仮にも海鳴一の喫茶店の娘なんだから、其れ位は分かっててよお姉ちゃん。

何て言うか、美人で気立てが良くて、更に強いのにお姉ちゃんに彼氏が出来ないのにある意味で納得したかも……ギャグレベルで家事レベル
が崩壊してたら、それ以外がドレだけ高得点でも駄目だからねぇ……このままだと行き遅れちゃうよ?



「いやぁ、まだ大丈夫でしょ?私17だから、出会いは此れからよ♪」

「そう言って、結婚できない女性が増えていると言う現実に対して。」

「ノーコメント♪」



ノーコメントって事は、少なからず自覚があったんだねお姉ちゃん……って言うか、お姉ちゃん告白とかされないの?
妹の私が言うのもなんだけど、美人で気立てが良くて、ちょっとドジな所は有るけど、お姉ちゃんて超優良物件じゃないかって思うんだけど……



「……何故か、男子より女子にモテるのよね私。
 体育とかで記録出しても、男子からの感嘆の声よりも、女子からの黄色い声援の方が多いし、漫研の連中は私をモデルに『キマシタワー』な
 薄い本を作ってるし……
 って言うか、この間訓練を見に来たシグナムさんからは、別の意味で目を付けられたみたいだし……此れ、どういう事?」

「私に聞かれても知らないよお姉ちゃん……」

「ん~~~、でも美由希みたいな女の子なら、確かに女子でも憧れちゃうかもね?
 普段はおっとりしてるけど、いざ勝負事となったらキリっとするし、そのギャップが何とも言えないんじゃない?――若しかして、ナンパされてる
 自校の女子生徒を助け出してたりして♪」

「璃音さん、何故分かったし……」

「美由希さんが男子だったら、間違いなく校内一のモテる男子になってるわね。」

「はい、間違いないと思います……」

「まぁ、其れも美由希さんの魅力と言う事にしておきましょう♪」



……綺麗に纏めましたね美月さん。
でも、調理場が使えるのは志雄さん達が店番から戻って来るまでなので、其れまでに作らないとですからね?頑張って行きましょう!!

さてと、其れじゃあ刻んだチョコレートをボールに居れ、其れを熱湯の入ったボールに浸けてかき混ぜながら、ゆっくりと溶かして行きます。焦っ
て早く混ぜると均一に溶けないで玉になるので注意して下さい。
それで、完全に溶けたら型に入れて固めるんですけど、この溶けた状態に一工夫する事で、只溶かして固めただけの物とは違う物になります。

「この溶かした状態のチョコレートに、生クリームや洋酒を加える事で、固めても堅くなり過ぎないソフトなチョコレートが出来る上に、味も深くな
 るんですよ。」

「へ~~……SPiKAの活動で、洋菓子作り体験レポをやった事があったけど、あの時は焼き菓子だったから、チョコレートの事は初耳ね。
 はい、なのは先生!この溶かしたチョコレートに、刻んだナッツやレモンピールなんかを加えて固めるのもアリなんでしょうか?」



なのは先生って……はい、全然OKですよ璃音さん。
他にも、細かく刻んだマシュマロやキャラメルを加えてみても良いかも知れませんね。

続いては型ですが……先ず、よく漫画とかで見るようなハート型の巨大な型に流し込むのは絶対にNGです。
アレだと1個丸々全部同じ味になりますし、そもそも少しずつ砕いて食べるにしても、アレを砕くのは可也難しいので、此処は小さな型を使うか、
一口大のトリュフ状に纏めるのが良いと思います。
一口大のサイズなら好きな時に好きな量を食べる事が出来ますし、味にも変化を持たせる事が出来るから飽きる事もありませんので。



「そーなんだ。
 それでさーなのは、このほわいとちょこをとかしたやつは、どーすればいーの?」

「ホワイトチョコは、色んな色のチョコを作る材料だよフェイトちゃん。
 溶かしたホワイトチョコに抹茶パウダーを混ぜれば緑のチョコが出来るし、お母さんお手製のフルーツパウダー(フリーズドライにした果物をフ
 ードプロセッサーで粉にした物)を使えば、ピンクやオレンジのチョコも出来るから。」

「なにそれ、おもしろそーー!!よっしゃー、がんばるぞーーー!!」



うん、頑張ってねフェイトちゃん♪楽しむ事も大事だよ。
って、其れは一体なんですか明日香さん?



「刻んでない業務用チョコレートブロックをみたら創作意欲が駆り立てられて、彫刻刀とかを使って掘り出した結果、芸術作品が……
 1/7スケール、璃音さん型チョコレート(天使バージョン)と言った所かしら?」

「明日香スゲー!って言うか、此れもうお菓子じゃないよ!普通に芸術作品じゃない!?」

「明日香先輩凄いです……!」



うん、芸術性だけならパリのパティシエールコンテストでも上位に入るかも知れないです。なので、其れは折角だから表面を飴でコーティングし
てショーケースに入れて翠屋に飾っちゃいましょう。
此れだけで話題になるかもですから♪



「明日香、後でモデル料貰うからね?」

「駅前のラーメン蝶野の『黒のカリスマラーメン・トッピング全部乗せ』でどう?」

「OK、商談成立♪」



でもって、それで良いんだ璃音さん……まぁ、あそこのラーメンは美味しいからね。

コホン!それじゃあ、此れまで教えた事を駆使して、バレンタインのプレゼントを完成させてしまいましょう!特に、私と璃音さんと空さんに仕損じ
は許されないから!!



「押忍!頑張ります!!」

「頑張っちゃうんだから♪」



はい、頑張りましょう!!








――――――








No Side


――その頃の八神家



「リインフォース、シャマルをそのままホールドしといてや!絶対に放したらアカンで!!」

「了解しました、我が主。」
(シャマルにテキサスクローバーホールド)

「放してぇ!ていうかギブ!それ以上やったら背骨がぁぁ!!」

「ふん!!」


――ボキィ!!



「ぺぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


死の料理人であるシャマルが、リインフォースのテキサスクローバーホールドで腰骨が曲がっちゃいけない方向に曲げられていた。
まぁ、コイツの厨房侵入阻止は絶対であるし、仮に大怪我した所で、はやてが管理者権限を発動して破損回帰を行えば速攻で治るのだから問
題はない。


取り敢えず、八神家は今日も平和である。








――――――








Side:璃音


なのはちゃんの指導の下、何とかチョコレートが出来たわね。
私となのはちゃんと美月先輩はトリュフとの詰め合わせで、空ちゃんと明日香と美由希は型で固めたチョコレートの詰め合わせなんだけど……

「フェイトちゃん、此れ何?」

「僕のりきさくちょこれーと!!」


――形容しがたい何か


フェイトちゃんの此れは一体……って言うか、何をどうやってこうなった?
色は普通だから食べられるとは思うんだけど、スウィートチョコの上にホワイトチョコが乗っかったドーム状の物体に、ドライフルーツやアラザン、
砕いたクッキーがトッピングされた様は、RPGのモンスターを思い起こしちゃうわ。
って言うか、なのはちゃん、このチョコよく見ると目が……



「気のせいです璃音さん。」

「見てる……」

「無視して下さい。」



無視しろって、確かに其れが一番かも。
其れで、フェイトちゃんは此れを一体誰にあげる心算なのかな~~?



「え?これは僕用。
 おかあさんとくろのにはべつのよういしてあるし。それにこんなすごいのわたしたら、くろのは『ロストロギアか!?』ってなっちゃうから♪」

「あ、凄い物って言うの自覚はあったんだ。」

確かに、普通に手作りチョコレートの材料を使って作ったモノが、謎のチョコレートモンスターになったなんて前代未聞だからね~~?
ま、此れはフェイトちゃんが食べて処理するから良いとして、此処からは最終工程であるラッピングだね?此処は如何行くべきでしょうか師匠!



「誰が師匠ですか誰が!
 ……取り敢えず、箱状の物は此の包装紙で包んでからリボンでラッピングするのが一般的ですね。他にも袋状の物を使う事もありますが、今
 回は、シンプルに包装紙とリボンの組み合わせで行きましょう。
 この時、大事なのは包装紙とリボンの色の組み合わせですね。同系統の色にしないのは勿論の事、リボンが映える色合わせにするのが基本
 ですね。」



ふむふむ成程。
となると、志雄先輩達に渡す義理は、黒地に銀のリボンで、本命の洸君には桜色の包装紙で包んで、この金のリボンで……如何ですか先生!



「良いと思います璃音さん。
 此れなら間違える事も無いですし、桜色の淡いピンクに金のリボンは映えますから――此れは行けますよ璃音さん♪」

「頑張ったからねアタシも。
 けど、なのはちゃんも良いセンスしてるんじゃない?本命の志雄先輩へのチョコを、黒の包装紙で包んで赤いリボンで纏めるって、アレって完
 全に志雄先輩のイメージでしょ?」

「はい♪」



このぉ、可愛いなぁなのはちゃんは!
でも、其れだけにちょっと辛いかもねなのはちゃんは……志雄先輩ってばアレだから、なのはちゃんが一生懸命思いを伝えても、『子供の頃の
セリフ』って思っちゃうかもなんだよね――言うなれば、幼稚園生が保育士のお兄さんに『将来先生と結婚する』って言うのと同じレベルで捉え
る可能性が大だからね……ま、お御籤的に言うなら、気長に待つ事も大事だから其処は我慢だわ。

兎に角、バレンタインのプレゼントは出来たから、後は渡すだけ!!頑張るぞー!!








――――――








Side:志雄


なのは達が何かやってるようだったが、そうか今日はバレンタインデーとか言う奴だったな?翠屋でも、バレンタインデー限定のメニューを提供
してたからな。
だが、此れは予想外だったぜ――


「「「「「「ハッピーバレンタイン!」」」」」」



まさか、翠屋の女子6人からチョコレートを貰うとは思ってなかったからな?(如何やらフェイトは、自分の家に帰ったらしい。)
まぁ、義理ってやつなんだろうが、有り難くもらっておくぜ――尤も郁島から四宮へのプレゼントは義理じゃなくて本命なのは間違いねぇがな。

なのはもありがとうな。こうして貰えるのは、やっぱり嬉しいからよ。



「義理じゃなくて本命ですよ志雄さん♪」

「そうかい……お前があと5歳デカかったら、グラっと来たかもな。」

「……予想してたけど、流石にガックシなの……」



ハハ、お前が良い子なのは知ってるが、幾ら何でも年が離れすぎだぜ?
芸能界や政界ならいざ知らず、一般で9歳の年の差ってのはデカいだろ?――もしも、10年経ってもお前が俺の事を好きでいてくれたのなら、
その時は真剣に考えるがな。

だが、其れは別にしてこのプレゼントは嬉しかったぜなのは?後でゆっくり食わせてもらうぜ。



「はい♪」



それ以上に、その笑顔が見られただけで儲けモンだったかもな……マッタク、可愛い顔をしてくれるもんだぜ――此れが同い年だったら、結構
ヤバかったかもだぜ……

流石と言うか何と言うか、桃子さんの血を継いでるだけあるぜなのはは。――ま、そのお陰でバレンタイチョコを作る事が出来たんだろうがな。
改めてありがとよなのは。――コイツは、大事に食わせて貰うぜ。



「そうして下さい♪」



了解だ。
時に時坂はどうなった?――アイツも、結構大変だと思うんだがな?……ま、頑張れや。








――――――








Side:洸


バレンタイデーの今日、明日香に美月先輩と空、美由希さんとなのはちゃんとフェイトちゃん、そんでもって璃音からバレンタインチョコを貰うとは
思ってなかったぜ……ま、なのはちゃんが志雄先輩に本命チョコレートを渡したのは予想通りだったけど。



「それで、此れはアタシからだよ洸君。」

「有難く貰うぜ璃音。
 しかし、こんな事がリョウタにばれたら俺殺されちゃうんじゃないか?」

「ま~~、大丈夫じゃない?洸君の生命力は可成りなモノが有るから絶対に生き延びると思うんだけどね?
 其れと洸君、アタシが君に渡した其のチョコ、義理じゃなくて本命だから、その辺を忘れないでね~~……アイドルからの本命なんて中々貰え
 るモンじゃないわよ?」

「へ?」

本命って……冗談だよな?何時もの璃音の軽口だよな――他意はないよな?



――でも、其れが軽口じゃなかったら?



ヤバい、軽口じゃなかった可能性を考えたら顔が熱くなってきた……まさか、俺は璃音に……だが、若しかしたらそうなのか?
明日香や空や美月先輩とは違って、俺と凛音の出会いはある意味でお約束で、でも予想外だったらしいからな……若しかして此れは『運命』な
のかも知れねぇな。

はぁ……此れは、そう遠くないうちに答えを出さないとだぜ。
だがしかし、コイツは難問だぜ――俺は一体、どんな答えを出せばいいんだろうな?――居るなら教えてくれ『神様』とやら。

こんだけ難しい問題と直面するのは初めてだからな……俺は如何すればいいのか――この場に栞が居てくれたら、きっと的確なアドバイスを
くれてたんだろうが、其れに頼る事は出来ないからな。

此れを期に、今一度自分を見つめ直してみるか――そして、俺が本当に好きなのは誰なのか、其れを明らかにしないとだからな。
だから答えは保留にしておいてくれ璃音。答えが見つかったら必ず答えるからよ――だから、今は俺に時間をくれるか?必ず俺の答えを見つ
けて、お前に伝えるからさ。



「約束だよ洸君?」

「あぁ、約束だぜ璃音!!」

何だかか妙な事になっちまったが、此れもアリだろ色々とな、
取り敢えず、璃音から貰ったチョコレートは、味と見た目で楽しめたから、此れまで貰ったどのバレンタインチョコよりも美味かったぜ。

だがしかし、乙女のパワーってのは凄いと感心するぜ。
此れだけの事をやった後で、翠屋のシフトに入るってんだからな――マッタク持って感動するぜ。……だから、今日も頑張れよ璃音!
ファンとして、応援してるからな!!



「うん、!バッチリ見ててね♪」

「了解した!!」

取り敢えず、今年のバレンタインが例年とは違ったのは間違いねぇ……いや、マッタクもって結構大変だったぜ……最終的には、終わりよけれ
ば全てよしで済ませるだろうからな――何にしても良いバレンタインデーだったぜ!












 To Be Continued…