――2006年1月1日


Side:志雄


さてと、時刻は現在AM5:30……真冬の1月じゃ、まだ真っ暗な時間帯だが、それにも拘らず街には人が溢れてるんだが、その理由は言うまで
もなく『初日の出』でを拝むためだな。
海鳴は、海に面した町で、海鳴臨海公園まで行けば初日の出を拝めるって事で、ちょっとした『御来光スポット』になってるみたいだぜ。

ま、初日の出を拝むのは正月のお決まりだからな。

時に、フェイトは起きてるかなのは?



「すぴ~~……むにゃむにゃ……カレーおかわり……」

「……ダメです、完全に寝てます。」

「てか、なんでこの状況で寝れるの?有り得ないでしょ普通に……」



ヤッパリ起きてねぇか。
でもって、四宮の言う事も分かるぜ……今のフェイトは、ハーケンフォームとやらになったバルディッシュが、柄をフードに引っ掛けて、フェイトの
事を持ち上げて移動してるんだからな。
マッタク、何だってこんな状況に有っても起きねぇんだろうなコイツは?

何事にも動じないって言う事も出来るが、此処まで堂々としてると、呆れを通り越して感心して来るぜ。
取り敢えず、太陽が昇る前には起こしとかねえぇとだな。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE87
『謹賀新年!Happy new Year!』










でもって、水平線の向こうが茜色に染まったと思ったら、見事なまでの朝焼けが目に入って来たぜ。
フェイトもギリギリで目を覚ましてくれたから、この絶景には間に合ったか……マッタク持って、スゲェモンだぜ自然の芸術って言う物はな。
これ程の物は、俺が、否人間が一生涯を費やしても作る事は出来ねぇもんだ……そう考えると、人間の力ってのは自然相手には、マッタク敵わ
ねぇってのも頷けるぜ。

でだ、こんだけの素晴らしいモンを見てる仲で、テメェは何でサイフォン弄ってんだ四宮?



「え?だって、こんな凄いのSNSにアップしないとか勿体ないでしょ志雄先輩。
 サイフォンのカメラは優秀だから朝焼けだって綺麗に撮れるし……『海鳴の初日の出』っと。」

「祐騎君、気持ちは分かるけど投降するのは後でにしようよ……」

「分かって無いなぁ空は。
 SNSの記事は鮮度が命なの。取ったばかりの写真は直ぐにアップしないとインパクトが薄れるじゃん。他にも結構取ってる人達居るみたいだし
 さぁ?」



そりゃそうだが、そんなに急がなくてもいいだろ?
杜宮と違って、海鳴のネット技術は俺達が居た日本よりも10年前なんだ……サイフォンじゃなくてガラケーだしな。アレじゃあ撮った写真をすぐ
にネットに上げる事は出来ねぇよ。
だから、サイフォン弄んのを止めて、確り初日の出を拝んどけ。サイフォンにデータとして残せるとは言え、今年の初日の出は今この瞬間にしか
見る事は出来ねぇんだからな。

「ちゃんと見てねぇで、後で後悔しても遅いんだ……其れに、こう言う光景ってのは形に残さずに、記憶に刻み付けおくもんだぜ四宮。」

「分からないなぁそう言うのって……洸先輩は分かる?」

「ま、何となくな。」

「つまりアレよ、生のライブと、ライブのDVDじゃ全然違うって事。
 実際に会場で自分の目で見るのと、映像化された物を家で見るのじゃ違うでしょ?ライブの感動はライブでしか味わえないってのと同じだよ。」

「其れは確かにそうですね、璃音さん!分かります!!」

「流石はなのはちゃん、分かるんだね♪」



分かりやすく言うとそうなるのか?
でもまぁ、玖我山の説明の方が四宮には分かりやすかったみてぇだな……どうにも、こう言う事を分かりやすく説明すんのは得意じゃねぇな。

時に如何だフェイト?早起きした甲斐は有っただろ?



「うん!凄かった!まさか朝っぱらからゆーひをみることができるとはおもってなかったから!!!」


――ドッターン!!


あ、相変わらずずっこける事を言ってくれるなコイツは……フェイトの中では、赤い太陽=夕陽なのか……
あのなフェイト、コイツは夕陽じゃなくて朝陽って言うんだ。夕日は沈んで夜になる時のモンだが、朝陽は此れから上って昼に向かってくモンだ。
分かったか?



「なんとなくわかった。
 それでさ、これをみおわったらなのはのいえにかえって、おせちとかおもち食べるんでしょ?僕、どっちもはじめてだからたのしみなんだー♪」

「にゃはは、其れは楽しみだよね。
 だけど、其れはもうちょっと先だよフェイトちゃん。初日の出を見たら、今度は初詣に行かなきゃ。」

「はつもーでってなに?」



神社に行って、神様に新年の挨拶をするって所だな。
お賽銭を入れて、今年1年を無病息災で安全に暮らせるようにお願いするんだ――最近は、個人的なお願いをする場合もあるみたいだがな。
ま、行ってみりゃ分かるぜ。
お参りの作法は、あっちで教えてやるよ。



「はーい!それじゃー、はつもーでにしゅっぱーつ!!」



ヤレヤレ、さっきまで寝てたってのに、起きたら起きたで元気な奴だ……フェイトらしいがな。
取り敢えず、フェイトに限っては、今年の無病息災を神様に願う必要はねぇだろうな、間違いなく絶対にな。








――――――








Side:なのは


ふわぁぁ……海鳴神社は今年も凄い人だね?
流石に明治神宮とかに比べたら全然少ないけど、決して大きくない海鳴神社に此れだけの人が来ると満員な感じ……これも偏にくーちゃん効
果かもね。
ネットで『海鳴神社には、可愛い狐耳の巫女さんが居る』って話題になってたから。



「お賽銭が集まるのは嬉しいけど、人が多いと大変。」

「クーちゃん!あけましておめでとう。今年もよろしくねクーちゃん!」

「うん、今年もよろしく、なのは。」



それにしても、ネット効果とは言え相当だね此れは?若しかしなくても、御守りとか破魔矢とか、去年よりも量産したりしてるのかな?



「其れを見越して去年の3倍用意したけど、このままだと売れ残る事はなさそう。
 其れは良いけど、私との記念撮影って言うのは如何なんだろう……お一人様5枚までで300円……」

「ちゃっかりネット効果を利用してるじゃん……ま、神社の収入になるって考えれば良いんじゃないの?」



其れはまた何とも……だけど、其れでも写真を撮ってく人が居るなら、其れはクーちゃんが可愛いからだと思うなぁ。
一緒に写真撮って行った人達は、悪い人達じゃなかったでしょ?クーちゃんなら、その人が良い人か悪い人かはすぐに分かるもんね。



「悪い人じゃなかった……と思う。
 少なくとも悪人は居なかった……『なま久遠たん、ハァハァ』とか言ってる人は居たけど……」

「……そいつ、ある意味悪人より危険じゃねぇのか?」

「否定できないね洸君。」



……流石に、人目の多い場所だから変な事はしないと思うけどね。
其れじゃあクーちゃん、お仕事頑張って!私達はお参りしちゃうから。



「うん。
 お参りが済んだら、社務所の方で甘酒を飲んで行って、無料だから。寒い中来てくれて、体が冷えてると思うから。」



ありがとうクーちゃん、そうさせて貰うね。

さて、其れから並ぶ事20分。やっと順番が回って来ました。
其れじゃあフェイトちゃん、お参りの仕方だけど、先ずは其処の箱にお賽銭となるお金を入れて。



「いくらでもいーの?」

「金額は決まってないから。」

「よし!じゃあ、僕はこーかのなかでいちばんおっきい500円だ!それー!!」

「ご、500円とは太っ腹だねフェイトちゃん……」

「そんで、お賽銭を入れたら、先ずは二回お辞儀をして、そんでもって二拍……願いを心の中で3回唱えるんだ。」



そう、声に出さずに心の中で。
今年も1年元気で無事に過ごせますように……それから、もっともっと魔法が巧くなりますように、と。
其れで最後に一礼。此れでお終い。分かった、フェイトちゃん?



「わかった!それで、なのははなにをおねがいしたの?」

「其れは秘密だよフェイトちゃん。初詣のお願いは、誰かに言わずに心に秘めていた方が叶うんだって。」

「そーなんだ?じゃあ聞かないし言わない!!」



其れが正解♪
さて、お参りが終わったら社務所で甘酒を貰って……やっぱりお御籤は引かないとね♪



「おみくじ……やだ、僕ひきたくない。」

「え、如何したのフェイトちゃん?」

「だって、おみくじってあのぬめぬめしたやつでしょ?僕あんなのひきたくない!!」



……お約束だけど、若しかしてフェイトちゃん『ナメクジ』と勘違いしてない?
お御籤って言うのは、今年の運勢を占う物であって、梅雨の時期によく出る殻のないカタツムリとは一切合切何の関係もないし、ヌメヌメもして
ないよ、紙だから。



「あ、あれはなめくじって言うのか。」

「……漫画で良く見るボケをリアルで見るとは思わなかったんだけど、如何思う明日香?」

「私も予想外だったわ璃音さん……」



まぁ、よく有る勘違いだったって言う事にして、取り敢えず引いてみましょう。
私は……やった、『大吉』だーーーー!!



「お、なのはちゃんも大吉?アタシも大吉だよ!!」

「璃音さんもですか!お互い、お正月から運が良いですね♪」

でも、大事なのは細かい運……総合運は大吉でも、細かい運はあまり良くないって事もあるから――って、此れは。この運は、最高ですよ璃音
さん!!



「そうだね、アタシとなのはちゃんでは少し違うけど、此れは最高だわ!!」



其れは恋愛運!
私が『時間はかかれど必ず成就する。焦るのは禁物。待てば果報あり。』で、璃音さんが『成就するが搦め手は逆効果。素直に行くと吉。』だか
らね!!
璃音さん、お互いに頑張りましょう!!



「うん、頑張ろうねなのはちゃん!!」

「はい!恋する女の子は無敵なんです!!」


――ガシィ!!

――なのは→璃音Soul Point+3000

――璃音→なのはSoul Point+3000



璃音さんとの絆が深まりました!!



「……時坂、なのはと玖我山は何かあったのか?」

「さぁ?でも、なんか凄く気合が入ってるっすね……若干金色のオーラが見えるっすよ。」

「あのまま、超サイヤ人になったりして。」



いや、なりませんからね祐騎さん。
因みに、フェイトちゃんも大吉で、洸さんと明日香さんと空さんと美月さんとアルフは中吉で、祐騎さんは小吉で、志雄さんは吉だった。
だったんだけど、志雄さんの『吉(最強)』って何だったんだろうね?まぁ、何一つ間違ってはいないとは思うけどね~~♪

其れじゃあお家に帰ろうか?今度こそ、フェイトちゃんお待ちかねの御節とお餅だから♪



「やったー!スッゴクたのしみだよなのは!!」

「其れじゃあ期待して良いよフェイトちゃん♪
 お母さんの御節は日本一だと思うけど、今年は志雄さんも手伝ってくれたから例年以上の物が出来てる筈だから♪」

お母さんも『志雄君が手伝ってくれると助かるわ』って言ってたからね。
それじゃあ、お家に向かって出発!!








――――――








Side:璃音


初詣を終えて、高町家に戻ってきてお正月の宴会なんだけど……何このお節!めっちゃ美味しいんだけど!!
お正月は、SPiKAの皆と元旦番組でお節を食べる事が多かったんだけど、桃子さんと志雄先輩が作ったお節は、此れまで食べたどんな有名店
のお節よりも格段に美味しいわよ!はやてちゃんの作った煮物も、超絶品だし!
此れはアレだわ、クリスマスケーキみたいに『翠屋特製お節』として売り出しても良い位じゃない!?
その中でも特に最高なのが、この栗金団よ!鮮やかな、其れこそ黄金色って言っても良い位の色合いだけでも凄いのに、決してしつこい甘さじ
ゃなくて、栗本来の自然な甘さを生かしながらもその甘さには深い味わいがあるって言うんだから驚きよ!!
フェイトちゃんもそう思うでしょ?



「も?」(ハムスターほっぺ)

「……えっと、美味しい?」

「……」(コクコク)



取り敢えず、のどに詰まらせない様にね?
其れで桃子さん、この栗金団はどうやって作ったの?こんな美味しいの食べた事ないんだけど!



「其れはね、栗は蜂蜜で煮て、金団にも蜂蜜で煮た栗と、蒸かしたサツマイモを潰した物を使っているの。
 鮮やかな色を出すのは、普通はクチナシ色素を使うんだけれど、此れには乾燥サフランを水に浸して抽出したモノを使っているのよ。
 どちらも綺麗な黄色が出るけれど、サフランの方がクチナシよりも透明度が有って、綺麗な黄色が出るから、値段は張るけれど綺麗な色に拘
 わるなら、断然こっちね。」



其れだけの事で、此処まで美味しくなるんだ~~!もう感激!!
其れと、志雄先輩が作ったって言う『野菜巻チキンロール』も最高!人参といんげんを鳥肉で巻いて蒸しあげて、其処に甘辛のタレを絡めた逸
品は、お節だけじゃなくて普通にご飯のおかずになりそうだからね♪



「元々はオヤッさんの店で出す小鉢の一品として考えてたんだが、そのアイディアがこんな所で役に立つとは思ってなかったぜ。
 だがまぁ、気に入ってくれたなら何よりだ。」

「はい、とても美味しいです志雄さん♪」



ホント最高です志雄先輩!!


初日の出を見て、お御籤で大吉を引いて、其れでこんなに美味しいお節を食べて……若しかしたら、最近では最高のお正月だったかも知れな
いわ♪
って言うか、アイドルじゃない玖我山璃音として迎えるお正月は本当に久しぶり――だからかな、とっても楽しかった。

そう言えばなのはちゃん、恭也さんの姿が見えなかったんだけど、何処か行ったの?



「お兄ちゃんは、忍さんが月村亭に拉致っ(連れ)て行きました。」

「……流石忍さんだね。」

恋する乙女は無敵を体現してるわね忍さんは……取り敢えず恭也さん、頑張って下さい!なのはちゃんと一緒に、応援してますから!!












 To Be Continued…