Side:志雄


気が付きゃ、こっちに来てからもうそろそろ8カ月を越える頃か――あまりにも色々あって、それ程時が経過してない様に思ってたぜ。
んでもって、今年も今日で終わりって所だな。
今日は12月31日、1年を締めくくる大晦日。――流石に今日ばかりは翠屋も休みにして、年末の大掃除って所だな。高町本家の大掃除もある
から、コイツは大仕事になりそうだぜ。

其れに加えて、年越しそばと、元旦の御節の用意もしなきゃならねぇんだから、此処は戦力を分散させて事に当たった方が良いだろうな。

「大掃除に人員が必要なのは当然だから大多数を割く事になるが、買い出しだって人がいる。
 そう言う訳だから、買い出しの方はお前等に任せるぜ、時坂、玖我山。」

「うっす、任せてくれよ志雄先輩。」

「年越しそばと、御節の材料はちゃんと買ってくるからね♪」



頼んだ。
だが、蕎麦に乗せる天婦羅の材料は、スーパーじゃなくて商店街の魚屋と八百屋で購入した方が得だ。翠屋の名を出せば、それだけでまけて
くれる事が多いし、元々の値段もスーパーよりも安いからな。



「了解っす。」

「そんじゃ、いってきまーす!」



任せたぜ。
そんじゃまぁ、こっちはこっちで大掃除を始めるとすっか!――四宮、サボるんじゃねぇぞ?まぁ、郁島が一緒だから、大丈夫だろうがな。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE86
『1年の締めである大晦日!!』










Side:璃音


大晦日って言う事で覚悟はしてたけど、スーパーは予想以上の混雑ぶりじゃない?
大晦日の必需品の他に、元旦の準備も有るから何処を見ても、人、人、人……志雄先輩が商店街での買い物を薦めたのも納得できるわね。
って言っても、アタシ達が此処で買う物はそれほど多くないから大変ではないんだけどね。
そして、今更だけど変装しないで街を歩く事が出来るって言うのは気が楽だわ~~。



「お供え用の鏡餅が家と翠屋に1つずつで合計2個。輪飾りも2個だな。屠蘇散は1個あれば充分だよな。」

「うん、それで良いと思うよ洸君。
 だけどさぁ、お蕎麦25人前は買い過ぎじゃない?志雄先輩とか結構食べるイメージだけど、フェイトちゃん達を入れて15人なのに、25人前っ
 てやり過ぎだと思うんだけど……」

「いや、こんなもんだろ?
 俺と志雄先輩は2人前は食べるし、フェイトちゃんは下手したら1人で5人前は平らげるだろうからな?
 アルフから聞いた話だが、フェイトちゃんはC○C○壱のチャレンジメニューを余裕で食べきった挙句に、お代わりを、其れもルー大盛りまで要
 求した猛者なんだぜ?
 それを考えたら、此れ位は用意しとかないと逆に不安だっての。」



うわぉ、フェイトちゃんグレイトォ。
アレを時間内に食べきるってだけでも凄いのに、更にお代わりを、しかもルー大盛りで要求するとは底なしの胃袋じゃない?……そう言えば志
雄先輩もフェイトちゃんとヴィータちゃんの食べっぷりは見てて気持ちが良いから作り甲斐が有るって言ってたっけ……
でも、其れ考えると天婦羅の材料も沢山買い込んどいた方が良いよねぇ?



「だな。つっても、この時期だと魚介類は兎も角、天婦羅に出来るような野菜は少ないから、其処は八百屋の品揃え次第って所だぜ。」

「そうだね。
 ……ん?ねぇねぇ、洸君、折角だから此れ買ってこうよ!笠間のブランド栗で作った栗金団だって!御節に此れは欠かせないでしょ!」

「んぁぁ……良いかも知れないが、多分桃子さんが絶品栗金団仕込んでると思うから必要ないんじゃねぇかな?
 ブランド栗を使ってるんだから旨いんだろうが、多分てか絶対に桃子さんが作ったやつの方が旨いと思う。桃子さんは洋菓子だけじゃなく、和
 のスウィーツでも無敵だっての。」



……其れは確かに言えてるかも。
この間のクリスマスパーティの時の小豆と抹茶を使った和風のクリスマスケーキ(三段デコレーション)も凄く美味しかったからね。――それを考
えると、既製品を買ってくのは無粋よね。



「あれ?洸さんと璃音さん?」

「連結刃の剣士と天使の少女か、お前達も大晦日の買い出しに来たのか?」



この声は、はやてちゃんにリインフォースさん!
お察しの通り買い出しだけど、はやてちゃん達も?……大掃除は、騎士達にお任せって感じ?



「あっはっは、その通りや。
 シグナム達に買い物任せても良かったんやけど、やっぱ年越しそばの材料は自分で吟味したいし、大掃除に関しては私は居ても何の役にも
 立たへんからね。
 そう言う訳でお買い物って訳や――でも、此処で会えたのは運が良いで。
 買い物が終わったら寄る心算やったんやけど、此処で会えたなら、此れ渡しときますわ。お節用の筑前煮なんやけど、作り過ぎてもうたから、
 お裾分けや♪」

「うわぁ、おいしそう!!」

「サンキュー、有り難く頂戴するぜはやてちゃん。」



里いも、ニンジン、タケノコ、シイタケ、其れと竹輪の筑前煮。多分関西風――って言うか、京風の上品な味付けなんだろうなぁ。楽しみ。
取り敢えず志雄先輩にメールで『煮物は作らなくて良し』って送っておかないとね。

ありがとう、はやてちゃん。美味しく頂くわ。
それじゃあ、少し早いけど、よいお年を♪



「此方こそ~~~。」

「では、またな。」



ふふ、まさかはやてちゃんと会うとは思ってなかった上に、予想外の御馳走ゲット♪
それじゃあ、今度は商店街で残りの買い物を済ませちゃおうか洸君!



「おう!って、なんで手を握ってんだよ!?」

「何よ、嫌な訳?
 アイドルと手を繋いで買い物するなんて言うのは一生に1度あるか無いかなんだから、もう少し感激してよね?――其れとも、照れてる?」

「ば、馬鹿言うなっての。照れてねぇって。
 ……俺が恐れてんのは、この事がリョウタにばれたら授業時間以外は学園を逃げ回らなきゃならなくなるって事だ……アイツのSPiKAへの情
 熱は、液体窒素でも冷やせねぇだろうからな。」



あ~~……其れは確かに。
リョウタ君はアタシ達の中でも熱烈なファンとして認識されてるから、こんな事がばれたら洸君が危ないか……でも、其れって逆を言うならアタシ
か洸君が言わない限りはバレる事は絶対にないよね?
なら良いじゃない。このまま行きましょ♪



「はぁ、仕方ねぇか……ま、アイドルと手を繋いで買い物なんてのは確かに出来るモンじゃねえからな。」



そうそう、そう言う事♪



まぁ、本音を言うのなら、アタシが単純に好きな人と手を繋ぎたかっただけなんだけどね。



「そんじゃあ、今度は商店街で買い出しに行くとするか璃音。」

「うん!」

何時か必ず伝えたいな此の思い――








――――――








Side:なのは


大晦日と言えば大掃除!
翠屋と自宅の両方で其れを行うんだけど、大掃除って言うのは普段見ないとこも掃除する訳で、そうなると――



「美由希、コイツは何だ!?」

「それは……恭ちゃんとお父さんの120回目の模擬戦の時に砕けた木刀の破片かな?」

「此れは!」

「私が作って失敗したチャーハンの残骸!」

「コイツは一体何なんだ!!(道場の箪笥裏から出て来た節足動物の死骸と思わしき何か。)」

「分かりません!!」



普段掃除しない場所から色んなものが出て来るんだよねぇ。
って言うか、木刀の破片やお姉ちゃんの失敗料理の成れの果ては兎も角、異常成長した百足っぽい何かの死骸(推定全長3メートル)が出て
来るってどういう事?
その生物の死骸は、古生代の巨大昆虫レベル……古生物学者が欲しがるかもだよ。



「なら、ネットオークションに出品して一儲けすっか。」

「其れはやめた方が良いと思います。」

多分、他に類似種は居ない突然変異種だと思いますから。
そして、そんな突然変異種を生み出してしまったこの家に驚きですよ!!――まさかとは思うけど、放射能とか出てないよね?……放射能汚染
で巨大化したとか、流石に笑えないの。



「ゴジラじゃあるまいし其れはねぇだろ?
 此奴らは骨がないから環境さえ整えば幾らだってデカくなれる――そう言う環境が整ってたって事だ。流石に、このデカさには驚いたがな。」

「古生代にタイムリープした気分です。」

此れだけの巨大化をするって、一体どうなってるんだろうね一体どうなってるのか気になるけど、先ずは大掃除を終わらせないとだね。
この家+翠屋ってなると、まだまだやるべきところは有るからね♪



「まぁ、そう言うこった。気合い入れていくぞ!!」

「了解です♪」

1年の最後となる大晦日は綺麗な家で迎えたいからね♪
この後、志雄さんが雑巾がけとワックスがけをしてくれて、家と道場の床はピッカピカになったよ!――翠屋の床は、空さんにダメだしされた祐
騎さんが、渋々ワックス塗って終わらせたみたいだけど。

兎に角、此れで大掃除も完了だね♪









――――――








Side:志雄


大晦日の大掃除も終わって、只今高町家+X.R.C+テスタロッサ家で大晦日を満喫中だ。
時坂と玖我山がすげぇ量の蕎麦と天婦羅の材料を買って来たが、結果的には其れで正解だったぜ――言わずもがな、フェイトの奴が予想以上
に食いまくったからな。

お陰さんで、残っても良いと思って作った天婦羅も完パケだ――やっぱ、此れだけ気持ちよく食って貰ったってのは嬉しいもんだぜ。



「やっぱり大晦日は紅白です!璃音さん達は出ないんですか?」

「出たい所だけど、まだ無理ね。
 人気があるとは言え、まだまだ杜宮のローカルアイドルの殻を突破出来てないから、本当の全国区になって紅白に出れるようにならないと。」

「応援してます!璃音さん達ならきっと出来ます!!」

「OK!頑張るよなのはちゃん♪」



でもって、テレビは大みそか恒例の歌番組なんだが、此れになのはと玖我山が反応したか。
確かに、アイドルをやってる身としては此の舞台は憧れなんだろうな――ま、精進しろや玖我山。お前達なら、そう遠くない未来に此の舞台に
立つ事が出来るって思ってるからよ。



――ゴーン……



除夜の鐘が鳴り始めたか――払うべき煩悩はそんなにないが、この除夜の鐘が新しい年を開いてくれる事を願うぜ。












 To Be Continued…