Side:志雄


……何だ、今の感覚は?どこかで途轍もない力が弾けたように感じたんだが――なのは、お前も感じたか?今の力が膨れ上がった感覚を…?



「感じ取りましたよ志雄さん。
 この魔力の強さは普通じゃありません――それこそ闇の書の意志であったリインフォースさんを軽く上回る程の力があります。そして、其れだ
 けの力を持っていながら力に支配はされていない感じです。」

「そいつは何とも大したもんだぜ。」

力に溺れたら待ってるのは破滅だが。力に支配されてねぇなら何が有っても大丈夫だろうな――ま、此処で俺が何かを言った所で何がどうなる
訳でもねぇんだがな。

まぁ、分からない事に態々首を突っ込む事もねぇし、事の次第ははやてが教えてくれるだろうからな。
取り敢えず、現れた闇の欠片を一掃すんぞ?――コイツ等は倒しても無限に増えるから個別撃破で行くしかねぇ。確りついて来いよなのは!!



「はい!!!」

「撃滅すんぞ!!」

覚悟しやがれ、テメェ等闇の欠片は1ピースも残さずに纏めて滅してやるからよ!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE84
『Gesegneter Wind』










Side:リインフォース


よもやリバースユニゾンで此処までの力を得る事が出来るとは、マッタク持って予想外の事だった――此れなら負ける事はない。
此れならば、闇の書の意志であった頃の私を凌駕しているからな――この力を持ってして、貴様を叩き伏せてやるぞマテリアルの王を名乗る者
よ!



「ふん、笑わせるな黒翼よ。夜天の小鴉と融合した程度で我に勝てると思うてか?
 我は闇統べる王ぞ。先刻見せた様に、闇の欠片を我が力とする事が出来る――此れが如何言う事か分からぬ貴様ではなかろう?」

「闇の欠片はお前を倒さない限り無限に出現する。
 そしてお前はそれを自分の力として吸収できる――己の力は無限に上昇すると言いたいんだろう?」

せやけど、其れは如何やろなぁ?

「なに?」



確かに戦っているのが私と主だけだったならば詰んで居ただろう。
だが、夜天の守護騎士達、小さき勇者達、そして剛腕の重剣士とその仲間達が闇の欠片と戦い、現れた端から叩き伏せているのだ――流石
に出現スピードを上回る事は出来なくとも、出現と殲滅の量がプラマイゼロになる位の速さで欠片を倒している。
故に、お前がこの戦いの最中に劇的にパワーアップする事はもうない。

何よりも、闇の書の闇は既に砕かれ、残ったのは夜天の魔導書だけだ。
あの呪われた闇の書は、二度とこの世に存在してはならない物。其れを復活させてなるものか!この力を持ってして終わりにする!!



――轟!!

――バチィ!!




「此れは……黄金の魔力を纏い、その魔力が火花放電を起こしている?
 其れに貴様、その瞳……薄茶から変わった、その空色の瞳は……夜天の小鴉と100%の融合を果たしたと言う事か――!」

そう言う事や、此の大馬鹿王!一気にかますで、リインフォース!!

「はい、行きます!」

今度こそ終わりにする!
行くぞ闇統べる王よ――お前は此処で私達に跡形もなく消去される。パワーアップの時間など与えず終わりにする!!








――――――








No Side


はやてとユニゾンしたリインフォースと、闇統べる王との戦いは、ユニゾンリインフォースの方が圧倒的に有利であるのは間違いないだろう。
復活した際に力は落ちたとは言え、管理局のランクで言うのならばリインフォースはオーバーSランクであり、更にリバースユニゾンによって全盛
期と同等かそれ以上の力を得ているのだ。

全盛期以上と言うのは、なのはが苦戦した闇の書の意志を上回ると言う事であり、そうなれば並大抵の魔導師や騎士は相手にもならない。


「覇っ!!」

「!?」


実際に、リインフォースの気合だけで闇統べる王の身体は吹き飛ばされたのだから。(実際には気合と共に不可視の魔力波が発生して、それ
が闇統べる王を吹き飛ばしたのだが。)

そして其れを皮切りに、高速移動で肉薄すると拳打と蹴りの雨霰!
剣林弾雨、否、拳林蹴雨とも言うべきラッシュ攻撃で闇統べる王を攻め立て、反撃の隙すら与えない――どころか、強引に掴んで引き寄せると
膝に背中を叩きつけるバックブリーカー一閃!


「がっ!?」

「落ちろ!!」


此れだけでも相当なダメージだが、バックブリーカーで仰け反った腹部に両手を組んでのアックスパンチを叩き込み闇統べる王を地面へと叩き
落し、更に追撃の魔力弾を放つ。

闇統べる王と魔力弾を受けた地面は大きく隆起し、そして爆発!――後には大きなクレーターが残る。


「……やったとは言えないな?まだ奴の魔力は残っているからな。」

隠れてないで出てこいや!このアホンダラ!!


普通ならやったと思うだろうが、リインフォースもはやても未だ闇統べる王の魔力が残っている事から油断せずに警戒をする。
可成り強力な攻撃を叩き込んだにもかかわらず生きているのならば、何処から攻撃を仕掛けて来るのか分からないのだ。故に、姿が見えない
と言うのは何とも厄介なのである。


「時間稼ぎの心算か?無駄な足掻きはやめて出て……」


――ズボォ!!


「!?」

「真下がガラ空きだ虚けが!!」


だが次の瞬間、地面から闇統べる王の腕が現れ、リインフォースの足首を掴むと同時に地面から現れ力任せに投げ飛ばす!
先の攻撃では消し飛ばずに地面に潜んで反撃の機会を伺っていたのだろう――その目論見は見事に成功したと言って良いものだっただろう。


「我に刃向う愚かさを知れ!闇に滅せよ、エクスカリバー!!


そして投げ飛ばしたリインフォースに向かってベルカ式の極大直射砲を発射!!
投げ飛ばされたリインフォースにそれを防ぐ術はなく、その身が魔力砲に呑み込まれてしまう――普通に考えれば、戦闘不能は確実である。


「ふふふ……はははは……ふわ~っはっはっは!!
 我に逆らうからこのような事になるのだ!大人しく屈していれば長生きできたモノを……愚かなものだ。」


だからこそ、闇統べる王も己の勝ちを信じて疑わなかったのだ。
だがしかし、はやてとユニゾンしたリインフォースがそう簡単にやられるだろうか?――答えは『否』だろう。


「誰が、愚かだって?」

「!?」


爆炎が晴れると、其処にはリインフォースの姿が!
戦闘装備の上着と腰マントが破損はしているモノの、身体其の物は殆ど無傷の状態――なのはのブレイカーに匹敵する魔力砲を受けて尚、こ
の程度の被害で済んでいたのである。

此れには尊大不遜な闇統べる王も戦慄する。
自身の最強魔法を叩き込んだにもかかわらず、リインフォースは殆どダメージを受けていないのだ――其れが意味するのは、つまり闇統べる王
の攻撃ではリインフォースを倒す事は出来ないと言う事だ。


「馬鹿な……貴様不死身か!?」

「そんな訳ないだろう?流石に少しヤバかったよ今の攻撃は――が、主と融合した私を倒すには全然足りない。だから、此れで終わりにする。」


そのリインフォースは上着と腰マントを投げ捨てると、戦闘装備から騎士服に換装!
其れと同時に闇統べる王に接近し、目にも留まらぬ蹴りと拳の猛ラッシュを再び喰らわせる。其れもさっきよりも遥かに強いラッシュをだ。

当然カウンター気味に放たれた連撃を闇統べる王に防ぐ手段はなく、合計15発の拳打と蹴撃が叩き込まれ、更にジャンピングアッパーで吹き
飛ばし……


「此れで終わりだ!!」

喰らえや、覇王翔哮拳!!


追撃に極大の魔力弾を発射!!
其れは見事に闇統べる王に直撃して爆発!!――だが……


「我は負けん……我等の悲願、闇の書の復活をなす……」


ボロボロになりながらも闇統べる王は生きていた――恐るべき生命力と執念と言うべきだろう。
だが、此れだけボロボロになったのであれば、滅する事は容易であり、ユニゾンしたリインフォースの敵ではない――其れこそ瞬殺出来る。


「往生際が悪いな……もうここで眠れ!響け終焉の笛……」


だから引導となる一撃を放とうとしたのだが……



――ビッ!



「「!?」」


其れを放つ直前にリインフォースとはやてが分離し融合状態が解除されてしまったのだ。


「な、何で!?計算上は2時間は融合状態を維持できるはずやで!?」

「まさか……私と主の融合は強過ぎて、融合を維持するだけのエネルギーが足りなかったのか?……だとしたら、この上ない誤算だ。
 時間切れとは、マッタク持って笑えない事だからね。」


リバースユニゾンのリインフォースはあまりにも強過ぎた為に融合状態を維持するエネルギーが尽きてしまったのである。
尤もそれだけならば大した問題ではない筈だ――リインフォースかはやてが動ければ、瀕死の闇統べる王にトドメを刺す事が出来るのだから。

だが、そうであるにも拘らずリインフォースもはやても動く事が出来ない――リバースユニゾンで、持てる力の全てを使い切ってしまったのだ。

此のままでは拙い……そう思った時だった。



――ドスゥ!!

――バガァァァァン!!




突如放たれた魔力の矢が闇統べる王を貫き、真一文字の魔力斬撃が闇統べる王の身体を両断する。


やったのはリインフォースではない。――ならば誰か?



「一発必中……間に合ったか。」

「少し調子に乗り過ぎたなテメェ等は。」


其れはシグナムと志雄。
シグナムのシュツルムファルケンが闇統べる王を貫き、志雄のフレアスラッシュが闇統べる王を両断したのだ――期せずして発生したベルカの
剣騎士と、適格者の重剣士のコンボ攻撃が闇統べる王に対しての決定打となったのだった。


「馬鹿な……そんな馬鹿な!
 我は認めんぞこんな結末など!!……我は不滅、必ず蘇って我は我の目的を成すだけよ――その時、貴様等がどうなっているか楽しみだ。
 精々足掻け、そして絶望しろ――この世界は闇によって支配されるべきと言う現実を知ってな。」


しかし、消滅する瞬間までこんな事が言えるのは大したモノであると言えるだろう。

だが其れも、志雄となのはとシグナムには通じない。



「闇が支配する世界だと?……冗談も休み休み言いな!」

「纏めてやっつける……其れだけなの!!」

「私も力を出させて貰うぞ。」



闇統べる王を完全に滅すべく、志雄のフレアスラッシュが、なのはのディバインバスターが、シグナムの飛竜一閃が放たれる。
身体を両断された闇統べる王に、其れを避ける手段はなく、バリアを張った所でこの3人の同時攻撃を防ぐ事など不可能だ。


「そんな……そんな馬鹿なぁ!!」

――バガァァァァァン!!!



結果、断末魔の悲鳴と共に、その身体は爆発四散!――つまりこの瞬間に、闇の書の復活を目論むマテリアルは全て倒されたのある。
その結果が意味するのは勝利!!


「此れで終わりですね……?」

「あぁ、終わりだぜ。」


そのフィニッシュを飾るのは、背中合わせに立った志雄となのは!この事件での撃墜数をワンツーフィニッシュした2人が揃ってポーズを決めて
此度の事件の集束を宣言し、闇の書事件は真の終わりを見せたのである。









 To Be Continued…