Side:リインフォース


私達の前に現れたマテリアル――予想通り、我が主の姿を模して来たか。
カラーリングが異なるだけでなく性格も似ても似つかない様だが、しかし強いのは間違いないだろうね……少なくとも、コイツから感じる闇の波動
は、闇の欠片とは比べ物にならない。

其れこそ、闇の書の意志を再現した闇の欠片をも上回る――此れは、一筋縄で行く相手ではなさそうだ。
全盛期の私ならば瞬殺出来ただろうが、大きく力が落ちてしまった私では、騎士達の武器をフル活用して互角と言った所で、我が主は経験不足
から分が悪いか……ならば、私が何とかするしかないだろうな。

来い、レヴァンティン!!


――ボッ!



「リインフォース?」

「此処は、先ずは私にお任せ下さい主。
 如何に闇のマテリアルと言えど、自分と同じ姿をした者と戦うと言うのは、キツイモノが有るでしょう?――だから、其処で見て居て下さい。」

「そないな事言ったら、リインフォースかて私の姿をした相手とはやり辛いんとちゃう?」



其処は心配ご無用です。
容姿に類似点は見られますが、貴女とアレはマッタクの別物です――だからこそ、私は本気を出す事が出来る。マテリアルの存在は、貴女への
冒涜でしかないのですから。

奴は……私が倒す!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE83
『Eine dunkle Konig:闇統べる王』










好き放題やってくれているみたいだが、その代償を払う準備は出来ているな?――お前達『マテリアル』は闇の欠片とは違うようだが、其れでも
此れだけの事をやってくれたんだ、その落とし前は付けて貰うぞ。



「ふん、誰かと思えば夜天の小鴉とそのお供か。
 我を止める為に来たのだろうが、闇統べる王たる我が、お前達に後れを取るとでも思っているのか?――だとしたら身の程知らずの虚けよ。」

「何ちゅー偉そうな……自分で自分の事を『王』って言うだけはあるわ――見習おうとは思わへんけどな。」



見習ったら、未来永劫中和不可の中二病にカテゴリされるので絶対にしないで下さい我が主。
とは言え、目の前の敵が相当に強いのは間違いないから、簡単に勝つ事も出来ないでしょうが、しかし負ける心算もありません――私を信じて
下さい。



「……そやな、仲間を信じずして、何が主やからね。
 せやけど、ホンマにヤバくなったら介入させて貰うで?……もう、二度とリインフォースを失うのはゴメンやからな。」

「そうなる前に、本当に危ない場合は自ら救援要請をしますよ、我が主。」

出来る事ならば、その手を煩わせたくはないと言うのも本音ではあるし、コイツ等の存在は私と言う存在が復活した事によって生じた、闇の書の
残滓とも言うべき物――矢張り、私の手で終わらせねばだからな。



「ほう?貴様1人で来るか黒翼よ。
 良かろう、管制人格たる貴様は闇の書復活の生贄に最も相応しい存在だ――貴様を倒し、夜天の小鴉を倒して闇の書を復活させ、我が王とし
 て、闇で世界を統治してくれる。」

「その未来は訪れないぞ王よ。
 そもそもにして、お前とは別に現れた他の2体のマテリアルは、私達の仲間によって倒された……1人残ったお前で、私達全てを倒すのは不
 可能だと思うがな。」

「くっくっく……何を言うかと思えば下らん。
 我はマテリアルの王、闇統べる王ぞ!王たる我が力、見るが良い!!」



――キュゴォォォォォォォォ!



「な、何?何が起きてるん!?」

「此れは……奴に闇の魔力が集まって居る?其れにしたって此の量は……!」

まさか、闇の欠片として再生された者を、闇の魔力に分解して自らに取り込み、其の力を増していると言うのか!?……闇の王を名乗るだけあ
って、おぞましい強化をするものだ。
そして、強化されたその力は、全盛期の私に勝るとも劣らないか。

とは言え、主はやてを模している以上、体格は子供であるし、近接戦闘に持ち込んでしまえば射撃や砲撃を撃つ機会は激減する――体格差を
生かして、クロスレンジで押し切ってしまう事は可能だな。

行くぞ!!



「む……この切込みの速さ、剣騎士以上か?」

「私は管制人格だ、全ての能力に於いて守護騎士夫々の得意分野を上回る。故に、剣技は将よりも上と言う訳だ。
 そして、クロスレンジでの戦闘ならば、将と鉄槌、そして守護獣の戦い方を、より高いレベルで使う事が出来る――私の接近された時点で、お
 前の勝ちは無いと知れ。」

「ふ、其れは如何だろうな?」



――ガキィィン!!



む……この切込みを防ぐとは、我が主を模していながら、ソコソコ近接戦闘も出来ると言う事か?だとしたら、少し驚きだ。
とは言え、その剣十字の杖は、アームドデバイスであるとは言え近接戦闘には向かない杖だ。そもそもにして、夜天の魔導書の主が射撃や砲
撃を使う為の物だからな其れは。
頑丈さも相当に高いが、しかし将のレヴァンティンは、剣のアームドデバイスとしては他の追随を許さない程の性能をもったデバイスだ。打ち合っ
ていたら、先にマテリアルの方が武器破壊される筈だ。

「近接戦闘が出来るとは意外だったな。」

「我は闇の書の構成素体『マテリアル』の王だぞ?
 我もまた、貴様と同様に守護騎士達の戦い方は会得している――故に、クロスレンジで押し切る事が出来るなどと言う、浅はかな考えはせぬ
 方が良いぞ。」

「浅はかか……其れは如何だろうな!」

「むお!?」


――ブオン!!


略密着状態からの蹴り上げを咄嗟に避けたのは大したものだが、逆に緊急回避をした事で一瞬動きが止まってしまったな?
その一瞬が、私にとっては好機なんだよ!


――ガスゥ!!


「のわぁ!?」

「蹴り上げはお前の動きを止める為の只の見せ技。本命はこっちの踵落としだったと言う訳さ。」

「うわお、見事なネリチャギやなリインフォース。故アンディ・フグ選手もビックリや。」



この辺は、吸収した高幡の影響ですけれどね。
そして、其れだけで終わらない!吼えろ、ヴォーパルウェポン!


――ジャキィィィン!!


此処からは、エルダーグリードすら簡単に切り裂く首狩り兵器(ヴォーパルウェポン)の出番だ。
身の丈以上の長大な武器であるが故に、取り回しは難しいが、其れを補って有り余るだけの攻撃力が此れにはある――覚悟は良いな?
ドラゴンインストー………


――ドガァァァァァァァァァァン!!!


「が…!!」

此れは……背後からの射撃だと!?
新たな闇の欠片が現れた訳でもない……まさか――!



「くはははは!貴様が我に突撃して来た時に、既に我は中空に魔力弾を設置していたのだ、何時でも放てるようにな!
 流石に今の踵落としは面食らったが、戦いが始まったその時から、貴様は我に背後を取られていたのだ――其れに気付かず、愚かな事よ。」

「考えたものだが……今ので私を落とせなかったのは痛いな?
 多少痛かったが、此の程度では私は倒せん――悪足掻きはやめるが良い!」

「果たして、悪足掻きかな?」


――ドゴォォォォォォォォ!!!



!?……こ、此れは……今度は魔力弾のボディブローだと?
まさか、此れもまた設置していたと言うのか?……だが、そうであるならば、如何して私は気付けなかった?主も気付けなかった?上空に展開
されていたのならば兎も角、こんな近くに設置されていたら分かる筈なのに――!



「くくく……魔力弾を、光学迷彩で覆ってやったのよ。
 拙い方法ではあったが、多少ぎこちなくとも魔力弾程度ならば包み込んでしまえば景色に溶け込ませてしまうのは難しい物ではないからな。
 そして貴様はここで散るが良い!!消えろ、闇慟哭!!」


――ゴォォォォォォォォォォォォ!!!


首根っこを掴まれたと思ったら、まさか其処から闇の波動で攻撃してくるとは……!
しかもこの攻撃は、相手を倒す事だけを考えて作られているだけに、一切の容赦がない――全盛期に劣るとは言え、頑丈私に決定的なダメー
ジを与えて来るとは……闇統べる王は伊達ではないな。

だが、搦め手を使われたとは言え、コイツは私の戦闘力を上回っている――これ以上続けても、此方に利はないか。
此れが戦乱期のベルカであったのならば、拘りもあったかも知れないが、この世界ではそんな拘りは不要だ……何よりも、我が主とは約束をし
ていたからね――ヤバそうな場合は言えって言うね。

「我が主、如何やら奴は私の想像以上の相手であったようです。
 貴女の手を煩わせないようにと思っていましたが、如何やらそれは難しいようです――奴を滅する為に、共に戦っていただけますか?」

「何を言うてんねん!答えはイエスに決まっとるやん!
 其れに、リインフォースに背後からの魔力弾の雨食らわして、更には魔力弾のボディブローかましてくれた上に、どこぞのオロチ四天王みたい
 な超技を喰らわしてくれた事は看過できんからなぁ?……あのアホ王に、一発かまさんと気が済まへんて!!」



……私の事を大事に思ってくれるのは嬉しいのですが、其れは完全に私闘と言うか私怨と言うか……取り敢えず、この王が我が主の逆鱗に触
れてしまった事だけは確かなようだな。



「ククク……2人で来るか?其れも良かろう。
 2人になろうと3人になろうと、我が闇の力で砕いてくれるわ!!」

「……2人で行く?何を勘違いしとんねん、此のアホ王。」

「なに?」

「いつ、誰が私とリインフォースの2人でアンタに挑むって言うた?
 確かに私とリインフォースが力を合わせれば、アンタを倒すのかて不可能やないやろ。やけど、アンタを倒すにはより確実な一手が必要になる
 んもまた事実や。
 だから私は、融合騎とロードの最終奥義を使う!私にリインフォースを融合するんやなくて、リインフォースに私を融合する!!」



んな!?本気ですか我が主!
確かに融合騎とロードの関係を反転させたリバースユニゾンを使えば、私の力は全盛期の其れを上回り、アレを倒す事も出来るでしょう。
ですが、リバースユニゾンは、ロードにかかる負担が半端な物ではなく、最悪の場合は、リバースユニゾンの反動で死に至る事もあるのです。
幾ら此れを倒せる手段とは言え、私はそれを容認する事は出来ません!!



「其れは、此れまでの主やったらやろ?
 大丈夫、私とリインフォースやったら、最悪のケースだけは起こらへんて――私とリインフォースがリバースユニゾンした場合の適合率は98%
 って言う高い数値やってのがシミュレーターで計算されとるからな。
 リインフォースに思う所が有るんは、重々理解しとる――やけどアンタは1人やないんや。もっと、仲間を頼る事を覚えなあかんよ?」

「我が主……」

其れは、確かにそうかも知れません。
思えば私は、貴女に忠誠を誓った身でありながら、心の奥では、仲間の存在を否定していたのかもしれません――私の過去を理由にして。
ですが、貴女の言葉で目が覚めました――仲間とは、単身で切り抜ける事の出来ない場面に直面した時に頼るべき物だったのですから。

貴女が其処までの覚悟を決めたのならば、夜天の魔導書の管制人格として、其れに応えるのみです!!
やりましょう、我が主!!



「うん、リインフォースならそう言ってくれると思ってたで。
 ほな行くで?管理者権限発動――リバースユニゾン、認証!!」



――キュゴォォォォォ……轟!!



融合完了!夜天の祝福、此処に在りや♪

「これは……この力は!!」

主と融合した事で、凄まじいまでの魔力を感じる。
其れこそ、全盛期の私と同等――否、それ以上!其れこそ、最強最悪の敵であった『闇の書の闇』の魔力すら上回るかも知れないぞ此れは!

だが、逆に言うのならば、此れだけの力が有れば、マテリアルの王が相手であっても負けはせん!!



「銀髪赤眼が、色素の薄い茶髪と瞳を得ただと?……悪あがきと言う訳か。良かろう、受けてやる!」



悪足掻きではない。此れこそが貴様を倒す為の最強の布陣だ。
我が主と融合した私は、此れまでよりも可成り強いから覚悟するが良い闇統べる王よ――貴様は今此処で倒して、欠片すら残さずに滅する!


闇の書は、もうこの世界に必要ない――此れからの世界は、我が主達が作っていく物なのだからな!!!
だから、覚悟を決めろ闇統べる王よ。――私と我が主がリバースユニゾンした以上、貴様の道は二つに一つ――即ち『ブッ飛ばされてお縄にな
るか』『お縄になってぶっ飛ばされるか』だけだからね。

「かかって来い、古代の遺物よ――!」

「良かろう、纏めて磨り潰してくれる!」



私が其れを全て討ち倒して、闇の書事件を本当の意味で終わらせる――!!
自慢ではないが、私が出張る以上、敵対者の死は絶対だ――故に、此れが第2幕であり終幕だ。……覚悟は良いな闇統べる王!!
貴様を打ち倒し、闇の書の復活は絶対に阻止する!!其れこそが、生き長らえた私の目標だからね!!

もう二度とあんな物が世界に現れないように、我が主のお陰で取り戻した力で、闇統べる王を討つ!!


これ以上お前達の好きにはさせない――私はこの手で、海鳴を守ってやると、心に決めたのだからな。
だから、本番はここからだ。――我が主の覚悟、リバースユニゾンが齎した力で、闇の書の最後の後始末をしてやるさ!

始めようか、闇の書の終わりの始まりって言う物をな!!











 To Be Continued…